教育を考える/学校・園生活 2025.6.19

【保育士解説】その “うっかり” 、じつマナー違反かも! 知っておきたい最低限の保育園ルール&マナー

山本あやか
【保育士解説】その “うっかり” 、じつマナー違反かも! 知っておきたい最低限の保育園ルール&マナー

保育園生活が始まったばかりの時期は、新しい環境に慣れるだけでも大変ですよね。朝の準備でバタバタしているうちに、うっかり記名を忘れてしまったり、お迎えの時間に遅れそうになってヒヤヒヤしたり……そんな経験をされた方も多いのではないでしょうか。

保育園での生活をスムーズに過ごすには、園での基本的なルールやマナーをおさえておくことが大切です。慣れない保育園生活でバタバタしているなかで、うっかりルールを破ってしまうこともあるでしょう。しかし、安易に考えてしまうと、保育園との信頼関係に影響が出る可能性も。

今回は、保育士歴10年、現場で日々子どもたちと関わってきた筆者が、保育園生活をスムーズにするために押さえておきたいポイントを園で実際のエピソードや保護者の声を交えてわかりやすくお伝えします。保育園生活をよりよいものにするため、基本のルールとマナーをしっかりチェックしていきましょう

ライタープロフィール

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山本あやか

保育士

児童学科で4年間学び、保育士資格や幼稚園教諭一種免許を取得。保育士として約10年勤務。現在、小学生2人を育てながら「働きながら子育てする大変さ」と対峙中。ワーキングマザーが安心して子どもを預けられるよう、さまざまな情報を発信します。

持ち物や衣服のルールを確認しよう

保育園に登園する際は、さまざまな持ち物が必要です。お子さんが快適に過ごせ、保育士もスムーズにサポートできるよう、以下のポイントを意識してみてくださいね。

1. 持ち物一つひとつに記名する

実際のエピソード:「3歳児のある子は、近所の人からもらったお下がりの服を保育園のお着換え用として持参していました。しかし、名前が書き換えられていませんでした。お着替えの時間に『ぼくのじゃない!』とその子が混乱してしまいました」(3歳児クラス保育士)

記名は洗濯や食洗機などの使用によりすぐに薄くなってしまいます。また、同じようなデザインの持ち物が多い保育園では、記名がないとどれが誰のものかわからなくなってしまうことも。持ち物の迷子を防ぐためにも、こまめにチェックしていただけると助かります

ポイント
・クレヨン1本1本やのりのフタなどの細かい部分にも記入する
・記名が消えかかっていないか定期的に確認する
・おさがりでいただいた物の記名に注意する

2. 保育園に関係のないものは持ってこない

実際のエピソード:「朝の準備中に、子どもがお気に入りのキーホルダーをこっそりカバンに入れていて、お友達が『僕も欲しい』と言い出し、取り合いになってしまいました」(4歳児クラス保育士)

子ども同士での貸し借りによるトラブルは少なくありません。保育園には同年齢の子どもたちがたくさんいるため、一人が特別なものを持っていると「僕も」「私も」となりがちです。また、うっかりカバンに入れっぱなしになることもあるので、お出かけ用とは分けて管理できるといいですね

ポイント
・どうしても離さない毛布などは保育園と相談する
・キーホルダーなどケガや誤飲の可能性があるものに注意する
・不要といわれているものは持参を控える

3. 汚れてもよい服を着用する

実際のエピソード:「保育園に行きたくないというので、気分を上げるためにお気に入りの新しいワンピースを着せて登園させたところ、絵の具遊びで大汚れ! こちらの責任とわかっているものの、絵の具の活動があるなら着替えさせるなどしてほしかったです」(5歳児保護者)

保育園では絵の具や泥んこ遊び、食事など、思い切り遊んで学べる環境を大切にしています。お子さんが汚れを気にして遊びを控えめにしてしまったり、汚れることを恐れて活動に参加できなかったりすると、せっかくの学びの機会が減ってしまいます。

大切なお洋服はお休みの日に着て、保育園では汚れても大丈夫な服装で登園できると、お子さんものびのびと活動に取り組めますよ

ポイント
・高価な服や大切な服を着てこない
・靴は泥遊びで汚れることを想定しておく
・記名できないような服は着用しない

4. 発達に合った服を着用する

実際のエピソード:「2歳の娘が『自分で着る!』と主張するのですが、ボタンがたくさん付いた服だったため、うまくできずに大泣きしてしまい、朝の準備が大変でした」(2歳児保護者)

特に「自分でやりたい」という気持ちが強い1~2歳児さんには重要なポイントです。発達に合わない服だと癇癪や自己肯定感の低下につながることもあります。逆に、着脱しやすい服で「できた!」を体験できると、自信と自立心の育みにもつながります。お子さんの成長に合わせた服選びを心がけていただけると助かります

ポイント
・やわらかく脱ぎ着しやすい服を選ぶ
・年齢によっては自分で着脱できるかどうかを意識する
・ボタンやファスナーなどの飾りが多い服を避ける

5. オムツや着替えの予備を用意しておく

実際のエピソード:「お迎えの時間にバタバタしていて子どものロッカーを確認できず、うっかりオムツや着替えのストックがゼロに。翌日は上から下まで保育園のものをお借りして、申し訳なかったです」(1歳児保護者)

保育園では一日に何度もオムツを替えたり、食事や遊びで服が汚れたりすることがよくあります。ストックが足りなくなると、保育士がお声がけしますが、保育士側としては何度も指摘するのは気が引けてしまいます。

また、季節の変わり目にサイズが合わない着替えが残っていると、お子さんが快適に過ごせません。余裕をもって準備していただけると、お子さんの快適さを保てて、保護者の方の負担も軽減できます

ポイント
・オムツは使った枚数を補充して常にストックしておく
・季節の変わり目は調節しやすい服を置いておく
・不要になった衣服は持ち帰りロッカー内を整理整頓する

おむつの画像

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送り迎えのルールを確認しよう

忙しい朝や仕事で疲れたあとの送り迎えはとても大変です。しかし、朝夕は保育園もバタバタして手薄になる時間帯でもあります。スムーズに保育園生活を送れるよう、送り迎えのルールも確認してみましょう。

1. 送り迎えの時間を守ろう

実際のエピソード:「電車が遅れて登園が30分遅くなってしまい、その日は園外散歩の予定だったのですが、全体の出発を待たせてしまい申し訳ない気持ちになりました」(4歳児保護者)

「9時までに登園してください」などの決まりがある場合は、時間をしっかり守って遅れる場合は連絡を入れることが大切です。たとえばその日の活動が園外散策だった場合、連絡なく登園が遅れることにより全体の出発が遅れてしまう可能性もあります。

また、聞いているお迎えの時間から早まったり遅れたりするときも同様です。保育園側の生活リズムも考慮して、早めに連絡を入れるようにしたいですね

ポイント
園にもよりますが、予定より30分以上早まったり遅れたりする場合は連絡が必要です

2. 登園・降園時の準備はスムーズに

実際のエピソード:ある保護者の方が朝の仕事に遅れるからとバタバタしていて、準備が曖昧になってしまうことが続いていました。私たちがいつもタオルなどの準備を代わりに行う状況になっており、他の保護者の方から指摘されて初めて気付かれたようです。(3歳児クラス保育士)

登園・降園時には、それぞれ荷物の準備が必要です。オムツを補充したり、お着替えの数を確認したり……。手拭きタオルを指定のフックにかけるなどの準備が必要となることも。他の保護者の方もいらっしゃる時間帯なので、子どもが自分でできることは任せつつ、準備に漏れがないようしっかり確認しましょう

スムーズな準備ができると、お子さんも保護者の方も気持ちよく一日をスタート・終了できますね。

ポイント
長く居座ることがないよう、必要な準備をスムーズにこなせるように意識しましょう

3. お迎え前の個人的な用事は控えよう

実際のエピソード:「お迎えの時間より早く仕事が終わったので、買い物を済ませておこうと思ったらお店で保育士さんと遭遇! 申し訳なさそうにお迎えを優先するよう指摘されてしまったうえに『今日は早く来てほしかったのに!』と娘に怒られてしまいました」(4歳児保護者)

保育園から認められていない限り、お迎え前に買い物に行くなどの個人的な用事は控えた方がよいでしょう。ときには泣きながら、お迎えを心待ちにしている子どもたちも多くいますからね。

もし事情があり先に用事を済ませた場合は、買い物袋を見えないようにするなど配慮するのがマナーです。お子さんにとって「迎えに来てくれた」という安心感はとても大切なものです。

ポイント
同じように仕事が休みの日にも通常通り保育園を利用してもよいか、事前に確認しておくと安心です

お迎えの様子

欠席・早退のルールを確認しよう

保育園を病気や用事で欠席・早退することもありますよね。そのようなとき、保護者が連絡を怠ることで保育活動に制限が出ることもあります。集団での生活に支障をきたさないよう、欠席・早退のルールもしっかり確認しておきましょう。

1. 欠席時の連絡を徹底しよう

実際のエピソード:朝、登園予定のある子が来ないため保護者の方に連絡を取ろうとしたところ、なかなかつながらないことがありました。後でお聞きすると、出勤前の子どもの発熱に気付いてバタバタしてしまい、連絡を忘れてしまったとのこと。心配でつい何度も電話してしまいました。(2歳児クラス保育士)

欠席時の連絡は、保育園が指定する方法で漏れなく行なうようにしましょう。登園させたはずの子どもが、車からの降ろし忘れで亡くなるという痛ましい事故もあります。確認が取れない場合は、保育園側から繰り返し連絡することも。

「遅れて登園してくるかもしれない」となると、保育士の配置人数的に戸外へのお散歩に制限が出ることもあります。欠席がわかった時点で早めに連絡できるといいですね

ポイント
病気やケガで休む、行き渋りで休むなど理由を添えることで、お休み明けのフォローが可能です

2. 保育園からのお迎え要請には必ず対応しよう

実際のエピソード:「子どもが保育園で熱を出し、連絡が来たとき私は出張中でした。すぐに戻っても2時間はかかる距離にいたため、子どもに辛い思いをさせてしまうことに。保育士さんに普段と勤務場所が異なることをきちんと伝えておけばよかったです。」(4歳児保護者)

子どもが保育中に体調を崩すことは、日常茶飯事です。必要に応じて保護者に連絡を入れますが、職場に電話をかけてもつながらない……なんてことも。お仕事が大変ですぐにお迎えに来られないこともあるかもしれませんが、連絡が取れないという事態はあってはならないことなので注意が必要です

ポイント
連絡が取れない時間帯があれば、事前に代わりの連絡先を伝えておくと安心です

3. 欠席・早退の翌日は情報を共有しよう

実際のエピソード:ある子が胃腸炎で休んだ後「もう大丈夫」と判断して登園してきましたが、昼食後に再び体調を崩してしまうことがありました。事前に食欲の状況など詳しい情報を共有していただけると、私たちもより適切な対応ができます。(3歳児クラス保育士)

子どもがかかる感染症のなかには、保育園が出席停止になるものも少なくありません。病名や病状を偽り登園するようなことがあれば、ほかの子どもたちに感染が広がる恐れも。園によっては、解熱から24時間が経過しないと登園できないなどのルールもあります。感染症での欠席・早退の場合は、しっかり保育園と情報を共有できるようにしましょう

ポイント
子ども本人でなく家庭内で感染症が流行した場合も、念のため知らせておくことで体調不良時に早期対応が可能となります
体調の悪い子ども

園でのトラブルへの対応を確認しよう

集団生活にトラブルはつきものです。大切なわが子が保育園でつらい思いをしているかもしれないと考えると、いてもたってもいられませんよね。とはいえ、事実確認を怠り感情のままに騒ぎ始めるのはNG。子どものためにも、対応を確認しておきましょう。

1. 落ち着いて話を聞こう

実際のエピソード:「保育園からの帰り道『今日お友達に叩かれた』と泣き出したため、すぐに保育園に電話しましたが、よく聞いてみると子ども同士の些細な行き違いだったようです。もう少し冷静に状況を確認すればよかったです」(4歳児保護者)

まずは、トラブルのいきさつを落ち着いて聞き出すことが大切です。まだ話せない月齢でのトラブルの場合は、どのような事情があったのか冷静に事実確認を。自分で話せたとしても、子どもの話は断片的で曖昧な部分が多々あります。すべてを鵜呑みにせず、落ち着いて聞いてあげましょう

ポイント
保育園側の話を聞くときも「事実」と「感情」を切り離すことで冷静に状況を把握できます

2. 改善策を考えよう

実際のエピソード:「おもちゃの取り合いで毎日泣いて帰ってくるので、家でも『貸して』『どうぞ』の練習をしました。保育園でも実践できるようになり、お友達とのやりとりが上手になりました」(3歳児保護者)

トラブルの内容にもよりますが、大きなケガや事故につながるなどの緊急性がない場合は、子どもといっしょに改善策を考えてみてもいいでしょう。急におもちゃを取られて悲しい思いをした場合は「いま使っているよ」「あとでね」など、シーンに合った具体的な言葉を知らせていきます。

ポイント
さまざまな揉まれ合いのなかで子どもが学ぶことも多いため、ある程度までは見守ることも大切です

3. 保育士と情報を共有しよう

実際のエピソード:「子どもが保育園で嫌なことがあったと話していましたが、一人で悩んでいるうちにどんどん不安が大きくなってしまいました。保育士さんに相談したところ、すぐに対応してくださり子どもも安心できました」(5歳児保護者)

子どもから保育園での辛かった出来事を聞いて心に留めたままにしていると、モヤモヤした気持ちがどんどん大きくなってしまいます。なかには、保育園側がトラブルの実態を把握しておらず繰り返されることも。保育士と情報を共有しておくことで、再発防止や子どものフォローが可能となります

ポイント
最初からトラブルに関するクレームを入れるのではなく「報告」「相談」といった姿勢を保つとよいでしょう

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慣れない保育園生活で、保育士から注意されて気づくルールやマナーも多いでしょう。子どもたちの保育園生活が充実するよう、ひとつずつ意識していきたいですね。そして、大切なわが子と長時間離れて過ごす時間もまた、なかなか慣れないもの。しかし、子どもは子どもで保育園での生活を楽しめるようになりますので、安心して過ごしてもらえればと思います。