「なんでうちの子は、こんなに慎重なの」
「兄弟なのに、性格が全然違う」
「私と正反対で、どう接していいかわからない」
同じ家で同じように育てているのに、初めての公園に走っていく子と、親の足にしがみついて動かない子がいる。片づけを一度言えばやめる子と、五回言っても手を止めない子がいる。育て方は同じつもりなのに、その違いははっきりと目に見えます。
じつは、こうした違いには、生まれたときから子どもに備わっている「気質」が関わっていると考えられています。
9つの気質の詳しい解説は、こどもまなびラボの「我が子はどのタイプ? 個性がわかる「9つの気質」の組み合わせから、子どもを伸ばす方法が見えてくる!」にあります。ここではその解説を、親御さんが手を動かして確かめられる27問のチェックリストにし、結果ごとの接し方を一枚の表にしました。
目次
「性格」は育っていくけれど、「気質」は変わらない
「もっと明るくなってほしい」「人見知りをなおしてあげたい」。その願いが子どもの気質とぶつかると、親のほうが苦しくなります。
子どもに明るく元気に育ってほしいと願う親は多いものの、そもそも明朗活発になれない人もいます。性格は最初から固定されたものではなく、成長とともに、学校や社会での役割に合わせて何層にも足されていくもの。一方、その性格のいちばん中核にあるのが、持って生まれた「気質」です。性格は変えられても、中核にある気質を変えるのは難しいといいます。(東海大学文化社会学部教授、芳川玲子先生)*1
📖 研究でも、こう言われています
アメリカの精神科医トーマス博士らは、子どもたちを乳児期から青年期まで追いかける調査を行ない、人間には9タイプの気質的な特徴が、幼少時の段階ですでに備わっていることを明らかにしました。誰もがこの9つの気質を<強・中・弱>の異なるレベルで持ち合わせていて、その組み合わせが「その子らしさ」になります。*2
親がイライラするときは、必ずと言っていいほど頭のなかに「理想の子ども像」を描いているもの。しかし、その理想像は子どもの気質とは異なるかもしれません。だからこそ、子ども本来の気質を理解し、気質に合わせたコミュニケーションをとることが大切です。(NPO法人ハートフルコミュニケーション代表理事、菅原裕子さん)
つまり、変えるべきなのは子どもの気質ではなく、親の「接し方」のほう。そのためにはまず、「うちの子はどの気質が強く、どの気質が弱いのか」を見える化しましょう。

27問で、わが子の「9つの気質」を見える化する
9つの気質それぞれに3問ずつ、合計27問です。ふだんのお子さんの様子を思い浮かべて、当てはまるものに印をつけてください。「ときどき」ではなく「たいてい」そうだ、と言えるものだけを数えるのがコツです。気質の名前と定義は、前出の記事の9分類に合わせています。
1. 活動の活発さ(活動性)を見る3問
身体の動きがアクティブか、おとなしいか。動いている時間の長さと、動きの激しさに表れます。
【活動の活発さ】
□座っているより、動き回っている時間のほうが長い
□家のなかでも走ったり跳んだりして、動きが大きい
□「静かにして」と言っても、身体のどこかが動いている
2. 集中力の持続性(注意の逸れやすさ・注意の幅と持続性)を見る3問
ひとつのことに没頭できるか、気が逸れやすいか。
【集中力の持続性】
□好きな遊びを始めると、声をかけても気づかないほど没頭する
□ひとつの遊びや作業を、飽きずに長く続けられる
□周りで物音がしても、やっていることを中断しない
3. 粘り強さ(行動の可変性)を見る3問
行動を変えさせたり止めさせたりするのに、どれだけの働きかけが要るか。
【粘り強さ】
□「やめなさい」と一度言っただけでは、やめない
□できないことがあっても、すぐには投げ出さない
□言い出したら、気持ちを変えるのに時間がかかる
4. 新しい環境への反応の仕方(新しい刺激に対する接近、回避の傾向)を見る3問
初めての場所、初めての人、初めてのものに出会ったとき、自分から近づいていくのか、避けたり逃げたりするのか。
【新しい環境への反応の仕方】
□はじめての場所でも、自分から入っていく
□知らない人に話しかけられても、もじもじせずに答える
□見たことのないおもちゃや食べものに、まず手を伸ばす
5. 規則正しさ(生理的な規則性)を見る3問
睡眠、食事、排泄といった身体機能のリズムが規則的か、ルーズか。
【規則正しさ】
□毎日ほぼ同じ時間にお腹がすく
□眠くなる時間が、だいたい決まっている
□トイレのリズムが安定していて、外出の予定が立てやすい
6. 変化に対応する順応の速さ(順応性)を見る3問
新しい状況や環境、人間関係に、どれくらいスムーズになじめるか。
【変化に対応する順応の速さ】
□予定が急に変わっても、切り替えて次のことに取りかかれる
□進級やクラス替えのあと、新しい環境にすぐなじむ
□旅行先や祖父母の家でも、いつもどおり食べて眠れる
7. 五感の敏感さを見る3問
音、光、気温、肌ざわり、痛みといった刺激にどれくらい敏感か。膝から血が出ても平気で遊ぶ子と、尻もちだけで泣く子がいます。
【五感の敏感さ】
□服のタグや縫い目、靴下のゴムを嫌がる
□大きな音や、まぶしい光にすぐ反応する
□小さな傷や、ちょっとした痛みで泣く
8. 喜怒哀楽の激しさ(反応の強さ)を見る3問
うれしい、悲しい、悔しいといった感情を、どれくらい強く外に出すか。
【喜怒哀楽の激しさ】
□うれしいときは、全身で喜びを表す
□泣くときは、しくしくよりワンワンと大泣きする
□怒ると声が大きくなり、周りがすぐに気づく
9. ベースの気性(機嫌のよさ)を見る3問
日常の大半をどんな気分で過ごすか。物事をポジティブにとらえがちか、ネガティブにとらえがちか。
【ベースの気性】
□朝起きたとき、たいてい機嫌がいい
□嫌なことがあっても、しばらくすると引きずらない
□初めてのことや失敗を、「まあいいか」と受け流せる

当てはまった数で、強・中・弱の「傾向」を読む
9つの気質ごとに、印のついた数を数えてください。読み方は次のとおりです。
ここで注意したいのは、この数は「点数」ではなく「傾向」だということです。「3つ当てはまったから活発な子に決まり」と確定させるものではなく、「うちの子は活発さが強めで、順応性は弱めのようだ」と輪郭をつかむための目安。日によって答えが変わると感じた気質は、いったん「中くらい」と読んでおきましょう。なお、このチェックリストは前出の記事の9分類をもとに本記事で作成した目安で、医学的な診断や心理検査ではありません。
また、「強め」が優れていて「弱め」が劣っている、という意味でもありません。五感の敏感さが弱めなら、転んでも泣かずに遊び続けられるでしょう。9つの強弱が、その子ごとに違う形で組み合わさったものが「個性」なのです。
試しに、結果を一文にしてみてください。「粘り強いけれど、環境の変化に敏感ですぐ泣きがち」「飽きっぽくてルーズだけれど、いつも機嫌がいい」。言葉にすると、「できないこと」ばかりが目についていた子どもの姿が、「そういう気質の子」として見えてくるでしょう。

気質がわかれば、接し方は9通りに変わる
「親がどうあるべきか」ではなく、「どうしたら子どもとよい関係が築けるか」という視点から子育てを考えることが大切で、そのためには子どもの気質を理解することが欠かせないといいます。(東海大学文化社会学部教授、芳川玲子先生)*3 前出の記事でも紹介しているように、気質そのものは変えにくくても、親が注意深く見てあげたり、経験値を高めてあげたりすることで、「できる」ことは少しずつ増えていきます。
次の表は、9つの気質それぞれの「強め」と出た子、「弱め」と出た子への接し方の一覧です。「中くらい」の子には、その日の様子に近いほうを選んでください。
「場慣れ」「小さなゴール」「10分前行動」は、前出の記事でも紹介した関わり方の例です。共通しているのは、子どもを変えようとせず、環境と経験の与え方を変えていること。接し方の側を気質に寄せることで、子どもの「できる」は少しずつ増えていきます。
五感が敏感な子への「まず受け止める」と通じる関わり方は、性格を5つの特性でとらえる「ビッグファイブ」を扱った記事でも紹介されています。こどもまなびラボの「人間の性格は5つの特性から構成されている――お子さまはどのタイプ?」では、不安や緊張を感じやすい子には「心配だよね」「不安だよね」と本人の気持ちを受け入れ、共感的に聞くことが勧められています。親がわかってくれたと感じることで、子どもの気持ちは軽くなるそうです。(教育評論家、親野智可等先生)*4

変えるのは子どもではなく、接し方のほう
「なんでうちの子は、こんなに慎重なの」。その答えのひとつは、「新しい環境への反応」が弱めの気質にあるのかもしれません。慎重さは直すべき欠点ではなく、その子に最初から備わっていた気質のひとつ。慎重でなくなる日を待つ必要はありません。
親御さん自身にも、9つの気質はあります。自分と子どもの気質が正反対だと、相手の反応が読みにくく感じることもあるでしょう。それでも、子どもをひとりの個人として見ると、その子らしさを活かした対応が見えてきます。
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27問すべてを一度に活かさなくてかまいません。今日はいちばん気になっている気質をひとつだけ選んで、表のなかの接し方をひとつ、試してみてください。
よくある質問(FAQ)
Q. 何歳くらいの子どもから使えますか?A. トーマス博士らの調査は、9つの気質が幼少時の段階ですでに備わっていることを明らかにしています。このチェックリストの質問は、幼児から小学生の日常場面を想定して書いていますので、その年齢帯であれば使えます。
Q. 日によって当てはまる数が変わります。どう読めばいいですか?A. 答えが揺れる気質は、「中くらい」と読んでおいてください。この数は点数ではなく傾向をつかむための目安なので、一日の様子で確定させる必要はありません。一週間ほど様子を見て、「たいてい」そうだと言えるものだけを数え直すと、輪郭がはっきりしてきます。
Q. きょうだいで結果がまったく違いました。同じ接し方ではだめですか?A. 気質は親子でもきょうだいでも、それぞれ違うものを持ち合わせています。にぎやかな場所が好きな子と静かな場所を好む子では、同じ声かけをしても通用しません。接し方の表を、それぞれの子の結果に合わせて別々に見てください。「上の子にはこれで通じたのに」と感じるときは、気質の組み合わせの違いが関わっているのかもしれません。
Q. 「弱め」が多いと、心配したほうがいいのでしょうか?A. 強弱は優劣ではありません。活動性が弱めなら落ち着いて取り組め、五感の敏感さが弱めなら小さなことで動じにくくなります。9つの強弱がその子ごとに違う形で組み合わさったものが個性であり、どの組み合わせにも、その子なりの伸ばし方があります。接し方の表の「弱めの子には」の欄を、その子の伸ばし方として読んでください。なお、感覚の過敏さやかんしゃくなどで、園や家庭での困りごとが続く場合は、かかりつけの小児科や自治体の子育て相談窓口に相談してみてください。
*1: かもめの本棚 online|「気質」に合わせてゆったり子育て 第1回 兄弟でも性格が違うのはなぜ?
*2: こどもまなびラボ|我が子はどのタイプ? 個性がわかる「9つの気質」の組み合わせから、子どもを伸ばす方法が見えてくる!
*3: かもめの本棚 online|「気質」に合わせてゆったり子育て 第2回 生まれながらに持っている「気質」とは
*4: こどもまなびラボ|人間の性格は5つの特性から構成されている――お子さまはどのタイプ?









