あたまを使う/教育を考える/本・絵本 2019.7.25

図書館の本の9割は○○系! 子どもに物語をすすめる親が図書館を活用しきれていない理由

図書館の本の9割は○○系! 子どもに物語をすすめる親が図書館を活用しきれていない理由

読み聞かせの絵本を探したり、子どもが調べ学習に利用したりするときに、図書館はとても便利な場所ですね。公共図書館は、地域の住民なら大人から子どもまで無料で利用できます。いつから、どんなふうに利用すれば良いのでしょうか? 学校図書館の改革も進めている児童文学評論家の赤木かん子さんに、図書館の上手な使い方についてお聞きしました。

編集/木原昌子(ハイキックス) 取材・文/田中祥子 写真/児玉大輔(インタビューカットのみ)

図書館デビューは何歳から?

子どもの図書館デビューは「0歳から!」です。生まれたらすぐに、子どもの名前で図書館カードを作ってあげてください。そのためには、妊娠する前でも後でもよいので、動ける間にお母さんがお近くの公共図書館に行って、どういうサービスが受けられるか聞いておくと良いですね。

図書館には、0歳からでも楽しめる絵本がたくさんあります。『ぴょーん』(ポプラ社/作・絵まつおかたつひで)は、カエルやネコなどの動物がジャンプを繰り返す動きと擬音を楽しむ絵本です。見開きページを縦に使い、大胆でユニークな動物の動きを表現しています。読み聞かせをしてあげると、かなりの赤ちゃんが夢中になりますし、こういった本が図書館にはたくさんあります。

小さいお子さんに本を読むときに大事なことは、大人の思い通りに聞かせようと頑張らないことです。子どもが「これがいい」といったら読んであげればいいし、「イヤだ」といったら本を閉じればいい。また、最初から最後まで必ず読まなければいけないということもありません。そのときの子どもの気持ちに沿ってあげることが大切です。

図書館の分類を覚えると本探しが楽になる

子どもが図書館で目的の本を探すときは、「分類」を知っておくと便利です。日本の図書館で使われている分類方法は、日本十進分類法(NDC)という方式。内訳は「0.総記、1.哲学、2.歴史、3.社会科学、4.自然科学、5.技術、6.産業、7.芸術、8.言語、9.文学」の10個です。

一見、子どもが理解するには難しいような印象を受けますが、実は「分類」というのは3歳から7歳頃までにみられる遊びです。子どもは3歳くらいになると「分類ごっこ」と「定義ごっこ」をはじめます。よく小さな子どもが何度も「これなあに」と聞いてくることがありますが、それもこの遊びのひとつですね。ミニカーの中でも赤い車ばかりを並べてみたり、なにかを集めて自分なりの分類体系を作り、それを眺めて悦に入ったりするのが分類ごっこです。ですから、教えてあげれば理解することができますよ。

低学年向けに調べ学習のやり方について書いた『本で調べてほうこくしよう』(ポプラ社)では、分類クイズのページをつくってあります。細かに分類されている書架の絵を見ながら、サメの本はどこに入るのか、かけ算の本はどこに入るのかなどを考えさせるものです。この分類をこと細かく覚える必要はありませんが、スーパーで買い物するときに「野菜はあそこだな、牛乳はあそこね」と考えるように、「こういう本はこの辺にあるな」ということをちょっと意識できるようになると、本を探すのが楽になります

もしも分類が分からない場合でも、今の図書館には検索機があります。それで見つからなければ図書館の人に聞いてください。忙しそうなのに悪いなぁ、と思わずに聞いていいのです。それは司書の仕事のひとつなのですから。

“読書”で読む本は物語だけじゃない

本は、小説や絵本などの「空想系」と、解説文や生活分野などの「リアル系」に分かれます。たとえば物語は「空想系」で、自然科学の図鑑は「リアル系」ですね。先ほどの日本十進分類法で分類する10項目のうち、「空想系」は“9.文学”の1項目だけで、残りの“0~8”は「リアル系」です。つまり、図書館はどちらかといえば「リアル系」の本がある場所といえるでしょう。図書館に来たら文学や小説を読むように子どもにすすめる親御さんもいますが、実は本来の図書館は、そのときに必要なリアルな情報を探しに行くところなのです。

生まれたときからスマートフォンやコンピュータに囲まれて育った最近の子どもたちは、読書の傾向が昔と変わってきています。自然科学の本を好み、子どもっぽい本を嫌います。『世界で一番美しい元素図鑑』(創元社)は大人向けに作られた本ですが、小学校1年生の子たちからも借りられています。文化の違いが、読まれる本の違いに直結しているのです。大人の「読ませたい本」と子どもの「読みたい本」が違っているのは、こういった時代の違いという理由もあるからでしょう。

子どもを本好きにするには、子どもの喜ぶ本を読ませることが一番です。もしも子ども用の図鑑に満足しない子がいたら、児童向けコーナーからではなく、大人の自然科学の棚から本を探してきてください。写真が大きくて美しい図鑑がたくさんあります。文字は、まだ読めなくてもいいのです。本物のビジュアルが伝えてくれる情報はとても多いのですから。まずはそこからです。

子どもを本嫌いにしない本』(大修館書店)は、「子どもには読書家ではなく、本を“使える”人になってほしい」という想いから書いた本です。子どもの成長に応じた本の選び方や、ゲームに夢中で本を読まない子どもへの対処法など、赤ちゃんから高校生までの子どもをもつ親御さんにはぜひ読んでいただきたい1冊です。

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図書館には、季節ごとやイベントごとのおすすめ本を展示しているところもあります。また、「読み聞かせ会」や「おはなし会」が開催されている図書館もありますので、親子で参加してお気に入りの本を探すのも楽しいですね。静かな図書館で赤ちゃんが泣いたり子どもが騒いだりすると、周囲の迷惑にならないかと気になりますが、「赤ちゃんタイム」の時間や絵本の部屋を設けている図書館もあります。まずは最寄りの図書館に行ってみましょう。
次回は、子どもに適した本の選び方についてお聞きします。

改訂版 調べ学習の基礎の基礎
赤木かん子 著/ポプラ社(2011)

■ 児童文学評論家・赤木かん子さん インタビュー一覧
第1回:自由研究のテーマが簡単に見つかる「3つのキーワード」手法~調べ学習のコツ・前編
第2回:自由研究の“正しい”調べ方とまとめ方。絶対に守るべき「体裁の基本」~調べ学習のコツ・後編
第3回:図書館の本の9割は○○系! 子どもに物語をすすめる親が図書館を活用しきれていない理由
第4回:「つまらない本」を知ることも大事。図書館での“3千冊の乱読”から子どもが養う大事なもの

【プロフィール】
赤木かん子(あかぎ・かんこ)
児童文学評論家。
長野県松本市生まれ。法政大学英文学科卒業。
子どもの頃に読んだけれどタイトルや作者名が分からなくなってしまった本を探し出す「本の探偵」としてデビュー。現在は、児童文学やミステリーの評論、子どもの文化の研究を始め、図書館の改善活動にも積極的に取り組む。
主な著書に『改訂版 調べ学習の基礎の基礎 (かんたん!たのしい!調べ学習)』『本で調べてほうこくしよう』(ともにポプラ社)、小学校1年生から使える科学のシリーズとして『ヒマワリ』『アサガオ』『タンポポ』『イネ』ほか(新樹社)、『お父さんが教える 図書館の使いかた』(自由国民社)など。