あたまを使う/プログラミング 2018.2.28

2020年から始まる「プログラミング教育の必修化」。その背景を探る。

編集部
2020年から始まる「プログラミング教育の必修化」。その背景を探る。

2016年4月、文部科学省より「2020年度からの小学校におけるプログラミング教育の必修化」が発表されました。

スマートフォンがすっかり身近なものになり、雨後の筍のように便利なサービスがどんどん生まれてきているこのご時世。小学校でのプログラミング教育の必修化への運びは、子どもを持つ親の身としても納得できる部分があるのではないでしょうか。

プログラミングは、ただの「はやりもの」ではありません。プログラミング教育必修化の背景を詳しく探ってみると、これからの21世紀を生き抜くために身につけておくべき重要なスキルであることが浮かび上がってきます。

第4次産業革命がもたらす変革

蒸気機関の発明により機械工業時代の幕開けとなった、18世紀後半の第1次産業革命。電気や石油を新たな動力源とし、重工業製品の大量生産が可能になった19世紀後半の第2次産業革命。コンピュータなどの電子技術やロボット技術を活用したマイクロエレクトロニクス革命により自動化が促進された、20世紀後半の第3次産業革命。

これらの産業革命によって、世界に大きな変革がもたらされたことは、歴史の教科書などでも知ることができますよね。でも、私たちが今まさに “第4次産業革命” の渦中にいることを、皆さんはご存知でしたか?

あらゆるモノがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)、膨大かつ多様なデータ群を取り扱うビッグデータの技術、AI(人工知能)やロボットといった各種デジタル技術。これらの発展により、この第4次産業革命では、産業のみならず労働や生活などあらゆる物事を根底から変える歴史的な変革がもたらされると予測されています。

第4次産業革命は、技術、ビジネスモデル、働き手に求められるスキルや働き方に至るまで、経済産業社会システム全体を大きく変革する。新たな社会システムや産業構造、就業構造の将来像を共有し、それに向けた目標を目指したロードマップに基づいて、オールジャパンで改革を進めなければならない。

(引用元:内閣府|日本再興戦略2016 -第4次産業革命に向けて-(PDF)

第4次産業革命が進行するなか、未来を担う子どもたちに求められているのは、まさに「IT・デジタル領域に強い人材になる」こと。小学校のプログラミング教育必修化には、このような背景があるのです。

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2030年にIT人材は最大79万人も不足する

また、将来的なIT人材不足への懸念も、プログラミング教育必修化が押し進められたひとつの要因になっているようです。

ビッグデータ、IoT等の新しい技術やサービスの登場により、今後ますますIT利活用の高度化・多様化が進展することが予想され、中長期的にもITに対する需要は引き続き増加する可能性が高いと見込まれる。
しかし、我が国の人口減少に伴い、労働人口(特に若年人口)が減少することから、今後、IT人材の獲得は現在以上に難しくなると考えられる。

(引用元:経済産業省|IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(PDF)

IT関連市場が拡大していくなか、特に若年の労働人口は減少の一途をたどる一方です。当然、ITの分野でもそのあおりを受けないはずはありません。

経済産業省の試算では、2019年をピークにIT関連産業への入職者は退職者を上回り、産業人口が減少に向かうことが予想されています。そして2030年には、最大79万人ものIT人材が不足する可能性を指摘しています。

「ITスキルは、好きな人が身につけておけばいい」という時代は、もう終わろうとしています。IT人材の育成と確保は、いまや日本という国全体が抱える喫緊の課題なのです。

プログラミング教育必修化の背景2

「AIによって消える職業」と「AIが生み出す職業」

株式会社野村総合研究所が、英オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授およびカール・ベネディクト・フレイ博士と共同で実施した研究によれば、日本の労働人口の約49%の職業が、10~20年後にはAIやロボットなどに代替される可能性が高いのだそう。「一般事務員」「受付係」「警備員」など必ずしも特別な知識やスキルが求められない職業に加え、「自動車組立工」「電車運転士」「路線バス運転者」など秩序的・体系的操作が求められる職業も、代替される可能性が高いようです。

こういった未来予測をまのあたりにすると、「AIの進化により人間の仕事がなくなるのではないか」と不安を感じる方もいるかもしれませんね。

でも決して忘れてはいけないのは、そういったAIやデジタル技術を “生み出す側” の職業は今後ますます増えていくということです。飛行機というものが誕生して初めて、「パイロット」「キャビンアテンダント」「整備士」「航空管制官」といった職業が生まれたように。

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小学校のうちからプログラミング教育をほどこしてあげる。それは、子どもたちの未来を広げてあげることと同義なのかもしれませんね。

(参考)
総務省|第4次産業革命がもたらす変革(PDF)
内閣府|日本再興戦略2016 -第4次産業革命に向けて-(PDF)
経済産業省|IT人材の最新動向と将来推計に関する調査結果(PDF)
野村総合研究所|日本の労働人口の49%が人工知能やロボット等で代替可能に
文部科学省|小学校段階におけるプログラミング教育の在り方について(議論の取りまとめ)