「”首班指名選挙” ってニュースで聞いたけど……それって何?」ニュースを見ていた子どもにそう聞かれたら、わかりやすく答えられますか?
2025年10月21日、第104代首相を指名する「首班指名選挙」が国会で行われる予定です。大人でも「なんとなく知っているけど、説明となると難しい……」ということが多い政治の仕組み。
今回は、「親子で学べるシリーズ」として、ニュースで見る “首班指名選挙の当日の様子” や “投票の仕組み” を、子どもにも簡単にわかりやすく解説します。
目次
📝 「首班指名選挙」ってどんな選挙?
私たちが投票する選挙は、「誰を国会議員にするか」を決めるもの。でも首班指名選挙はちがいます。国会議員が「誰を総理大臣にするか」を決めるのです。
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テレビのニュースで、国会議員たちが投票用紙を持って一列に並び、順番に投票箱に入れている映像を見たことはありませんか? あれが、まさに首班指名選挙の光景です。
ちなみに「首班(しゅはん)」とは「内閣のトップ」という意味。だから正式には「内閣総理大臣指名選挙」とも呼ばれます。でも、ニュースでは短く「首班指名」と言うことが多いんです。
首班指名選挙は、国会議員だけが参加する選挙なんだ。私たちが投票する選挙とは違って、国会議員が「誰を総理大臣にするか」を決めるんだよ。テレビで国会議員が投票用紙を入れているシーンを見たことがあるかもしれないね。
🏛️ 投票日、国会議場で実際に何が起きている?
では、首班指名選挙の当日、国会議場ではどんなことが行われているのでしょうか。じつはこの選挙は、衆議院と参議院のそれぞれの議場で投票が行わます。
知っておきたい! 衆議院と参議院のちがい
日本の国会は、衆議院と参議院という2つの議院からできています。
- 衆議院:議員の任期は4年。解散があり、国民の意思を早く反映できる。
- 参議院:議員の任期は6年。解散はなく、じっくり議論。
なぜ2つあるのでしょうか? それは、慎重に議論するためです。1つの議院だけで決めるより、2つの議院で別々に議論することで、間違いを防ぐことができます。
投票の日、議場ではこんなことが起きている
- まず、議長が選挙の開始を宣言をする
- 議員たちが投票用紙をもらう
- 名前を書いて、投票箱へ
- 開票と結果発表
国会議員一人ひとりに、投票用紙が配られます。この用紙は、私たちが選挙で使うものとは違って、シンプルな白い紙です。議員たちは投票用紙に、「この人を総理大臣にしたい」と思う人の名前を書きます。そして、議場の前にある投票箱まで歩いていって、一人ずつ投票用紙を入れます。
この投票は記名投票といって、後から「誰が誰に投票したか」がわかる仕組みになっています。議員の名前がわかる形で記録されるので、「隠れてちがう人に投票する」ことはできません。
国会には衆議院と参議院という2つの議院があるんだ。首班指名選挙の日は、それぞれの議場で国会議員が一人ずつ投票用紙に名前を書いて、投票箱に入れるんだ。誰が誰に投票したかは後でわかる仕組みになっているよ。テレビで見ると、みんな真剣な顔をしているよね。
📊 与党と野党って何? 選挙結果はもう決まっている?
首班指名選挙では、過半数(かはんすう)の票を獲得した人が選ばれます。過半数とは、「全体の半分より多い票」のこと。たとえば、議員が100人いたら、51票以上獲得すれば過半数になります。
じつは投票する前から結果が見えている? 与党と野党
通常であれば、首班指名選挙の結果は事前にほぼ決まっています。なぜでしょうか。ここで知っておきたいのが、与党と野党という言葉です。
- 与党:政権を担当している政党。衆議院で過半数の議席を持ち、総理大臣を出している側。
- 野党:政権を担当していない政党。与党を監視し、批判する役割。
首班指名選挙では、各政党の議員たちが、それぞれの政党として決めた候補者の名前を、投票用紙に書いて投票します。つまり、同じ政党の議員は、みんな同じ人の名前を書くのです。
つまり、与党が衆議院で過半数をもっていれば、与党の候補者が総理大臣に選ばれることがほぼ確実、ということ。
でも、2025年10月21日に予定されている第104代首相を指名する選挙は、少し事情が違います。
2024年の衆議院選挙で自民党は議席を大きく減らし、連立を組む公明党と合わせても過半数に届かない「少数与党」となりました。ほかの政党の協力がなければ、過半数を獲得できない状況。だからいま、連立をめぐる協議が続いているというわけです。
誰も半分を超えなかったら? 決選投票で決着!
1回目の投票で誰も過半数を取れなかった場合、上位2名で決選投票が行われます。
たとえば、Aさん:45票、Bさん:40票、Cさん:15票となった場合、AさんとBさんの2人で、もう一度投票を行います。この決選投票では、どちらかが必ず過半数を獲得するため、ここで決着がつきます。
1回目の投票で誰も半分を超えなかったら、1位と2位の人だけでもう一度勝負するんだ。2人だけなら、どちらかが必ず半分以上の票をもらえるから、そこで決まるんだよ。
2つの議院で意見が分かれたら、どうなるの?
衆議院でAさん、参議院でBさんが選ばれた場合、両院協議会という会議が開かれます。しかし、それでも決まらない場合は、衆議院の決定が優先されます。
これを「衆議院の優越(ゆうえつ)」といい、憲法で定められています。衆議院は解散があり、より国民の意思を反映しやすいと考えられているため、重要な決定では衆議院が優先されるのです。
衆議院と参議院でちがう人が選ばれることもあるんだ。そのときは衆議院で選ばれた人が総理大臣になるよ。
親子で話してみよう!対話のヒント 🗣️
ニュースで見る「首班指名選挙」は、大人だけの話ではありません。子どもにとっても、「どうやってリーダーが選ばれるのか」「投票ってどういうものか」を考えるきっかけになります。
親が「政治って、こういう仕組みなんだね」と一緒に学ぶ姿勢を見せることで、子どももニュースを “自分ごと” として捉えられるようになります。
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首班指名選挙を知ることは、 “民主主義ってどう動いているのか” を学ぶきっかけでもあります。国会議員が一人ずつ投票用紙に名前を書き、投票箱に入れる。そのシンプルな行為のなかに、国の未来を決める重みがあります。
政治は遠い世界の話ではありません。私たちの暮らしや子どもたちの未来に直接つながっています。
ニュースをきっかけに、「選挙ってなんだろう」「リーダーってどう選ばれるんだろう」そんな会話を、今日から家庭でも少しだけ始めてみませんか?
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