「お医者さんになりたい!」
そう言い出したわが子に、どう応援したらいいのか迷っていませんか?
子どもが医者を目指すことに期待を感じる一方で、「本当に向いているのかな」「医学部に行けるほど勉強ができるのかな」と不安になるのは自然なことです。じつは、医師という職業、私たち親の想像とはちょっと違う一面をもっているようです。
最新の調査で、とても興味深い事実がわかりました。川野小児医学奨学財団が全国435人の医師・研究者に聞いた生の声によると、医師に必要なのは「勉強ができること」だけではないようです。むしろ、子どもの意外な特徴が、将来の医師としての強みになるかもしれません。
今回は、現役医師が明かした「医師の本当のやりがい」と「必要とされる力」をお伝えします。「子どもが医者になりたいと言い出したら」そのときのために、いまから知っておきたい医師という仕事の実態と可能性。きっと、お子さんの将来を考えるヒントが見つかるはずです。
「お金のため?」その先にある医師の志
「医師になる理由は収入の高さ?」そう考える人もいるかもしれません。確かに、医師は安定した収入が得られる職業のひとつです。では、実際に医師として働いている人たちは、どんな理由でこの道を選んだのでしょうか。
全国の医師435人に「なぜ医師になったのか」を尋ねた結果、最も多かった回答は「世の中の役に立ちたい」(48.3%)でした。次いで「患者さんの病気を治したい」(38.4%)が続き、「高い収入が得られると思った」(20.5%)は3位にとどまりました。医師を志す動機の上位は、社会貢献や患者への思いなど、収入以外の部分が大きな比重を占めていたのです。
引用元:(公財)川野小児医学奨学財団調べ
「崇高な脳のことを知りたかったため」そんな探究心から脳神経外科医の道を選んだ医師がいます。また、「切らないがん治療に興味があったから」と放射線科医を目指した医師も。そして小児科医からは「子供が好きだから」という素直な思いも聞かれました。
ほかにも、「広く様々な疾患を診られる力をつけたかった」と内科を選んだ医師、「人の命を救いたかった」という強い使命感から救急科を志した医師もいます。
それぞれの医師がもつ、その人らしい志望理由。専門分野を選ぶときも、純粋な興味や情熱が原動力になっているようです。
医師に必要な力は「勉強だけ」じゃない
「医師には勉強ができる子が向いている」。子どもの将来を考えるとき、多くの親がそう思いがちです。でも、実際の医療現場では、勉強だけではないものが求められているようです。
今回の調査では、医師に必要な資質について興味深い結果が出ています。確かに「医学の知識と技術」は74.9%と最も高い数字を示しましたが、それに迫る高さで「コミュニケーション能力」(62.3%)が求められていることがわかりました。
この結果には、現代の医療現場を映す重要な意味が隠されています。なぜなら、医師が感じる最大のストレスは「患者やその家族からのクレーム」(49.2%)だからです。いくら医学の知識が豊富でも、患者さんやご家族との信頼関係が築けなければ、質の高い医療は実現できません。
📋 医師たちのちょっとした日常🚑
医師たちの日常生活では、思わず笑ってしまうような出来事も。友人との何気ない会話で「お大事に」と言ってしまったり、休日でも救急車のサイレンを聞くとつい反応してしまったり。「医療ドラマを見ながらツッコミが止まらない」という声も。真剣に向き合う仕事だからこそ生まれる、そんな “職業病” エピソードもまた、医師ならではかもしれません。
医師たちが感じる「本当のやりがい」
医師のやりがいは、具体的にどんなものなのでしょうか? 全国の医師435人に聞いた調査結果が、その答えを教えてくれます。
最も多かった回答は「患者やその家族から感謝されたとき」(63.7%)。次いで「人の命を救えたとき」(40.7%)、「手術や治療が成功したとき」(35.4%)、「患者やその家族の笑顔を見たとき」(31.7%)と続きました。これらの数字が示すのは、人々の命と幸せに直接関わる医師の仕事の本質といえるでしょう。
また、医師の仕事は診療科によって大きく異なります。内科、小児科、外科、産婦人科、救急科、精神科など、その専門分野はじつに多彩。それぞれの診療科で求められる適性もさまざまです。
たとえば、精神科医は「人の心理を理解したい」という思いから、整形外科医は「スポーツ医学への興味」から、産婦人科医は「出産の神秘的な体験に関わりたい」という理由からその道を選んでいます。
つまり、医師という職業には、子どもたちの様々な興味や才能を活かせる可能性が広がっているのです。お子さんの「得意」や「好き」が、将来の専門分野を選ぶヒントになるかもしれません。
引用元:(公財)川野小児医学奨学財団調べ
知っておきたい医療現場の現実
そしていま、医師の働き方が大きく変わろうとしています。
2024年4月、「医師の働き方改革」がスタートしました。この改革は、医師の長時間労働を適切な範囲に抑え、より健康的な環境で医療を提供できるようにすることを目指しています。具体的には残業時間の上限を設定し、持続可能な医療体制の構築を進めているのです。
しかし改革開始から約半年が経った現在でも、7割近く(69.2%)の医師が「変わらない」と回答。また、「研究に割ける時間が少ない」(51.0%)という課題も浮かび上がってきました。
ですが、ここで注目したいのは、明るい未来への手がかりです。調査によると、日本の医学研究レベルを「普通以上」と評価する医師が7割を超えていることがわかっています。世界でも高く評価される日本の医療技術と研究力は、着実に次世代へとつながっていくはずです。20年後、30年後に日本の医療技術を引っ張って行くのは、あなたのお子さんかもしれません。
【日本の医学研究のレベルを「高い」または「普通」と回答した理由】
引用元:(公財)川野小児医学奨学財団調べ
川野小児医学奨学財団の調査によって、医師という職業の本質が見えてきました――。
必要とされるのは、「医学の知識と技術」(74.9%)、「コミュニケーション能力」(62.3%)、そして「体力」(35.2%)。これら3つの要素がバランスよく備わっていることが大切です。しかし、さらに重要なのは「世の中の役に立ちたい」(48.3%)という志。そして、その志に応える患者さんからの「ありがとう」(63.7%)という言葉が、医師たちを支えているのです。
小児科、外科、内科、産婦人科など、それぞれの診療科に特徴があり、必要とされる資質も違います。だからこそ、子どもたちの個性や興味を活かせる可能性が広がっていると言えるでしょう。
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「将来、お医者さんになりたい!」
そんな言葉を聞いたとき、親としてどう答えますか? まずは「どんなお医者さんになりたいの?」と、子どもの思いを聞いてあげてください。
この記事で紹介した医師たちの生の声が、子どもたちの「夢を考えるきっかけ」になれば幸いです。「お医者さんになりたい!」という子どもの夢は、きっとその子らしい形で育っていくでしょう。
(参考)
公益財団法人川野小児医学奨学財団
公益財団法人川野小児医学奨学財団|財団設立 35 周年記念【医師・研究者 435 名へのアンケート調査】
PR TIMES|失われた息子の命をきっかけに設立した「川野小児医学奨学財団」 ー小児医療をめぐる課題に取り組む中で感じた、子どもたちの心と体を守るために必要なこと