教育を考える 2019.9.23

子ども同士の喧嘩、親は介入するべき? 「あなたが悪い」と言ってはいけない理由

編集部
子ども同士の喧嘩、親は介入するべき? 「あなたが悪い」と言ってはいけない理由

小学生になると生活面では園児より手がかからなくなりますが、その一方で子どもの交友範囲が広がり、「なかなかお友だちができないようだ」「お友だちとのトラブルが次から次へと起きる」などの「友だちづきあい」の心配事が増えるという声を聞きます。

子どもの友だちづきあいに親は介入しすぎないほうがいいと思いながらも、親としては、子どもの抱える悩みやトラブルは放っておけないもの。どこまで、どのように関わったらいいのか、具体例を交えながら対処法を一緒に考えてみましょう。

小学校低学年までは、ケンカやもめごとは当たり前

私たちは、さまざまな人とのやりとりを経験しながら人間関係を育んでいきます。子どもたちにとっての、その一歩として、同じ年ごろのお友だちとの関係は大切にしたいもの。幼児期から小学校低学年のころは、「自分だけの世界」だけでなく「他人がいる世界」があることに気づいて、他人と関わりあうことを学ぶ時期です。はじめてのことばかりで、戸惑うこともあれば、思ったとおりにいかずに機嫌を損ねたり、相手のお友だちとトラブルになったりすることもあるでしょう。

幼児と会話をしているとき、相手のことをまったく気にせず、ひたすら自分がしゃべりたいことを話しかけてきたことはありませんか? 心理学者のピアジェによれば、2歳から7歳ごろの子どもの考え方には、「自己中心性」が大きな特徴としてあるそうです。これは、決してわがままという意味ではなく、自分を中心として周囲のことを認識する、文字通り「自己」を「中心」においた考え方をすることです。例えば、この年齢の子どもたちには、以下のような行動や認識がよく見られます。

  • 自分が思っていることは相手も同じように思っている
  • 相手が言っていることは関係ない。自分が言いたいことを一方的にしゃべる
  • 自分にとっての右側は、向かい合った相手にとっても右側になる

そのため、自分以外の人と関わるうえで、コミュニケーションがとれずに、ケンカやもめごとが起きてしまうのは当然のことなのです。

子どもの喧嘩02

「木のおもちゃ」が知育におすすめな理由。五感を刺激し、集中力を育んでくれる!
PR

社会性や感情マネジメントと学力の関係

子どもは、友だち付き合いによって社会性を身につけるとともに自分の感情をマネジメントしていく力をつけていきます。この社会性と感情マネジメントにフォーカスしたのが、近年、アメリカで注目されているSEL(Social and Emotional Larning)という教育法です。SELでは、子どもたちが勉学や人生で成功をつかむためには、社会性感情マネジメントが重要だと考えられています。こうしたスキルを高めるSELによって、学業成果が11%向上したという結果もあるそう。

現在、学校教育においては主体的・対話的で深い学びをテーマにアクティブラーニングを重視する傾向にあります。クラスの仲間と課題を見つけて、ディスカッションをして、その内容を発表するといったアクティブラーニングの場では、社会性や感情マネジメントの能力は高いほうが有利にはたらきます。友だちづきあいが上手にできる子は、学力面でもその能力を発揮できるといえるでしょう。友だちづきあいのスキルは、決してあなどれないものなのです。

子どもの喧嘩03

友だちづきあいに必要なのは、第一に「聞く力」

学力にも関係してくるとなれば、親としては早いうちに「友だちづきあい」の方法を学ばせておきたいところですよね。自分が世界の中心にいる発達段階の子どもが、友だちをつくって関わっていくうえでは、コミュニケーション能力が大切だというのは言うまでもないでしょう。

最近の学校教育では、自分の考えを仲間に伝え、話し合った結果をまとめて発表する力を求められることが多い傾向にあります。そのため、コミュニケーション能力のうち「伝える力」を高めることに意識が向きがちです。しかし、実のところ「伝える力」よりも先に伸ばしておきたいのは「聞く力」のほうだといわれています。

子どもの心と教育をテーマに活動する、臨床心理士の河井英子さんによると、「聞く力」は子どもが将来、必要とする7つの能力を伸ばすのだそうです。

  • 落ち着きと集中力、 根気が身につく
  • 想像力を育む
  • 思いやりの心、 共感する心を育む
  • コミュニケーション 能力が育つ
  • 話す力が備わる
  • 読解力や作文の力を 伸ばす
  • 学力を伸ばす

なかでも「思いやりの心、共感する心」は、友だちづきあいを円滑にするのにたいへん有効です。聞く力が身についている子どもは、相手の話に共感し思いやりをもって耳を傾けられます。そのため、結果として、コミュニケーションを円滑に進ませることができ、人間関係もスムーズになるのです。

では、家庭で「聞く力」を伸ばすにはどうしたら良いのでしょうか。おすすめは、「絵本の読み聞かせ」です。親が本を読み、子どもがそれを聞いて思ったことを述べ、親が子の言葉を丁寧に聞いて返してあげる……といった親子の交流によって、子どもは相手の言葉に耳を傾ける習慣を身につけていきます。

子どもの喧嘩04

友だちづきあいでトラブルが起きたときは?

小学校低学年のうちは、席が隣だったり、家が近かったりといった物理的な近さがきっかけで友だちになることが多いでしょう。そこから次第に、自分の好き嫌いの志向や考え方の似ている子と意気投合するなど、新しい友だち関係が作られるようになります。そして、この経過で「今日はA子ちゃんと遊ぶから、あなたとは遊ばない!」「Bくんと一緒に帰るから!バイバイ」などと、今までのお友だちと急に距離ができてショックを受けることもあります。

学校から帰ってきて、いつもと様子が違うと感じるとき、「お友だちにこんなことを言われた」と訴えてきたときに、私たち保護者はどのように対応したらよいのでしょうか?

■まずは聞き役に

幼稚園までは、お子さんの代弁者となりお友だちとのトラブルを解決してきたかもしれませんが、心身から明らかに分かるような大きなトラブルでない限り、まずは子どもの「話を聞く」ようにします。法政大学文学部心理学科教授の渡辺弥生氏は以下のように述べています。

まずやるべきは「悩んでいる状況・内容をしっかりと聞いてあげること」です。子どもの話に耳を傾け、うなずき、あいづちを打ってあげましょう。子どもがうまく気持ちを表現できなかったり、気持ちの整理がつかず、はっきり状況をつかめずにいたりすることもあります。それも計算に入れて聞くことが大切です。

(引用元:さぽナビ(Z会)|友だちづきあい(2)

根ほり葉ほり詮索するのではなく、話し始めるまで待つくらいの気持ちで向き合うのが大切です。そして、子どもが話しだしたら徹底的に聞き役に回り、子どもの気持ちに理解を示してあげましょう。アドバイスをするのはそれからです。

 

■お友だちの気持ちになるよう促す

一通り、子どもから話を聞いたら「そのとき、○○ちゃんはどう思ってたのかな?」「あなたが同じことをされたらどんな気持ちになる?」と、相手の気持ちになって考えるように促します。話を十分に聞いてから問いかければ、その前に言い分を聞いてもらって気持ちが落ち着いているので、子どもも相手の気持ちに寄り添いやすくなるでしょう。

気をつけたいのは、大人がジャッジをしないということ。国際コーチ連盟プロフェッショナル認定コーチの石川尚子氏によると、大人から一方的にどちらが悪いか決めつけられると、子どもは腑に落ちないモヤモヤを抱えるそう。その結果、自分を正当化したり、むやみに人のせいにしたりするようになることも。大人から見て「うちの子が悪い」「お友だちが悪い」と感じても決めつけることなく、子どもの考えを促しましょう。

 

■リフレーミング(言い換え)をする

リフレーミングとは、簡単にいうと「物ごとを別枠でとらえ直す」「言い換える」こと。コーチングのスキルのひとつとして活用されています。「ピンチはチャンス」という言葉を聞いたことがあると思いますが、これもリフレーミングです。

例えば、お友だちと遊ぶ約束を急にキャンセルされて悲しんでいたら、「遊ぶはずだった時間を別のことに使おうか。前に約束していた○○をするのはどう?」というように、物ごとをプラスに、ポジティブにとらえるように促します。

 

■子どもの性格を否定しない

子どもの話を聞いているうちに、こんなセリフを言ってしまったことはありませんか?

×「あなたは気が弱すぎるよ」
×「グズグズしてるから、そうなるんだよ」
×「いつまでもしつこく言ったんじゃないの?」

このような言葉は、子どもを傷つけ責めるだけで何の解決にもなりません。教育評論家の親野智可等氏いわく、子どもの自己イメージは親の言葉によって作られるそう。そのため、子どもに否定的な言葉を浴びせることは、子どもの自己肯定感を損ない、「どうせ僕はダメな子だ」と思わせてしまうことにも繋がります。

このような場合には、前述したリフレーミングを使って「気が弱い→相手の気持ちを大切にできる」「グズグズしている→丁寧に取り組む」「しつこい→諦めず、粘り強い」などと言い直し、お子さんの良いところとして認めてあげましょう。

小学校低学年ごろまでは、友だちづきあいでのトラブルを自分で解決するのはなかなか難しいもの。心身に傷を負うような重大なトラブルでない限りは、行き過ぎた干渉にならないように、適度な距離感で見守りたいですね。

***
成長するにつれ、友だちとのトラブルについて話をしたがらなくなる子もいます。小さな頃から、お子さんの話をよく聞いてあげ、「困ったときに自分の親はいつでも相談に乗ってくれる」という安心感をもたせてあげたいですね。

(参考)
StudyHackerこどもまなび☆ラボ|ピアジェの心理学を知れば、子どもの発達がよく分かる!? 有名な「4つの発達段階」をまとめてみた
渡辺弥生(2016), “児童の感情リテラシーは教育しうるか ─発達のアウトラインと支援のありかた─”, エモーション・スタディーズ, 第2巻第1号, pp. 16-24.
CASEL|SEL Impact
PHPファミリー|幼児期が大切です 「聞く力」で伸びる 7つの能力
さぽナビ(Z会)|友だちづきあい(1)
さぽナビ(Z会)|友だちづきあい(2)
ベネッセ教育情報サイト|子どもの「前向きな発想」引き出すリフレーミング[やる気を引き出すコーチング]
Joseph A Durlak, Roger P. Weissberg, Allison Dymnicki, Kriston Schellinger(2011), “The Impact of Enhancing Students’ Social and Emotional Learning: A Meta-Analysis of School-Based Universal Interventions”, Child Development, Vol 82, Number1, pp. 405-432.
Schola|子どもを否定的に叱り続けることで起こる7つの弊害(2)
KUMON|読書へのステップ「聞く耳」を育てよう
ベネッセ教育情報サイト|子ども同士のけんかにどう対応する?[やる気を引き出すコーチング]