「自由研究、何をしよう?」——そんな悩みを抱えている親子におすすめしたいのが、身近な疑問から始める探究型の自由研究です。「食べた食べ物はどうなるの?」「なんで心臓は動くの?」——子どもたちの素朴な疑問こそが、じつは素晴らしい自由研究のテーマになります。
じつは、そんな「なぜ?」から始まる「探究力」がいま注目されています。その「なぜ」の積み重ねが、子どもの「自分で考える力」と「問題解決能力」を育み、やがて未来を切り拓く力になるのです。
本連載「夏休みの自由研究シリーズ」では、子どもたちの「なぜ?」を大切にした探究型自由研究のアイデアをお届けしていきます。第1回は、探究型学習教室「LOUPE(ルーぺ)」での活動「人体の不思議プロジェクト」を紹介します。
一番身近な「体」のこと——でも知らないことがたくさんありますよね。それが人体研究の面白さです。 毎日当たり前に動いている体について調べていくうちに、「体ってすごい!」という感動が湧いてきます。家庭で簡単にできるワークシートも最後にご紹介します。
監修者プロフィール
探究型学習教室LOUPE運営
小学校教員として教育現場を経験後、ビジネスの世界に飛び込み、IT企業で約10年間コンサルタントとして企業の課題解決に従事。教育と事業、二つの世界での経験や視点を活かし、2023年に埼玉県鴻巣市で子どものための学びの場「LOUPE(ルーペ)」を創設。体験学習と探究型学習を通して、子どもたちが自ら問いを立て、考える力を育む環境づくりに取り組んでいます。
HP: https://loupe-k.com/
目次
自由研究が変わる!「探究型」という新しいアプローチ
従来の自由研究といえば、図鑑やインターネットで調べたことをまとめる「調べ学習」が主流でした。でも、探究型の自由研究は一味違います。
探究学習は、子どもが身の回りの疑問や問題を自分で解き明かしていく学びです。「調べ学習」とよく似ていますが、大きな違いがあります。調べ学習が「すでにある答えを探す」のに対し、探究学習では「自分で問いを立て、自分なりの答えを見つける」プロセス全体を大切にします。
探究学習:「自分で問いを立て、自分なりの答えを見つける」
この違いが、子どもの学びを大きく変えるのです。単なる知識の収集ではなく、子どもが主体的に考え、発見する喜びを通して成長する——それが探究型自由研究の魅力です。
探究学習の実践例:「人体の不思議プロジェクト」
探究型学習教室「LOUPE(ルーぺ)」は、子どもたちの「なぜ?」「どうして?」という自然な疑問を大切にし、その答えを子ども自身が見つけていくプロセスを重視した学習教室です。ここでは、教科書の内容を覚えるのではなく、実際に手を動かし、試行錯誤しながら学ぶプロジェクト型の学習を多数実施しています。
今回紹介するのはそんな「LOUPE」で実際に行われたプロジェクトの一つ「人体の不思議プロジェクト」です。今回はグループでの活動の様子を紹介しますが、もちろんご家庭やお子さんひとりでも応用可能ですよ。早速見ていきましょう。
1. きっかけは何気ない一言から
「心臓の仕組みが知りたい」——この何気ない問いかけから、プロジェクトは始まりました。ほかの子どもたちも「私も知りたい!」「体のなかってどうなってるんだろう?」と興味津々。そこで「学びの成果を模型で表現する」というゴールを設定し調べ学習からスタートしました。
完璧なテーマを最初から決める必要はありません。子どもの自然な疑問こそが、最高の研究テーマになります。「心臓はなぜ動く?」から始まり「ほかの臓器はどうなってる?」「血液はどこを通る?」など、一つの疑問からどんどん興味を広げていきましょう。
2. まずは情報収集
最初の2週間は調査期間。子どもたちは図鑑を広げたり、タブレットで調べたりして、それぞれが気になる臓器について情報を集めていきます。
「心臓が1日に送り出す血液の量はバスタブ1杯分くらいなんだって!」
「小腸を伸ばすと6〜7メートルもあるんだよ。すごいね!」
子どもたちは発見するたびに目を輝かせました。
調べていて「えー!」「すごい!」と思ったことをメモしておくと、後でまとめるときに活用できます。体に関する驚きの数字やデータを集めると、体の仕組みの凄さが実感できます。
3. 模型づくりで学びを形に
情報収集の次は、いよいよ模型づくり。調べた臓器について、好きな方法で表現していきます。
「空いているスペースにクイズを貼ったらどうかな?」
「消化のことがよく伝わるように、食道と胃に食べものを入れたらどうかな?」
子どもたちは工作用紙や綿、針金など、家にある材料を使って試行錯誤。探究学習の醍醐味は、こうした「チャレンジしたい!」という気持ちを大切にすることです。思い通りに行かなくても、子どもたちは「次はこうしてみよう」と前向きに考えることができます。
臓器の位置関係や大きさを実際に作ることで、体の仕組みへの理解が深まります。完成度よりも、プロセスを楽しむ姿勢が大切。「最初はこう作ったけど、うまくいかなかったので、こう変更した」という記録も立派な研究です。
4. 完成! 身長を超える大作誕生
学習を開始してから1か月。ついに、子どもたちの身長を超えるほど大きい人体模型が完成しました。各器官の機能や特徴が見事に表現され、また食道には「食べ物」が通っていく様子も見事に表現することができています各臓器には手書きの解説やクイズが添えられています。
「小腸さん 早く送って 食べ物を」——プロジェクトの結びとして子どもが詠んだ俳句にも、体の仕組みへの理解や探究の足跡がよく表現されていました。単なる知識の習得ではなく、「体験を通して学ぶ」ことで、子どもたちの記憶に深く刻まれる学びになったのです。
家庭でできる「人体の不思議」自由研究
探究学習の最大の特徴は、子どもが「主役」になること。教科書の内容を覚えるのではなく、自分の興味から生まれた疑問を大切にすることです。家庭では、教室のような大がかりな模型作りは難しいかもしれません。でも大丈夫。もっと手軽に始められます。
一日の生活の中で「体のことで気になったことはある?」と聞いてみたり、「走ると心臓がバクバクするね」と気づいたことを話し合ってみましょう。興味をもった臓器を1つ選んで図鑑で調べ、ワークシートにまとめるだけでも立派な自由研究です。どんな方法でも、子どもの発想を大切にすることが一番のポイントです。
家庭で調べたことをメモとしてすぐにまとめられるワークシートを作りました。無料でダウンロードできますので、ぜひ印刷してお子さんと一緒に使ってみてくださいね。

※この教材は教育機関や家庭での使用を目的としています。商用利用や再配布はご遠慮ください。
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身近な疑問から始める探究型自由研究は、子どもの学ぶ力を大きく伸ばします。きっと「調べて終わり」ではなく、「もっと知りたい!」という次への好奇心を育むことでしょう。ぜひ取り組んでみてくださいね。