芸術にふれる/デザイン 2018.2.28

子どもたちのデザインを商品化!『デザイン教室りねあ』當原容一郎先生に聞いた、「発想力」と「デザイン料」

編集部
子どもたちのデザインを商品化!『デザイン教室りねあ』當原容一郎先生に聞いた、「発想力」と「デザイン料」

「発想力」と「プレゼン力」を重視し、子どもたちのデザインをなんと「商品化」してしまうという、『こどもデザイン教室りねあ』

現役デザイナーでもある、當原容一郎代表に、デザインについて、そしてレッスンについて、お話をうかがいました。

描いて作って満足? 商品化はもっともっとおもしろい!

——さっそくですが、當原先生がアート教室ではなく、デザイン教室を始めたきっかけを教えてください。

當原先生:
「デザイナーは芸術家、特別な世界」という誤解をされがちですが、デザインは、メーカーや広告、WEBや出版など多くの分野で必要とされる一般的な技術職のひとつなのです。

だから子どもたちには、描いて作って満足せず、自分のデザインがどう役に立つのか、どんな商品になるのかを学んでほしいと思ったんです。そこで、未来のデザイナーのために「抽象的なアートではなく、デザインを教えてあげたい」と教室を始めました。

——作品を商品化するということは、実際に子どもたちの作品がお店に並んでいるということですか?

當原先生:
そうです、本当にお店で売ってます。たとえば年賀状ですね、年末には茗荷谷駅横にある文房具屋さんで商品として置いてもらっています。この年賀状、一般のお客さんにもけっこうファンがいるんです。

子どもの絵っておもしろくていいですよね、狙って描いてるわけじゃないから。だからこれ自体が商品として成り立つんですよね。私は、「プーロデザイン」というブランドで子どもの絵を商品化しているのですが、そちらの方もいずれは事業として成り立つようにできたらと思っています。

これが今年の年賀状ですね。年末に1人2デザインくらいずつお店に置いてもらったんですけど、半分くらい売れました。「プーロデザイン」の年賀状

——わあ、どれもかわいいですね!

當原先生:
これも、お店で売られていたらプロなんです。世の中のイラストレーターでも、自分の名前で作品をお店に置いてもらうのは大変なことなんです。よほどの実力とコネクションがないと実現できませんから。

それを子どものときに経験できるのはいいですよね。「お店に自分のデザインしたものが置いてある、100円って値段がついている」と。それをどこかで覚えていてもらって、将来的に「僕にはプロの経験があるんだ」って自信をつけてくれたら……嬉しいです。

——年賀状のデザインをするとき、生徒さんたちは「商品」になるということをわかっているのですか?

當原先生:
はい、そうです。「今日は年賀状のデザインをします。これは12月になったら、お店に置いてもらいます」と伝えます。「来年は戌年だから犬の絵を描きましょう」というレッスンと、「グラフィックデザインの基本、文字をデザインする」というレッスンがあるのですが、どちらもデザインには名前をちゃんと入れるんですよ。

——こうやってデザイナーが生まれていくんですね。でもデザイン料はどうなってしまうのでしょう?

當原先生:
もちろん報酬も発生しますよ! 今年は260枚売れた子もいましたね。昨年も100枚以上売れた子がいて、デザイン料を保護者の方にお渡ししたのですが、その子のお母さん、金額にかなり驚いていました。

ただ絵を描くだけじゃなくて、商品になって、お客さんが買ってくれるとお金がもらえる。自分の仕事がどういうふうにお金になるのか、というところまで学んでもらえればと思っています。

その、年賀状を100枚売った子は、小学校1年生にして「私はデザイナーになる」と言っていますよ。

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——ほかには、どんなデザインをしているのでしょうか。

當原先生:
これは建築デザインです。家の模型を作るのですが、「木の壁もあるしコンクリートの壁もある、レンガの壁もあるよね」と、壁の色や材質などを説明したり、庭のデザインについても同じように説明を入れたりします。その上で、自分で好きにデザインをしてもらうんです。

建築デザインを説明する當原容一郎氏小学生の建築デザイン

この一階部分は、窓が最初から印刷されているので、ここに好きな色をつけるだけなんですけど、二階部分は何も印刷されていないので、真っ白な家の形だけのペーパークラフトなんです。そうすると、窓の数や形を自分の好きにできるんですよね。

それでおもしろいのは、「僕は家じゃなくて駅が作りたいんだ」とか言って、駅を作りだす子たちが出てくるんです。「僕は電車が好きだから、駅舎を作るんだ」って、線路とかホームを勝手に作る。

これを勝手に三階建てにしてしまう子もいましたし、逆に見本を完璧にコピーする子もいましたね。しかも僕の見本より上手に作っていて……(笑)。

いろいろな家のデザインができるわけですが、こんなふうにどんどんアイデアが広がってくれると、私も非常に嬉しく感じます。

生徒について語る當原容一郎氏

——年齢によってレッスンの内容は違うのですか?

當原先生:
レッスンは3歳~5年生までですけど、全員に同じ課題を与えます。たとえば3歳の子は、この家の模型にバーっと色を塗っただけなんですけど、それはそれで組み立てるとそれなりの壁の色になっていたりします。

僕はいつも、「ここはデザイン教室なんだから、常識は関係ないんだよ」と教えているんです。そうすると、みんな色々自分で考えるんですよね。だから面白いものができるんです。

うちに来てくれている子のお母さんで、「〇〇君はこんな絵が描けるのに、うちの子はこれしか描けない」というような心配をしている方がいますが、幼稚園~小学校低学年なら、全然そんなこと気にしなくていいんです。そういうのは、早いか遅いかというだけなんですから。

——最後に将来のデザイナーたちに向けてメッセージをお願いします。

當原先生:
デザイナーになりたいという目標があったらデザイナーになれると思います。デザインをする上で、「~をしたらいけない」なんてことはないんだよ、ということを覚えてもらいたいですね。

僕は「~したらダメだよ」と言いたくないし、デザイン教室では言わないようにしています。絵具を使うレッスンの場合、だいたい最初に絵具を渡すと、みんなチューブから絵具をブチュ―と出して、それからグチャグチャと遊ぶんですよね……。でも、それも経験ですからいいんです!

お家だったらまず「やめなさい」と言われるはずのことをやらせてあげることで、「こんなことをしてもいいんだ!」というふうに感じてくれたらいいな、と思っています。

【プロフィール】
當原容一郎(とうはら・よういちろう)
デザイナー・イラストレーター。フランスベッド(株)に家具デザイナーとして勤務した後フリーに。デザイン先進国イタリアに渡り現地家具メーカー、バッグメーカーなどにデザインを提供。日本ではイタリアに関する知識と語学力を活かし、イタリア関連企業のロゴマーク等のデザインを多数手がける。プロダクト、グラフィックの他、ディスプレイ、WEB、イラストなど幅広い分野のデザインの経験を持つ。2016年より、「こどもデザイン教室りねあ」を主催。今までにほとんどなかった「こども向けデザイン教育」ということで各方面から注目を浴びている。

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「デザイナー」というのは、私たちが思っているよりも現実的な夢だったのですね。たしかに、世の中にはデザインが溢れています。もし子どもが「デザイナーになりたい」と言ったら、「どんなデザイナーになりたいの?」と掘り下げて聞いてみるのもいいかもしれません。まずは、「やめなさい!」と言わないことですね。これがいちばん難しいのだけれど……。

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