お子さんに「月はいくつあるの?」と聞かれたことはないでしょうか。丸い月、半分の月、バナナのような月、夜空の月、朝や昼に見る月、オレンジの月、黄色い月、白い月——月が見せるさまざまな表情に気づき、子どもが「なぜ? どうして?」と思ったら、その興味を学びにつなげましょう。
夜空を見上げて一緒に月や星を観察したり図鑑などの本や博物館で調べたり……子どもの「もっと知りたい」を家庭でサポートする方法について紹介します。
子どもの4人に3人は月や星を見るのが好き
夜空に浮かび上がる大きな満月、ピンと張りつめた冬の空に輝く星たちに興味をもつ子どもは多いようです。
ベネッセ教育情報サイトが小学生の保護者を対象として2014年9月に実施したオンラインアンケートによると、「お子さまは月や星を見るのが好きですか? どのように?」と尋ねた結果、「とても好き(6.7%)」と「まあ好き(58.4%)」となりました。合わせて約75%、実に4人に3人の小学生が月や星を見るのが好きだということが判明したのです。
「とても好き」「まあ好き」と答えた人に理由を聞くと、
- 理科の宿題で空を見てから好きになりました
- 保育園の時にプラネタリウムに行って好きになりました
- 山奥のキャンプに行った時、満天の星空を見て感動したようです
- 寝る前に部屋から空を眺めることが増えました
- 月の向きが変わったとか、満月がきれいだなどと話します
などが挙がったほか、スーパームーンについてのニュースが興味をもつきっかけになったり、天体望遠鏡をほしがるようになったりするお子さんもいるようです。
子どもたちにとって、夜空の月や星は位置や形が変わる不思議な存在であり、もっとよく知りたいと思う対象だといえるでしょう。
月や星に興味をもったら、親は「ハマる」環境を整える
この「もっとよく知りたいと感じる経験」は、子どもの学習に対する姿勢を育みます。
東北大学加齢医学研究所・瀧靖之教授は著書『東大脳の育て方』の中で、好奇心から物事を突き詰めることで、やる気物質ドーパミンが放出され、脳のいろいろな部分の体積が大きくなると言っています。また東大医学部卒の男性は小学生のころにハマった虫取り体験について、「わからないことを自分で調べる理科系の考えがしみついた」と話していました。
もし子どもが、月の満ち欠けや動きに違いがあることに気づいて不思議に感じていたら「もっと知りたい」を引き出すために、こんなアプローチをしてみてはいかがでしょうか。
- 今晩の月はこんな形で、一昨日の形と違うよね。明後日はどんな形になっていると思う?
- 月は朝や昼にも見えることがあるんだよ。何でだろう?
- 雨や曇りの日って、月はどこにいるんだろう?
もしかすると、子どもは月の「見える形」や「見える時間」が変わっていくことを何となく気づいていて、「違う形になるんだよ」「僕も朝、月が見えるのは知っているよ」「月は空にあるけど見えないんだよ」などと答える子もいるでしょう。
そこでもう一歩、「何でだと思う?」と聞くことで知的好奇心をくすぐると、「なぜ? どうして?」という学びにつながるきっかけを与えられます。
この分からないことや疑問に対して自分からすすんで取り組もうとする意欲は、学校の授業での調べ学習など「主体的な学び」の力を育みます。
子どもの「なぜ?」をサポート
「なぜ? どうして?」から始まる子どもの知的好奇心や探求心を満たす方法はさまざまです。冒頭のアンケート回答のように、プラネタリウムへ連れていった経験が宇宙への興味につながるケースもあります。
お子さんが月や星に興味関心をもったら、次のような方法で学ぶ力をサポートしてはいかがでしょうか。
■図鑑や本を見ながら親子で調べる
小学館、講談社、学研などが子ども向けにシリーズで出版している図鑑には、目を見張る精緻なイラストはもちろん、迫力あるCGの映像が見られるDVDや3D体験できるデジタルコンテンツが付録としてついているものも多くなりました。こうした図鑑や本を親子で見てコミュニケーションを取りながら調べることで、気づきや発見を共有して楽しみながら学ぶことができます。
■プラネタリウムを楽しむ
日本プラネタリウム協議会(JPA)によると、全国には153館のプラネタリウムがあるそうです。常設のプラネタリウム以外にも国内各地でイベントや天体観測も企画されているので、検索して子どもが興味を示したものに出かけてみましょう。また、市販の家庭向けのプラネタリウムを購入してホームプラタリウムを楽しみながら天体について学ぶこともできます。
■科学館や博物館へ連れていく
常設のプラネタリウム施設がある科学館や博物館であれば、月の満ち欠けや自転公転、天体模型などでより詳しく学ぶこともできます。自治体が運営する施設は、在住もしくは通学している子どもの料金は無料または割引になるなど優遇されていることも多いので活用したいものです。
■家の庭やベランダから天体観測
図鑑やプラネタリウムなどで調べたら、実際に庭やベランダに出て親子で天体観測してみましょう。近年は、スーパームーンや流星群など天体に関する報道を詳しい解説とともにテレビや新聞で目にすることも多くなりました。このようなタイミングを上手に使うと、子どもは実際に見た月や星について園や学校でお友だちや先生へ話したくなり、これが自分の意見を自分の言葉で相手に伝えるトレーニングにもなります。
■大自然の中でキャンプ
周囲が真っ暗な大自然の中で、宇宙のスケールを感じて数えきれないほどの星が降り注いでくるような体験をするなら家族キャンプがおすすめです。都会では見られないわずかな輝きの星も見られ、これは星に限らず「普段は見えていなくても、そこにはちゃんと存在している」という感覚を養うこともできます。
月や星への興味は小学校4年生の理科につながる
こうした経験は学校の授業を先取り学習することにもなります。現在、月や星の特徴や動きについては、小学校4年生の理科で取り扱っています。
月や星を観察し,月の位置と星の明るさや色及び位置を調べ,月や星の特徴や動きについての考えをもつことができるようにする。
ア 月は日によって形が変わって見え,1日のうちでも時刻によって位置が変わること。
イ 空には,明るさや色の違う星があること。
ウ 星の集まりは,1日のうちでも時刻によって,並び方は変わらないが,位置が変わること。
(引用元:文部科学省|小学校理科の観察,実験の手引き 第4学年B(4) 月と星)
すでに先取りで身につけた月や星についての知識や経験は、学習単元の中で改めて体系立てて定着させることができます。逆に、学校で学習した内容について上記のような方法を取り入れて、子どもの理解をより深めることもできます。
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また、月や星について知る上では、星座をモチーフにした戦隊シリーズのテレビ番組や少年向けの格闘マンガ、または星占いやギリシャ神話なども、「楽しみながら天体について知る」大切な教材のひとつです。「遊んでばかりいないで勉強しなさい!」と言う前に、遊びの中に学びがあるかもしれないという視点で子どもが夢中になっているものを見つめ直してみるのもいいかもしれません。
(参考)
Study Hackerこどもまなび☆ラボ|知的好奇心がぐんぐん伸びる! 東大生の多くが経験している「ハマり体験」とは
ベネッセ教育情報サイト|一度見たら忘れられない 小学生は月や星を見るのが好き
ベネッセ教育情報サイト|オンライン投票【小】【小学生】お子さまは月や星を見るのが好きですか? どのように?
JPA(日本プラネタリウム協議会)|全国プラネタリウム一覧
Walker+|プラネタリウム・天体観測イベント
文部科学省|小学校理科の観察,実験の手引き 第4学年B(4) 月と星