教育を考える 2024.8.20

緊張は味方にできる! プレッシャーに負けない子どもになる、簡単メンタルトレーニング6つ

緊張は味方にできる! プレッシャーに負けない子どもになる、簡単メンタルトレーニング6つ

(この記事はAmazonアフィリエイトを含みます)

練習ではうまくできるのに本番になると実力を発揮できない子や、ちょっとしたことですぐに落ち込んでしまう子に対して、「もっと精神的な強さを身につけてほしい」と願う親御さんは多いのではないでしょうか。繊細さや慎重さはよい面でもありますが、ここぞというときには自分の力を信じて全力を出し切ってほしいですよね。

今回は、「子どものメンタルを強化する方法」をテーマに、専門家やメンタルトレーナーのアドバイスを参考に解決法を考えていきます。習い事の発表会やスポーツの試合、大事な試験当日など、本番で力を発揮するために日ごろからできる声かけなどもご紹介しますよ。

子どものメンタルはトレーニングで鍛えられる!

同じ出来事が起こっても、現実を受け止めて自分を鼓舞できる前向きな人と、とことん落ち込んで「だから自分はダメなんだ」とネガティブに捉える人がいませんか? じつはこの物事の受け取り方の差は「無自覚な思考習慣」にあるのです。

その違いについて、一般社団法人全国心理業連合会代表理事を務めるメンタルトレーナーの浮世満理子氏は次のように指摘しています。

実は、何か起きた時に「落ち込んでしまう人」というのは、理由がわからずに落ち込んでいることが多いんです。人間の思考パターンとして、わからないことがあると、勝手に悪いことを想像してしまうんですよ。監督が自分のことを嫌っているとか、自分と仲の悪いあいつが活躍しているとか。たとえ「自分の方が下手だから」と気づいても、無理やり他のところに理由をこじつけ始める。このように、理由が明確ではないことを悩んでいる人は本当に多いです。

(引用元:サッカーキング|「しんどい時に人の本質が表れる」…メンタルトレーナーがトップアスリートに教える目標設定のコツ

つまり、「落ち込んでしまう人」は不明確な状況で自動的にネガティブな想像をし、本当の原因とは関係ない理由に悩む傾向があるということ。また「人間はプレッシャーがかかると、自分ができないところに意識が向いて、力みが出てしまう」と浮世氏が言うように、思考のクセは無意識です。(カギカッコ内引用元:同上)

特に不安を感じやすい子にとっては、プレッシャーを乗り越えるのは容易ではありません。しかし、根本の気質を変えるのは難しくても、対策やトレーニングによって思考のパターンを変えることは可能です。

メンタルを強くするためにも、思考のパターンを変えるトレーニングは有効です。これを日常的に取り入れることで、少しずつではありますが、着実に変化が表れるでしょう。次項の6つの方法を参考に、ぜひ実践してみてくださいね。

子どものメンタルトレーニング02

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メンタルを鍛えるための「効果的な6つの方法」

ここからは、すぐに実践できる簡単なメンタルトレーニングを6つご紹介します。大事な試験の前やスポーツの試合前、習い事の発表会前など緊張が高まる場面はもちろん、友だち付き合いに悩んでいたり、失敗して落ち込んでいたりする時にも応用できますよ。

【方法1】「スモールステップクリア」を毎日続ける

「自信を失っている状況であれば、確実に達成できる目標にハードルを下げた方がいい」と浮世氏がアドバイスするように、毎日プチ目標を立てて次々と達成していくことを続けてみましょう。「遅刻せずに練習に行く」「元気に挨拶をする」「忘れ物をしない」など、当たり前にできていることでもOKです。

このような小さな目標=スモールステップをクリアする日々が続けば、いつの間にか自信がついてきます。すると、「次は少し背伸びした目標設定ができるようになり、難しいことにもチャレンジできるようになる」そうですよ。(カギカッコ内引用元:同上)

【方法2】結果よりも「努力したプロセス」をほめる

スポーツでも勉強でも、つい結果や成績にばかり目が向いてしまいがちですよね。しかし、スポーツメンタルトレーナーの伴元裕氏は、「『1位になれなくて残念だったね』と声かけをしてしまうと、子どもは『どれだけ努力しても勝たなければムダなのかな……』という思考に陥ってしまうリスクがある」と指摘します。

結果を最優先すると、練習などのプロセスが大きなプレッシャーとなり、喜びを感じるのが難しくなってしまいます。そして意欲も低下してしまうのです。そこで、日ごろから「今日のためにしっかり準備していたの見ていたよ」と、努力した姿ほめてあげることで、子どもはプロセスに価値を見出すようになるでしょう。(カギカッコ内引用元:マナビスタ|スポーツメンタルトレーナーに聞く、子どものやる気をぐんと引き出す声かけ【第1回】

【方法3】40秒間、否定せずに子どもの話に耳を傾ける

親子での会話に取り入れたいのは、伴氏が提案する「40秒ただひたすら子どもの話に耳を傾け、否定しないようにする」という方法。「40秒の思いやり」とも呼ばれるこの方法は、子ども自身が自分で考えて発した言葉によって気づきを得ることが目的であり、次の3つの点が強化されるそうです。

  • 失敗に目を向け、そこから学びやすくなる
  • 失敗への恐れが薄れ、挑戦しやすくなる
  • 緊張を和らげ、実力発揮が促される

大人が期待するような発言は出てこないかもしれませんが、大事なのは発する言葉の中身ではなく、投げかけられた問いに対して返事をするまでの「内省の時間」です。子どもが自分自身と向き合う時間を尊重してあげましょう。(カギカッコ内引用元:同上)

【方法4】本番前は「ポジティブな言葉がけ」を心がける

習い事の発表会や試験に臨む子どもに向けて、「脅しや嘘ではない、なるべくポジティブな言葉がけが大切」と述べるのは、「励ましの言葉」を意味する「ペップトーク」の第一人者、日本ペップトーク普及協会代表理事の岩﨑由純氏です。

本番前に、「ミスしたらダメだよ!」「負けたら〇〇買ってあげないよ!」などネガティブな言葉をかけられると、よりプレッシャーが高まってよい結果につながらないのは明白ですよね。「頑張って練習したんだから大丈夫だよ」「終わったらパフェ食べに行こうね」など、適度にリラックスできるポジティブな言葉をかけてあげるように意識しましょう。(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの成功も失敗も、親の言葉がけ次第! 「ペップトーク」が持つすごい力とは

【方法5】「緊張は味方にできる!」と子どもに教える

どんなにポジティブな気持ちで本番に臨んでいても、本番直前で緊張するのは仕方のないこと。ドキドキが止まらなかったり、汗をかいたり手足が震えたりと、生理的反応を感じたときこそ、「緊張を自分を鼓舞する材料にする。つまり、味方につける」ことの重要性を岩﨑氏は説いています。

親や指導者は、はじめて緊張を味わった子どもに、その緊張をしっかり味方にすることを教えることが大切です。「緊張するということは、あなたが本気になった証拠だから大丈夫だよ」「緊張を味方にできたら、練習以上にすごいことができるよ」と声をかけてあげて、緊張をポジティブに変換できるよう導いてあげましょう。(カギカッコ内引用元:STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|本番に強いか弱いかは価値観で決まる。「緊張を味方につける方法」の教え方

【方法6】「得意な科目」や「好きな勉強」を優先させる

中学受験などを意識するようになると、親はつい、苦手な教科や点数が低い科目をなんとかしようと焦りがちですが、本人にプレッシャーを与えて逆効果になることもあるため、注意が必要です。そこで、中学受験メンタルトレーニング協会代表の大柳美紗氏がおすすめするのは「好きな科目を優先して伸ばす」こと。

大柳氏によれば「得意科目や好きな科目をさらに伸ばすために力を注げば、心が前向きになって自分に自信がついてきます。人よりも得意なものがあると、自信とやる気がグンと上がり、不得意科目への挑戦意欲がわくことも」あると言います。さらに、総合点で合否が決まるような中学受験においては、得意な科目で点数を稼ぐのも作戦のうち。できないことに目を向けるのではなく、本人が好きなことや得意なことを伸ばしてあげましょう。(カギカッコ内引用元:エデュナビ|中学受験で溜まるストレス!実体験で得たメンタルトレーニング

子どものメンタルトレーニング03

勉強面でのサポートにも効く! 超おすすめ “メントレ本”

そもそもメンタルトレーニングの目的は、スポーツの世界においては結果を出すことが第一。メンタルトレーナーの清水利生氏は、「自分の実力を上げる『レベルアップ』と、試合で実力を発揮する『ベストエフォート』の両方をサポートすること」がメンタルトレーニングであり、結果が出れば自信がついて、自己肯定感が高まるという相乗効果にも言及しています。

自信があるからメンタルが強い、というわけではなく、「メンタルを鍛えれば結果につながり、良い結果が出れば自信がついて自己肯定感も高まる」というわけです。このように、メンタルトレーニングには、スポーツで結果を出すこと以外にも、子どもの将来や日常生活にもよい影響を及ぼす効果が期待できることを清水氏は説いています。

最後に、清水氏の著書をご紹介します。スポーツや勉強を通じて子どもに身につけさせたい方はもちろん、勉強面でのサポート、ビジネスシーンにおける部下の育成にも生かせる内容となっています。子どもたちの可能性を最大限に伸ばす方法が満載ですよ!(カギカッコ内引用元:『スポーツの本番に強くなる!子どもメントレ』)

『スポーツの本番に強くなる!子どもメントレ』(東洋館出版社|清水利生・著)

子どもメントレ

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メンタルトレーニングと聞くと、専門的で難しい知識が必要であるように感じますが、日常生活のなかでもできることはたくさんあります。ちょっとした言葉がけで、子どものやる気が高まったり、自信がついてチャレンジ精神が育まれたりすることも。メンタルを鍛えて、ポジティブな気持ちをもち続けていれば、大きな困難にぶつかったときもきっと乗り越えられますよ。

文/野口燈

(参考)
サッカーキング|「しんどい時に人の本質が表れる」…メンタルトレーナーがトップアスリートに教える目標設定のコツ
マナビスタ|スポーツメンタルトレーナーに聞く、子どものやる気をぐんと引き出す声かけ【第1回】
マナビスタ|スポーツメンタルトレーナーに聞く、子どものやる気をぐんと引き出す声かけ【第2回】
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|子どもの成功も失敗も、親の言葉がけ次第! 「ペップトーク」が持つすごい力とは
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|本番に強いか弱いかは価値観で決まる。「緊張を味方につける方法」の教え方
エデュナビ|中学受験で溜まるストレス!実体験で得たメンタルトレーニング
TOYOKAN BOOKS オンライン|保護者必見!親のサポートで9割決まる⁉︎本番に強い子に育てるスポーツメンタルトレーングとは?