「IQ」とは知能指数を表すものであり、誰でも知っているくらいポピュラーなものです。しかし最近では「頭」の知能指数であるIQよりも「心」の知能指数であるEQが注目されています。
EQとはどのようなものなのでしょう? また、EQを高めるためにはいったいどのような教育や環境が必要なのでしょうか。
EQ(Emotional Intelligence Quotient)とは
EQが測定されたのは1989年。アメリカのジョン・メイヤー博士が初めて発表しました。
IQが頭の良さを表す知能指数であるのに対し、EQは「生きる力」をどれくらい持っているかを表す指数になります。人間の言動はその時の気分や状態によって変わるものなので、その時に置かれている状況によってその都度変わってきます。自分の置かれている状況を認識してそれをコントロールすることができれば、適切な言動ができるようになるのです。
このような能力はもともと人間に備わっているものなのですが、それをうまく発揮できる人<EQが高い人>と、そうでない人<EQが低い人>がいるのが事実です。
EQが高い人は自分の感情をうまくコントロールできるため、コミュニケーション能力に長けています。ポジティブな環境を作り出すことができ、本来備わっている知識やスキルや経験を十二分に活かすことができるのです。
今、なぜEQが求められる?
高度成長期には技術力や科学的知識のある人間が求められ、学力が高い人材が社会に求められていましたが、最近では「頭の良さだけでは仕事はできない」と考えられるようになってきました。
IQが高い人の中にももちろんコミュニケーションスキルが優れている人はいます。しかし、協調性に欠ける人が多いという指摘もあります。また、好奇心旺盛である反面、興味のあることだけに集中しすぎて周りが見えなくなってしまうこともあるようです。
このように、特定の分野でずば抜けた才能を発揮する可能性を秘めているものの、コミュニケーションがうまく取れずに周囲から孤立してしまう場合も多いと言われています。
では、EQが高い人はどうでしょう。
一般的に、EQが高い人は好奇心旺盛で努力家です。そして、コミュニケーション能力が高く協調性がある、自分の感情をコントロールできるため逆境に強い……という、社会や仕事で求められる「生きていく力」が備わっていると言われています。
時代の移り変わりの中で、周りの要求に応えられる「感性」が必要とされるようになり、IQの高さよりもEQの高さが求められ始めているのです。
EQを高める教育とは?
EQを高めるためには、以下の5つのことが必要です。
- 自分の感情を認識できるようにする
- 自分の感情をコントロールできるようになる
- 自分を動かせる意欲を持つ
- 周囲の人を理解し共感する
- 社会的能力を身につける
これらのことから、特別な才能や能力ではなく、冷静に自分自身を見つめられる客観性や、人の心に寄り添える感受性を養うことの方が大切なのだとわかりますね。
幼少期(小学校入学前)のEQが子どもの生涯を左右するという研究結果も多くあります。生まれ育った環境もその一因です。子どもが感情を抑制してしまい、自分の感情をコントロールすることができない環境や、NOと言えない環境は良くありません。
また、コミュニケーションが希薄で相手の気持ちを考えることがない……といった環境も良くありません。自分の感情を認識し周囲の人を理解・共感するためには、コミュニケーションをとることが大切です。その過程において負の感情が生まれることもありますが、ネガティブな気持ちを吐き出せる環境作りも必要。幼少期の親との関わりは、EQ教育の第一歩なのです。
EQを高めるために家庭でできること
適切な環境作りが大切だということはわかりましたが、具体的にはどのようなことをすればよいのでしょうか。
コミュニケーションの取り方を工夫することで、子どものEQは伸ばすことができます。自分の感情をコントロールすることがまだまだ困難な子どもたちですが、関わり方を工夫するだけで感情を上手にコントロールできるようになるのです。
日記をつける習慣を
1日の終わりに、その日に起こった出来事やその時の気持ちを書きましょう。自分の感情と向き合うことで、感情をうまくコントロールできるようになります。日記には嫌な出来事や負の感情も書いていきましょう。紙に書き出すことで「もっとこうすればよかったのかも」と物事を冷静に判断できるようになります。
文字が書けないうちは、寝る前に一日の出来事を話しましょう。「どんなことがあった?」「どう思った?」「どうすればよかったのかな?」と子どもの気持ちを聞き、共感してあげることが大切です。それにより、ネガティブな感情をため込むことがなくなります。
落ち着ける空間を
大人でも、忙しかったりイライラしたりしたままで落ち着く時間がないと、その感情を引きずってしまい感情がコントロールできなくなりますよね。子どもも同じで、頭を休ませる時間が必要です。静かな空間で絵本を読み聞かせたり音楽を聴いたりすることで、気持ちをリセットできます。
親がお手本になる
EQを高めたいからと言って「〇〇しなさい」と押しつけてしまうと、NOと言えない子になったりストレスを与えてしまったりします。親が本を読んでいれば子どもも自ら本を読み始めたり、親が勉強していれば子どもも隣で勉強を始めたり……自主的に意欲をもって取り組める環境が大切です。
意思を尊重してあげることで、子どもは「やりたい」「やりたくない」という感情を認識し、やりたいときはその感情から意欲をもって行動できるようになります。決して甘やかすという訳ではありません。親自身も自分の意思をしっかりと子どもに伝えるようにしましょう。ダメなときは「ダメ」、無理なときは「無理」と、ちゃんと説明して伝えればよいのです。
愛情をもって接する
子どもに愛情を注ぐことは当たり前のことですが、育児や家事で忙しいとなかなか子供の相手をしてあげる時間が作れないものです。限られた時間の中でたくさん会話をしてたくさん抱きしめてあげましょう。そうすることで子どもは感情豊かに育ちます。感情豊かな子どもは相手の気持ちを考えられる子に育ちますから、状況を見て適切な判断をするようになります。
また、たくさんの愛情を注いであげることで自分に自信がつきます。大好きな人がいつも味方でいてくれる、いつもたくさん話を聞いてくれる、いつも気持ちを理解してくれている、と実感するのです。自信がつくと自己肯定感が芽生え、逆境や困難を自分の意思や力で乗り越えることができるようになる……すなわちEQが高まるのです。
(参考)
Study Hacker|EQを高めるための、具体的な4つの方法。そもそもEQを高めるってどういうこと?
Forbes Japan|いくつ当てはまる? EQ(心の知能指数)が高い人に共通する5つの特徴
マイナビニュース|心の知能指数「EQ」を上げるためにこなしたい、5つのアドバイス
ASQMII|仕事でIQ(心の知能指数)が求められるのはなぜ?