あたまを使う/教育を考える/国語 2019.7.4

AI時代を生き抜くためには「読解力」が必須である! 開成高校校長と数学者の答え。

編集部
AI時代を生き抜くためには「読解力」が必須である! 開成高校校長と数学者の答え。

「AIに仕事を奪われる時代はすぐそこにきている」
「今の子どもたちが社会に出るころには、人間にしかできない仕事なんてなくなる」

AIの進化のスピードに直面したり、ニュースで科学技術の進歩を目の当たりにしたりするたびに、そんな不安を感じることもあるのではないでしょうか。

たしかにAIは、私たちの生活を大きく変え、働き方や仕事の質まで変えています。子育て中の私たちにとっても、子どもの将来を思えば不安を覚えずにはいられませんよね。今回は、AI時代に身につけておきたい能力について考えていきましょう。

AIで仕事がなくなるってほんと?

社会学者の鈴木謙介先生は、AIで仕事がなくなるという考え方は大げさだと述べています。なぜなら、人類の長い歴史の中で、仕事の生産性を上げる技術が何度登場しても、結局はそれに対応する新しい仕事が増える、ということを繰り返してきたからです。

また、AIと人間には決定的な違いがあることも理由のひとつだといいます。AIは基本的に、膨大な情報から一定のパターンを見つけ出し、自動化するのが強みです。一方で、ひとりひとり違う個性や特質に合わせて、臨機応変に対応していくようなことは苦手としています。AIが苦手なことーーそれには “人間らしさ” が顕著にあらわれていますね。

たとえば発想力。教育改革実践家の藤原和博さんは、AIに代替されない基礎的人間力と、AIにはできない自由な発想を生み出す “柔らかい頭” こそ、これからの未来に欠かせない力だといいます。

正確性や処理スピードの速さにおいては、人間とAIとの差は今後ますます広がっていくでしょう。しかし、自分でアイデアを生み出し、あらゆる状況に臨機応変に対応できる力こそ、まさにAIが人間にはかなわない能力なのです。

これからの時代に必要な能力は?

2016年、世界が直面する問題について各国で議論する世界経済フォーラム(通称ダボス会議)にて、『2020年に労働者に求められるスキル』が発表されました。結果は次の通りです。

1位 複雑な問題解決能力
2位 批判的思考力
3位 創造力
4位 人材マネジメント力
5位 他者との協調性
6位 感情的知性
7位 判断力
8位 サービス志向
9位 交渉力
10位 認識の柔軟性

1位の複雑な問題解決能力については、まず身のまわりの小さな問題を自分で解決する習慣をつけることで身につきます。論理的な思考によって問題を解決へと導く力は、これからますます求められるでしょう。

5位の他者との協調性は、いわゆるコミュニケーション力。今後多くの業務を機械が代用するようになったとしても、仕事をしていくうえで人間同士のやりとりは不可欠です。

6位の感情的知性は、まさにAIにはない人間らしい特性です。人の心理は機械のように一定ではありません。相手の感情を敏感に察知して対応する能力は、これからも必ず求められるでしょう。

8位のサービス志向は、挑戦力に置き換えられます。新しいことに挑戦する意欲を高めるには、同時に自己肯定感も高くなければいけません。

読解力がカギになる!

ベストセラー『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』(東洋経済新報社)によれば、読解力がないために教科書の意味が正しく理解できていない子が増えているといいます。

開成高校の柳沢幸雄校長は、その要因として「SNS投稿やLINEメッセージなどの短文に慣れきってしまっていること」を指摘します。読解力をつけるには長い文章を読み込み、長い文章を書くトレーニングが必要なのです。

「世の中の仕事には、大きくわけて長い文章を読んで書く必要のあるものと、その必要がないものがあります。(中略)AIに奪われないのは、コミュニケーション能力や臨機応変さといった能力が求められる仕事とされていますが、私は、それに加えて、長い文章を読み、長い文章を書く力が必要な仕事も含まれると考えています」

(引用元:PRESIDENT Online|“メールが短い人”はAIに仕事を奪われる

データ入力などのマニュアル化された単純作業は、もうすでにAIやロボットで代行している会社も多いでしょう。しかし、報告書やプレゼンテーションの資料作成をする場合、顧客データの分析をしたり専門書を読んでリサーチしたりしなければならないこともあるはずです。さらに、ある程度長さのある論理的な文章にまとめる必要もあります。読む分量も書く分量も長くなると作業が複雑化し、たとえAIでもスムーズにこなすのは難しいでしょう。

つまり、これから求められる読解力とは、長い文章を読み、長い文章を書く力なのです。そのためには、読書や読み聞かせも大切ですが、柳沢先生は子どもが話すことが最も大事だといいます。

話し言葉で表現したとき、きちんと相手に伝わるのは論理的な話し方です。そのときに5W1H『いつ』『どこで』『だれが』『なにを』『どのように』)の要素を入れて話すことを意識させるだけで、文章の論理構成はしっかりとしたものになるはず。親子の何気ない会話でも、よりわかりやすく伝わりやすい表現を使うことを繰り返していくうちに、読解力や文章力もぐんぐん伸びていきます。

また、国立大学付属小学校の松尾英明先生は、「わが子をAIに負けない人間に育てている親の特徴」を次の5つにまとめています。

(1)何が正しいか、子どもに自分で判断させて決めさせる。
(2)まずは自分で挑戦させて、見守る。
(3)失敗を認め、やったこと自体を認める。
(4)子どもの言動に向き合う。聞く。
(5)子どもを尊敬する。

ここでもやはり、子どもの話を聞いてあげることが挙げられています。松尾先生によると「家庭での会話に満足していない子どもは、自分のことばかり話して人の話を聞けなくなっている」とのこと。親が不在がちだったり、「忙しいからあとで」と話を聞いてもらえなかったりすると、自分のことも他人のことも人として認められなくなってしまうのです。

まずは落ち着いて話を聞いてあげる環境を用意してください。子どもの発言にしっかりと耳を傾け、共感し、詳しい説明を求め、感想を述べてあげることを意識すれば、子どもの「聞く力」、「話す力」、さらには「読解力」まで向上させることができるでしょう。

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AI時代はすでに到来していますが、人間だからこそこなせる仕事はまだまだ数多くあります。わが子の将来のために私たち親ができるのは、しっかりと話を聞いてあげること。そして、柔軟な思考と対応力を高める手助けをしてあげることです。

(参考)
Study Hacker|「AIで仕事がなくなる」は大げさ。“自分は変われる”というマインドがあれば生き抜いていける
AERA dot.|子どもたちがAI時代を生き抜くために必要な「5つの力」とは?
洋泉社MOOK(2018),『これからの未来を生き抜く できる子の育て方』,洋泉社.
PRESIDENT Online|“メールが短い人”はAIに仕事を奪われる
PRESIDENT Online|10年後に「食える子」の親の共通点5