学習指導要領が見直され、2020年から小学校での英語教育が大きく変わること、ご存知ですか? 聞いたことはあるけれど、具体的にどう変わるのかわからないという方もいるかもしれませんね。
全国の小中学生の保護者7,400人を対象に、ベネッセ教育総合研究所・朝日新聞社が共同で行った「学校教育に対する保護者の意識調査2018」によると、小学校の学習指導要領の改訂についてあまり把握していない小学生の保護者の割合は、なんと約9割にものぼるのだとか。
でも、我が子の英語教育に直結することですから、ぜひとも知っておきたいもの。そこで今回は、文部科学省が発表した情報をまとめ、わかりやすく解説します。
小学校中学年から週1コマの「外国語活動」が始まる
今まで小学5・6年時に実施されていた週1コマの「外国語活動」が、小学3・4年生からスタートします。
- 週1コマの「外国語活動」(年間35時間)
- 「話す」「聞く」を中心に外国語(英語)に慣れ親しむ
学校で初めて英語にふれる時期として、言語や文化について「体験的に」理解を深め、身近で簡単な事柄や基本的な表現を聞いたり話したりすることで、外国語によるコミュニケーション力の素地を培うことを目標としています。
- 英語の音声やリズム等に慣れ親しむ
- 日本語との違いを知り、言葉の面白さや豊かさに気付く
- 聞くこと及び話すこと(やりとり・発表)の言語活動の一部
学習内容は上記の通り。ゲームやクイズ、歌なども含めた活動となるようです。
小学校高学年は週2コマに増加。「外国語科」として成績対象に!
今まで小学5・6年生は「外国語活動」が週1コマあるだけでした。2020年からは、小学5・6年生では「外国語活動」ではなく、「外国語科」という「教科」に変わります。つまり、成績対象になるのです。また、授業時数も週1コマから週2コマに増えます。
- 週1コマ増え、週2コマの「外国語科」に(年間70時間)
- 「話す」「聞く」に加え、段階的に「読む」「書く」が加わる
ベースとなるのは、小学校中学年に引き続き「話すこと」「聞くこと」。ただし、今までは中学校で習っていた「読むこと」「書くこと」が小学校高学年で導入されることになります。
小学校高学年と中学校での「読む」「書く」の学習目標の違い
小学校高学年で始まる「読むこと」「書くこと」ですが、具体的にはどのような力が求められるのでしょうか。そして、小学校での教科化の影響を受けて、中学校で求められる読み書き能力はどう変わるのでしょうか。
まずは「読むこと」から、新学習指導要領における小学校と中学校の目標と比べてみましょう。
「活字体で書かれた文字」や「音声で十分親しんだ簡単な語句や基本的な表現」の理解
【中学校】
「簡単な語句や文で書かれた短い文章」の読み取り
小学校では文字やフレーズの理解、中学校では文や文章の読み取りと、次第にレベルが上がっていくことがうかがえますね。
では「書くこと」については、どのような違いがあるのでしょうか。
- 「大文字・小文字を活字体で書く」ことを定着させる
- 「書き写す」「例文を参考に書く」ことが目標
【中学校】
- 文字についての設定なし(小学校での習得が前提)
- 「正確に」「まとまりのある文章を書く」こと、「考えたことや感じたこと、その理由などを書く」ことが目標
小学校では文字の習得、中学校では論理的な文章のライティング力と、こちらも小学校の段階では初歩的な学習を徹底し、中学に進むとレベルアップしていく様子がわかります。
我が子の年は移行期、それとも全面実施期? 早見表
2020年からの英語教育改革、我が子にどう影響するのか気になる方も多いはず。小学校では2020年度から全面実施されますが、その前に2年間の移行期間があります。つまり2018年度からすでに始まっているのです!
中学校では2021年から、高校では2022年から(高1から1学年ずつ)全面実施スタートになります。中高でも小学校と同様、全面実施前に移行期間が設けられています。
我が子が各ステージで、移行期を経験するのか、全面実施期にあたるのか、事前に知っておきたいもの。そこで、お子さんが生まれた年でわかる表をご用意しました。備えあれば憂いなし。ぜひチェックしてみてくださいね。
移行期間中、英語の授業数はどうなるの?
上の表で「移行期にあたった!」という方も多いでしょう。小学校においては2018~2019年は移行措置期間となります。その間、文部科学省によって定められているのは以下の事柄。
【小学校高学年】「外国語活動」35時間に「外国語科」15時間を追加→年間50時間を確保
ただし、移行期間中は特例として最大15単位時間まで「総合的な学習の時間」を減らすことができます。そのため、以下の2点については各学校によって対応が異なります。
- 英語の時間を最低数確保するのか、2020年以降と同じ時間数で行うのか
- 英語の時間を上乗せするのか、「総合的な学習の時間」の代わりに行うのか
小学校中学年:年間 15~35時間
小学校高学年:年間 50~70時間
移行期間中に定められた最低ラインの時間で英語の授業を実施する学校もあれば、2020年以降の完全実施期と同じ、またはそれに近い授業数を設ける学校もあるのです。
2018~2019年度、全国の小学校ではどんな対応をしているの?
実際のところ、全国の小学校はどのような対応をしているのでしょうか。2018年5月に全公立小学校19,333校を対象に行われた調査結果をご紹介します。
2018年度(平成30年度)、移行措置分のみの授業時間数を設ける学校が、小学校中学年では5割以上、高学年では6割以上。全体的には、全面実施時と同じ時間数を設ける学校のほうが少ないようです。
一方、2019年度(平成31年度)は2018年度に比べ、中学年・高学年とも、全面実施時と同じ授業時間数を設ける学校の割合が増えるようですね。
また、どちらの年も「総合的な学習の時間」を減らすことなく、英語の時間を上乗せして編成している小学校が7割を越すようです。あなたのお子さんの小学校ではどうなっているでしょうか。
***
すでに始まっている小学校の英語教育改革。お子さんの年が移行期にあたるとしても、大文字・小文字を書くことなどは、中学入学前に必須の力として求められるそうです。我が子の英語教育を考える上で、ぜひ参考にしてくださいね。
(参考)
ベネッセ教育総合研究所・朝日新聞社共同調査「学校教育に対する保護者の意識調査2018」ダイジェスト版
文部科学省|小学校外国語活動・外国語 研修ガイドブック
文部科学省|第4章 外国語活動
文部科学省|中学校学習指導要領
文部科学省|移行期間中の授業時数調査の結果について