あたまを使う 2025.2.19

【手がかからない子ほど要注意】見逃せない “いい子症候群” と親ができる5つのこと

編集部
【手がかからない子ほど要注意】見逃せない “いい子症候群” と親ができる5つのこと

「うちの子は手がかからなくて助かる」という声を耳にすることがあります。たしかに、礼儀正しく、周りに迷惑をかけることなく……という子どもは、学校や家庭でも評価されがちですよね。

しかしじつは、「いい子でいよう」とするあまり、子ども自身が本当の気持ちを抑えて疲れてしまうケースがあるのをご存知でしょうか。専門家の間では、これを「いい子症候群」と呼び、大人になってからも生きづらさを抱える可能性が指摘されています。

この記事では、見逃しがちな子どものサインと、親ができる具体的なサポート方法についてご紹介します。子どもがありのままの自分でいられるように、いま、私たちができることを一緒に考えてみませんか?

見逃さないで! 子どものSOSサイン

見過ごしやすい子どものSOSサイン
1. 「指示待ち」の増える
・「これでいい?」「どうしたらいいの?」
・自分で決められる場面でも、常に確認が必要に。
2. 感情表現の乏しくなる
・「大丈夫」が口癖になっている
・困っているはずなのに助けを求めない
・嫌なことでも笑顔で受け入れる
3. 完璧を求めすぎる
・小さなミスを極端に気にする
・「ちゃんとやらないと」が口グセになっている
・自分をほめられても素直に喜べない

このような態度は、周りの期待に応えようとするあまり、自分の感情を押し殺している可能性があります

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「手がかからない子」がアダルトチルドレンに?

スクールカウンセラーの明治大学文学部教授の諸富祥彦氏は「『いい子』になりすぎてしまう原因は、じつは親の関わり方にある」と指摘します。

またこの問題について、精神科医で青山渋谷メディカルクリニック名誉院長の鍋田恭孝氏は「基本的な性格ができあがる10歳頃までの子育て」が大きく影響すると指摘します。特に注意が必要なのは、一見子どものことを考えているように見えて、じつは親の価値観を押しつけてしまっている場合です。

要注意な親の関わり方
1. 愛情と期待を混同する関わり方
・「ママ(パパ)のために頑張って」
・「あなたならできるはず」
・「こうしてあげるのは、あなたのため」
2. 子どもの気持ちより「あるべき姿」を優先
・感情的になった子どもに「静かにしなさい」
・友だちとのトラブルで「さきに謝りなさい」
・泣いている子に「もう大きいんだから」
3. 「よかれ」と思う押しつけ
・「これが好きだよね?」と誘導する
・「こっちの方がいいんじゃない?」と否定する
・子どもの迷いに「じゃあ、これにしよう」とすぐに決める

このような親の対応は、子どもが「自分の気持ちは後回しにすべき」「親の期待に応えれば愛してもらえる」という学習をします。そして自分の気持ちを抑えることで「いい子」という評価を得ていくうちに、次第に「本当の自分の気持ち」がわからなくなっていくのです。

さらに、その影響は大人になってから「自分の人生って誰のもの?」と悩み始めるケースもあると諸富氏は言います。これは「アダルトチルドレン」と呼ばれる心理的状態の一つです。表面的には適応しているように見えながら、内面では深い孤独や不安を抱え、対人関係での困難さや自己肯定感の低さなど、さまざまな形で生きづらさを感じることがあります

傷ついたクマの画像

子どもが自分らしく育つために親がするべきこと5つ

子どもたちが本来の自分を取り戻し、自分の気持ちに正直に生きていくためにいま私たち親に求められているのは、子どもの心に寄り添い、その成長をゆっくりと支えていく姿勢です。専門家たちの意見から、日常生活の中での具体的な関わり方を以下にまとめました。

【1】対話の時間をつくる

鍋田氏は、「子どもがなんらかの不安を抱えていないのか、しっかりと対話をすることを心がけて」と強調します。この時間を通じて、子どもは「自分の気持ちを大切にしてもらえる」という安心感を得ていきます
具体的方法
・寝る前の5分間、親子で1日を振り返る
・「今日は何があった?」と聞いて、答えを待つ
・「うーん」と考え込む時間や沈黙も大切に
・友だちとの出来事を話し始めたら、最後まで聞く

【2】自己決定の機会を大切にする

諸富氏は、「あらゆることを子ども自身に自己決定させることがもっとも大切」と説きます。親が過度に介入することを避け、子どもが考える時間を十分に取りましょう。この時間は、子ども自身が人間関係を築いていく力も育くみます。
具体的方法
・おやつを選ぶとき、「どれにする?」と問いかける
・服を選ぶとき、すぐに「これが似合うよ」と言わない
・友だち関係は子ども自身に任せる
・遊びの内容も子どもの意思を尊重する

【3】子どもの気持ちを受け止める

鍋田氏は「親の期待していることができたときだけほめたり喜んだりするのは危険」と警告します。何気ない日常の声かけが、知らず知らずのうちに子どもにプレッシャーを与えてしまいるかもしれません。子どもの気持ちを受け止めてあげることが大切です。
具体的声かけ例
・「ママ(パパ)のために」ではなく「あなたはどうしたい?」
・「こうあるべき」ではなく「どう感じたの?」
・「早くしなさい」ではなく「困っていることある?」

【4】失敗を恐れない環境をつくる

鍋田氏は、親の期待に応えすぎる子どもの危険性を指摘します。期待に応えようとし続けるうちに、自己愛を失い新しいことにチャレンジする勇気がもてなくなります。むしろ大切なのは、「打たれ強さ」を育むこと。そのためには、失敗も成長の機会として受け止める環境づくりが大切です。
具体的方法
・できなかったことより、工夫したことを聞く
・完璧でなくても「ここまでできたね」と認める
・「次はどうしたらいいと思う?」と一緒に考える
・親自身の失敗体験も「こんなこともあったよ」と共有する

【5】子どもの「自分づくり」を支える

諸富氏は、特に小学4年生以降は、どんな大人になってどんな人生を歩んでいくのか——そういうことのベースが形成されるとても大事な時期だと言います。大切なのは、子どもの興味や関心を尊重すること。親があれこれ口を出して決めてしまうのではなく、子ども自身の選択を見守る姿勢が重要です。
具体的な関わり方
・習い事は子どもの興味を最優先する
・友だち関係は子ども自身に任せる
・「〇〇したほうがいい」という提案を控える
・子どもの夢や目標を否定せず、まず聞く
これらの取り組みは、一度にすべてを実践する必要はありません。できるところから、少しずつ始めていきましょう。子どもの反応を見ながら、家族に合ったやり方を見つけていくことが大切です。

***
子育てに完璧はありません。むしろ、親子でときには失敗し、悩み、笑い合える関係こそが、子ども心の健康を育みます。「いい子」という重圧から解放され、ありのままの自分でいられる。そんな環境づくりが、結果として子どもの真の成長を支えることになるのです。

今日から、お子さんの小さなサインに、少し意識を向けてみませんか?

(参考)
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|“手がかからない子”ほど要注意! 「いい子症候群」が怖い理由と、その防止法
STUDY HACKER こどもまなび☆ラボ|学校で褒められる「いい子」に要注意! いい子に見えるのは“心の問題”のサインかも

ライター
miki maruyama