あたまを使う/非認知能力 2025.9.22

「頭も性格もいい子」は家ではダラダラしている!?  親がイライラしなくていい理由

「頭も性格もいい子」は家ではダラダラしている!?  親がイライラしなくていい理由

学校、塾、習い事、部活動…現代の子どもたちのスケジュールは、まるで大人顔負けの忙しさ。しかし、そんな「頑張りすぎる子ども」たちにいま、深刻な問題が起きています。それは 「家でくつろげない」 という現象です。

じつは、学校で優秀な成績を収め、先生からもほめられるような子どもほど、家では思いっきりダラダラしていることが多いのをご存知でしょうか。今回は、この一見矛盾するような現象の背景と、子どもの将来にとって「くつろぎ時間」がなぜ重要なのかを解説します。

現代の子どもたちの「時間貧困」が深刻化

数字で見る子どもたちの現状

東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所が実施している最新の「子どもの生活と学びに関する親子調査2023・2024」をはじめとする各種調査から、現代の子どもたちの多忙な実態が明らかになっています。

  • 小学生の約8割が何らかの習い事をしている
  • 家庭での親子の関わり時間が減少傾向にある
  • 子どもたちの生活時間に対する課題が継続的に指摘されている

これらのデータは、子どもたちが学校、塾、習い事などで多忙な日々を送り、家庭でゆっくりと過ごす時間が限られている現状を示しています。放課後も休日も、常に何かのスケジュールに追われる生活では、心身を休める時間が圧倒的に不足しているのです。

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なぜ「ぼーっとする時間」が子どもの成長に必要なのか

「ぼーっとする時間」は自発性と創造性の源泉

教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は、「ぼーっとする時間」は人間の成長にとても重要なものだと述べています。

「暇だな」「なにをして過ごそうかな」と子どもははじめて自発性を発揮します。そして、「じゃ、本を読もう」「映画を観よう」などと考える。そこで、「なにをしているときに自分は幸せなのか」と知る。それが「人生の羅針盤」になるのです。

(引用元:StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには “決定的に足りない” 時間がある

この「人生の羅針盤」を持たずに成長すると、将来どんなに優れた能力があっても、それを活かす方向性を見つけられない大人になってしまう可能性があります。

家でくつろぐことは、たくましく生き抜いていくための決断力や自立性にも影響するといえるでしょう。先の見えない社会を生きていく子どもたちにとって、「ぼーっとする」ことは非常に重要なのです。

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脳科学が証明する「何もしない時間」の効果

また、テレビやパソコンなどの外部からの刺激をシャットアウトしてぼーっとすると、脳が「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という活動をするようになり、いままでに蓄積した知識を前頭葉にたぐりよせる訓練になるそうです。精神科医の樺沢紫苑氏いわく、このDMNによって情報が整理されることで、新しい発想が生まれやすくなるそう。子どもの発想力を伸ばすためにも、ぼーっとする時間は重要なのです。

「自宅でくつろげない子」が将来困るワケ3

「家でダラダラ=心身の回復時間」という新しい視点

親の「不安」が子どもの時間を奪っている

子どもが家でくつろげないのは、塾や習い事で多忙な日々を送っていることが関わっています。その背景には、親の「自分自身の不安を解消したい」という思いがあるようです。

前出のおおた氏いわく、親は子どもにたくさん習い事をさせることで「この子はちゃんと生きていけるだろうか……」という自分自身の不安を解消しようとしているのだそう。

しかし、これから子どもが生きていく時代は、親世代の価値観では通用しない部分も多いため、親が「こうしたほうがいい」と考えて子どもに習い事などをさせることは、あまり意味がないとも言えるそう。習い事は、子ども自身が本当にやりたいのかどうかをしっかりと判断することが大切です。

「自宅でくつろげない子」が将来困るワケ4

子どもが家でくつろげるために親ができること

最後に、子どもが家でくつろげるようになるためのポイントを紹介します。

1. 子どものスケジュールを見直す

前述の通り、習い事や塾などで多忙な日々を送ることは、子どもが家でくつろぐ時間を減らしてしまいます。子どもと相談しながら、習い事や塾、学童保育の日程を見直してみましょう。親の仕事の都合などでどうしても難しい場合は、休日には目一杯ぼーっとする時間を与えることが大切です。

2. だらけることは「子どもの心身の回復」であることを理解する

子どもが家でダラダラしているのを見ると心配になりがちですが、これには重要な理由があります。京都大学の研究では、慢性的なストレスが子どもの自制心を司る外側前頭前野の発達に悪影響を与えることが明らかになっています。学校では多くのルールや期待に応えなければならず、子どもたちは常に緊張状態にあります。家でのダラダラ時間は、そのような緊張から解放される大切な回復時間なのです。適度な休息がないと、ストレスが蓄積され、かえって子どもの発達に悪影響を与えてしまいます。

国立大学附属学校・小学校教諭の松尾英明氏いわく、「学校で、成績だけでなく人格的な面も含めて『本当にすばらしい』と賞されるような子どもは、じつは家庭でダラダラしていることが多い」のだそう。松尾氏は、子どもは本来自由で制約のない存在であるため、ルールの多い社会では心身ともに “不自然な状態” を求められている状態だと言います。そこから回復するためには、家でぼーっとする時間を過ごすことが重要であるとのこと。ぼーっとすることは、ただ怠けることとは違い、子どもにとって大切な時間であることを理解しましょう。

3. 子どもの甘えを受け入れる

家でリラックスできる環境をつくるために、現役小学校教師の松尾英明氏が提案する具体的な方法があります。子どもが「抱っこして」と言えるかどうかは重要な判断基準です。小学校中学年以降でも、この要求には可能な限り応えてあげましょう。十分に甘えさせてもらった子どもは、エネルギーを蓄え、外の社会へ出て自立します

また、抱きしめながら「大好きだよ」と伝えることで、効果は倍増します。中学生や高校生にも効果的です。重要なのは、この「大好き」が「○○するから大好き」ではなく、存在そのものを全肯定する無条件のメッセージであることです。これが子どもの健全な自尊心を育み、家庭を安心して帰ってきたくなる場所にします。

***
家でぼーっとくつろぐ時間は、子どもの成長にとって非常に大切なものです。日々のスケジュールや子どもへの接し方を見直し、くつろぐ時間をたっぷりと確保しましょう。

(参考)
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|発想力がぐんぐん伸びる! 子どもの脳を休ませる “ぼんやりタイム” が必要な理由
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|「教育虐待」のやっかいな実態。今の子どもには “決定的に足りない” 時間がある
京都大学総合研究推進本部|子どものこころの発達を見守り、健やかな成長を支援する。「子どもが未来を選べる社会の実現:未来開拓学」
プレジデントオンライン|なぜ頭のいい子は家でダラダラユルユルか
ベネッセ総合教育研究所|東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究 「子どもの生活と学びに関する親子調査2023」