教育を考える 2018.6.29

子どもたちが国際社会で活躍するために必要な「話すちから」 竹内明日香さんインタビュー【第2回】

編集部
子どもたちが国際社会で活躍するために必要な「話すちから」 竹内明日香さんインタビュー【第2回】

日本の子どもの「話すちから」を育てるために、文京区をはじめとした幼稚園~大学に「Speak up!」プログラムを提供し続けている、一般社団法人 アルバ・エデュ

代表の竹内明日香さんインタビュー第1回目では、「アピールの場で大切なこと」「プレゼンはテクニックでなく、練習がカギを握っているということ」を語っていただきました。

第2回目となる今回は、子どもたちがグローバル社会にデビューしたとき、絶対に必要となるスキル「話すちから」の具体的な内容を、わかりやすく教えていただきます

相手が100人でも1人でも必要な「話すちから」

――国際化した社会を背景に学校の授業も少しずつ変化していると感じています。クラス全員で意見を出し合ったり、皆の前で発表をしたりという機会が以前よりも増えていますよね。「話すちから」とは、プレゼン力やスピーチ力ということなのでしょうか?

竹内さん:
プレゼンテーションというと、1対100というようなイメージがありますよね。「話すちから」には、もちろんそのような大勢の人の前で話す際に発揮される力、という意味も含まれているのですが、それだけではなくて、1対1での対話も、あるいは考えたことを一人で言語化する「ひとりごと」も、すべてひっくるめて「話すちから」だと考えています。

たとえば、面接のときに自分のことをきちんとアピールすることだったり、親に買ってほしいものをしっかり伝えられるかなどもそうですし、とりとめのない考えが浮かんだとき、自分の考えはこうだ、と論理立てて整理することも、全て「話すちから」なのです

ですから、プレゼンテーションを基本の型として教える授業が定番ではありますが、もう少し幅広い場面で必要なちからだよ、という意味もあって「話すちから」としています。

――では、「話すちから」がどんなスキルなのか具体的に教えていただけますか?

竹内さん:
「話すちから」は、大きく分けると【考えるちから】【伝えるちから】です。そしてプレゼンテーションの場ではさらに【見せるちから】が加わります。

プレゼンに必要な「ちから」を図にするとこんな感じになりますよ。


考える>伝える>見せる>Q&Aのピラミッド。「伝えるちから」の重要性が一番高いと思っていた編集部、予想が外れました……

――【伝えるちから】と【考えるちから】の大きさがぜんぜん違います!

竹内さん:
そう、この「考える」というところが一番重要なのです。だからこそ、発表を控えた子どもから、勝負プレゼンを控えたビジネスマンまで、一番時間を使ってほしいのはこの「考える」プロセスの部分です誰かになにかを伝えるときは、「自分が聞き手に伝えたいことは何か?」「相手がもっとも喜ぶ情報は何か?」「相手を納得させるにはどうしたらいいか?」などをまず考えることが大切なんです

それには、まず「もっともイイタイコト」が何かを研ぎ澄ます作業が必要です。学校の授業では、あらかじめテーマを先生方の方で設定してしまうことも多いのですが、子どもたち自身が、この「テーマを自分で選ぶ」という作業をすることで学べることも多いと感じています。

ある程度テーマが絞られたら、子どもたちには、学校の先生や図書館で司書さんと会話しながら調べ学習を展開するなど、情報を収集する姿勢を早期に作ってほしいです。現代は情報へのアクセスが簡単になりましたから、ネット上を探しても多くの情報は得られますし、街を歩いていて見つけた看板、テレビの広告、いろいろなところに情報は転がっています。

あちこちから集めた情報を人にわかりやすく伝えるために、いかに整理するか、そして独自の視点や意見をどう加えるか、内容を整理して考えを深める作業が、次のステップになります。自分の中でストーリーを組み立てる「論理力」と、ものごとを多面的にとらえて、自分自身の意見を磨く「思考力」が必要になります。たくさんの情報を整理して論理立てて人に説明できる人が、社会人になっても活躍するよ、という話は学校の授業でも話しています。

自分の「意見」を考える際に、なぜそこに思い至ったのか、自分のアイデンティティとは何かを考えることも大事です。日本人は、あまり自分の考えについて話さないですよね。政治に関する立場も物事に対する意見もあいまいにしておくことが、社会の潤滑油だと思われている節がある。

そしてネットの力によって、極端な意見が力を込めて喧伝され、またそれが炎上、などということも子どものうちから見ている。そんな背景からか、自分の意見を言うということに、ものすごくためらいがあるのではないでしょうか?

自己紹介を深めるという題材であったり、さらには、将来自分がどんなキャリアを積みたいのか、この先何をしたいのか、というようなテーマは、小学校高学年から大人まで、普遍的な関心事です。

学校からの授業の依頼も、企業からの研修依頼も、このようにアイデンティティを確認しながら、自分が情熱を持って語れるテーマを題材にしたものを多くご提供していますが、似たようなご依頼が多く、また事後の評判も良いことの背景は、このような【考えるちから】を鍛えることが、「話すちから」を高めることの根幹だからだと思います

日本人は、声が小さいから損をしている?

竹内さん:
次に【伝えるちから】というのは、声の出し方や身振り手振りなどの「表現力」や、相手と視線を交わし、臨機応変に言葉を選び、相手の心をつかむ「対人力」も含まれます。

アルバ・エデュの【伝えるちから】の講義では、最初に立ち方、呼吸の仕方から始め、発声練習をもっとも大切にしています。

――発声練習で「話すちから」がつくのですか?

竹内さん:
発声は大切ですよ! 日本語って、顔の筋肉をあまり使わずに話せてしまう言語なんです。スピーチコンテストを見に行っても、日本人は声が小さい。なんと、声楽の世界でも「日本人は一番声が小さい」と言われているみたいです。

その原因は複合的で、日本人の声帯は一般的に短くて細いこと、日本語は口をあまり開かなくても話せてしまう言語であり、腹式呼吸が必要ないこと、田植えをしていたから、狩猟民族と違ってそんなに大きな声は必要なかったなんて説もあります。そんな日本語独特の発声をしていると、いざ誰かになにかを伝えるとき、伝えることがとても難しくなってしまうんです。

だからまず子どもたちには、声が小さいことで損をしていることっていっぱいあるんだぞ! と理解してもらいたいですね。

――発声練習をすると本当に声が変わるのでしょうか?

竹内さん:
変わりますよ。それも毎日練習すると、だいぶ変わっていくんですね。滑舌をよくしたり、声を太く出したり、響かせるような声を出したり、そういう練習をしていれば確実に声は変わります。子どもから大人まで、毎回、発声練習の時間は大切にしています。

あとは「情熱」ですね。子どもたちだけでなく私たち世代もですが、誰かに自分の主張を激しく伝える、なんていう経験がないですよね。そういう場をもっと作るべきだと思いますし、アルバ・エデュではその体験ができるような授業を行っています。

――最後に【見せるちから】とはどんなことでしょう?
スライドソフトやフリップなど、ビジュアルで見せる力です。高校生や大学生、企業の研修では、事象をグラフで示したり、わかりやすく図示したり、二軸で表現したり、という応用編も講義に入れています。

大人も子どもも、いざプレゼンテーションとなると、すぐにスライド作成に取りかかることが多いのですが、これは明らかに落とし穴です。「百聞は一見に如かず」というのも真ですし、一発の図解で面倒な説明が省けるというのも事実です。ただ、あまりにそこに重きを置き過ぎた結果、本来の「話す内容」や「伝える」という行為に手が回らないという例が多すぎます。

先ほどの絵で、この部分を小さく、しかも最後の過程に入れているのは、ビジュアルというのは、考えたり、伝えたりという作業をあくまで補佐する役割だ、という思いからです

プレゼンでは、最後の「Q&A」をうまくこなすちからも必要となりますが、それはまた改めてお話ししましょう。

これらの企業研修や学校向けの授業は、古代ギリシャ以来の「話すこと」「スピーチ」「プレゼンテーション」に関する教科書や、海外の学習指導要領・時間割を参考にしつつ、ビジネスの現場で必要とされる力も付くように、という要素も意識して構成しています。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック大会招致に向けてのスピーチでは、「オモテナシ」や、「Vote for Japan」と連呼するようなプレゼンの「技」が話題になりました。これらは私はどちらかというと、最後のお化粧だと思っています。

2013年のIOC総会でのスピーチはいずれも中身が周到に考え抜かれていて、そこが聴衆であるIOC委員に響いたことが今回の招致成功につながったと考えられます。しかしながら、そのお化粧のようなテクニックばかりが注目されがちなので、「プレゼンて、そんなスキルですよね?」と勘違いされてしまうことも多いのです……、いえいえ!「話すちから」は、【考えるちから】が根幹なのです! 小手先のスキルではありません!

【プロフィール】
竹内明日香(たけうち・あすか)
東京大学法学部卒業。日本興業銀行(現みずほフィナンシャルグループ)にて国際営業や審査等に従事したのち独立、2009年に海外事業支援と情報発信支援を行うアルバ・パートナーズを設立。さらに子どもたちや若者たちの話す力を伸ばすべくアルバ・エデュを設立。プレゼン研修や学校向け授業、女性活躍や働き方改革に関するセミナーを行っている。音羽の森オーケストラ「ポコアポコ」主宰、公立小元PTA会長で3児の母。

『スポーツとプレゼンで学ぶ リーダーシップ』
この夏、「スポーツゲーム×話すちから」で子どもがみるみる変わる!

今、スポーツ界ではコミュニケーションの重要性に注目が集まっています。集団の中でのスムーズなコミュニケーションにより、個々の信頼関係が生まれ、本来持っている個々の力が発揮されるからです。結果として集団の結束力が高まり、競技力の向上に繋がっていきます。

今回は身体を動かしながら、目標を達成するためにどのように協力をしなければならないか? そして、言葉の重要性を感じられるプログラムになっています。前半部分は、サッカーコーチの視点から小学生に必要な神経系統のトレーニングを行い、身体を動かす基礎を身に付けます。後半部分には、いよいよコミュニケーションの重要性に気が付くプログラムを実践していきます。

スポーツの場面だけでなく、仲間に対する声の掛け方、タイミング、言葉の選び方、他者への思いやりなど、日常生活でも新しい気付きを感じられるプログラムです。
(大槻邦雄)

日時:2018年7月27日(金)
【1・2年生】 9:00~10:00(30人)
【2年生以上】10:15~12:00(30人)

会場:文化シャッター体育館(2階BXホール)
東京都文京区西片1-17-3

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【今後のアルバ・エデュの養成講座 開設日時】
●ご自身でプレゼン講座を開催してみたい方向け☛
Speak up! 認定アソシエイトインストラクター資格(I-Aコース)養成講座
・2018年9月27日(木)10:00-12:00、13:00-16:00
 2018年9月29日(土)10:00-12:00、13:00-16:00 計2日10時間

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お問合せはこちらまで info@alba-edu.org

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最終回の次回は、親子・夫婦の会話が深まる「オヤトコライブ」や、「リーダーシップを育む「スポーツ×プレゼン」など、アルバ・エデュの授業内容をくわしく教えてもらいます。