子どもの健全な身体と心を育むために欠かせない毎日の食事。
おいしい食事と楽しい食卓は、家族の幸せの象徴でもあります。
しかし、ほとんどの親御さんは“子どもの食事”について何かしら悩みを抱えているものです。それはきっと、「毎日ちゃんとした食事を作らなきゃ」「好き嫌いなく何でも食べさせなくちゃ」という親としての責任感や、周囲からのプレッシャーも関係しているのではないでしょうか。
そこで、tokko先生こと管理栄養士の新生暁子(しんじょう・ときこ)先生が、子どもたちの食事のお悩みをズバリ解決! 親御さんの気持ちがふっとラクになる答えがきっと見つかるはずです。
第1回目は、大事な大事な【食事のマナー】についてです。
幼稚園に通う息子がいます。食事のときのマナーが気になるものの、まだ子どもだし……と見守っているところです。でも来年小学校に入学するにあたって、今から少しずつ正しいマナーを身につけさせたいと思い、今回tokko先生に相談させていただきました。
たとえばお箸の持ち方。幼児用のトレーニング箸は上手に使えていたのですが、普通のお箸になるとうまく使えません。また食事中にすぐ飽きてしまい、集中が続きません。おしゃべりしたり、食べ物で遊び始めたりと、食べ終わるまでに時間がかかってしまいます。どうしたらいいでしょうか?
tokko先生:
お子さまの成長と共に、食事のマナーをしっかりと躾けたいと思われることは当然のことだと思います。また、成長するにしたがって他の人からどんな風に見られるかということが気になってきますよね。
将来のことを思えばしっかりと教えた方がいいと思うものの、お子さまの年齢を考えれば、早すぎるのではないか、理解できないのではないか、注意するあまり食事を楽しめない子どもになるのではないか……と心配は尽きないものです。
そういう時は、ご自身のことを少し思い出してみてはいかがでしょうか?
私は食事のマナーに関しては、とても厳しく躾られました。両親や祖父母だけではなく、私が成長するタイミングで近くにいてくださった方たちが見守っていてくれたように思います。そのおかげで、お箸や器の持ち方、食べ方のマナーについては、とくに問題なく過ごしております。
やみくもにマナーを教え込むのではなく、徐々に理解できるように、そして楽しみながら身につけられるようにしてみましょう。
- お子さんの年齢にあわせたマナーを
- 沢山のことを1度に注意せず、できることを1つずつ増やして、褒めてあげる
- 挨拶をしっかりとする(「いただきます」「ごちそうさま」など)
- 教えたり叱ったりするのではなく、一緒にやって、例をみせる(お箸の使い方・持ち方、器の持ち方、食事中の音、ながら食べ など)
- テレビ、スマートフォンなどは消し、会話を楽しむ(これはほとんど大人のせい)
- お手伝いをさせる(ありがたみを知るチャンス)
tokko先生:
いくら大人が食事のマナーは重要だと思っても、子どもが理解できるかどうかは別もの。年齢にあわせた食事マナーを見つけるようにして、小学校低学年頃にはマスターできるように段階を踏むようにしましょう。
その際、1度に沢山のことを教えても全てできるわけではありません。できないことを注意するよりも、できることを褒めてあげる回数を増やしてみましょう。
きっと、お子さんが最初にできるようになるのは挨拶かもしれません。これは、大人のマネをすることから始まります。ですから、大人が先にしっかりと挨拶をして、子どもがマネするように導いてください。
マナーを子どもに教える時は、目線を一緒にして、一緒にやってみることが重要です。『人の振り見て、わが振り直せ』とはよく言ったもので、お子さんを見ながら、ご自身を振り返るいいチャンスかもしれません。子どもは親の一挙手一投足を見ているもの。指導する目線から、一緒にやってみる意識でいると、お子さんも楽しみながらマナーを身につけることができるのではないでしょうか。
とくにお箸のマナーや器の持ち方、食事中の音については、一緒にやってみるといいかもしれませんね。
今回はお箸のマナーについて詳しく説明しましょう。まず、お箸の持ち方は写真の通りです。
基本の持ち方を理解したうえで、お箸の使い方にも注意が必要です。大人でも無意識のうちにやってしまいがちなので気をつけましょう。
- 刺し箸:料理をお箸で突き刺して取る
- 探り箸:お箸で食器の中をかきまわして食べ物を探る
- 迷い箸:お箸を料理の上で行ったり来たりさせる
- 寄せ箸:お箸で食器を引き寄せる
- 涙箸:お箸の先から汁をポタポタ落とす
ご自身で振り返ってみていかがですか?
また、お子さんがテレビを観たりスマートフォンやゲームをしたりしながら食事をする原因のひとつは、大人の影響です。ですから、お子さんと一緒の時は、テレビやスマートフォンなどに気を取られないように注意が必要ですね。
最後は、お子さんにできるだけ多くのお手伝いをしてもらいましょう。危なっかしいと思って取り上げるのではなく、お子さんが怪我をしない程度に、何でもお手伝いをさせましょう。それにより、食卓のマナーを身につけることができます。
例えば、写真のように器を並べて食卓を整える際、手前の左側にご飯茶碗、右側に汁椀を置くことや、お箸の並べ方など。単にお手伝いをさせるのではなく、このタイミングをチャンスにしてみましょう。
お子さんの食事マナーは、放っておいても自然に身につくものではありません。しかし、性急に身につけるものでもありません。年齢に沿った正しいマナーが身につくように、大人も一緒に食事を楽しみながら伝えていきませんか?