あたまを使う/国語 2018.3.6

あなたの家には本が何冊ありますか? 本を読む子どもと読まない子どもの分かれ道

編集部
あなたの家には本が何冊ありますか? 本を読む子どもと読まない子どもの分かれ道

昨今人々の読書離れは深刻化しており、1ヶ月に1冊も本を読まないという人も少なくありません。それはインターネットの普及によって「情報収集はネットで。読書は効率が悪い」というイメージが拭えないことも一因のようです。

はたして読書とは「情報収集のための手段」なのでしょうか? また、これほどまでに娯楽が増えた現代において、実際に子どもたちが読書をする機会は減ってしまったのでしょうか?

子どもの読書習慣のきっかけは大人がつくる

大人になった今、みなさんは1ヶ月に何冊の本を読みますか? 趣味として読書を楽しむ人は10冊以上読むかもしれませんね。しかし一方で、本を読む習慣がない人においては、この半年間で1冊も読んでいない……ということも珍しくはないでしょう。

もちろん「スマートフォンの普及によって本を読む時間が奪われてしまった」という意見もあります。スマートフォンを使用している時間と読書時間を比べたら、前者の方が圧倒的に長いという人がほとんどでしょう。

しかし、読書習慣が身についている人は、どんなに年齢を重ねても、どんなに便利なものが増えたとしても、本によって得られるものは何物にも代えがたいことを知っています。そしてその読書習慣とは、大人になってから一朝一夕で身につくものではありません。子どものころからの積み重ねが、本を読む習慣を形成すると言っても過言ではないのです。

そもそも今の子どもたちにとって「読書」とはどのような位置づけになっているのでしょうか。文部科学省が2017年に実施した子どもの読書活動に関する調査では、普段あまり本を読まない小学生にその理由を聞きました。

1位 他にしたいことがあったから
2位 読みたいと思う本がないから
3位 普段から本を読まないから

この結果から、普段から本を読まない・読む習慣がない=知的好奇心が育まれにくい=自分が何に興味があるのかわからない=読みたいと思う本がない、という循環が生まれているとも読み取れるでしょう。

次に、本を読むきっかけとなっていると思うことを聞いてみると、

1位 家族が一緒に本を読んだり図書館や本屋に連れて行ってくれたりすること
2位 家の中で手に取りやすいところに本が置かれていること
3位 学校で行われている読書に関する取り組み(朝の読書など)

という回答でした。小学生は大半の時間を家庭と学校で過ごしているため、家族や学校の指導から大きな影響を受けていることがわかります。とくに、家の中で本を読む家族がいることや、普段から一緒に図書館や書店に連れて行ってもらうことが、子どもの読書習慣を培っているようです。

ちなみに、中高生の回答で最も多かったのは「テレビや雑誌、ネット上での宣伝や広告」であり、小学生と比べるとぐんと世界が広がり、家族から影響を受けることは徐々に減っていることがわかります。だからこそ、子どもが小さいうちは、親や先生など身近な大人が読書環境を整えてあげることが大切ですね。

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子どもたちの読書環境のいま

では実際に、多くの子どもたちは読書から遠ざかってしまっているのでしょうか?

全国学校図書館協議会と毎日新聞社が共同で毎年実施している読書調査によると、小学生が1ヶ月間に読む本の平均冊数は11.1冊となっています(2017年調査)。また、1ヶ月間に1冊も本を読まない「不読者」は、たったの5.6%という結果も出ています。少し意外だと思いませんか?

特筆すべきは同調査を2000年に実施したとき、1ヶ月間の平均読書冊数は6.2冊、不読者の割合が16.4%となっている点です。つまり2017年の時点で、2000年から比べて圧倒的に平均読書冊数が増え、不読者は1/3にまで減っているのです。この17年の間に、子どもたちを取り巻く読書環境はどのように変わっていったのでしょうか。

1か月間の平均読書冊数の推移

不読者の推移

きっかけとなったのは、読書活動の推進とその支援を目的に文部科学省が「子どもの読書活動の推進に関する法律」(2001年)を制定したことです。その基本理念として次の定義を示しています。

子どもの読書活動は、子どもが、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにし、人生をより深く生きる力を身に付けていく上で欠くことのできないものであることにかんがみ、すべての子どもがあらゆる機会とあらゆる場所において自主的に読書活動を行うことができるよう、積極的にそのための環境の整備が推進されなければならない。(第2条)

(引用:文部科学省|子どもの読書活動の推進に関する法律

その一環としての取り組みに「朝の読書活動の推進」が挙げられます。いわゆる「朝読」と呼ばれるこの活動は、朝の時間帯に10分程度の読書時間を設定して、生徒に読書の習慣を持たせることを目的としています。2015年には朝読を実施している小学校は全国で16,967校にものぼり、ますます広がりを見せています。

このように、国や自治体が子どもの読書活動に積極的に取り組んだ結果、数年後には小学生の読書量が格段に増えました。またそれだけではなく、子どもたちに読書習慣が身につき、読書の楽しさや奥深さを知るきっかけとなっていることがわかります。

読書を習慣づける「朝読書」の重要性

齋藤孝氏は著書『読書力』で朝読書の効果についてこのように述べています。

現在、「朝の読書」運動が全国的に広まっている。朝の十分から二十分間を、本を読む時間に当てるという運動だ。読む本を指定しない、感想文を要求しないなど、制約の少ない形で本を読む時間だけを確保する。この運動は、読書を習慣づけるのに実に効果的だ。(中略)この朝の読書運動によって、読書が習慣づけられるのは、実に教育の本道と言える。

(引用:齋藤孝著(2002),『読書力』,岩波書店.)

読書を「強制」と感じさせないように、自由に好きな本を読ませることが大切なのがわかりますね。大人はつい世間で評判が良い本や、子どもの知能を発達させるのに役立つといわれるような本を選んでしまいがちです。しかし、子どもにとって大切なのは、読書によって好奇心が刺激されたり、探究心が満たされたりすることなのではないでしょうか。

子どもが自分で読みたいと思う本が見つけられるような環境づくりこそ、読書を習慣づける最初の一歩になるはずです。

***
ご自分のお子さんを「本が嫌いなタイプ」だと思い込んでいませんか? 実は本を読む子・読まない子の違いは、周りの環境が大きく影響しているのです。たまには親子で一緒に図書館へ出かけて、本との出会いを楽しみましょう!

(参考)
文部科学省 子ども読書の情報館|子供の読書活動の推進等に関する調査研究(概要版)
公益社団法人 全国図書館協議会|「第36回学校読書調査」の結果
文部科学省|子どもの読書活動の推進に関する法律
ITmediaビジネスONLINE|「子どもの読書離れ」は本当? 「実はもっと読んでる」の背景
朝の読書推進協議会|「朝の読書」全国都道府県別実施校数一覧
齋藤孝著(2002),『読書力』,岩波書店.