からだを動かす/スポーツ 2026.9.17

アジア競技大会の「知らない競技」は、まんがで知ればいい。親子で読める本と、親が先に読む本<

アジア競技大会の「知らない競技」は、まんがで知ればいい。親子で読める本と、親が先に読む本<

「カバディって、なに?」

アジア競技大会の中継を観てみると、きっと子どもからこんな質問が飛んできます。セパタクロー、クリケット、柔術。オリンピックでは見かけない競技が次々に出てきて、親のほうが答えに困る。それは、この大会ならではの光景です。

でも、知らない競技を「調べて教える」必要はありません。物語として出会えば、ルールは自然と頭に入ります。この記事では、親子で一緒に読める本と、親が先に読んで子どもに語れる本の両方を紹介します。

オリンピックにない、アジア競技大会「ならでは」の競技たち

2026年の愛知・名古屋大会には、オリンピックではなじみの薄い競技がたくさん含まれています。盛んな地域ごとに見ると、アジアの広さが見えてきます。*1 まずは、どの競技が「ならでは」なのかを押さえておきましょう。

🏟️ アジア競技大会ならではの競技(2026年)
南アジアで盛ん カバディ、クリケット
東南アジアで盛ん セパタクロー
西・中央アジアで盛ん 柔術、クラッシュ
東アジア生まれ 空手、ソフトテニス、武術太極拳
新しい競技 ブレイキン、eスポーツ、テックボール、パデル、総合格闘技
おなじみだけど五輪では常連ではない 野球、ソフトボール、スカッシュ

このなかで、親が自信をもってルールを説明できるものは、いくつあるでしょうか。野球とソフトボールくらい、という方も多いと思います。それで大丈夫です。ここからは、その「知らない」を親子で楽しむための本を見ていきます。

セパタクローをする様子

知らない競技は、なぜ「まんが」で知ると入りやすいのか

ルールブックを読むより、まんがを読んだほうが競技が分かる。多くの人が感じてきたことですが、これには研究の裏づけがあります。

📊 研究データ
大学の生物学の授業で、教科書の代わりに科学まんがを使った研究では、もともと科学に苦手意識のあった学生ほど、内容の理解度と科学への態度の両方が有意に改善しました。文字と絵が組み合わさることで、概念が伝わりやすくなると考えられています。(アメリカ ジュニアータ大学、ジェイ・ホスラー教授ら)*2

ポイントは「苦手な人ほど効く」というところ。スポーツに詳しくない親子にこそ、まんがは向いています。登場人物が「カバディってなに?」と聞き、先輩が答える。その会話を読むだけで、親子はルールを「教わった」のではなく「一緒に知った」状態になれます。

親子で一緒に読める本(幼稚園〜小学生向け)

3冊とも小学生向けにつくられていて、幼稚園児なら絵を見ながら親が読んであげる形で楽しめます。

1. 『知ってた? 世界のスポーツ ルールと歴史』

アダム・スキナー 文/マーク・ロング 絵/奥沢駿 訳(徳間書店、2020年)
60種類以上のスポーツのルールと歴史を、見開きのイラストで紹介する絵本。カバディ、クリケット、スカッシュ、空手が収録されていて、アジア競技大会の「はじめまして競技」をこの1冊でかなりカバーできます。テレビに知らない競技が映ったら、このページを開く。そんな使い方ができる、リビングに置いておきたい本です。

2. 『eスポーツプレイヤーになるには?』

柳葉キリコ イラスト/佐伯めとろ まんが(金の星社「マンガでわかるあこがれのお仕事」シリーズ、2021年)
「ゲームが競技?」と親が戸惑いやすいeスポーツを、学習まんがの形で解説。「eスポーツって、なに?」という章がそのまま子どもの質問への答えになっています。ゲームとのつきあい方を考える章もあり、観戦をきっかけに親子で話し合う入口にもなります。*3

3. 『マンガ×動画×写真で3倍よくわかる! 中高生のソフトテニス』

柴田章平 著/しのと まんが(ベースボール・マガジン社、2023年)
日本生まれのソフトテニスは、オリンピックにはなく、アジア競技大会では日本が長く強さを見せてきた競技のひとつ。書名は「中高生」ですが、小学生から読める構成で、まんがパートは低学年でも追えます。「日本で生まれたスポーツなんだよ」のひとことが、応援の熱を上げてくれます。

eスポーツをする様子

親が先に読んで、子どもに語れる本

少年誌や青年誌の作品なので、子どもに直接渡すというより、親が先に読んで、ルールや面白さを自分の言葉で伝えるための本と考えてください。

カバディ『灼熱カバディ』

武蔵野創(小学館、全31巻・2024年完結)
「カバディなんてネタだろ」と笑っていた元サッカー部の高校生が、格闘技のような激しさに引き込まれていく物語。アニメ化・舞台化もされ、「ルールはこのまんがで初めて知った」という読者が多い作品です。2024年に完結しているので、いまから全巻そろえて読めます。1巻だけでも、カバディの基本は充分につかめます。

ブレイキン『ワンダンス』『ブレイキンガールズ!』

『ワンダンス』珈琲(講談社、連載中)/『ブレイキンガールズ!』きりきり舞(芳文社、全2巻・2018年完結)
『ワンダンス』はストリートダンス全般を描く作品で、ブレイキン専門ではありませんが、バトルの空気やB-BOYのかっこよさが伝わります。『ブレイキンガールズ!』は女子高生がブレイクダンス部をつくる話で、初心者向けの練習方法や考え方が丁寧に描かれているのが特徴。ブレイキンを初めて観る親の入門に向いています。

セパタクロー、柔術、クラッシュ……本がない競技は?

じつは、セパタクローや柔術、クラッシュ、テックボール、パデルには、書店に並ぶまんががほぼありません。でも、それは困ることではなく、次の章の主役になります。本がない競技こそ、親子で「つくる」チャンスです。

一緒に読むとき、ひとつだけ意識するなら「問いかけ」

本を渡すだけでも充分ですが、親子で読むなら、ひとつだけ意識したいことがあります。

📊 研究データ
2〜3歳児の親に、絵本を読みながら「これは何?」「どうなると思う?」と問いかけ、子どもの答えを広げて返す読み方を1か月続けてもらった実験では、ふつうに読み聞かせた家庭に比べて、子どもの言語表現の発達が有意に進み、発話も長く複雑になっていました。(アメリカ ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校、グローバー・ホワイトハースト教授ら)*4

「この選手、次はどうすると思う?」。そのひとことが、読み聞かせを対話に変えます。正解を知らなくて構いません。「ママも分かんない。どうなるんだろうね」と一緒にページをめくる。それだけで、子どもは受け身の読者から、考える読者になります。

本がない競技は、親子で「描いて」しまう

セパタクローの試合を観たあと、「どんなスポーツだった?」と聞く代わりに、「3コマで描いてみよう」と紙を渡してみてください。

📊 研究データ
覚えたい言葉を「書き写す」のと「絵に描く」のとで記憶を比べた7つの実験では、描いたほうが一貫してよく思い出せ、回収できる数が2倍近くになることもありました。描く行為が、意味・視覚・手の動きをひとつの記憶に結びつけるためだと考えられています。(カナダ ウォータールー大学、マイラ・フェルナンデス教授ら)*5

上手に描く必要はありません。「足でボールをける」「頭で返す」「ネットの向こうに落とす」。3コマの落書きで充分です。描くために観る、描くために親に聞く。その過程で、子どもは自分の言葉で競技を説明できるようになっています。まんががない競技は、親子でまんがをつくればいいのです。

パデルラケットとボールがコートに置かれた様子

今日からできる、3つの楽しみ方

本を全部そろえる必要はありません。次のうち、ひとつだけ試してみてください。

1. 中継の横に、絵本を1冊置いておく

『知ってた? 世界のスポーツ』のような1冊をテレビの近くに。知らない競技が映ったら「あった?」と一緒にページを探す。探す時間そのものが、親子の会話になります。

2. 親が1巻だけ読んで、翌日「教える」

『灼熱カバディ』の1巻を親が先に読み、翌日の中継で「カバディって、『カバディ』と言い続けながら攻めるんだって」とひとこと。親が知ったばかりの知識を語る姿は、子どもにとって「学びは大人になっても続く」というお手本になります。

3. 観たあとに、3コマで描く

紙とクレヨンを用意しておき、試合が終わったら「今日の競技、3コマで描いてみよう」。描けたら冷蔵庫に貼る。大会が終わるころには、家族だけの「アジア競技大会まんが」が並んでいます。*6

***

「カバディって、なに?」に答えられなくても大丈夫。知らない競技は、まんがで出会って、親子で描いて、一緒に応援すればいい。この秋の2週間あまり、アジア競技大会を親子の「はじめまして」の連続にしてみてください。

FAQ(よくある質問)

Q. 少年誌・青年誌のまんがを、子どもに見せても大丈夫?

A. この記事で「親が先に読む本」としたものは、必ず親が先に目を通してから判断してください。競技の説明部分だけを見せる、親が語り直す、といった使い方がおすすめです。

Q. 絵を描くのを嫌がる子には?

A. 親が下手な絵を先に描いて見せるのがいちばんです。「ママのほうが下手」と笑いながら描き足してくれることが多いもの。描かなくても、「実況ごっこ」で口で説明するだけでも効果は近いものが期待できます。

Q. 本を買わないと楽しめない?

A. 図書館で充分です。『知ってた? 世界のスポーツ』と『eスポーツプレイヤーになるには?』は図書館向けの版や流通があり、所蔵している館もあります。

(参考)
*1 公益財団法人愛知・名古屋アジア・アジアパラ競技大会組織委員会|スポーツ
*2 Hosler, J., & Boomer, K. B. (2011)|Are comic books an effective way to engage nonmajors in learning and appreciating science? CBE Life Sciences Education, 10(3), 309–317.
*3 STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|反射神経・戦略性・先読み力を必要とする「eスポーツ」。賢い子がハマる理由とは?
*4 Whitehurst, G. J., Falco, F. L., Lonigan, C. J., Fischel, J. E., DeBaryshe, B. D., Valdez-Menchaca, M. C., & Caulfield, M. (1988)|Accelerating language development through picture book reading. Developmental Psychology, 24(4), 552–559.
*5 Wammes, J. D., Meade, M. E., & Fernandes, M. A. (2016)|The drawing effect: Evidence for reliable and robust memory benefits in free recall. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 69(9), 1752–1776.
*6 STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|スポーツの習い事は1つに絞らない方がいい! という新常識