本・絵本 2026.6.26

絵本の読み聞かせは、子どものためだけじゃなかった!?親の心も整えるすごい力

絵本の読み聞かせは、子どものためだけじゃなかった!?親の心も整えるすごい力

寝る前にあと1冊、もうへとへとなのに「読んで」とせがまれて、ため息をついて、それでもページをめくった夜があったはずです。

子どもの語彙のため、学力のため、想像力のため。

「子どものために」と思って続けてきたあの時間が、じつはぐるりと回って、あなた自身のなかにも静かに温かいものを残していた。今日はそんな研究のお話です。

「子どもへの贈り物」のはずだった、あの時間

絵本の読み聞かせは長らく、子どもの語彙や読解力、学力との関係で語られてきました。学術的な調査でも、幼少期に読み聞かせを受けた子は国語や算数の正答率が高いことが知られています。

だから多くの親は、「子のため」と思って読んできました。眠い夜も、忙しい朝も、自分の楽しみのためではなく、子どもの将来のために、と。

ただ近年、世界の研究者たちが調べはじめたのは、その同じ時間が「親自身に何を残していたか」という、いままでていねいに測ってこなかった効果のほうでした。

布団の中で横になりながら、黄色い絵本を一緒に読む母親と小さな子ども

3年かけて、親のストレスが静かに下がっていた

出産直後の親子380組以上を対象に、ランダム化比較試験を行った研究があります。

一方のグループには、小児科外来で「読み聞かせと遊び」を後押しする支援が提供され、もう一方は通常ケアのみ。そして子どもが6カ月、14カ月、24カ月、36カ月になるたび、親のストレスを測定していきます。

3年後、はっきり差が出たのは、子どもの数値ではなく、親のほうでした。

読み聞かせを促されたグループの親は、親子の関わりに関するストレスが、ほかのグループより有意に低くなっていました。(アメリカ ニューヨーク大学医学部、アラン・メンデルソン教授ら)*1

絵本を読むという、ただそれだけの行為が、3年という時間をかけて、親であるあなたの内側からゆっくり緊張をほどいていた。これは思いがけない発見でした。

家族のあいだに、ちいさなあたたかい循環が生まれていた

別の研究では、もう一歩踏みこんで、家族全体の空気にも光が当てられました。同じグループのデータを使い、読み聞かせと遊びが家族のなかでどう作用するかを分析した研究です。

読み聞かせを多く経験した親ほど、ストレスの軽減だけでなく、日々の心のゆとりも増えていたことがわかりました。(アメリカ ニューヨーク大学、エイドリアナ・ワイスレダー研究員ら)*2

つまり、子どもの隣に身を寄せ、ゆっくり声を出してページをめくるあの数分は、忙しい1日のなかで親の呼吸をすこしずつ整える時間になっていたのです。研究者たちは、その「親の落ち着き」がやがて子どものふるまいの安定にもつながり、安定した子どもの姿がまた親にゆとりを返してくる、というちいさな循環を報告しています。

つまり、あなたが「子のために」と思って続けてきた読み聞かせは、まず親自身の心をやわらかくして、そこから家族のあいだをぐるりと循環する、あたたかい流れの起点になっていたのです。読み聞かせを始めたときには、こんなふうにあなたを取り巻く空気まで変わっているとは、誰も想像していなかったはずです。

星や光がキラキラと輝く、淡いブルーの背景

5歳になっても、なお残っていたもの

さらに、同じチームの追跡調査では、長期にわたる効果も確かめられました。

生後すぐから5歳まで読み聞かせと遊びを支援された家庭の子どもは、就学時点での社会情動的発達がよかったと示されました。(アメリカ ニューヨーク大学医学部、アラン・メンデルソン教授ら)*3

つまり、あなたが続けてきたちいさな夜の習慣は、子どもにとっても、親にとっても、ずいぶん先まで届いていたということです。

研究が肯定しているのは、特別な絵本でも、上手な読み方でもありません。読み聞かせを続けてきた、という事実です。

今夜のいつもの1冊を、自分にも開いてみる

子どもは、必ずしも絵本の内容を覚えていないかもしれません。でも、あなたの声が隣にあったことを、記憶のどこかが覚えています。そして研究が言っているのは、読み聞かせによって、あなた自身もまた、自分でも気づかないうちに、すこしずつ救われていたかもしれない、ということです。
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今夜、もし読み聞かせの時間があるなら、必ずしも「子どものために」だけでなくていい。「自分のために」もページをめくってみてください。眠い夜も、忙しい朝も、それでも本を開いてきたあなたは、子どもの未来を育てながら、ちゃんと自分自身のことも支えてきたのです。

FAQ(よくある質問)

子どもが大きくなって読み聞かせをやめてしまいました。もう手遅れですか?

A.手遅れということはありません。今までに読んできた時間は、もうあなたと子どものなかに積み重なっています。そしてもしまた読みたくなったら、何歳からでも再開していいのです。「一緒に本の話をする」かたちに変えるだけでも、研究が支える親子の時間は続いていきます。

抑揚なく棒読みになってしまうのですが、効果はありますか?

A.あります。研究で効いていたのは、読み方の技術ではなく、「親子で同じ本に身を寄せる時間そのもの」でした。むしろ落ち着いた声で淡々と読むほうが、親自身の呼吸も整いやすく、お互いに静かな時間になりますよ。

毎日読めない日のほうが多くて、罪悪感があります。

A.毎日でなくて大丈夫です。研究で測られていたのも、毎晩完璧にこなした親ではなく、読める日に読んできた親たちでした。読まなかった日があっても、読めた日の積み重ねは消えません。今夜の一冊が、また今夜の一冊として、あなたと子どものなかに静かに残っていきます。

 

(参考)
*1 Cates, C. B., Weisleder, A., Dreyer, B. P., Berkule Johnson, S., Vlahovicova, K., Ledesma, J., & Mendelsohn, A. L. (2016)|Leveraging Healthcare to Promote Responsive Parenting: Impacts of the Video Interaction Project on Parenting Stress. Journal of Child and Family Studies, 25(3), 827-835.
*2 Weisleder, A., Cates, C. B., Harding, J. F., Johnson, S. B., Canfield, C. F., Seery, A. M., Raak, C. D., Alonso, A., Dreyer, B. P., & Mendelsohn, A. L. (2019)|Links between Shared Reading and Play, Parent Psychosocial Functioning, and Child Behavior: Evidence from a Randomized Controlled Trial. The Journal of Pediatrics, 213, 187-195.e1.
*3 Mendelsohn, A. L., Cates, C. B., Weisleder, A., Berkule Johnson, S., Seery, A. M., Canfield, C. F., Huberman, H. S., & Dreyer, B. P. (2018)|Reading Aloud, Play, and Social-Emotional Development. Pediatrics, 141(5), e20173393.