あたまを使う/国語 2018.12.4

語彙力アップにはテレビが有効!? 子どもの語彙力がどんどん増える日常会話

編集部
語彙力アップにはテレビが有効!? 子どもの語彙力がどんどん増える日常会話

お子さんと話していて、「この話し方、私にそっくり!」「いつの間にかパパの口癖がうつってる!」と驚いたことはありませんか? それもそのはず。子どもは家庭の中で言葉を覚え、家族の会話を聞いて言葉の使い方を学びます。だからこそ、親御さん自身も気づかないうちに話し方の癖が身についてしまうのです。

小学校低学年の子どもは、これまで親やお友だちとの会話で使ってきた言葉とはまた違う “きちんとした言葉” を学び始めます。でも、はたして、授業で学ぶような言葉の意味をちゃんと理解できているのでしょうか?

今回は、子どもの語彙力を向上させるために家庭でできること考えていきましょう。

就学前の語彙力は入学後の成績を左右する!?

小学校入学直前の6歳児200人を対象に語彙力調査を実施したところ、子どもたちの間で深刻な『語彙力格差』が生じていることがわかりました。たとえば、「礼儀」「蔵書」といった11歳レベルの語彙力が身についている子がいる一方で、2歳児レベルの語彙力しか習得できていない子もいたそうです。その差はなんと9歳分
(StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ついに子どもたちにも「語彙力」ブーム到来! 語彙力格差に負けないためにできることより)

なぜこのような語彙力の格差が生まれてしまったのでしょうか?

四天王寺大学の今井進氏は「家庭における教育力の格差が顕著になったと言われる昨今、ますます子どもたちの言語能力にも個人差が生じている」と述べています。

幼児期の言語や知識の獲得が、自らの体験・経験を通じて行われるがゆえに、その体験・経験の差が保護者の意識や経済的な条件に依存していることは重大な問題である。

(引用元:四天王寺大学紀要 第50号(2010年9月)|小学校国語科教育における授業研究の意義についてーまどみちお「きりかぶのあかちゃん」の事例研究ー

それぞれの家庭の事情保護者の教育力その子どもの特性など、さまざまな要因が複雑に絡み合っているため、家庭内における教育への意識の高さに差が生じるのは仕方ありません。ただし、「やばい」「ウケる」「マジ」「ムカつく」……といった言葉を身近な大人が多用している環境であれば、子どもたちにその影響が色濃く出てしまうのは間違いないでしょう。

就学前の子どもは話し言葉が中心の「生活言語世界です。しかし小学校へ入学すると、書き言葉も加わった「文字言語世界へと移行していきます。もし簡単な話し言葉だけしか使えなければ、授業で学ぶ多くの単語や表現を理解するのに困難をともなうでしょう。

「つまずきことば」ってなに?

小学校1年生の教科書には、次のような言葉が登場します。
たたきつける」「こらしめる」「こわごわ
このような表現をすんなりと理解できる1年生は少ないかもしれませんね。しかし、先生や親御さんの説明を聞いて自分なりに納得し、使い続けることでいずれ理解できるようになるでしょう。

熊本大学の茂木俊伸准教授によると、このような言葉を『つまずきことば』と呼ぶそう。

■「つまずきことば」とは?
各教科において、学習者(児童)にとってスムーズな意味の理解が難しく、指導者による何らかの手当てを必要とする(と予想される)語または語彙を指す。

実は、この『つまずきことば』、理解できないまま放っておくと大変なことになるのです。

子どもにとって「つまずき」が生じる言葉というのは、決して難しい言葉だけを意味するのではなく、自分の日常生活からの距離(普段使わない言葉)も含まれます。その問題点として、そもそも子どもにとって見慣れない言葉は、その理解自体が学習活動に含まれる、ということ。つまり「言葉」に「つまずく」と、学習がそこから先に進まなくなる可能性があるというわけです。

2007年~2009年度の科学研究費基盤研究による「幼稚園・小学校の全領域における国語力の向上を図るカリキュラム開発の基礎研究」をもとに調査した『つまずきことば』の具体例を挙げていきましょう。

まず、子どもたちにとって最も「つまずく」言葉は動詞が多く、とくに「動詞+動詞」形の『複合動詞』が多いということがわかりました。

たたきつける」「なりわたる」(1年)
ねむりこむ」「弱りはてる」(2年)
食いちがう」「見立てる」(3年)

複合動詞は前後の動詞どちらかでも意味がわからなければ理解できないため、つまずきやすい傾向にあります。

そして次に、「ひやり」(1年)「いそいそ」(3年)といったオノマトペ擬音語・擬態語)が多いことがわかりました。日本語のオノマトペは感覚的な理解が求められる語彙であり、本質的な理解や説明の難しさをともなうため、大人でも使用や説明が困難である特殊な言葉だと言えるでしょう。

ほかにも「しょうじ(障子)」「土間」「やぶ(藪)」「びょうぶ(屏風)」「霜柱」「床の間」など、現代ではあまり馴染みのないものや、「こっけい」「おおかた」「きょとん」「ほんのり」「そっぽ」といった、子どもたちが意味を捉えられない「つまずきことば」も教科書に登場します。

読書以外で有効な “語彙を増やす工夫”

つまずきことば』を減らすには、語彙力を上げるほかありません。ここでは、“読書以外で” 語彙力をアップさせる方法をいくつかご紹介します。

教育評論家の親野智可等氏は、勉強の敵とも思える「テレビ」が語彙力アップに有効であると述べます。

例えば、水田耕作の場面を映しながら「いまは代掻き(しろかき)」の真っ最中です」というナレーターがあったとする。代掻きといっても大人でさえ知らないかもしれない。これは、水田に水を引き込んで、土をかきおこしならす作業である。こうして文字で説明しても、水田耕作のやりかたを見たことがなければピンと来ないだろうが、テレビはまさに映像で説明してくれる。代掻きを理解するのに、図鑑や国語辞典よりもはるかに役に立つ。

(引用元:親力講座|「語彙力」が学習の源。「勉強の基本・国語力」会得にも「豊富な語彙」は必要不可欠。「日常生活」で楽しみながら「身につける方法」とは。

もちろん、ダラダラと長時間視聴するのではなく、観る時間と番組の内容を選んであげることが大前提です。日常生活では縁がない言葉も映像を通して視覚情報を得ることにより、子どもの記憶に残りやすくなります。

ほかにも、「しりとり」や「なぞなぞ」が語彙を増やすのに役立つと親野氏は述べます。もし親が使った言葉を子どもが理解できなければ、その場ですぐに辞書を引くようにするとより効果的です。

また、花まる学習会代表の高濱正伸氏は、「見たこと、感じたことを「比喩」で表現する」ことをすすめています。比喩が使えると表現に奥行きが出るだけでなく、その状態を相手に印象的に伝えることができるのです。

たとえば、「今朝は寒いね」だけで終わってしまうところを、
今朝は凍えるような寒さだね
今朝は身体が縮こまるような寒さだね
と表現することから始めてみましょう。慣れてきたら、少し難しい比喩表現にもチャレンジしてみます。

燃えるような夕焼け」「抜けるような青さ」「水を打ったような静けさ」など、何かにたとえると表現に深みと味わいが加わることを、子ども自身に身をもって学ばせるのです。

本をたくさん読むこと以外でも、日常会話のなかで語彙を増やすことは可能です。そのためにも、親御さん自身もさまざまな表現方法を使って子どもとの会話を楽しみましょう。

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大事なのは「日常的に」「さまざまな」言葉を使うように意識すること。そうすることで教科書の中でたくさんの言葉に出会ったとしても、「この言葉、知ってる!」とつまずかずに前に進むことができるでしょう。

(参考)
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ついに子どもたちにも「語彙力」ブーム到来! 語彙力格差に負けないためにできること
四天王寺大学紀要 第50号(2010年9月)|小学校国語科教育における授業研究の意義についてーまどみちお「きりかぶのあかちゃん」の事例研究ー
鳴門教育大学研究紀要 第28巻 2013|小学校国語教科書における「つまずきことば」の分析
親力講座|「語彙力」が学習の源。「勉強の基本・国語力」会得にも「豊富な語彙」は必要不可欠。「日常生活」で楽しみながら「身につける方法」とは。
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