「うちの子、のんびりで給食を時間内に食べ終わるかしら……」
「着替えに時間がかかるんです。みんなに置いていかれないか心配」
こういった声は、小学校入学を控えた保護者からよく耳にします。じつは、これらの不安の根っこには、「子どもが時計を読めない」「時間の感覚がまだ分からない」という共通の課題があります。
小学校1年生では、時計の読み方を少しずつ学んでいきます。最初は「3時ちょうど」から始まって、「3時30分」「3時15分」というように、徐々に複雑な時刻も読めるようになっていきます。私は小学校の先生として12年間、たくさんの子どもたちと接してきました。その経験から、入学時に「時間の感覚」が身についていないことで、子どもたちが思った以上に戸惑う場面が多いことに気づきました。
そこで今回は、小学校入学前の年長児はもちろん、幼児期から身につけられる「時間の感覚」の育て方や、おすすめの子ども向け時計をご紹介します。
小学校で求められる”時間の感覚”って?
幼稚園や保育園では、先生が「次は〇〇をするよ」と、その都度声をかけてくれますよね。でも小学校では、子どもたち自身が時計を見て「次は体育だから、休み時間のうちに着替えなきゃ」と考える必要があります。
授業は45分、給食は30分、着替えやトイレは5分以内……と、学校生活のすべての活動が時間で区切られています。子どもたちは「休み時間にトイレに行って、着替えて、それから遊ぼう」というように、自分で時間を考えながら行動することが必要になります。
つまり、入学時に大切なことは、「このくらいの時間がかかりそうだな」と見当をつけ、その感覚をもとに「いま何をすればいいか」を自分で考えて行動できるようになること。この感覚が身につくと、学校生活がぐっとスムーズになります。
もちろん、入学したばかりの1年生には学校も配慮をしています。授業を短めに区切ったり、活動の合間に余裕を持たせたりして、子どもたちが少しずつ学校生活のリズムをつかめるように工夫もしています。でも、時間の感覚を入学してから一から身につけようとすると、子どもにとってはとても大変なことです。
また、時間の感覚がなかなかつかめない子は、授業の準備が間に合わなかったり、休み時間に友だちと遊ぶ時間が減ってしまったり。勉強面だけでなく、友だち関係にも影響が出てしまうことも。では、どのように「時間の感覚」を育てていけばよいでしょうか。
幼児期からできる時間感覚の育て方
大切なのは、急いで時計の読み方を教えることではありません。まずは普段の遊びや生活の中で、少しずつ「時間の感覚」を育てていくことをおすすめします。
⏳ 遊びを通じて「時間の長さ」を学ぶ
幼児期の子どもは、「もうちょっと」「まだまだ」「早く」といった感覚的な時間の理解から始まります。でも、この時間の感覚は子どもそれぞれ。この時期は、遊びを通して具体的な「時間の長さ」を体感する機会をつくってあげると効果的です。
たとえば、砂時計を使ったお片付けゲーム。「3分の砂時計が落ちるまでに、おもちゃを箱に入れられるかな?」と砂時計やスマートフォンなどのタイマーを使って一緒に片付けをすることで、楽しみながら時間の感覚を養えます。ほかにも、「5分間でどれだけ積み木を積めるか競争しよう」や、寝る前の「10分間絵本タイム」など、具体的な時間の長さを体感できる活動を取り入れることで、子どもは自然と「〇分間」という感覚を身につけていきます。
⏰ 生活リズムを通じた「時刻」の理解
年長さんになると、「朝」「昼」「夜」の区別もしっかりできるようになって、時刻にも興味を持ち始めます。朝ごはんは7時、おやつは3時など、決まった時間に同じ活動を繰り返すことで、自然と時刻と行動が結びついていきます。
「お昼ご飯の12時になったね」「4時になったから宿題の時間だね」など、具体的な時刻と活動を結びつけた声かけをすることで、子どもは少しずつ時計の短針の存在を意識し、時刻への理解を深めていきます。ただし、この理解度には個人差が大きいため、焦らず子どもの様子を見ながら進めていくことが大切です。
年長さんの時期に意識したいこと
子どもが少しずつ時計の短針を認識できるようになってきたら、より具体的な時間の使い方を意識していきましょう。小学校入学までに身につけたい時間の使い方を3つご紹介します。
1. 時計と仲良くなる環境づくり
リビングの目につく場所に、文字盤の大きな時計を設置します。このときに大切なのは、時計を教えることではなく、時計に親しむ機会をつくることです。
「長い針が12に来たら、3時だよ」「3時のおやつまで、長い針があと2つ進むね」など、具体的な声かけを通して、時計の針の動きと時間の流れを結びつけていきます。
2. 「○○分以内」を練習
先ほどもお話ししたように、入学前に基本的な時間感覚が身についていると、学校生活がぐっとスムーズになります。着替えは5分以内、食事は30分以内を目安に、「長い針が○の数字までに食べようね」など具体的な目標を決めて練習するとよいでしょう。
タイマーを使った着替えタイムトライアルなどのゲームがおすすめです。「5分以内に着替えられたらシール1枚貼ろうね」など、楽しみながら取り組める工夫を加えましょう。
3. 見通しをもって行動、できたを見える化
時間を意識して行動できるようになるためには、「できた!」と子どもが達成感をもてるような工夫をすることが大切です。「早くしなさい」「急いで」という声かけで急かすのではなく、「自分で○分以内でできたね」「時間を守って遊べたね」と、できたことを具体的にほめましょう。
また、ホワイトボードを使い、子どもが時間に見通しをもって行動できるようにすることもおすすめです。朝の準備や寝る前の行動、用意する持ち物などをリストとして書き出し、完了したら上にマグネットを重ねたり移動させたりします。次何すればよいか、子ども自身が確認することができ、また時間を守れたことが目に見える形で残るため、子どもの「できた!」という自信につながります。ルーティンを毎日繰り返すことにより、30分間、 1時間などの長い時間の感覚も身についていきます。また朝の登校もスムーズになります。
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知育時計って、どんなものを選べばいい?
近年、デジタル機器に囲まれて育つ子どもたちにとって、アナログ時計は見慣れないものになりつつあります。そこで効果的なのが知育時計の活用です。知育時計とは、時計を読むことに不慣れな子どもでも読みやすいよう、細かく数字が書かれていたり、文字盤が色分けされていたり工夫された時計のことです。
子どもに合った知育時計を選ぶときは、以下のポイントを参考にしてみてください。
- 見やすい文字盤と数字
→ 時計を読み取る最初のステップは、数字や針をはっきり見分けられること。大きな数字で、見やすい文字盤の時計を選びましょう。 - 長針と短針の色分け
→時計の長い針(分針)と短い針(時針)は、色を分けて表示されているものがおすすめ。子どもは針の色で区別することで、時間の進み方を直感的に理解しやすくなります。 - 5分単位のメモリが目盛りがはっきりしているもの
→学習を進めていく上で、5分ごとの目盛りがはっきり分かることが大切です。これで「5分」という時間の感覚もつかみやすくなります。 - 子どもが見やすい大きさ
→子どもが自分の目線の高さで時計を見られるように設置できるものを選ぶことが理想です。小さすぎず、大きすぎず、ちょうどよいサイズを選びましょう。
おすすめの学習用時計
実際に子どもたちに好評な時計をいくつかご紹介します。
1. くもん出版 スタディメザマシ
シンプルで分かりやすいデザインと、色鮮やかな針が特徴の知育時計です。文字盤が見やすく、時計の基本的な仕組みを理解しやすいデザインになっています。目覚まし機能も備えているため、朝の時間も意識できるようになります。
2. 金の星社 音の出る とけいえほん いま なんじ?
時計の読み方を楽しく学べる音声付きの絵本です。「何時かな?」と時計を指すと、正しい時刻を音声で教えてくれるので、時計の学習が自然に身につきます。色鮮やかなイラストとストーリー性も魅力で、小さなお子さまでも飽きずに楽しめる工夫が満載です。親子での時間にもぴったりの知育アイテムです。
3. ソニック(Sonic) 時っ感タイマー
視覚的な時間管理が可能なタイマーとして、子どもの集中力を育むためのサポートアイテムです。宿題の時間や休憩時間を色で示し、時間経過を直感的に把握できるため、時間感覚を養う手助けになります。音のON/OFF機能も便利です。
【正規品】ソニック(Sonic) 時っ感タイマー トキ・サポ 時計プラス
Amazon参考価格:3,520円
子どもの時間感覚を育む便利なタイマーです。アナログ時計のように時間経過を色で見せるため、視覚的に残り時間が一目でわかります。宿題や遊びの時間管理に役立ち、家庭だけでなく学校や学童でも活躍します。音のON/OFF機能付きで、集中力をサポートします。
進研ゼミの「おしゃべりおうえん!めざましコラショ」もおすすめ
小学校入学準備にぴったりな時計として、進研ゼミの「おしゃべりおうえん!めざましコラショ」もおすすめです。時計の読み方はもちろん、朝の準備や就寝時の動作など、日常生活の様々なシーンでキャラクターのコラショが優しい声で起床や時間管理をサポートしてくれます。
- 見やすい時計表示
1分単位の目盛り付きアナログ表示と、確認用のデジタル表示で時計の読み方を自然に学べます。音声でも時刻を教えてくれるので、時間の感覚が身につきます。 - 優しい朝のサポート
コラショというキャラクターが、「あと5分だよ」などと段階的に声をかけ、子どもが自然に目覚められます。連続早起きを達成するとごほうびがもらえる楽しい仕掛けも。 - 生活リズムづくり
就寝時刻が近づくと「お風呂とハミガキは終わった?」など具体的に声かけ。学習時間のお知らせ機能もあり、規則正しい生活習慣が身につきます。
「おしゃべりおうえん!めざましコラショ」は、進研ゼミ「チャレンジ1年生」「チャレンジタッチ1年生」の入学準備BOXのセットのなかの教材の一つです。
体験したAちゃん「寝るまえもコラショとおしゃべりしているよ」
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時間の感覚をつかむこと。それは、子どもが自分で考えて行動できるようになるための大切なスキルの一つです。幼児期は遊びを通じて時間の長さを感じ、年長さんの時期には生活リズムのなかで時刻への理解を深めていく……というように、焦らず、楽しみながら、そして子どもの成長に合わせて少しずつ進めていけば、入学後の学校生活もきっとスムーズに始められるはずです。
未来先生(みらい・せんせい)
小・中学校の教員免許をもち、公立小学校で12年間、担任や英語の英語専科教員として2,000人以上の子どもたちと関わってきました。英や米への留学経験あり。これまでの経験や2人の男の子の育児をもとに、子どもたちが輝くヒントをお届けします。
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