2020.2.22

子どもに「バレエを辞めたい……」と言われたら? 親がかけるべき第一声は「○○○○」

子どもに「バレエを辞めたい……」と言われたら? 親がかけるべき第一声は「○○○○」

「可愛いチュチュを着て舞台で踊ってみたい」
「レオタードを着てバーにつかまってみたい」

――このように、華やかなバレエの世界に憧れる子どもは多いことでしょう。しかし、実際に習い始めると、「なかなかトウシューズをはかせてもらえない」「レッスンが厳しくてついていけない」といった壁にぶつかる子もいるかもしれませんね。

35年以上バレエ界の第一線で活躍してきた草刈民代氏は、自身のエッセイ本『バレエ漬け』で、「バレエの舞台は華々しいが、ダンサーの日常は地道なことの積み重ねだ」と述べています。憧れの世界の舞台裏には、さまざまな悩みや苦労があることが伺える言葉ですね。

では、もしも子どもから「バレエの練習がつらい」「バレエを辞めたい」と言われたら、親はどのように対応すればいいのでしょうか? 親ができる声かけや対処法について説明します。

子どもが「バレエを辞めたい」と言ったら、まずはこう声かけを

バレエに限らず、習い事には練習がつらい時期や辞めたくなる時期があります。小学館の子育てサイト『HugKum』が、子ども(0~10歳ぐらい)に習い事をさせている保護者115人を対象に調査したところ、46.1%と約半数の子が、一度は「習い事を辞めたい」と言ったことがあるとわかりました。

習い事が嫌になる時期というのは、ほぼ2人に1人が通る道。では実際に子どもがバレエなどの習い事を辞めたそうにしたら、親はどうしたらいいのでしょう? 『子どもの能力を決める 0歳から9歳までの育て方』の著者で、家庭教育の専門家・田宮由美氏は、子どもにまずは次のような声かけをすると良いといいます。

■「なぜ、辞めたいの?」と理由を聞く

「どうしてバレエのお教室に行きたくないの?」「なぜ、お稽古がつらいの?」など、まずは子どもがバレエの練習がつらいと訴える理由を聞いてあげましょう。

バレエの練習がつらい理由が「通うのに時間がかかり体力が持たない」「先生や友だちと合わない」であれば、レッスンの曜日を変えたり、別の教室を探したりすれば解決する可能性があります。「脚が上がらない」といったテクニック的なことであれば、親からも先生に相談することで解決の糸口が見つかるかもしれません。

人間関係の悩みを抱えている場合など、時には子ども側にも歩み寄りが必要なこともあるでしょう。しかし、まずは「そうだったのね」と共感することが大切だと田宮氏は言います。そのうえで、どうすれば改善できるのかを親子で考えていくのが理想的です。

子どもにバレエを辞めたいと言われたらどうするか02

■「よく頑張っているね」と子どもの努力を認める

「こんなに上達したんだね」「ここまでよく頑張ってきたね」など、子どものこれまでの頑張りを認めてあげましょう。たとえバレエが嫌になってしまっても、親から努力を認めてもらい褒められると、子どものやる気が復活することもあると田宮氏は言います。

「アン・オー(手のポジション)が指先まできれいね」といったように、具体的に褒めるとよりよいとのこと。そのためには、親もバレエにこれまで以上の関心を持つことが大切ですね。

■「発表会まで頑張ってみようか」と目標を話し合う

前向きな声かけをしても、子どものバレエを辞めたい意志が強いこともあります。しかし、「イヤなら辞めればいい」というのが当たり前になると、逃げ癖がつきかねません。そこで田宮氏は、辞める前に目標を設定して、それを達成したら辞めるように話し合うといいと言います。

バレエなら、「次の発表会まで頑張ろう」といったような目標を決めることができますね。目標達成の過程でスキルが向上すれば、もっと頑張りたいと考え直すこともあり得ます。特に、トウシューズをまだ履いたことがない子どもなら、初めてトウシューズを履くお許しが出たときこそ心境が変化するチャンス。「辞めたい」といくら強く思っていても、考えが変わる可能性はあるのです。

これらの声かけは、バレエの習い事に限らず有効です。子どもに習い事を辞めたい様子が見られたら、ぜひ実践してみてください。

子どもにバレエを辞めたいと言われたらどうするか03

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「上達できないから辞めたい」子には、レッスン外で親がサポートを

「バレエがうまくならない」「練習がつまらない」などの理由で子どもがバレエを辞めたがっている様子なら、親が練習のサポートをしたり、バレエのレッスンが好きになれるように働きかけたりすることで、子どもの気持ちは変わるかもしれません。

バレエの上達に必要なのは、お稽古場でのレッスンだけではありません。レッスン以外の時間で培った経験が能力を高めたり、バレエへの情熱を強くしたりする可能性があります。お父さん・お母さんがお子さんと一緒にできる、バレエの練習が好きになる対処法を説明しましょう。

■読書で集中力を高める

パリ・オペラ座バレエ学校などでバレエ教授法を学んだ千田裕子氏によると、レッスンの悩みで多いのは「コンビネーション(アンシェヌマン)がなかなか覚えられない」「体が思い通りに動かない」「すぐに反応できない」といったことなのだそう。レッスンを重ねてもこれらの悩みが解決されない場合、集中力が足りない可能性があると千田氏はいいます。

レッスンのときは、自分の意思で体をきちんと動かそうとしなければ、なかなかじょうずになりません。レッスンに集中できるかできないかが、あなたの上達に大きく影響するのです。

(引用元:千田裕子著(2009),『きれいをつくるバレエ習慣』, 新書館.)※太字は筆者が施した

頑張って練習しているつもりでも、うまくなったという実感がなければ、モチベーションが下がるのも無理はありませんよね。モチベーションが下がれば、集中力がさらに落ちて悪循環に陥ることも考えられるでしょう。だからこそ、子どもがバレエの練習に集中できるよう、親がサポートする必要があります。そのために千田氏がすすめる身近な方法は読書です。

文字や絵など、本から得た情報は脳を刺激し、考える力を高めます。考える力が高まると、レッスン中も「膝がゆるむ癖があるから、腰をまっすぐ伸ばすように意識しよう」といったように、自分で上達に必要なことを考えられるようになり、同じ失敗を繰り返さないようになります。このように、自分で考え、意識して体を動かすことこそが「集中力」であり、それを高めるには読書が有効だと、千田氏は言っているのです。

本を読みながら頭の中で情景を思い浮かべると、想像力がつき、バレエの表現力を高めることにもつながるので、一石二鳥ですね。

子どもにバレエを辞めたいと言われたらどうするか04

■五感を鍛え、表現力をつける

バレエに必要な表現力を養うには、日常生活で五感(視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚)を鍛えることも大切です。夜空を見上げる、川のせせらぎに耳をすませる……こうしたことでも子どもの五感は鍛えられると千田氏は言います。

たとえば、花に触れて花びらの柔らかさを知っていると、『ジゼル』に出てくる花占いの表現に役立ちます。このように、日常の体験がバレエに役立つこともあるので、練習がつらいときは少し足を止めて、五感を刺激する経験をさせてあげるのもよいでしょう。

より実践的なことをしたいなら、「マイム(身体や表情による表現)」の練習が有効です。『白鳥の湖』など有名な作品には長いマイムがあり、言葉に頼らないぶん、より高度な表現力が求められます。名門イングリッシュ・ナショナル・バレエ・スクールでは、友だち同士での「おはよう」のあいさつにもマイムを用いるほど重要視されているそうです。

ジャンプや回転と違い自宅でも練習しやすいので、「わたし・あなた」「愛」といった基本的な表現を子どもに見せてもらいましょう。子どもがマイムで何を表現しているのか、どんな感情を込めているのか、お父さん・お母さんが想像してみると、親子で楽しい時間が過ごせそうですね。

子どもにバレエを辞めたいと言われたらどうするか05

■バレエの名作を鑑賞し、作品について勉強する

バレエ講師の厚木彩氏は、多くの作品を積極的に見て、たくさんの踊りに触れることが大切だといいます。特に、『白鳥の湖』や『眠れる森の美女』『ドン・キホーテ』『ジゼル』といった有名な作品の見どころを知っておくことは、踊るうえでの必須項目とのこと。たとえば『眠れる森の美女』では、オーロラ姫が4人の求婚者からバラの花を受け取りながら踊るローズ・アダージオなどの見どころがあります。

これらの作品をスクールの発表会で見るのもいいですが、プロのダンサーが集まるバレエ団の公演で見てほしいと、前出の千田氏は言います。最高の舞台を見ることで、本当のバレエがどんなものか知ることができ、バレエを見る目が養われるためです。

また、緊張感あふれるプロの舞台を見てバレエ鑑賞のマナーが身につくと、会場全体の雰囲気を感じられるようになるとのこと。たとえば、演目によっては幕が下りるまで拍手をせず、余韻を楽しむこともあるのだそう。そのようにしてプロの舞台ならではの雰囲気を全身で味わうことは、バレエの上達に役立つだけでなく、バレエへの憧れの気持ちを再燃させることにもつながるでしょう。

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華やかそうに見える裏で、地味な練習や悩みも多いバレエの習い事。しかし、親の声かけや対処法によっては、子どもが改めてバレエの良さに気づき、より練習熱心になる可能性があります。もちろん、無理強いはしないように。子どもの様子を見ながら適切に対処してあげてくださいね。

ぜひ、親子でバレエの世界と向き合ってみましょう。

文/かのえかな

(参考)
草刈民代著(2006),『バレエ漬け』, 幻冬舎.
HugKum|子どもが「習い事を辞めたい」と言ってきたら・・・続けるべき?辞めるべき?対処法は?ママパパに徹底調査!
All About|子どもの習い事は無理にでも続けさせた方がいい?
ARUHIマガジン|「習い事やめたい! 」と言われたら!? 親がサポートする時のポイント
千田裕子著(2009),『きれいをつくるバレエ習慣』, 新書館.
ジェーン・ハケット著, 白川直世訳(2008),『Ballerina―バレエのためのステップ・バイ・ステップ・ガイド』, 文園社.
厚木彩監修(2017),『ジュニアのための バレエ上達 パーフェクトレッスン』, メイツ出版.