「性教育って、いつから何を教えればいいの?」——多くの親が抱えるこの悩み。「恥ずかしい」「難しい」と後回しにしがち。
でも、「性教育をしなければ、子どもが性被害に遭うかもしれない」と言われたらどうでしょう?「恥ずかしい」などといっている場合ではありませんよね。
そこで参考にしたいのが、臨床心理士・高山恵子先生のアドバイス。性教育は特別なことではなく、日常の中で段階的に進められるものです。今回は、高山先生のインタビューをもとに、家庭で実践できる「性教育ロードマップ」を5つのステップで紹介します。
目次
ステップ1(3歳〜):「プライベートゾーン」を教える
→まずは、自分の体を「守るべき大切なもの」だと認識させる
性教育の第一歩は、「プライベートゾーン」について教えることだと高山先生は言います。プライベートゾーンとは、「口・胸・性器・お尻」を指します。女の子には「水着で隠れるところと口」、男の子には「水着で隠れるところと口と胸」と教えると、子どもにもわかりやすいでしょう。

プライベートゾーンは、大人にとっては性的な意味合いももつ場所ですが、子どもに対しては「体はどの部分も大事だけれど、そのなかでもとくに大事なところ」と伝えてください。「どうして?」と聞かれたら、「赤ちゃんが生まれることに関係している大事なところだからだよ」と説明してあげましょう。
教えるときには、性教育の書籍や絵本を使うことがおすすめです。視覚情報があることで、知識がまったくない子どもにも理解しやすいからです。
・「自分ではない人が、勝手に見たり触ったりしないところ(自分で自分のものを触るのはOK)」
・「自分のものであっても、人がいる場所で見たり触ったりしないところ(人がいない場所ならOK)」
ただし、「自分ではない人に見せたり触らせたりしてはいけないところ」という伝え方はNG。そう伝えると、子どもが性被害を受けたときに、「見せてしまった/触らせてしまった自分が悪い」と自分を責めてしまう可能性があるからです。悪いのは、あくまでも勝手に「見た側」「触った側」です。
【ステップ1】家でできること
🏠 家でできる関わり方のヒント
- 性教育の絵本を活用:
体の構造をイラストで解説している絵本を使って、視覚的に理解させる - 「うんち」「おちんちん」がきっかけ:
子どもがそういった言葉をおもしろがって使い始めたら、性教育を始めるチャンス - お友だちとのトラブル防止:
プライベートゾーンを教えておけば、子ども同士の「見せ合いっこ」などを防げる
ステップ2(3歳〜):「ノー」という力を育てる
→嫌なことに「嫌だ」といえることが、自分を守る力になる
プライベートゾーンについて教えたあとは、嫌なことには『嫌だ』といっていいんだよ」と伝えることが大切とのこと。
お友だちからの不適切な行動、大人からの不適切な接触——こうした場面ではっきりと「ノー(NO)」といえるようになる練習が必要なのです。
高山先生がおすすめするのは、「ちょこっとチャット!」というカードゲーム形式のコミュニケーションツール。カードには「好きな絵本はなんですか?」「パパにやめてもらいたいことはなんですか?」などさまざまな質問が書かれています。
カードの質問には答えやすいものもあれば、ちょっと答えにくいものも。そして、「答えにくい質問はパスしていい」というルールになっています。そのため、自然と「ノー」という練習ができ、習慣化されていくというわけです。
むかしから「ノーといえない日本人」といった言葉もありますが、大切な子どもを守るためにも、ぜひ「ノーといえる子」に育ててあげてください。
【ステップ2】家でできること
🏠 家でできる関わり方のヒント
- 日常的に「嫌?」と聞く:
「これ食べる?」「抱っこする?」など、日常の小さな選択で「いや」と言える機会をつくる - カードゲームを活用:
「ちょこっとチャット!」など、楽しみながらノーという練習ができるツールを使う - 「パスしていいよ」を習慣に:
答えたくない質問には答えなくていいというルールを家庭内で作る
ステップ3(幼児期〜):性器のケアを習慣にする
→清潔に保つことが感染症予防につながるから
性器のケアも、幼いうちから習慣にすべきことです。
男の子の場合:
包茎の状態では包皮の内側に汚れがたまりやすく、感染症を招くリスクが高まります。ですから、たとえ幼い子どもでも、包皮をむいてきれいに洗う習慣を身につけることが大切です。
ただし、乳幼児の包皮は亀頭と癒着していることも多いため、最初はむけなくても問題ありません。2歳〜3歳くらいから、お風呂で少しずつ包皮をむき、お湯で優しく洗うように教えてあげてください。続けているうちに、だんだんと自然にむけるようになっていきます。
女の子の場合:
恥垢がたまったままだと雑菌が繁殖し、においやかゆみなどトラブルの原因になります。ただし、膣のなかまで洗ってしまうと本来常駐している乳酸菌が減少して逆に雑菌が増えてしまうため、膣のなかは洗わないことも併せて教えてください。
男の子も女の子も注意してほしいのは、性器を触る時は必ず手をきれいにしておくこと。汚れた手で触ると、感染症を引き起こす恐れがあるからです。
子どもが性器を触っているのを見ると、親は戸惑ってしまいがち。でも、子どもは性的な意味合いなどなく、単に「温かくて気持ちいい」「触っているとほっとする」といった理由で性器を触っているだけです。
「やめなさい」「汚いでしょ」などといって叱ると、子どもは性器を触る行為に対してネガティブな感情や罪悪感をもちかねません。すると、成長して思春期になっても自慰をしない、射精できないといった問題が生じることもあります。
「自然な行為」だと受け止め、TPOだけを教えましょう。
【ステップ3】家でできること
🏠 家でできる関わり方のヒント
- お風呂で習慣化:
歯磨きと同じように、お風呂でのケアをルーティンにする - 手を洗ってから:
性器を触る前に必ず手を洗うことを教える - 異常があれば受診:
炎症やバルーニング現象などが見られたら、泌尿器科を受診

ステップ4(質問が出たら):「困った質問」に正しく答える
→正しい知識を教える絶好のチャンス!
「赤ちゃんはどこからくるの?」「セックスってなに?」——こんな質問を子どもからされたとき、どう答えればいいでしょうか?
このときに注意してほしいのは、「知らないよ」「鳥さんが運んでくるんだよ」などとはぐらかしたり嘘をついたりせず、正しい知識を与えることです。子どもはいずれ真実を知ることになり、嘘はバレますから、親子関係に悪影響が及ぶ可能性もあります。
この質問は、一般的に3歳〜5歳頃の子どもに多く見られます。性的な意味合いからではなく純粋な好奇心からそう聞いているだけのことですから、「正しい知識を伝えられるチャンスだ」と前向きにとらえてほしいのです。
「赤ちゃんはどこから?」への答え方:
性教育の絵本を使って、女の人の脚と脚のあいだには3つの穴があること、前から順に「おしっこが出る穴(尿道口)」「赤ちゃんが出る穴(膣口)」「うんちが出る穴(肛門)」だということを教えましょう。
また、帝王切開で生まれる子どももいますから、「赤ちゃんがうまく道を通れないときは、お医者さんがお母さんのおなかを切って手助けしてくれることもあるんだよ」と、ここでも正しい知識を伝えてください。
「セックスってなに?」への答え方:
男の人と女の人はそれぞれ赤ちゃんのもとになるものをもっていること、赤ちゃんが生まれてくる穴に大きくなったおちんちんを入れることがセックスだということ、赤ちゃんのもとになるものが一緒になったときに赤ちゃんができることを教えます。
虫などの生き物に興味をもつ子どもは多いですから、「カブトムシの交尾って知ってるよね? それもセックスだよ」と教えるのも手です。いずれにせよ、いやらしいことや性的なことというのではなく、先生になって授業でもしているつもりで正しい知識を淡々と教えることがポイントです。
子どもに正しい性の知識を伝えたりよりよい方向に導いたりするためにも、親子のあいだにきちんと信頼関係を築いておくことが大切です。信頼関係が築けていれば、性に関して悩んだり困ったりしたときに、親にちゃんと相談してくれるからです。
そのためには、日常的なスキンシップや肯定的な言葉かけ、子どもの感情に寄り添って共感することなどで、アタッチメント(愛着)と信頼関係を強化していきましょう。
【ステップ4】家でできること
🏠 家でできる関わり方のヒント
- 絵本を活用:
視覚情報があることで、知識のない子どもにも理解しやすい - はぐらかさない、嘘をつかない:
正しい知識を淡々と教える - 「よく相談してくれたね」と伝える:
「なんで早く言わなかったの!」はNGワード。子どもが相談してきたときは、まず受け止める

ステップ5(10歳まで):生理や体の変化を教える
→突然の変化に驚かないよう、事前に知識を与える
初潮を迎えるのは一般的に10歳〜14歳頃ですから、女の子には10歳になるまでに生理について教えてあげましょう。
教え方については年齢や理解力にもよりますが、基本的には「1か月に1回、赤ゃんを育てるためのベッドをお腹のなかでつくっていて、そのベッドが必要ないときに血と一緒に体の外に出るんだよ」と教えると理解しやすいでしょう。
加えて、「もう少ししたらあなたにもそういうことが起きるけど、急に血が出てもそれは自然なことだから不安にならなくて大丈夫だよ」と安心させてください。このことを伝えていないばかりに、初潮を迎えた際、びっくりして誰にも相談できない子も多いのです。
また高山先生は、男の子にもやはり10歳くらいまでに生理についてきちんと教えておくことをおすすめしています。男の子同士のなかで得た中途半端な知識により、生理中の女の子をはやし立てるようなこともあるからです。「赤ちゃんをつくるための大切な仕組みで、それをからかうのは失礼で恥ずかしいことだよ」という、きちんとした知識をもたせてあげてほしいと思います。
【ステップ5】家でできること
🏠 家でできる関わり方のヒント
- 10歳までに伝える:女の子にも男の子にも、生理について正しい知識を教える
- 初潮セットを準備:
ナプキンと予備の下着を入れたポーチを持たせる - 「自然なこと」と伝える:
不安にならないよう、体の変化は自然なことだと安心させる
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性教育は、特別なことでも難しいことでもありません。子どもの成長に合わせて、段階的に進めていくものです。
「プライベートゾーンを教える」「ノーという力を育てる」「性器のケアを習慣にする」「生理や体の変化を教える」「困った質問に正しく答える」——この5つのステップは、どの家庭でも実践できます。
大切なのは、「恥ずかしい」と避けるのではなく、子どもを守るために正しい知識を伝えること。そして、いつでも相談できる親子の信頼関係を築くことです。
子どもが性に関して悩んだり困ったりしたとき、「お父さんとお母さんは自分の味方だ」と感じられる関係を、日々の積み重ねでつくっていきましょう。
(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|3歳から始める性教育、基本のキ。嫌なときは「No!」と言う練習をしよう
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|専門家に聞いた「性器いじりへの対応」と「性器のケアを習慣にする年齢」
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|親が困る質問の代表格。「赤ちゃんはどこからくるの?」「セックスってなに?」にはこう答える









