芸術にふれる/アート 2024.10.7

親子で楽しむアートの冒険——『意味がわかるとおもしろい!世界のスゴイ絵画』(Gakken刊)

長野真弓
親子で楽しむアートの冒険——『意味がわかるとおもしろい!世界のスゴイ絵画』(Gakken刊)

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「子どもと美術鑑賞なんて難しそう……」そう思っていませんか? アートは子どもの想像力を育む宝庫。利用しない手はありません。有名な絵画には、子どもたちを虜にするおもしろいストーリーや秘密が隠されているのです。

この記事を読めば、アート鑑賞がもっと楽しくなること間違いなし。さあ、親子一緒にアートの世界を覗いてみましょう。

アート鑑賞のメリットがありすぎる!

アート鑑賞は子どもにどんな影響を与えてくれるのでしょうか。まずは、アート鑑賞のメリットを考えてみます。

【メリット1】子どもの想像力と創造性を向上させる

アート鑑賞には正解がありません。受け取り方は人それぞれ。だからこそ、子どもたちは自由に想像をふくらませることができます。アートに触れることで、五感は磨かれ、創造性が高まるのです。作品にインスパイアされて粘土遊びをしたり、絵を描いたりする表現活動も、創造力を豊かにしてくれます。くわえて、「観察力」「思考力」「コミュニケーション力」など総合的な人間力を発達させる効果があるとされ、「対話型鑑賞(Visual Thinking Strategies)」など、新しい教育法としてアート鑑賞の活用は着実に進んでいます。*1

【メリット2】文化や歴史への理解を深める機会になる

アートには、必然的に時代背景や地理的情報が反映されます。たとえば、描かれる服装や建物、風景にその国や時代のヒントが潜んでいます。子どもたちは、興味をそそられれば、そのアートを糸口として知識を深めていくことが可能です。また、多様な作品からグローバル感覚を体験できるのも、大きな魅力のひとつ。歴史の知識や文化の多様性など、アート鑑賞は子どもたちの学びに新鮮な刺激を与えてくれます。*2

【メリット3】親子間コミュニケーションの促進になる

アート鑑賞を通してコミュニケーション能力を身につけることもできます。アメリカで注目されている「対話型鑑賞(Visual Thinking Strategies)」はその効果を利用した教育法です。繊細な子どもの心を理解するには、親子の会話がとても大切なのは言うまでもありません。そこで、日常会話のトピックにアートを活用してみるという方法です。家族で美術館に行ったり、絵本を読んだりするとき、「これは何に見える?」などと子どもに問いかけてみましょう。感想を伝え合うことで、子どもは「人それぞれ違う見方がある」と気づくことができ、コミュニケーション力とともに、共感力や表現力も育まれていくのです。*1

親子で博物館鑑賞をしている

「木のおもちゃ」が知育におすすめな理由。五感を刺激し、集中力を育んでくれる!
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リアル美術館だけじゃない! アート鑑賞の方法

アート鑑賞が子どもの成長によいとわかっても、「美術館に行くのはやっぱり敷居が高い……」と感じる人は多いかもしれません。ましてや子ども一緒となると、なおさらでしょう。でも大丈夫。アート鑑賞には、美術館に行く以外にも方法があります。家庭で簡単にできる方法もご紹介しましょう。

【アート鑑賞の方法1】美術館に行く

アート鑑賞の王道は、やはり美術館に行くこと。「本物」がもつオーラに叶うものはありません。たくさんの「本物」に触れることで、子どもたちは未知のものに出会い、感性を刺激されます。さらに、アートにはいろいろな表現方法があることを知ります。自分がいる世界は想像以上に広いのだと気づけるでしょう。*3

☆おすすめ美術館をチェック☆

『アートと子どもの距離が近い! 生まれ変わった「東京都現代美術館」で遊ぼう』
『感性を解放しに行こう! 横浜美術館「子どものアトリエ」で “みる・つくる・まなぶ” 体験を。』
『“呼吸する” 長崎県美術館は、公園遊びの延長で子どもがアートと出会う場所』

美術館の館内

【アート鑑賞の方法2】アート作品を本で楽しむ

「近くに美術館がない」「忙しくて行く時間がない」―そんなときでも、家庭でアート鑑賞するという方法があります。家庭で名画を鑑賞するメリットは、好きな絵を好きなだけ眺められ、気になる部分を何度でもじっくり観察できることです。いろいろなスタイルの作品を一度に見比べられるため、自分の好みを発見しやすくなるでしょう。

そして何より、周囲を気にせず自由なペースで鑑賞できるのが大きな魅力。家庭での名画鑑賞は美術館に負けないくらい、豊かで充実した体験を子どもたちにもたらしてくれます。

まずいろいろなアート作品を本で観てみましょう。そのなかに子どもの興味をひくものがあれば、「本物」を観に美術館に行くきっかけにもなるはず。最近は、子ども向けのアート本も充実していて、名画をわかりやすく解説する良著もありますので、ぜひ手に取ってみてください。次項では、おすすめのアート本を詳しくご紹介します。

名画を家で鑑賞!『意味がわかるとおもしろい!世界のスゴイ絵画』

『意味がわかるとおもしろい!世界のスゴイ絵画』は、75点の世界と日本の名画を一度に鑑賞できる充実の一冊です。その魅力は、なんといっても、簡潔でありながら卓越した作品解説にあります。作品の注目点、作者の人物像、時代背景などについてのユーモアを交えたわかりやすい解説は秀逸。子どもにもわかりやすくアート史を俯瞰できる年表や、画家たちの「妄想対談」など、裏話的にアートのおもしろさを伝える工夫も満載です。

実物の迫力を伝えるためにこだわったという高品質な図版や印刷のおかげで、絵の隅々、細かいところまでしっかりと観ることができるのもポイント。「本物」以上の鑑賞を可能にしているかもしれません。 この本は、子どもたちが名画の魅力を深く理解し、アートの世界を楽しむためのすぐれたガイドとなるでしょう。

『意味がわかるとおもしろい!世界のスゴイ絵画』(Gakken)
すごい絵画表紙

これだけスゴイ本、中身が気になりますよね。少しだけお見せしましょう!

P.14-15 猫の形をよく見ると……歌川国芳《猫の当て字(かつを)》
猫が好きすぎて猫の仏壇までつくった江戸時代の浮世絵師・歌川国芳が、 猫を組み合わせて「かつを」という文字を描いたシュールな作品です。
猫の当て字

P.32-33 フクザツな三角関係!? フラゴナール《ぶらんこ》
映画『アナと雪の女王』にも出てくる、ぶらんこで遊ぶ男女を描いた名画で、 ロマンチックな情景に見えるのですが、じつはドロドロの男女関係がモチーフとなっています。
フラゴナールの絵

P.38-39 よーく見ると全員同じ顔!? クノップフ《記憶》
ベルギーの画家クノップフが7人の女性を描いた絵なのですが、女性は全員同じ顔。そのモデルは画家の妹マルグリット。 クノップフは妹への愛が強いあまり、妹ばかりをモデルにしていたという、ちょっとこわい?作品です。
クノップフの絵

P.80-81 恐怖! 自分にしか聞こえない!? ムンク《叫び》
ムンク本人が叫んでいるように見えるこの絵ですが、 ムンクの後ろを歩く2人組は突然の叫び声に驚いた様子はありません。 ムンクは叫んでいるのではなく、幻聴に耳をふさいでいたのだと言われています。
ムンクの叫び

P.82-83 モフモフの子犬が推せる……! 円山応挙《仔犬図》
わんこ大好きの江戸時代の画家・円山応挙が、子犬を観察して描いた名作。 思わず触りたくなるようなかわいさがあります。
子犬図

P.154 モデルに受け取りを拒否された! ローランサン《マドモアゼル・シャネルの肖像》
フランスの女性画家ローランサンが、あのココ・シャネルに依頼されて描いた肖像画。 シャネルに「なんか違う」と受け取りを拒否され、ローランサンがブチ切れたと言われています。
シャネルの肖像画

著者・佐藤晃子さんからのメッセージ

ダ・ヴィンチの《モナ・リザ》、ムンクの《叫び》、葛飾北斎の《冨嶽三十六景》――世界の名画が教養として注目される昨今、「なんだか難しそう」「見方がわからない」と感じる人もいるでしょう。先入観をもたず、感じるままに鑑賞することこそアートの本質といわれますが、一方で、ある程度の知識がないと、どう感じてよいのかわからない、という人もいるのではないでしょうか。

そこでこの本では、教養として知っておきたい75の名画を厳選し、それぞれの作品や画家に関する知識を紹介しています。「ダリの時計はどうしてぐにゃりと曲がっているの?」「見返り美人図はなんで顔がよく見えないの?」このような作品に隠された謎から、「妹が好きすぎて妹ばかり描いた」「モデルに肖像画の受け取りを拒否された」などの個性豊かな画家のエピソードまで、名画を楽しむヒントが盛りだくさん。また、ほとんどの作品の図版を、見開きをまたいで大きく掲載しているので、実物さながらの迫力を味わうことや、細部をじっくり観察することができます

芸術の秋に、ぜひ親子で名画鑑賞へ出かけてみませんか? 鑑賞のおともに、この1冊を役立てていただけましたら幸いです。

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芸術の秋、アート本を手に取って、気が向いたら美術館に足を運んで、気軽に親子でアートの世界に一歩踏み出してみましょう。

(参考)
(*1)参考:STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|人間の知の基本フレームは、小学生のときに形成される!? 新たな美術鑑賞法「対話型鑑賞」が育む7つの力
(*2)参考:佐藤晃子(2023),『意味がわかるとおもしろい!世界のスゴイ絵画』, Gakken.
(*3)参考・カッコ内引用元:STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|子どもの表現力には限界がある。だからこそ「本物」のアートに触れてほしい