「今年はなわとびを100回とぶ!」「毎日本を読む!」
——年明け、子どもと一緒に”今年の目標”を立てたものの、1月中旬には忘れ去られていた……。そんな経験はありませんか?
じつは、子どもが目標を達成できないのは「意志が弱いから」ではありません。目標の”立て方”に問題があるケースがほとんどです。
ビジネスの世界で広く使われている目標設定のフレームワーク「SMARTゴール」。これを子ども向けにアレンジすると、達成率は大きく変わります。
今回は、親子で楽しみながら実践できる「子ども版SMARTゴール」の立て方をご紹介します。
目次
なぜ子どもの「今年の目標」は達成されないのか?
その理由は3つあります。
まず、目標が抽象的すぎること。「うまくなる」「きれいに」では、何をもって達成とするのかが曖昧です。
次に、目標が大きすぎること。1年という長いスパンで「毎日〇〇する」という目標は、大人でも継続が難しいものです。
そして、期限がないこと。「いつか」「そのうち」では、行動に移すきっかけがつかめません。
心理学者のエドウィン・ロック博士とゲイリー・レイサム博士による「目標設定理論」の研究では、具体的で適度に難しい目標を設定した人は、漠然とした目標を立てた人に比べて、パフォーマンスが有意に向上することが繰り返し実証されています。*1 この原則は大人だけでなく、子どもにも当てはまります。
また、親が「がんばれ」「もっとやりなさい」と声をかけるだけでは、子どもの行動は変わりにくいもの。大切なのは、子ども自身が「何を」「どのくらい」「いつまでに」やるかを理解している状態をつくることです。

ビジネスでも使われる「SMARTゴール」とは?
SMARTとは、効果的な目標が持つべき5つの要素の頭文字を取ったものです。
M(Measurable):測定可能である
A(Achievable):達成可能である
R(Relevant):関連性がある(自分にとって意味がある・大切なこと)
T(Time-bound):期限がある
「でも、これって大人向けのフレームワークでしょ? 子どもには難しそう……」そう思われるかもしれません。
しかし、言葉を子ども向けに置き換え、親がサポートすれば、幼稚園年長〜小学校低学年の子どもでも十分に活用できます。次の章では、具体的な実践方法を5つのステップでご紹介します。
※SMARTの各要素には複数の解釈がありますが、本記事では最も一般的な定義を採用しています

親子で実践!「子ども版SMARTゴール」5つのステップ
ステップ1:「やりたいこと」を引き出す(R=関連性)
まず、子どもに「何ができるようになりたいか」を質問しましょう。目標は、親が決めるのではなく、子ども自身の「やりたい」から始める必要があります。
なぜなら、他人から与えられた目標よりも、自分で決めた目標のほうが、人は努力を続けられるからです。これは「自己決定理論」として知られる心理学の知見に基づいています。*3
【声かけ例】
- 「今年できるようになったらうれしいことって何かな?」
- 「〇〇ちゃんが『やった!』って思えることって何だろう?」
- 「幼稚園(学校)で、もっとできるようになりたいことある?」
NG例:「漢字をがんばろうね」「もっと運動しなさい」(親が決めている)
→OK例:「〇〇ちゃんは何ができるようになりたい?」(子どもに聞いている)
ステップ2:「どのくらい?」を数字にする(M=測定可能)
次に、子どもが言った「やりたいこと」を数字で表現しましょう。抽象的な目標を、「見える」「数えられる」形にしましょう。」
【変換例】
- 「本をたくさん読む」→「1か月に3冊読む」
- 「字がうまくなりたい」→「毎日1ページ、ひらがなドリルをやる」
- 「サッカーがうまくなりたい」→「リフティングを連続10回できるようになる」
数字にすることで、子ども自身が「できた/まだ」を判断できるようになります。また、カレンダーにシールを貼る、表に色を塗るなど、進捗を「見える化」するツールを用意するとモチベーションが続きやすくなります。
ステップ3:「ちょっとがんばれば届く」に調整する(A=達成可能)
3つ目に、目標の難易度を調整しましょう。目標は「簡単すぎず、難しすぎず」がベストです。心理学では、これを「ストレッチゾーン」と呼びます。いまの実力より少しだけ高いレベルに設定することで、達成感と成長を同時に得られます。
子どもが「なわとびを1000回とぶ!」と言ったとき、いきなり否定するのではなく、一緒に考えてみましょう。
・「すごい目標だね! まずは100回を目指してみない?」
・「1000回は最終目標にして、3月までにまず50回からやってみようか」
・「それはもうできるようになってるね。もうちょっとチャレンジしてみる?」
・「〇〇ができたら、次は何をやってみたい?」
ステップ4:「いつまでに?」を決める(T=期限)
4つ目に、期限を設定しましょう。「今年中に」という目標は、子どもにとっては遠すぎます。3か月、できれば1か月単位で区切りましょう。
さらに効果的なのは、「中間ゴール」を設定すること。最終目標に至るまでの「通過点」を決めておくことで、長い道のりでも迷わずに進めます。
【中間ゴールの例】
「12月までに逆上がりができるようになる」場合
- 3月まで:前回りを5回連続でできるようになる
- 6月まで:足かけ回りができるようになる
- 9月まで:逆上がりの練習を始める(補助付きでOK)
- 12月:逆上がり成功!
ステップ5:「何をする?」を具体的に決める(S=具体的)
最後に、目標を「行動」に落とし込みます。「いつ」「どこで」「何を」するかを明確にしましょう。
【行動レベルへの落とし込み例】
- 「計算が速くなる」→「毎朝、朝ごはんの前に計算ドリルを1ページやる」
- 「本を読む」→「寝る前の15分間、リビングのソファで絵本を読む」
- 「ピアノがうまくなる」→「夕方5時から10分間、ピアノの前に座って練習する」
行動を具体的にすることで、「やるかやらないか迷う」時間がなくなります。決まった時間に決まった場所で始めることで、習慣化しやすくなります。

目標を「忘れない」ための3つの工夫
せっかく立てた目標も、日常に埋もれてしまっては意味がありません。目標を「忘れない」ための工夫を3つご紹介します。
1.「目標カード」をつくってリビングに貼る
目標を紙に書いて、家族がよく見る場所に貼りましょう。認知心理学の研究では、視覚化することで目標への意識が高まることがわかっています。子どもと一緒にシールやイラストでデコレーションすると、愛着がわいて効果的です。
2. 週に1回「ふりかえりタイム」を設ける
日曜の夜、5分だけでOKです。「今週、目標に向かって何かできた?」と聞いてみましょう。このとき大切なのは、「できた/できなかった」ではなく、「どこまで進んだ?」と聞くこと。プロセスに目を向けることで、子どものやる気を維持できます。
3. 達成したら「小さなお祝い」をする
中間ゴールをクリアするたびに、小さなお祝いをしましょう。おすすめは「物」よりも「体験」です。一緒にケーキを焼く、公園でピクニックをするなど、親子の思い出になるごほうびが効果的です。

よくある質問(FAQ)
Q. 子どもが「目標なんてない」と言ったらどうすればいい?
A. 無理に決めさせる必要はありません。「最近楽しかったことは?」「もう一回やりたいことある?」など、興味や楽しさから話を広げてみましょう。日常の会話の中からヒントが見つかることも多いです。
Q. 目標を立てても3日で忘れてしまいます。どうしたらいい?
A. 「忘れる」のは普通のことです。目標カードをリビングに貼る、週1回のふりかえりタイムを設けるなど、「思い出す仕組み」をつくることが大切です。親が責めずに「そういえば目標どうなった?」と声をかけるだけでも効果があります。
Q. 何歳からSMARTゴールを使えますか?
A. 親のサポートがあれば、年長(5〜6歳)から取り組めます。この年齢では目標を1つに絞り、親が選択肢を出してあげるのがコツです。小学2年生以降は、子ども主体で考えられるようになります。
Q. 親が「こうしてほしい」目標と、子どもの「やりたい」が違うときは?
A. 子どもの「やりたい」を優先しましょう。自分で決めた目標のほうが達成率は高くなります。親の希望は「〇〇もできたらいいね」と軽く伝える程度にとどめ、まずは子どもが「やり切った」という成功体験を積むことを重視してください。
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子どもの目標達成には、「正しい立て方」がカギです。ビジネスで使われるSMARTゴールは、子どもにも十分に応用できます。
M:数字で測れる形にする
A:ちょっとがんばれば届くレベルに調整する
T:3か月〜1か月単位で期限を決める
S:「いつ・どこで・何を」まで具体的にする
そして何より、親子で一緒に考える時間そのものが、子どもの非認知能力——計画力、自己調整力、やり抜く力——を育てます。
ぜひこの機会、お子さんと一緒にSMARTゴールを立ててみてください。
(参考)
*1 APA PsycNet|Building a practically useful theory of goal setting and task motivation (American Psychologist, 2002)
*2 Management Review誌|There’s a S.M.A.R.T. way to write management’s goals and objectives (Doran, G. T., 1981)
*3 APA PsycNet|Self-determination theory and the facilitation of intrinsic motivation, social development, and well-being (American Psychologist, 2000)
*4 講談社現代新書|森口佑介『自分をコントロールする力 非認知スキルの心理学』(2019) ※発達心理学における目標設定と自己調整力の関係について参考












