教育を考える 2019.4.4

「頭の力」には「心の力」こそ必要。EQが高いと優秀な子に育つ納得の理由 

「頭の力」には「心の力」こそ必要。EQが高いと優秀な子に育つ納得の理由 

「EQ」とは、知能指数と呼ばれる「IQ」に対して、「心の知能指数」と呼ばれる概念のこと。このEQの重要性を提唱し、『子どもの未来が輝く「EQ力」』(プレジデント社)を上梓したのが、EQWELチャイルドアカデミーの主席研究員・浦谷裕樹先生です。EQが高いと、なぜ「子どもの未来が輝く」のでしょうか。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/榎本壮三(インタビューカットのみ)

「頭の力」をうまく使うにも「心の力」が必要

そもそもわたしがなぜ、「EQ」に注目することになったのか――。今回はそんな話からはじめてみます。わたしは学生時代から能力開発に興味を持っていました。つまり、「人間はどこまで伸びるのか」ということを突き詰めてみたかったのです。

日本の教育は、どちらかというと「どうやって底辺にいる子たちの力を伸ばして全体の底上げをするか」という発想に基づいたものです。そうではなくて、トップ層にいる人間の能力はどこまで伸びるのかということに興味があった。そんな経緯もあり、そういう研究を国内でも大きな規模でおこなっているEQWELチャイルドアカデミーに入社することになったわけです。

そして、幼児や小学生、中高生の能力開発トレーニングに携わるうち、学力をはじめとしたさまざまな能力向上のベースにあるものこそEQだということに気づきました。学力を向上させる「頭の力」には思考力や記憶力などがありますが、それらをうまく使うにも「心の力」であるEQこそが必要なのです。

EQの高低によって人生はまったくの別物になる

EQには、自己肯定感、忍耐力、協調性、やり抜く力、自制心、共感力、リーダーシップ、誠実さ、創造性、コミュニケーション能力……など、さまざまな要素があります。これらの力に優れているかどうかで子どもの人生はまったく別のものになるということは、容易に想像できるものでしょう。

EQが低ければ、まず自分の感情をうまくコントロールすることができません。そうすると、学校でも家でも問題を起こすことになる。友だちとはしょっちゅう喧嘩をするし、親のいうこともまともに聞かない。あらゆることに対するやる気も持てなくて、やるべきこともやれない。自己肯定感が低ければ、なにをやろうにも「自分はどうせ駄目だから」とマイナス思考に陥って、せっかく持っている才能を活用することもできないでしょう。

一方、EQが高い子どもはどうなるか。人間関係が穏やかで、やるべきことをしっかりやれるので、まずは学校生活にすんなり順応できます。そうなると、当然、学力も向上していくことになる。興味を示して「やりたい」と思った趣味やスポーツも、すいすい身につけられる。結果的に、「優秀な子」といわれる子どもに育ちやすいということになります。

そういう子どもが大人になったとき、社会に出たときのいちばんのメリットは、なにかをしようと思ったときにそれらをスムーズに実現できるということです。しかも、EQのさまざまな力を生かして、自分とまわりの人間の能力を最大限に引き出し、いいかたちで早く実現することもできる。自分の思いをかたちにできる、「自己実現」できる人間になれるのです。

「自己実現」がこれからの時代のキーワード

これからの時代は、高いEQによる「自己実現」が重要なキーワードになると感じています。というのも、あらゆる状況がそう指し示しているからです。

まずひとつが、「人生100年時代」に入ってきたということ。平均寿命が延び、60年も70年も仕事を続けなければならない人が増えていく。その間、技術革新はどんどん進み、つねに新しいことを学び続ける必要があります。そこで心が豊かでなければ、働き続けるモチベーションを保てないということになってしまうでしょう。

もうひとつが「グローバル化社会」です。日本でも外国人労働者が急激に増えているように、これからは多種多様な人たち、異文化を持つ人たちと一緒に仕事をしていかなければなりません。さまざまな人たちとうまく協働していくには、コミュニケーション能力をはじめとしたEQの高さが求められます。

加えて、とくに日本では「少子高齢化」が急激に進みます。人口が減り一人ひとりの重要性が増していくなかで並行して進むのは、「AI時代」。ちょっと考えればできるような仕事、マニュアル化できる仕事はAIが担うことになります。

わたしたち人間がやるべきことは、それこそAIにはできないことしかありません。EQを生かして粘り強く考え、創意工夫し、問題解決をして、本当に自分がやりたいことを実現していくことなのです。そうできれば、新しいことを学び続け、働き続けるモチベーションも保てますし、そうするために、多種多様な人ともうまく協働しようとするでしょう。

幸せとは、社会とかかわらなければ得られない

そして、「自己実現」は人間としての幸せにもつながるものです。いま、「ウェルビーイング」と呼ばれる「幸福感」の研究が進んでいます。その研究によると、人が幸せを感じるためには3つの要素が大切だとされています。

まずは、「体の健康」。病気がちであるより、体が元気であるほうが幸せというのは当然のことですね。ふたつ目は「心の健康」。毎日、うつうつと過ごすより、機嫌良くいきいきとしているほうがいい。これもあたりまえのことです。

3つ目が大きなポイントで、これは「社会的な健康」といわれます。人間はただ心身が健康であっても、本当の意味での幸せは得られません。一人ひとり異なる自分の能力を生かして世のなかとかかわる、もしくは社会貢献をする。それができてはじめて本当に幸せだと感じることができるのです。

「自己実現」とは、ただ身勝手に自分がやりたいことをやるというものではありません。幸せを得るためには、自分の能力を見定め、それを最大限に生かし、どうすればまわりの人たちによろこんでもらえるのかと考えなければならない。本当の意味での「自己実現」とは、自分が幸せになると同時に、周囲も幸せにするものなのです。

子どもの未来が輝く「EQ力」
浦谷裕樹 著/プレジデント社(2018)

■ EQWELチャイルドアカデミー・浦谷裕樹先生 インタビュー一覧
第1回:幼児教育ブームのなかで今注目の「EQ、非認知能力」って何のこと?
第2回:「頭の力」には「心の力」こそ必要。EQが高いと優秀な子に育つ納得の理由
第3回:父親流の「厳しい愛情」が子どものEQを伸ばす。人間性と学力を高める親のかかわり方
第4回:お説教は「○分以内」で。子どものEQを高める“叱り方の正解”とは

【プロフィール】
浦谷裕樹(うらたに・ひろき)
1972年7月31日生まれ、東京都出身。EQWELチャイルドアカデミー・新未来教育科学研究所主席研究員。工学博士、理学博士。京都大学理学部卒業、京都大学大学院理学研究科修士課程修了。高校時代に「人間の可能性はどこまで伸ばせるのか」との問いを抱き、学生時代より古今東西の能力アップ法を研究開始。現在は「楽しく、わかりやすく、ためになる」をモットーに全国で講演活動中。とくに参加型のトレーニングやワークを盛り込んだセミナーを得意とする。著書に『メンタルウェルネストレーニングのすすめ』(エコー出版)がある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。