あたまを使う/非認知能力 2025.9.17

「よく笑う子」と「あまり笑わない子」カギは5歳の “笑いのピーク期” ! 脳と心を育てるために親ができること

「よく笑う子」と「あまり笑わない子」カギは5歳の “笑いのピーク期” ! 脳と心を育てるために親ができること

「くだらないダジャレばっかり言ってる」「何が面白いのか、いっつも笑っている……」——そんな4〜6歳の姿、ちょっと愛おしくもあり、ときには困ってしまうことはありませんか?

でも、その “笑い” こそが子どもの脳を育てる重要な栄養なのです。特に5歳前後は、笑いのピーク期。笑うことで未来につながるある3つの力を育んでいることが、最新の脳科学研究で明らかになっています。

そもそも大人が “くだらない” と思ってしまいがちなそのダジャレや「言葉遊び」自体が、じつは高度な知的活動。言葉のルールを理解したうえであえて言葉を面白く操るという、大人顔負けの頭脳プレーなのです。

逆に「わが子はあまり笑わないかも」「ダジャレも理解していないかも」という方も大丈夫。まだまだ脳も心も発達段階。笑いの回路は親子の関わりで必ず育てられます。今回は、“笑い”の重要性や家庭でできる「知育的 “言葉” 遊び」を紹介します。

5歳前後が「笑いのピーク期」——笑いの発達を知っておこう

笑いの発達段階とは?

笑いには「発達段階」があります。生後3〜4か月で「初笑い」がスタート。「いないいないばぁ」で笑うのは、社会的笑いの第一歩。大人の声かけや表情に反応する、人とのつながりを求める本能的な笑いです。その後、歩けるようになると、転んだり、変な動きをしたりする「身体的ユーモア」で大笑い。また、言葉が出始めると「まんま」「ブーブー」など、音の響きだけで笑うように。これは言語発達の重要なステップでもあります。

その後、就学前期(4〜6歳)になると、「バナナが転んでバナナナ〜!」みたいなダジャレで爆笑したり、「お母さんがワンワンって言ったらどうなる?」なんて想像で大笑い

特に5歳児は笑いの天才。トルコ・アクデニズ大学の研究(2023)にり、さまざまなタイプのユーモアに対して、5歳児が最も強い笑い反応を示すことがわかっています。この時期の子どもは、大人が「そんなことで?」と思うような些細なことでも、心の底から楽しめる特別な力をもっているのです。

5歳はユーモアを理解する入り口——友達作りにも影響

また、この頃になると社会的ユーモアが理解できるようになります。たとえば、「スラップスティック(転んだり、ぶつかったりするドタバタ劇。『トムとジェリー』のような物理的な面白さ)」や「ナンセンス(『ゾウが空を飛ぶ』『パンがしゃべる』といったあべこべな状況)」で友達と一緒に笑い合えるようになるのです。

この頃の笑いは、小学生以降の「友達との関係づくり」の重要なツールになっていきます。たとえば、クラスの人気者の口癖を真似して笑いを取ったり、共通の話題で盛り上がったり、仲間内だけで通じる笑いで絆を深めたりするように。相手の反応を見ながら、文脈や相手に合わせた笑いが上手に使えるようになっていくのです。

笑い合うこどもたち

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笑いが脳を育てる! 未来につながる子どもの3つの力

笑いは子どもの成長の支えとなります。脳科学的にも大きな役割があり、子どもの成長を後押しすることが研究で示されています。

1. レジリエンス(心の回復力)が育つ

笑うとき、脳内で「幸福ホルモン」とも呼ばれるβエンドルフィンが分泌されます。これには痛みやストレスを和らげる作用があり、その瞬間の気持ちをパッと明るく切り替えてくれます。

そして幼児期に「失敗しても笑ってやり直す」という体験パターンを繰り返すことで、「つらいことがあっても、笑えば気持ちが楽になる」という感覚が身につき、困難にぶつかったときに立ち直るレジリエンス(心の回復力)の土台になります。

2. 社会性・協調性が育つ

スイス・チューリッヒ大学の脳科学研究ではユーモアをよく理解する子は、「心の理論」(相手の気持ちを推測する力)が高いということが示されました。つまり、よく笑う子は、相手の表情を見て「この人は本当に困っているのか、それとも面白がっているのか」を判断できる力があるということなのです。

先述したように、笑いは、小学生以降の「友達との関係づくり」の重要なツールになっていきますこのように「相手の気持ちを読む力(社会性)」と「一緒に笑い合える力(協調性)」が十分に育っていれば、子どもは友達との関係をスムーズに築けるようになります。

3. 探究心と創造性が高まる

笑いの本質は「ズレ」や「予想外」を楽しむこと。ナンセンスなジョークや逆さま言葉で大笑いできるのは、「普通はこうなるはず」という知識をもったうえで、それを外した展開を面白がっているからです。

じつはこのとき、脳では前頭前野(創造的思考や柔軟な発想をつかさどる部分)や側頭葉(言葉や意味の理解をつかさどる部分)が活発に働きます。ユーモアを理解することは「知識をただ覚える」だけでなく、「既存の知識を組み替える」高度な脳活動なのです。

さらに、笑ったときに分泌されるドーパミンは「やってみたい! もっと知りたい!」という学びの動機づけを高めます。だからこそ、子どもが「くだらない!」と笑える体験は、探究心や創造性の芽を育て、未来の学びを支える原動力になるのです。

並んで笑う子どもたち

おうちで爆笑、知育的 “言葉” 遊び

先にあげた3つの力を効率よく育てていくためにも、「笑いのピーク期」である5歳前後の時期を逃してはもったいないですよね。もし今お子さんがダジャレにあまり反応しなくても大丈夫。笑いの回路は親子の関わりで必ず育てられます。

言葉の響きや意味のズレ、状況の意外さを理解して笑えるこの時期は、”言葉遊び” での脳育がピッタリ。この黄金期の力を家庭で最大限に活かす、知育的 “言葉” 遊びを3つご紹介します。

1. 日常のハプニングを笑いに変える

子どもがおにぎりをこぼしたら「あ〜! おにぎりが逃げていっちゃった〜」と親子で実況中継してみましょう。ポイントは、子どもが本当に困っているのではなく「あれ?」という表情をしているときを狙うこと。痛がったり本気で怒ったりしているときではなく、ちょっと驚いた顔や困った顔の瞬間を一緒に笑うのです。

こうした体験を重ねることで、子どもは「失敗も笑いに変えられる」ことを自然に学び、日常の小さなトラブルを前向きに受け止められるようになります。

2. 想像力を広げる「ありえない話」

「もしゾウが空を飛んだら?」「おにぎりがしゃべったら何て言う?」こんな現実離れした想像話で親子で盛り上がってみてください。

じつはこの種の「ナンセンス遊び」は世界共通。世界中の子どもたちが、同じように「ありえない話」で大笑いします。自由な発想を「それ面白いね!」と受け止めることで、子どもの創造性と自信が同時に育ちます。

3.「あべこべ」言葉遊び

「青いバナナ食べる?」「巨大なアリが歩いてるね」「おやすみなさい」を「おはよう」と言ってみたり。普通とは違う色や大きさ、または反対の言葉で話しかけてみましょう。

子どもは「バナナは黄色だよ!」「アリは小さいよ!」「今は朝だから『おはよう』でしょ!」と得意げに訂正してくれます。この遊びは「正しい答えを知っているからこそ、間違いに気づける」という言語理解の証拠。楽しみながら語彙力と観察力が自然に伸びる遊びです。

***
子どもにとって「笑い」は、ただ楽しい時間を過ごすためのものではありません。脳と心を大きく育てる栄養であり、ストレスに負けない力・人とつながる力・学びを楽しむ力を支える土台です。親子でたくさん笑い合う経験が、これからの人生をしなやかに、そして豊かにしてくれます。特に5歳の「笑いのピーク期」をぜひ逃さないようにしてください。

今日の何気ないやり取りとその笑顔こそが、子どもにとって最高の未来へのギフトになります。

(参考)
nobico|親が笑うとなぜ「頭がよく性格がいい子」に育つのか?
Frontiers in Cognition|Children’s recognition of slapstick humor is linked to their Theory of Mind
Problems of Education in the 21st Century|Humor development in preschool and primary school children in Turkiye