教育を考える 2024.10.2

「ちくちく言葉」から「ふわふわ言葉」へ。子どもの言葉が変わる3週間チャレンジ

「ちくちく言葉」から「ふわふわ言葉」へ。子どもの言葉が変わる3週間チャレンジ

(この記事はAmazonアフィリエイトを含みます)

相手を幸せな気持ちにする「ふわふわ言葉相手を傷つける「ちくちく言葉。小学校低学年の道徳などで学ぶ機会もあるため、お子さんから聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

言葉選びは円滑なコミュニケーションに欠かせない重要なものなので、小さいうちからしっかりと身につけさせたいですよね。そこで今回は、「ふわふわ言葉」のメリットをはじめ、「ちくちく言葉」を「ふわふわ言葉」に変換するテクニックなどをご紹介します!

「ちくちく言葉」は、相手だけでなく自分自身も傷つける

「ちくちく言葉」とは、言われると嫌な気持ちになる言葉のことを意味します。相手の心をちくちく刺すような悲しい気分にさせる言葉、と言えば小さなお子さんにも伝わるでしょう。「うるさい!」「邪魔しないで!」「早くして!」など、心に余裕がないときについ口をついてしまって、あとから後悔するような言葉は、代表的なちくちく言葉だと言えますね。

また、ちくちく言葉は他者に対してだけでなく、自分に向けて放たれることもあります。人材育成やコミュニケーション力向上研修の講師を務める葛西久仁子氏によると、「自分自身の言動や考えを否定するような言葉も『ちくちく言葉』の仲間」なのだそう。「どうせ私なんて」「やっぱり失敗した」「いつもうまくいかない」など、自分を否定して傷つける言葉もまた、立派なちくちく言葉なのです。*1

ちくちく言葉を使うことのデメリットは想像に難くありません。相手を傷つけるので友だちとの関係が悪くなるのは明白ですが、言ってしまった自分自身もまた、無意識のうちに傷ついています。「ちくちく言葉といった凶器のような言葉が飛び交う環境に身を置くと、緊張状態が続くようになる」と公認心理師の大美賀直子氏が述べるように、気持ちが落ち込んだりふさぎこんだりと、心身ともに不健全な状態に陥ってしまう恐れもあるでしょう。*2

さらに学年が上がっていくと、乱暴な言葉遣いが増えてくることもよくあります。「ウザい」「キモい」「バカ」といった言葉は、大人にとっては絶対に使ってほしくないものの、子どもたちの間では案外カジュアルに使われていることも。子どもにきつく注意すると反発されて逆効果になる恐れもあるので、次項で紹介する「ふわふわ言葉」を意識させるように導いてあげるのがおすすめです。

ふわふわ言葉とちくちく言葉02

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相手も自分も前向きな気持ちになる「ふわふわ言葉」の威力がすごい!

「ふわふわ言葉」とは、言われた相手の心が元気になったり、楽しくなったりする言葉のこと。「すてきだね」「上手だね」など、言われて嬉しいほめ言葉はもちろん、「ありがとう」「大好きだよ」といった日常的に使うお礼の言葉や素直な気持ちを伝える言葉も、ふわふわ言葉の一種です。

ちくちく言葉との大きな違いについて、前出の大美賀氏は以下のように説明しています。

「ふわふわ言葉」

  • “相手の気持ち”を重視していて、よく吟味された言葉
  • 自然に使える人はコミュニケーション上手

「ちくちく言葉」

  • 不快な感情をただ吐露している言葉
  • よく使う人は、苛立ちや衝動的な感情の処理をうまくできていない

ふわふわ言葉をよく使う人は、自分の感情をぐっとこらえてポジティブな雰囲気をつくるのが上手です。人間関係が円滑になれば、ストレスが減るので気持ちが安定したり、まわりからのサポートを得やすくなったりと、メリットだらけであることは明白ですね。*2

2010年に実施された小学2年生を対象にした研究では、友だちからふわふわ言葉をかけられることにより、「ただ嬉しいだけでなく、前向きな意欲が高まって自信にもつながっていった」ことが実証されました。また、ふわふわ言葉を意識して使うことで、「外見的な良さよりも内面的な良さに目を向けられるようになった」など、表面的ではない深い部分での相互理解が進むこともわかっています。*3

相手をほめていい気分にさせるだけでなく、「大丈夫だよ」「手伝うよ」と安心させたり、「きっとできるよ!」「よく思いついたね!」と励ましたりするのもふわふわ言葉です。たとえ無意識でも、ふわふわ言葉は子どもの心に雪のように積もり、それが自信や自己肯定感につながっていきます。だからこそ、「ちくちく言葉」は極力使わずに、できるだけ多くの「ふわふわ言葉」をかけてあげたいものです。

ふわふわ言葉とちくちく言葉03

ちくちく言葉をふわふわ言葉に変換しよう!

会話はよくキャッチボールに例えられます。大美賀氏は、会話を構成する「言葉」をボールに例えて、次のように説明しています。

「ふわふわ言葉」のようなやさしいボールが投げられたら、受け手は安心してキャッチできます。そして同じようにキャッチしやすいボールを投げ返そうとするでしょう。つまり、「ふわふわ言葉」のキャッチボールが多い環境なら、会話が弾んでコミュニケーションも上達します。

反対に、「ちくちく言葉」は危険なボールを不意に投げつけられるようなもの。受けた相手は当然傷つき、いら立ちが掻き立てられると、「ちくちく言葉」の応酬になってしまうこともあるでしょう。不快な感情は誰にでも生まれますが、そんなときこそ冷静さを失わずに、「ふわふわ言葉」を出せるようになりたいですよね。*2

前出の葛西氏は「ちくちく言葉の多くはふわふわ言葉に置き換えることができる」と話します。以下、具体例を挙げながら解説していきましょう。*1

■子どもが発する「ちくちく言葉」を「ふわふわ言葉」に変換!

子どもは素直だからこそ、ストレートな表現で相手を傷つけてしまうことも。そんなときは、「そういう言い方は相手が悲しい気持ちになるよ。こんなふうに言い方を変えてみよう」と、アドバイスしてあげましょう。明治大学文学部教授・齋藤孝氏の著書で紹介されている言い換えを紹介するので、参考にしてくださいね。

友だちが描いた絵を見て……
×ちくちく言葉:「変なの!」「下手くそ!」

◯ふわふわ言葉:「おもしろいね!」

ご飯が思っていた味と違う……
×ちくちく言葉:「おいしくない!」「まずい!」「嫌い!」

◯ふわふわ言葉:「少し苦手な味かも」

上記のように、正直な気持ちをそのまま口に出すのではなく、「相手がどう思うかな?」と視点を変えて言葉を選ぶトレーニングをしていきましょう。相手の心を傷つけずに、自分の気持ちを上手に伝えられれば、よりよい人間関係を築くことができます。言葉は思考にもつながっているので、相手を思いやるふわふわ言葉を発することが習慣づけば、優しい心も育まれていくでしょう。*4

■親が言いがちな「ちくちく言葉」を「ふわふわ言葉」に変換!

子育てをしていると、わが子を叱ったり責めたりするつもりはなくても、つい言い方がきつくなってしまうときもありますよね。「言い方を間違えたかな……」と後悔することが多いなら、家庭内でも「ふわふわ言葉」を意識してみませんか?

×ちくちく言葉:「お友だちの〇〇ちゃんは勉強もできて運動もできてすごいね。あなたも頑張らないとね」

◯ふわふわ言葉:「毎日学校と習い事を頑張っているね。ご飯も残さずに食べてえらいよ。お手伝いもしてくれて助かるよ、いつもありがとう!」

誰かと比べて「頑張って」と言われても、「ありのままの自分を認めてくれない」と感じませんか? それよりも、子ども自身がすでに頑張っていることに目を向けてほめてあげましょう。おすすめは、企業経営者向けにプレゼンコーチングなどを行なっている岡本純子氏が提唱する「みかんほかんの法則」です。

みかんほかんの法則
み:「認」める
かん:共「感」する
ほ:「ほ」める
かん:「感」謝する

この4つを組み合わせてほめるように意識すれば、相手との信頼関係が築けますよ。たとえば、以下のような言葉が効果的です。

【み】「先週できなかった二重跳びができるようになったね」というように、「いつもあなたを見ているよ」と認めていることを伝えます。

【かん】【ほ】「毎日夜ご飯のあとに練習して頑張っていたよね」と共感の言葉をかけて、「何度引っかかっても諦めずにチャレンジしてすごいよ」とほめましょう。

【かん】そして最後に、「二重跳びができるようになるまで頑張る、という約束を果たしてくれてありがとう」と感謝を伝えます。

これにより、「お母さんはいつも自分を認めてほめてくれる」と親への信頼が強固になれば、揺るぎない自信につながり、何事も前向きに取り組めるようになるでしょう。*5

【おすすめ書籍】「ちくちく言葉」→「ふわふわ言葉」

「ちくちく言葉」→「ふわふわ言葉」の言い換えをもっとわかりやすく子どもに教えたいなら、齋藤孝氏の著書2冊をおすすめします。

『ことばえらびえほん ふわふわとちくちく』(日本図書センター|齋藤孝・著)

↑4〜7歳向け。「ことば選び」について楽しく学べる絵本です。クイズや迷路などのページもあり、楽しみながら「ふわふわ言葉」を使えるようになりますよ。

『ことばいいかええほん ふわわふとちくちく』(日本図書センター|齋藤孝・著)

↑5〜9歳向け。「ことばの言い換え」について楽しく学ぶための絵本です。巻末には、迷路などで楽しみながらおさらいできるページもあるので、「伝える力」を育むトレーニングにぴったり!

ふわふわ言葉とちくちく言葉04

ふわふわ言葉があふれ出すには「習慣化」が大事!

「口ぐせが変わると、考え方や価値観に変化が生まれ、行動や結果までもが変わってくる」と葛西氏が述べるように、お子さんやご自身の自己肯定感を上げたい方や、前向きな考え方を身につけたい方は、口ぐせを「ふわふわ言葉」に変えてみるといいかもしれません。*1

心理カウンセラーの中島輝氏によると、新しい習慣を身につけるには、21日間続けると定着するとのことなので、まずは3週間を目安にチャレンジしてみましょう。*6

実際に筆者も、中学2年生の娘に対して「ふわふわ言葉」をかけるように意識してみました。反抗期もあり、娘とはぶつかり合うことが多かったのですが、私自身がイライラして「ちくちく言葉」を発していたのかも……と反省したのがきっかけです。

具体的には、「もう、早く洗濯物出してよ!」「何度も言わせないで!」と言いたいところを、「洗濯物早めに出してくれたら助かるな〜」「すぐに出してくれてありがとう!」などと言い換えるようにしました。すると徐々に娘の態度も軟化してゆき、2週間目の終わりくらいになるとお互いが「ふわふわ言葉」をかけ合うようになったのです。言葉選びをちょっと変えるだけで、親子間の信頼度が高まり、よりよい関係へと発展したのを実感しました。

***
子どもは語彙が限られているため、時に相手を傷つける「ちくちく言葉」を使ってしまいます。しかし、これは子どもだけの問題ではありません。大人も、意図せず相手の心を傷つける言葉を口にすることがあるのですあとから「しまった!」と後悔して自己嫌悪に陥ったり、たった一言で人間関係がギクシャクしたりしないためにも、日頃から「ふわふわ言葉」を意識してみませんか? 習慣化して身につけば、思考や行動も前向きに変化していきますよ。ぜひ親子で一緒に、楽しみながら「ふわふわ言葉」を身につけましょう!

文/野口燈

(参考)
(*1)参考・カギカッコ内引用元:JIJICO|「ちくちく言葉」と反対の「ふわふわ言葉」気を付けたい言い回しや影響など
(*2)参考・カギカッコ内引用元:All About 健康・医療|「ふわちく言葉」を意識すれば人間関係が変わる?
(*3)参考・カギカッコ内引用元:教育実践研究 第21集(2011)245-250|自尊感情を育む学級活動の工夫ーあたたかい言葉がけによる相互評価の継続を通してー
(*4)参考・カギカッコ内引用元:ダ・ヴィンチWeb|“ちくちく言葉”と“ふわふわ言葉”という言葉を知っていますか? 4歳から「言葉選び」の大切さを学べる絵本
(*5)参考・カギカッコ内引用元:STUDY HACKER|本当に効果的な「叱り方・ほめ方」とは?経営者1,000人超の話し方を変えた伝説のコーチに聞いてみた
(*6)参考・カギカッコ内引用元:新R25 Media|“1日3つ書く”習慣で思考が置き換わる。「ノート」で自己肯定感を高める3つの方法