音楽をたのしむ/ピアノ 2018.7.6

脳機能がまんべんなく鍛えられる! 学力や運動能力も上げてくれる「ピアノ」のすごい効果

脳機能がまんべんなく鍛えられる! 学力や運動能力も上げてくれる「ピアノ」のすごい効果

幼児期に人気の習い事として、昔も今も常に上位に入っているピアノ。ご自身が習っていたという親御さんも多いでしょうし、ピアノが子どもの発育に良い影響を与える、とはよく耳にしますよね。

実際に、脳科学の観点からも、ピアノを弾くことが脳の発達を促し、脳の構造までも変えてしまうことがわかってきました。それはいったいどういうことなのか、具体的にご紹介していきましょう。

ピアノが “人間力” を伸ばす

「人生の成功に関係するすべての基礎がピアノで高められる」
「科学的に実証されているものの中でピアノほど良いものはない」
そう提唱しているのが、人気テレビ番組にも出演し、脳科学者として全国的に知られる澤口俊之先生です。

澤口先生いわく、ピアノを弾くことで「HQ(人間性知能)」が向上し、問題解決能力、主体性、協調性、思いやりなど、数値ではなかなか測りづらい “人間力” が伸びるとのこと。「HQ」とは、「頭の良さ(IQ)」とは異なる、人間らしい生活を送る能力のことをいい、幼少期において重視されている知能です。

そして、学習塾や英会話、習字やスポーツなどの習い事をしている子どもに比べて、ピアノの練習をしている子どもは、突出して「HQ」が高いのだそうです。これはなぜなのでしょう?

澤口先生は、ピアノが「HQ」を向上させる理由として、次のように述べています。

おそらく、ピアノは両手で微差に違う指の動きができることと、譜面を先読みして覚えて後追いしながら弾くことが主な理由だと考えられます。片手で弾くピアニカに同じような効果はなく、両手の動きが全く違うヴァイオリンにはまだ明確な証拠がありません

(引用元:ピティナ|今こそ音楽を! 第3章:脳科学的観点から

確かにピアノは、両手を複雑に使いわけ、さらに譜面も一時的に記憶しながら弾いていく楽器。考えてみればなかなか高度なテクニックを要しますよね。「HQ」の中心となる脳機能をワーキングメモリと呼びますが、ピアノを弾くことで、このワーキングメモリがぐんと伸びるのだそう。数学を解くための地頭を鍛える効果もあるのだとか。

学力だけではなく、社会でも通用する力を

さらに、澤口先生は次のようにも言っています。

ピアノの稽古をすると、語彙が増えるという論文もあります。左右の脳を繋げる脳梁という神経束の一種がありますが、ピアノをすると言語に関する神経束(軸束)が5倍くらい太くなります。

(引用元:同上)

平衡感覚や感情、思考に関係する小脳や、記憶に関係する海馬も、ピアノ練習時間を増やせば増やすほど機能的に良くなるというデータがあります。

しかも、ピアノは考えながら手を使うので、脳と手をつなぐ錘体路という神経ネットワークの発達も見られます。脳だけではなく、手と脳をつなぐ道も鍛えられるというわけです。つまりピアノを弾くこと、そして継続して習うことで、脳機能がまんべんなく鍛えられ、学力や運動能力にまで効果を及ぼすということが言えるのです。

また、音色や曲に触れることで、美しいものや純粋なものに感動する豊かな感性を育むこともできるでしょう。それらは将来的に社会でも通用する、“生き抜いていく力” を身につけることにもつながっていくのではないでしょうか。

2015年末、国内の大手電機メーカーが、「東大をはじめとする国内難関大学生の約半数は、ピアノを習ったことがある」というアンケート結果を公表しました。ピアノを習えば東大に入れる、ということではないですが、こういったデータからも、ピアノを習うことで脳の発達が進む可能性はおおいに期待できそうですよね。

手指の巧緻性(器用さ)や音感にも影響するピアノ

手の器用さや感度の良さを育てるうえでも、ピアノはうってつけの楽器。広島大学の研究によれば、手指の巧緻性(器用さ)は、「計算能力」にも大きく関わってくるとのこと。同様に、いま注目されているモンテッソーリ教育やシュタイナー教育でも、巧緻性は重要視されているのです。

そして、絶対音感、相対音感といった「音感」が身につきやすくなるという利点も見逃せません。モーツァルトやベートーヴェン等の音楽家だけでなく、相対性理論で有名なアインシュタインや世紀の天才と呼ばれるレオナルド・ダ・ヴィンチもまた、絶対音感の持ち主だったと言われています。

「絶対音感を持つ人の脳は、そうでない人に比べ、左脳の側頭平面(言語の理解や数学的能力に深く関係していると考えられている箇所)が、右脳の側頭平面に比べて2倍近い大きさに発達していた」「絶対音感を身につけた子どものIQは、そうでない子どもに比べて10ポイント以上も高い」というデータも出ているほどです。

そしてこの「巧緻性」や「絶対音感」は、3~5歳の時期に身につきやすいことがわかっています。巧緻運動をつかさどる「運動野」と呼ばれる部分や、聴覚機能の発達のピークを迎えるのがその時期だからです。ただしこの時期を過ぎていても、脳は成長していくのでご安心を。年齢が低いほど脳が変化・成長し、能力を獲得しやすいのは事実ですが、大人になってからでも、学べばしっかり脳は成長しますよ

ピアノを習い事として選択する場合、3歳くらいから始める方が多いのかもしれません。ただ、3歳で何か曲を弾くというのは難しいようです。大手のピアノ教室などでも、3歳児クラスはいろいろな曲を聴いて、歌ったり踊ったり鍵盤を触って音を鳴らしたりと、とにかく耳や感性を育てる内容が多く見受けられます。

そして4~5歳のクラスで初めて曲を弾き始めるパターンが多いようです。ピアノを始めるなら指がしっかりしてくる4歳ぐらいからが良い、とする意見もあります。ただ発育には個人差もあるうえ、先ほども述べたように脳は成長を続けますから、それ以降でもまったく効果がないという事ではありません。

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脳の発育にとって良いこと尽くしのピアノ。もしお子さまの習い事で迷っているのなら、ピアノを選択してみるのはいかがでしょう。

文/鈴木里映

(参考)
ピティナ|今こそ音楽を! 第3章:脳科学的観点から
マイナビウーマン|ピアノの習い事はいつから?子供に及ぶ7つの効果と月謝相場!
STUDY HACKERこどもまなび☆ラボ|子どもを伸ばすピアノのチカラ
瀧靖之 著(2016),『「賢い子」に育てる究極のコツ』,文響社.