あたまを使う/サイエンス 2018.3.5

算数力は会話の中で育つもの。5つの「カキクケコ」を大切にしよう。

黒澤俊二
算数力は会話の中で育つもの。5つの「カキクケコ」を大切にしよう。

先日、帰宅する電車の中で、3、4歳ぐらいの男の子がママに話しかけていました。
「どうして、きょう、こんなに混んでるの? あのお店と同じみたい」
「どうしてこの電車、緑の線になっているの? さっきのとは違うよ」
「ママ、このしるし何? バスのと似ているね。なぜこのしるしなの? 決まってるの?」
矢継ぎ早に次々とママに質問するのです。

かわいい小さな子どものしつこい声に、ママは
「電車の中だから静かにね」
と諭すように返しました。

私はこのとき、とてももったいない気がしました。なぜならば、このような会話の言葉に、算数・数学を学ぶきっかけとなる扉があるからです。

「車内は静かにすべき」というマナーももちろん教えるべきことですが、ほかの対応の仕方があったのではないか、とお節介をしてみたくなりました。不審者のおじさん、いやもはや不審者爺と疑われてしまいそうなので、そのお節介は控えましたが……。

しかし、もったいないのです。そう思う自分をほめて、その場は自分を納得させたのでした。自我爺さん(?)でしょうか……?

「算数力」とは何か?

そうなのです。ちょっとした会話の中に、算数・数学を学ぶきっかけがあり、会話の中でこそ「算数力」が育ちます。

ところで、数学という学問に根ざした算数、その算数を学ぶことで育つ力を「算数力」とするならば、その「算数力」とはどのような力なのでしょうか?

小学校では、算数科で育てる力を「小学校学習指導要領算数科目標」にのっとり、主に3つに分類しています。これを私流にまとめると、以下の3つが「算数力」となります。

  • 算数力A:生活に役立つ算数の知識や技能を身につけて日常のことを処理する力
  • 算数力B:日常のことを数理的にとらえ、論理的、かつ統合的・発展的に考え、数量や図形の性質などを見出し表現したりする力
  • 算数力C:数学の愉しさや良さに気づき、数学を活用し問題を解決する力

 
多少専門的な文言がありますが、「算数力」とは「算数の知識と技能を使い処理する力」「論理的、統合的発展的に考え表現する力」「数学を使って問題を解決する力」という3つの力だと言うことができるでしょう。

もちろん、これら3つの力は小学校で育てられるので、無理に先取りする必要はありません。ただ、3つの力をより効果的に身につけるのに有効な「態度」があります。これはぜひとも小学校入学以前からも育てておきたいものなのです。

そしてじつは、電車の中でママに質問する子どもの「問う」その姿に、「算数力」を育てる芽生えとして、ひとつのサンプル的な「態度」があったのです。

算数力を育てる態度とは

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育てよう。「算数力」に結びつく「態度」を

電車の中のあの子は、何回も理由を聞いていたのでした。算数科の学習では、この子どものように「理由を問う」という「態度」を重視します。なぜならば、その「態度」には2つの教育的価値があるからです。

ひとつは “主体的に自ら進んで言葉を発する” という「とらえる」態度。もうひとつは、算数科でも重点目標として育てている “筋道を立てて論理的に考える” という「考える」態度です。

ところで、そもそもこの「態度」とは何でしょう。「態度」とは一般的に「感じたり考えたりしたことが、表情・動作・言葉などに現れたもの」であり、「身ぶり」「そぶり」を意味します。また、「現れたもの」ではなく「物事に対する心構えや身構え」という心を意味する場合もあります。

そして心理学では、「態度」とは「心の準備態」と説明しています。さらにおもしろいことに、「態」という字は訓読みで「わざわざ」するという意味があります。

つまり、「感じたことや考えたこと」を「たびたび」「わざわざ」することが「態度」なのです。

「感じたことや考えたこと」を「たびたび」「わざわざ」することが「態度」

ですから、電車の中のあの子は、わざわざたびたび「どうして」と理由を「問う」ていたと言うことができます。しかも、数学の関数のように、何かに「関係」づけ、数学の定理のような「きまり」を求め、数学の集合のように「区分け」を意識し、数学の推論のように「見解」と「根拠」を求める行為をわざわざしていたのです。

子どもが「どうして」とか「なぜ」を発しているときには、決まってこの5つの「関係」「きまり」「区分け」「見解」「根拠」のいずれかを求めています。私はこれら5つを数学的追究項目「カキクケコ」と呼び、この追究態度が「算数力」を育むととらえています。ですから、「どうして」から始まって、「同じ」「~みたい」「違う」「似ている」「きまり」といった子どもの言葉は、宝物なのです。

たびたびわざわざ発する子どもの言葉を、もっと大切に取り扱い、磨いていきたいものです。なぜならばこれは、「算数力」が効果的に育つ素になる「態度」だからです。

どのようにして、算数力を育てる「態度」を磨くのか?

それでは、その態度をどう磨いていくのでしょうか。親は、そんな「問う」子どもにどのように対応すればいいのでしょうか。その答えは?

それは、親御さんご自身が考え実行しながら、自分の子どもに見合った方法を主体的に見出していかなければなりません。なぜならば、あなたのお子さまはあなたの子だから(宝)です。個別的で個性的なのが親子関係ですからね。

「え? そんなの無責任です」
「そこが知りたいのです」
こんな声が聞こえてきそうですね。

そこで今回は、ひとつだけ参考意見を挙げてみます。子どもが発する言葉に対応する親の行為として効果的なもの、それは以下の「ア」「イ」「ウ」「エ」「オ」です。

  • 「ア」:子どもの言葉に「あいづち」を打つ
  • 「イ」:子どもの言葉の「いいところ」を指摘する
  • 「ウ」:子どもの言葉に「うなづき」ながら聞く
  • 「エ」:子どもの言葉を「演じて」みせる
  • 「オ」:子どもの言葉を「オウム返し」に繰り返す

 
なぜ、これらが効果的なのでしょうか。そして、さらに「算数力」をつけるために親ができることはもっとあるのでしょうか。
次回のお愉しみとしておきましょう。

※本記事は2019年12月2日に公開しました。肩書などは当時のものです。