「失敗させたくない」——わが子を思う親なら当然の感情です。でも、その優しさが、かえって子どもを弱くしているかもしれません。
失敗を恐れずに挑戦する力、困難を乗り越える力、立ち直る回復力——これらはすべて、失敗経験からしか学べないもの。
専門家4名のインタビューをもとに、子どもの「失敗から学ぶ力」を育てる親の関わり方をご紹介します。
目次
なぜ「失敗させない子育て」が問題なのか
→失敗経験がないと、困難に弱い人間になる
教育ジャーナリストの中曽根陽子氏は、「失敗を乗り越える経験からしか、困難に立ち向かう力は学べない」と語ります。
親が先回りして失敗させないようにすると、子どもは学びのチャンスを奪われます。その理由は、親自身が「安心したい」だけ。
でも、親元にいるときの失敗なんて、大人から見れば大したものではありません。むしろ、いまのうちに失敗を経験させてあげるべきでしょう。
変化が加速していく時代を生き抜くには、思いもかけない事態に直面したときに自分で判断し行動する主体性が必要です。

方法1. 親が子どもの「安全基地」になる
→失敗しても大丈夫だと思える安心感が、挑戦意欲を生む
専門家:井戸ゆかり氏(発達臨床心理学、東京都市大学人間科学部教授)
「失敗してもいい」という気持ちの裏には、「お父さんとお母さんのところにいけば大丈夫」という思いがあると井戸氏は言います。親子の強い信頼関係があれば、子どもは安心して挑戦できるのです。
失敗したときこそ親の対応が重要。頭ごなしに叱るのではなく、まずは「ケガしなかった?」と心配してあげる。それから、「お母さんも小さいときに失敗したの」と自分の失敗談を話してあげましょう。
子どもからすれば、親はなんでもできるスーパーマンのように見えています。でも、その親も失敗したことがあると知れば、「いつかお父さんやお母さんのような人間になれる」と失敗を恐れない力を得ていくのです。
🏠 家でできる関わり方のヒント
- 日頃の対話で信頼関係を築く:「困ったときは頼っていい」と思わせる
- 失敗したら「ケガしなかった?」がまず最初の言葉:心配してあげることが第一
- 親自身の失敗談を共有する:「スーパーマンじゃない親」を見せる

方法2. 「悪い先回り」をやめて「いい先回り」をする
→失敗させないのではなく、失敗から学べる環境を整える
専門家:岩立京子氏(発達心理学、幼児教育学、東京家政大学子ども学部教授)
先回りにも「いい先回り」と「悪い先回り」があると岩立氏は言います。
「悪い先回り」とは、子どもの失敗を完全に防いでしまう手出し口出しのこと。人間は失敗から多くのことを学びますが、親の先回りが学びのチャンスを子どもから奪ってしまうのです。
一方「いい先回り」とは、失敗しても学べる環境を整えるお膳立てです。たとえば、子どもが食器を洗いたがったら、割れないプラスチック食器を用意する。床が濡れてもいいようにビニールシートを敷いておく。こっそりと成功率を上げる工夫をするのです。
ただし、10回挑戦して9回失敗するようでは、子どもは心が折れてしまいます。失敗と成功のバランスを考えながら、子どもなりのプライドを尊重してサポートしましょう。
🏠 家でできる関わり方のヒント
- あからさまな手出し口出しをやめる:子どもの失敗の機会を奪わない
- こっそり成功率を上げる工夫:トング、プラスチック食器、ビニールシート等
- 失敗しても大丈夫な環境を整える:「いい先回り」で学びをサポート

方法3. 親自身が失敗し、回復する姿を見せる
→失敗→回復のプロセスから、非認知能力が育つ
専門家:ボーク重子氏(ライフコーチ)&中曽根陽子氏
ボーク氏は、「失敗こそシェアする」と語ります。親自身が行動し、失敗経験を子どもに伝える。それは結果ではなく、「なにがどうしてどうなったか」というプロセスを見せるということ。
そうすることで子どもは、失敗は通過点であってやり直しができること、方法はひとつじゃないと学んでいきます。それが、回復力ややり抜く力といった非認知能力です。
中曽根氏も、子どもが失敗したときには「次からどうすればいいかな?」と問いかけることを勧めます。叱るだけでは行動変容につながりません。子ども自身に考えさせ、解決させることが大切なのです。
🏠 家でできる関わり方のヒント
- 親自身の失敗経験を共有:「ママ、いまこんなことで失敗してるんだよ」
- 成功より失敗を重点的に見せる:「格好悪い親」でOK
- 失敗したら「次からどうする?」と問いかける:子ども自身に考えさせる

よくある質問(FAQ)
Q1. 何歳くらいから失敗経験をさせるべきですか?
A. 幼児期(3〜6歳)から始めるのが理想的です。ただし、年齢に関わらず「いま」から始めることが大切です。子どもの発達段階に合わせて、安全な範囲で失敗を経験させてあげましょう。
Q2. 子どもが失敗して泣いてしまったら、どう対応すればいいですか?
A. まず「ケガしなかった?」と心配してあげましょう。そして、感情を受け止めてから「次はどうすればいいかな?」と問いかけます。叱ったり、すぐに解決策を提示するのではなく、子ども自身が考える時間をもつことが重要です。
Q3. 「いい先回り」と「悪い先回り」の具体的な違いは?
A. 悪い先回りは「失敗を完全に防ぐ」こと(例:親がすべて持ち物を用意する)。いい先回りは「失敗しても学べる環境を整える」こと(例:割れないプラスチック食器を用意して、子ども自身に洗わせる)。子どもの挑戦機会を奪わないことがポイントです。
Q4. 非認知能力とは具体的に何ですか?
A. テストの点数では測れない力の総称で、回復力、やり抜く力、自己肯定感、主体性、社会性などが含まれます。失敗経験を通じて、これらの力が育まれていきます。
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失敗させない子育てではなく、失敗から学べる子育てを。
大切なのは、親が安全基地になり信頼関係を築くこと、悪い先回りをやめ失敗しても学べる環境を整えること、親自身が失敗し回復するプロセスを見せることです。
「親が見ているところで失敗して立ち上がる経験」が、子どもをたくましく育てます。失敗を恐れず、親子で一緒に成長していきましょう。
(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|「失敗を恐れない力」の育て方。子どもに「挑戦したい!」と思わせる、効果抜群な言葉かけ
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|任せて、失敗させて、考えさせる。「困難を乗り越える力」を伸ばすには、放っておくのが◎
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの失敗の機会を奪う「悪い先回り」を今すぐやめて、「いい先回り」をするための工夫とは?
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