本・絵本 2026.7.6

名作より「いま好きな本」を。子どもが夢中で読む次の1冊の見つけ方

名作より「いま好きな本」を。子どもが夢中で読む次の1冊の見つけ方

「読み終わっちゃった。次、何読む?」。子どもにそう聞かれて、本屋さんや図書館の棚の前で次の本をなかなか選べなかった経験はありませんか。あんなに夢中で読んでいたのだから勢いを止めたくない。でも次の1冊が思いつかず、気づけばいつもと同じ本を手に取っている。

その立ち止まりは、あなたが本選びに向き合っているからこそ起きるもの。

読み終えた本を「よかったね」で終わらせず、次につなげようとするその姿勢が、子どもの読書を支えています。今回は、その「次の1冊」をぐんと選びやすくするプロセスを、発達科学の視点とあわせてお渡しします。

▼ この記事の読み方
いまお子さんが夢中の1冊を軸に、そこから5つの方向へ、次の1冊が枝分かれしています。全部をたどる必要はありません。お子さんに合う方向を、ひとつ選んでみてください。

「次の1冊」が難しいのは、あなたのせいではない

そもそも、なぜ次の1冊選びは難しいのでしょう。それは、選ぶ基準が「大人にとっての良書」になりがちだからです。名作だから、ためになるから、と選んだ本でも、子どもの手が伸びないことがあります。読書研究の世界では、子どもが「自分の興味で読む本」こそが、読書の力を育てるとわかっています。

過去20年の研究をまとめたレビューによると、興味や楽しさから読む内発的な動機は、読む量にも読解力にも良い影響を与える一方、ごほうびや義務といった外からの動機は、その影響が小さいか、むしろ逆に働くこともあると報告されています。(ポツダム大学ほか、教育心理学者ウルリッヒ・シーフェレ氏らのレビュー)*1

つまり次の1冊選びのコツは、立派な本を探すことではなく、いま “どこが好きか” を手がかりに、その次の展開を探すこと。子どもが見せている「好き」が、いちばんたしかなヒントになります。

勉強する子ども

5つのポイント ―― 好きの隣を探す手がかり

では、具体的な作品とあわせて歩いてみましょう。

1. 同じ作家から探す

ある物語を気に入ったなら、それを書いた人の別の作品は、外れの少ない次の1冊です。たとえば『ぐりとぐら』(なかがわりえこ・作/おおむらゆりこ・絵/福音館書店)が好きなら、同じコンビによる『そらいろのたね』へ。言葉のリズムや絵の空気が地続きなので、子どもは安心して次の物語に入れます。

2. 続きを追う

シリーズものや続編は、世界と登場人物をそのまま引き継げる、いちばん段差のない選び方です。『エルマーのぼうけん』(ルース・スタイルス・ガネット・作/ルース・クリスマン・ガネット・絵/渡辺茂男・訳/福音館書店)で竜の子を助ける冒険に夢中になったなら、続きの『エルマーとりゅう』『エルマーと16ぴきのりゅう』へ。物語がまだ続くとわかるだけで、子どもは自分から手を伸ばします。

3. 少しだけ長いお話へ進む

いまの絵本を軽々読めるようになってきたら、絵が少し減って文字が増える本を選んでみます。大きく飛ばさず「少しだけ」がコツ。絵本と読み物のあいだをつなぐ幼年童話が、この段差をゆるやかにしてくれます。先ほどの『エルマーのぼうけん』も、絵本を卒業しかけた子の最初の1冊として親しまれてきました。

4. 同じテーマで探す

恐竜、電車、おばけ、食べもの。子どもの「好きなもの」が本に出てきたなら、そのテーマで横に広げます。物語だけでなく、図鑑やかがくえほんへ渡ってもかまいません。『ぐりとぐら』のカステラから料理をテーマにした絵本へ、というように。好きなテーマなら、多少むずかしくても読み進めます。

5. 同じ気持ちをたどる

笑える本、どきどきする本、しんみりする本。読み終えたときの「余韻」を手がかりに、同じ感情を味わえる本を選びます。『エルマーのぼうけん』のハラハラを楽しめた子には、別の主人公が知恵と勇気で切り抜ける冒険物語を。ジャンルや作者が違っても、「あの読後感をもう一度」が確かな導線になります。

下の早見表に、5つの手がかりと、選ぶときのヒントをまとめました。

つなぎ方 たとえば、こんなふうに 子どもへの問いかけ
同じ作家から探す 『ぐりとぐら』→『そらいろのたね』 「この人が書いた別のお話、読んでみる?」
続きを追う 『エルマーのぼうけん』→『エルマーとりゅう』 「このお話、まだ続きがあるみたいだよ?」
一段長いお話へ 絵本 →『エルマーのぼうけん』などの幼年童話 「今度はもう少し長いの、読んでみる?」
同じテーマで探す 『ぐりとぐら』の料理 → 食べものの絵本や図鑑 「この本の〇〇、もっと知りたくない?」
同じ気持ちをたどる 『エルマーのぼうけん』のわくわく → 別の冒険物語 「読み終わったとき、どんな気持ちだった?」

こうして1冊の「好き」を次につないでいくと、子どものなかで興味が少しずつ育っていきます。

興味の発達を説明する研究では、はじめは何かのきっかけで生まれた一時的な興味が、くり返し出会ううちに、その子自身の内側に根づいた「確かな興味」へと育っていくと考えられています。(トロント大学ほか、教育心理学者スザンヌ・ヒディ氏ら)*2

1冊ごとの「おもしろかった」をこうしてつないでいくことは、まさにこの「くり返しの出会い」を用意すること。読書が好き、という興味が根を張っていく道のりそのものなのです。

木のテーブルの上で大きく開かれた本から、緑の葉や花、蝶が飛び出している幻想的なイメージ

いちばんの近道は、子どもが「自分で選ぶ」こと

5つの手がかりをお伝えしてきましたが、もっとも大切なのは、お気に入りの1冊を子ども自身に選ばせることです。親が「これにしなさい」と決めると、その本は「読まされる本」になってしまいます。「自分で選ぶ」ことの効果は、実験でもたしかめられています。

小学3年生110名を対象にした実験では、同じ物語を読ませたにもかかわらず、「自分で選んだ」と感じたグループのほうが、読解の成績も、読む楽しさも高くなったと報告されています。この効果は、性別や読む力の差によらず見られたそうです。(ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジ、研究者リサ・フリドキン氏ら)*3

驚くのは、実際にはどちらも同じ話を読んでいたという点です。「自分で選べた」という感覚だけで、読解も楽しさも変わった。裏を返せば、親が2、3冊にしぼり、その中から選ばせるだけで、読書の手ごたえはぐっと変わります。選ぶ主導権を子どもに残すことが、次の1冊への何よりの後押しになるのです。

うまく選べなくても、その時間ごと楽しんで

ここまで手がかりをお伝えしてきましたが、じつは、その1冊が当たりかどうかは、そこまで大事ではないのかもしれません。本棚の前で「これかな、どうかな」と親子で顔を見合わせる時間。表紙の絵にひかれて手に取り、開いてみて「ちがった」と本棚に戻す。その行ったり来たりそのものが、本と仲よくなっていく時間です。

選んだ本が空振りでも、笑って「じゃあ次いこう」と言えたなら、それだけで子どもは「本を選ぶのは楽しい」と覚えます。うまく導こうとしなくて大丈夫。となりで一緒に迷うくらいが、ちょうどいいのだと思います。

白い背景に、青い線で結ばれた赤・黄・緑・青の点が脳の形を描く「神経ネットワーク」のイメージ図

今日、本棚の前でかけられるひとこと

手がかりがそろったら、あとは本棚の前で試すだけです。読み終えた本を片手に、「この本の、どこがいちばん好きだった?」と聞いてみてください。「主人公がかっこよかった」なら続きや似た主人公へ、「恐竜が楽しかった」なら同じテーマへ。子どもの言葉が、そのまま次の1冊への矢印になります。あとは候補を何冊か本棚から抜いて、「どれにする?」と手わたすだけです。
***
いまお子さんが夢中の1冊は何でしょう。その隣に、次の1冊はきっと見つかります。「次、何読む?」と聞かれても、もう本棚の前で立ち尽くさなくて大丈夫。あなたの手には、五つの方向をしめす手がかりがあります。

FAQ(よくある質問)

Q. 同じシリーズばかり読みたがります。ほかの本もすすめたほうがいい?

A. 無理に変える必要はありません。ひとつのシリーズを最後まで読みきる経験は、それ自体が読書の大きな自信になります。読みきったタイミングで、「同じ作家」や「同じ気持ち」の方向を使い、そっと隣の世界を見せてあげてください。

Q. すすめた本を読んでくれません。せっかく選んだのに、と少しがっかりします。

A. 選んだ本が空振りに終わるのは、よくあることです。大切なのは、選ぶ主導権を子どもに残すこと。何冊か候補を並べて「どれがいい?」とゆだねると、当たる確率が上がります。読まなかった本は、本棚にさしておけば、ある日ふと手に取ることもあります。

Q. 図鑑やまんがばかりで、物語を読みません。物語じゃないとだめ?

A. 物語でなくても大丈夫です。図鑑もかがくえほんも、りっぱな読書です。「同じテーマ」の方向を使えば、好きな図鑑から関連する物語へ、あるいはその逆へと、自然につないでいけます。子どもの「好き」の入り口を、まずは大事にしてあげてください。

(参考)
*1 Schiefele, U., Schaffner, E., Möller, J., & Wigfield, A. (2012)|Dimensions of Reading Motivation and Their Relation to Reading Behavior and Competence. Reading Research Quarterly, 47(4), 427-463.
*2 Hidi, S., & Renninger, K. A. (2006)|The Four-Phase Model of Interest Development. Educational Psychologist, 41(2), 111-127.
*3 Fridkin, L., & Hurry, J. (2025)|The effects of manipulating choice on children’s enjoyment and performance in a reading task. Current Psychology, 44(8), 6786-6797.