教育を考える 2018.12.11

我が子を “自己チュー” にしないための3つの習慣 ~自己肯定感と自己寛容の関係~

長野真弓
我が子を “自己チュー” にしないための3つの習慣 ~自己肯定感と自己寛容の関係~

最近よく耳にするようになった「子どもの自己肯定感。平成26年度版のこども・若者白書で、諸外国に比べて日本の子どもたちの自己肯定感が低いことがわかり、国も提言を出しています。

子どもが自分の存在意義や価値を認めることができるのは、その後の成長においてとても大事です。しかし、その育み方次第では、自己中心的なわがままな性格になってしまう危険性もはらんでいます。

そうならないように、何に注意すればいいのかを知っておきましょう。今回は、「自己肯定感」とセットで考えなければならない「自己寛容」についてお話しいたします。

自己肯定感とは?

独立行政法人国立青少年教育振興機構で理事長を務める鈴木みゆきさんは、子どもの自己肯定感について以下のように話しています。

■なにかに挑戦するときに「わたしにはできる!」と思うこと
■「自分が大事な存在だ」「自分はここにいていいんだ」と自分を認める意識
■「自分が好きだ」という気持ち

このように、自己肯定感とは、自分の存在価値を認め、自分を信じてあげられる気持ちを持つことです。そして、自己肯定感を高めるには、さまざまな体験をしたり、家族の愛情を感じることがよいとされています。

しかし、自己肯定感を持つことはとても大切ですが、どうやら気をつけなければいけないポイントがあるようです。

自己肯定感の落とし穴

思考回路や習慣などの人としての基礎は12歳までにほぼ決まると言われています。ですので、それまでに自己肯定感を持てるようになることはとても大事で、そのために親の言葉がけや接し方がとても重要になってきます。

心理カウンセラーの中野とも子氏は、子どもの自己肯定感を以下の3つに定義づけています。

(1)無条件の自己肯定感
(2)条件付きの自己肯定感
(3)自己肯定感の低い状態

もちろん、いちばんいい状態は(1)です。注意したいのは(2)の状態で、誰もがつい陥りがちなのだとか。例えば、「テストでいい点数を取ったときだけ褒める」「かけっこで1番になったときだけ褒める」など、条件付きで愛情を示すことを続けると、子どもは「何か成果をあげないと自分の価値がない」と感じるようになってしまいます。

そしてもうひとつの懸念が、自己肯定感の高まりが「自分は完璧」という行きすぎた感情を生んでしまうこと。これにより「自分は正しい。悪いのは周り」という自己中心的な思考回路に陥ってしまい、人間関係などに悪影響を及ぼす可能性が出てきます。

大切なのは「自己肯定感」と「自己寛容」のバランス

どちらの懸念も、ある感情を持つことで解消できます。それが「自己寛容」

自己寛容とは、“自分を許す” “弱い自分も受け入れることができる” ことです。この「自己寛容」がベースにあって初めて「自己肯定感」が生きてきます。

「自己寛容」の要素が欠けたまま「自己肯定感」だけを育むと、自分を過信し、できない自分を認めないうえに、それを人のせいにするようになってしまうのです。

「〇〇くんがボールをパスしてくれなかった。パスをもらえたら、絶対に点を決められたのに!(ゴールできなかった)

我が子がこんなふうな発言をしたら、親としてショックですよね。

とはいえ、大人でもこのような人はいるのではないでしょうか?

「任せてくれたら必ず結果を出せたのに、直属の上司がいろいろと文句をつけてくるからさぁ……(結局結果を出せなかった)

「自己寛容」はアドラーの幸せの3条件のひとつでもあります。子どもの自立を促すのは「他者信頼」→「他者貢献」→「自己寛容」のサイクルの繰り返しです。

・自己を犠牲にすることなく、信頼する相手のために見返りを期待せずに貢献する。
・その結果、相手の心からの「ありがとう」「助かったよ」という感謝の言葉をもらう。
・不完全な自分でも、だれかの役に立てば、こんなに喜んでもらえるんだと実感する。

(引用元:NIKKEI STYLE|ありのままの自分・夫・子どもを認める勇気)

このような経験から実感を積み重ねていくなかで、子どもは自分の価値を認め、自立していくのだそうです。これこそまさに「自己肯定感」ですね。

「自己寛容」+「自己肯定感」に効く3つの習慣

子どもが自分を信じ、許し、ありのままを受け入れる度量を身につけるには、ポジティブマインドをもつ必要があります。そのために、日頃の親の接し方がとても大切なのは言うまでもありません。

しかし、それは難しいことではなく、ちょっとした意識を持つだけのようです。『子どもの自己肯定感を高める10の魔法のことば』の著者、教育専門家の石田勝紀氏が推奨する方法をご紹介します。

(1)GOODニュースを毎日語り合う
毎日の会話の中で「今日のGOODニュースは?」を定番にすることをおすすめされています。些細なことでもなんでもいいのです。「お天気がよくて気持ちよかった」「友だちとおしゃべりして楽しかった」など。

このときコツは「今日のBADニュース」を先に聞くこと。会話の最後がいい話で終わると気分も良くなり、その習慣が前向き思考への道筋になります。この効果は企業研修でも実証済で、GOODニュースを語り合うことでプラス思考になり、社内の雰囲気も業績もアップしたのだそうです。

(2)得意なことを徹底して「認める」
子どもの自己肯定感を伸ばすコツは「褒める」のではなく「認める」こと。褒めるのは大げさになりがちなので、認めるくらいのほうが、子どもにとってもモチベーションを高めるちょうどいいテンションなのだそうです。

「よくできるね。すごいね!」と言われたら、もっと認めてもらおうと子どもは頑張ろうとします。得意なことには特に徹底してこのスタンスを続けるといいでしょう。ただし、勉強に関して「すごいね」の声かけは、子どものプレッシャーにもなりがちなので注意が必要です。

(3)「ではどうしたらうまくいくだろう」を口癖にする
誰しも失敗はするものです。長い人生、うまくいかないこともたくさんあります。大切なのは次。「じゃあ次はどうするのか?」と考える習慣をつけることです。

テストの結果が悪かったり、友だちと喧嘩してしまったり。その事実を叱るのではなく、事実を踏まえて次を考えることは確実に思考を前向きにします。そしてこれは、自らの失敗も含めてありのままを受け入れるという「自己寛容」のトレーニングにもなるのです。

石田氏はこの3つのほかにも、子どもの行動に対して「助かった」「なるほど」「知らなかった」など、子どもの貢献や考えを認める声かけもとても有効だとおっしゃっています。これらは石田氏の多くの経験から特に効果があったものだそうですが、だからと言ってお子さんによっては合わないこともあるかもしれません。

完璧を目指すのではなく、「まずは試しに」くらいの感じで始めてみてはいかがでしょうか。親自身も “自分を追い込まない” ことが肝心です。

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「自己寛容」も「自己肯定感」も、ベースにあるのは親子の信頼関係です。それが試されるのは子どもが失敗したとき。失敗や喪失体験の際、子どもの悲しみや辛さに親が寄り添い、共感することが、子どもの心の安定を築き、「失敗しても大丈夫。どんな自分も愛されている」と実感できる基盤となります。子どもの日々の小さなことにも心を寄せることが、とても大切なのですね。

(参考)
マイナビウーマン 子育て|【専門家】自己肯定感を育てる、親子のコミュニケーション方法
ウーマンエキサイト|子どもの自己肯定感「ほめて伸ばす」は正しい?わが子を“自信満々の自己中”にしないために
Business Journal|人の一生は12歳までに決まるという残酷な現実
NIKKEI STYLE|ありのままの自分・夫・子どもを認める勇気
東洋経済ONLINE|「前向きな子」の親が実践する“3つの声かけ”