教育を考える/インタビュー 2025.6.27

子どもの才能は「5つの領域」にあった。わが子の「強み」の見つけ方・伸ばし方【才能診断つき】

子どもの才能は「5つの領域」にあった。わが子の「強み」の見つけ方・伸ばし方【才能診断つき】

「わが子になにか『才能』があるなら、しっかりと伸ばしてあげたい」。親であれば誰もがそう考えるでしょう。しかし難しいのは、子どもにどのような才能があるかわからないということです。そこでアドバイスをしてもらったのは、米ハワイ州でバイリンガルスクールを運営する教育家の船津徹さん。独自に開発した、「才能診断」を紹介してくれました。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

子ども自身は、自らの「才能」に気づいていない

そもそも「才能」とはなにかというと、心理学の見地から言えば「技能的な特性」となります。手先が器用、リズム感がいい、絵心がある、言語力に秀でている、計算が速いなど、特定の分野において優れたスキルを発揮できる特性です。

ただ、そういった才能をもっている子ども自身は、そのことを「あたりまえ」だと思っています。音感がある子どもは、まわりの子もみんな音感があると思っているわけです。手先が器用でブロックを与えたら大人もびっくりするような作品をつくる子どもだって、それがすごいことだと認識していません。

そこでポイントになるのが、親や教育者たちです。子どものもつ才能に気づき、それを伸ばしてあげる作業が必要なのです。ただ、才能といっても多種多様であり見抜くのは簡単なことではありません。せっかくの子どもの才能に親が気づけないことだって珍しくないのです。そこで、私が開発した「才能診断」を試してください。

あまり深く考えず、子どもに該当すると思われる数字に○をつけてみましょう。それぞれの合計点が0〜8点の場合はその才能は低め、9〜16点の場合は高いと言えます。

才能診断テスト

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子どもの才能は、「5つの領域」から見極める

これは、ハーバード大学の認知・教育学者であるハワード・ガードナー教授が提唱する「多重知能理論」を参考にした診断方法です。教授は、「人間の知能=複数の才能の強弱の組み合わせ」と定義しており、この理論の本質は「人間の才能を複数の領域から見極め、学力や技能の習得に活かすこと」にあります。

ただ、教授は人間の才能を8つに分類していますが、子どもの特性をより見極めやすくするため、近いといえる才能をひとつにまとめるなどして、以下の5つに分類しました。

  1. 【STEM的才能】数字に強い、パズル、ボードゲームなどが得意
  2. 【言語・博物学的才能】本が好き、話が好き、動植物や自然が好き
  3. 【運動的才能】体を動かすのが好き、スポーツが得意、手先が器用
  4. 【音楽的才能】歌が好き、音楽に反応する、リズム感がいい
  5. 【アート的才能】絵やデザインを描くのが好き、造形やクラフトが好き

では、それぞれの才能をさらに伸ばすために、意識すべきこともお伝えしましょう。「STEM」とは、科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の頭文字をとった言葉です。「1. STEM的才能」が強い子どもには、オセロや将棋、囲碁などのボードゲーム、トランプ、UNOなどのカードゲームで遊ぶ機会を増やすことが効果的です。小学生以上の子どもであれば、PCを与えてWordやExcel、音楽や動画の編集ソフトなどの使い方や簡単なプログラミングを教えてあげれば、一気に才能を開花させるかもしれません。

「2. 言語・博物学的才能」をもつ子どもには、いわゆる勉強が得意な子が多いという特徴があります。多様な分野の本、図鑑、百科事典などを家庭に置いておくだけで、その子は勝手に知識を積み上げてくれるはずです。また、動物園や水族館、博物館、科学館などで実物を見る機会をつくることで、さらに知識を深めていくでしょう。外国語の習得能力も高いので、英語のアニメを見せたり英語の本を与えたりしてもいいと思います。

「3. 運動的才能」が強い子どもに対しては、体を使った遊びを多く取り入れることがいちばんです。親子でキャッチボールをする、かけっこやサッカーをする、あるいはローラースケートやスケートボードといったバランス感覚を養う遊びを取り入れてみましょう。

サッカーのドリブル練習をする子どもの足元

親の願いを優先して「わが子らしさ」を無視するのはご法度

「4. 音楽的才能」は、一生使える強みです。楽器や歌が得意であれば、たとえ外国語は苦手でも世界中の人たちとコミュニケーションを取ることができます。その才能を伸ばすには、子ども向けの歌はもちろん、外国の歌や多様なジャンルの音楽をBGMとして家庭で流してみましょう。もちろん、ピアノや弦楽器、笛などを与えてもいいですね。

「5. アート的才能」をさらに伸ばすには、子どもが自由に絵を描けるように画材を豊富に用意してあげましょう。折り紙やマグネットブロック、積み木などを与えるのも手です。さらに、本人が気に入っている絵を額縁に入れて飾ってあげれば、「もっと上手な絵を描こう!」というモチベーションの向上につながります。

ただし、子どもの才能を伸ばしてあげようと考えるとき、ひとつだけ注意してほしいことがあります。それは、子どもの「気質」を無視してはいけないということ。気質とは、「個人がもつ、土台となる性質」であり、それは一生変わらないものです。気質が活発な子どもは大人になっても活発で、気質がおとなしい子どもは大人になってもおとなしいのです(『「気質」に着目すると「わが子らしさ」が生まれる。一生変わらないからこそポジティブに伸ばそう』参照)。

運動的才能が強いのに、気質はおとなしくてひとりで静かに本を読むのが好きという子どもがいるとします。「せっかくの運動的才能を伸ばしてあげよう」と、親が無理やり集団スポーツをやらせたらどうですか? その子にとっては苦痛でしかなく楽しみを見出すことができませんから、その才能が大きく伸びる可能性は低くなってしまいます。

そのような子どもには、ひとりで練習できる個人スポーツ(水泳、体操、陸上、ゴルフ、スキー、スケートなど)や手先の器用さや反射神経を要するスポーツ(アーチェリー、ビリヤード、ダーツ、ボウリングなど)に従事させてあげると、実力をメキメキと伸ばしていくことができるでしょう。

「子どもの才能を伸ばしてあげたい」と考えることは、もちろん悪いことではありません。でも、その思いを優先するあまり、気質という「わが子らしさ」を無視しないようにくれぐれも注意してください。気質は一生変わらない、その子の本質のようなものですから、優先しなければならないのはもちろん気質です。才能については、「気質とかみ合っていればベスト」「ラッキー」くらいの感覚で考えてほしいと思います。

船津徹先生

「強み」を生み出す育て方
船津徹 著/ダイヤモンド社(2023)
強みを生み出す育て方

■ 教育家・船津徹先生 インタビュー一覧
第1回:子育てのゴールは「自立」にあり。グローバル教育の第一人者が「根拠のない自信」を重視する理由
第2回:「気質」に着目すると「わが子らしさ」が生まれる。一生変わらないからこそポジティブに伸ばそう
第3回:子どもの才能は「5つの領域」にあった。わが子の「強み」の見つけ方・伸ばし方【才能診断つき】

【プロフィール】
船津徹(ふなつ・とおる)
1966年8月18日生まれ、福岡県出身。明治大学経営学部卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育会社に勤務。その後独立し、米ハワイ州に移住。2001年、ホノルルにTLC for Kidsを設立。世界で活躍できるグローバル人材を育てるための英語教育プログラム「TLCフォニックス」を開発。同プログラムは全米25万人の教師が加盟する「OpenEd」で第2位にランクイン。25年間で延べ5000名以上のバイリンガルを育成。同校の卒業生の多くがハーバード大学、イェール大学、コロンビア大学、ペンシルバニア大学、東京大学など世界トップ大学へ進学しグローバルに活躍している。著書に『強みを生み出す育て方』(ダイヤモンド社)、『世界標準の子育て』(ダイヤモンド社)、『世界で活躍する子の<英語力>の育て方』(大和書房)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。