どんなことでも失敗を恐れずに挑戦する姿は、見ていて気持ちがいいものですよね。それは大人のみなさんが、「やる前から諦めるのではなく、チャレンジする姿勢が大事」「たとえ失敗しても得られるものは大きい」ということが身に沁みてわかっているからではないでしょうか。
『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)の著者・船津徹氏は、4,000人を超えるグローバル人材を輩出してきた経験から、「チャレンジ精神にあふれた子どもは自身の『強み』を見つけられ、青年期にさらに活動の場を広げていく」と述べています。将来の選択肢を広げ、人生をより豊かにするため、子どもの挑戦力を伸ばしていきたいと思いませんか?
「挑戦力のある子」に共通する特徴は、親との関係に起因しているケースが多いようです。3つの特徴について詳しく解説していきましょう。
特徴1:好きなことを “とことん” やらせてもらえている
まず1つめは、「好きなことをとことんやらせてもらえている」ことです。「そろそろごはんだよ」「お片づけして」といった親の言葉が耳に入らないほど、子どもがなにかに熱中しているときはありませんか? そんなとき、大人の都合で「好きなこと」強制的に終了させてしまうと、「挑戦力の芽」を摘んでしまうかもしれません。
カリスマ保育士としてメディアでも活躍中のてぃ先生は、「チャレンジ意欲がある子に共通するのは、『好きなことや興味関心が強い分野をしっかり持っている』こと」だと話します。人間は、ひとつでも夢中になれることや得意なことがあると、「自分には〇〇があるから大丈夫」と自信につながり、たとえ何かに挑戦して失敗しても、すぐに立ち直れるものです。だからこそ、お絵描きでもサッカーでも、好きなことにとことん向き合う時間を大切にしてあげましょう。(カギカッコ内引用元:KIDSNA STYLE|どうすれば子どものチャレンジ力が育つ?てぃ先生に聞く、大切な2つのこと)
また、「幸福学」の第一人者であり慶應義塾大学大学院教授の前野隆司氏は、「好きなことにチャレンジする経験が多いほど、変わる時代に合わせて新たなチャレンジをしていくことができる。だからこそ、子どもの『好き』を大切にしてあげてほしい」とアドバイスしています。
目まぐるしく変化し続ける先行き不透明な時代だからこそ、「自らの強みによって個性を伸ばすこと」がますます求められるでしょう。自分の好きなことを納得できるまでとことん追求させてもらえた経験がある子は、挑戦することを恐れません。それにより、揺るぎない自信と個性的なスキルを手に入れられます。(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|目的もなく東大に入っても意味はない。本当に輝けるのは、いい意味での「オタク」だ!)
お子さんが時間を忘れて夢中になって取り組んでいることがあれば、「チャンス!」と考えてとことんやらせてあげましょう。親に見守ってもらえた経験は、安心して物事に集中できた記憶として体と心に刻まれるはずです。
特徴2:“無条件に” 愛されて、いつも見守られている
2つめの特徴は、「親から『無条件に』愛されている」こと。「無条件に愛する」とは、テストの点数が高くなくても、かけっこで一番にならなくても、「ありのままのあなたに価値がある」と愛情を伝え、頑張った過程を認めてあげられる関係性を意味します。
「幼少期に親から与えられた『ありのままの自分が受け入れられている』という思いが、その後の人生をしっかり歩んでいくうえで欠かせない重要なステップになる」と話すのは、日本アドラー心理学会/日本個人心理学会正会員で株式会社子育て支援代表取締役の熊野英一氏。
「テストで100点をとれたから」「早く起きてくれたから」と、いい子であるための “条件” を突きつけられた子どもは、「もし条件をクリアできなかったら、いい子じゃなくなっちゃう……」と怖がり、さまざまなチャレンジを回避するような生き方しかできなくなるのだそうです。(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|大事なのは我が子を無条件で信じる「信頼」。「信用」しかできないのはとても危険)
逆に、たとえよい結果が出なくても、「一生懸命取り組んでいる姿が素敵だったよ」と、日頃から過程を認められほめられている子は、てぃ先生いわく「一生懸命やればママやパパが認めてくれる。だからチャレンジしてみよう」と挑戦力を発揮できるのだそう。わが子を思うあまり、つい「もっとできるはず」「こんなに頑張っているのだから、結果に結びついてほしい」と願ってしまうのは親として当然ですが、結果ばかりを追い求めるのは本末転倒ですよね。
「子どもは安心できる場所でこそチャレンジできる」と国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチの石川尚子氏が指摘するように、できないことを責めたり、実力以上の結果を求めて叱咤激励したりするのではなく、「頑張っている姿を応援しているよ」とただ見守るだけで、子どもはプレッシャーを感じることなく安心して挑戦できるのです。(カギカッコ内引用元:ベネッセ教育情報|引っ込み思案な子どもの「チャレンジ精神」を育むには[やる気を引き出すコーチング])
特徴3:「失敗してもいいんだよ!」と教えられている
そして3つめの特徴は、「失敗してもいいんだよ、と教えられている」ことです。心配性な親御さんほど「わが子に失敗させたくない」という思いが強すぎるあまり、つい先回りして障害物を取り除きがち。
しかし「失敗の経験から子どもは多くのことを学び、たくましさを身につけていく」と教育ジャーナリストの中曽根陽子氏が述べるように、失敗経験のないまま大人になると、ちょっとした困難にぶつかっただけでも挫折してしまう危険性があります。(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|任せて、失敗させて、考えさせる。「困難を乗り越える力」を伸ばすには、放っておくのが◎)
発達臨床心理学や保育学を専門とする東京都市大学人間科学部教授の井戸ゆかり氏も同様に、「失敗した経験がない子どもは、失敗を乗り越える経験もできないため、失敗経験がある子どもと比べて弱い人間になる」と指摘しています。
失敗は悪いこと、失敗すると恥ずかしい、と過度に失敗を恐れるあまり、挑戦することすらも避けるようになってしまうのです。すると、もちろん成功体験も得られないまま成長するので、自己肯定感が失われてますます挑戦意欲の低下に拍車がかかるでしょう。(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「失敗を恐れない力」の育て方。子どもに「挑戦したい!」と思わせる、効果抜群な声かけ)
私たち大人がすべきなのは、「失敗してもいいから、まずはやってごらん」と促して、実際に失敗しても責めたりがっかりしたりしないこと。そして、「次からどうしたらいいかな?」と子ども自身に考えさせましょう。そうやって失敗を乗り越える成功体験を積むことこそが、時代を生き抜く知恵となり、何事にも「まずはやってみよう」とチャレンジする意欲の土台になります。
もしお子さんが、失敗を恐れて挑戦できずに悩んでいるなら、親御さん自身の失敗体験を話してあげるのもおすすめです。「お母さんも小さい頃、こんな失敗をしたよ」と楽しそうに話すだけでも、子どもは気持ちが楽になり、「自分もやってみようかな」と一歩踏み出すきっかけになるかもしれません。
「本当の失敗とは、何もチャレンジしなくなること」と石川氏が述べるように、「成功と失敗」ではなく「体験と学び」を得るのだと考えれば、どんな経験も無駄にはならないはず。お子さんにもぜひ、「失敗してもいいんだよ。その体験から学べばきっとあなたのためになるから」と教えてあげてくださいね。(カギカッコ内引用元:ベネッセ教育情報|引っ込み思案な子どもの「チャレンジ精神」を育むには[やる気を引き出すコーチング])
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今回解説した3つの特徴は、決して特別なことでも難しいことでもありません。親が大らかな気持ちで子どもを見守り、子ども自身が失敗から学ぶ力を信じてあげる――。それだけで子どもは、「よし、やってみよう!」と挑戦できるのです。
文/野口燈
(参考)
ダイヤモンドオンライン|【子育て】「深い挫折」や「燃え尽き症候群」に将来陥りやすい子の特徴
KIDSNA STYLE|どうすれば子どものチャレンジ力が育つ?てぃ先生に聞く、大切な2つのこと
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|目的もなく東大に入っても意味はない。本当に輝けるのは、いい意味での「オタク」だ!
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|大事なのは我が子を無条件で信じる「信頼」。「信用」しかできないのはとても危険
ベネッセ教育情報|引っ込み思案な子どもの「チャレンジ精神」を育むには[やる気を引き出すコーチング]
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|任せて、失敗させて、考えさせる。「困難を乗り越える力」を伸ばすには、放っておくのが◎
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「失敗を恐れない力」の育て方。子どもに「挑戦したい!」と思わせる、効果抜群な声かけ
ベネッセ教育情報|引っ込み思案な子どもの「チャレンジ精神」を育むには[やる気を引き出すコーチング]