英語 2024.12.26

小学校英語、うちの子ついていける? 学年別”家庭でできること”ガイド【未来先生の教育相談室】

小学校英語、うちの子ついていける? 学年別”家庭でできること”ガイド【未来先生の教育相談室】

「英語が苦手な私に何ができるんだろう…」「英語ドリルを始めた方がいいのかな」「塾に通わせた方がいいのかしら」

2020年度から本格的に始まった小学校英語。英語が苦手という保護者のみなさんから「おうちでのサポートはどうすればいいの?」といった声が、たくさん寄せられます。特に、入学前の子どもをもつ親は、小学校での様子が見えずに不安になっている方も多いようです。

私は10年以上の教員経験の中で、英語を楽しく話す子どもたちと出会ってきました。もちろん、そのなかには家庭や園にネイティブスピーカーがおり、日常的に英語で話す環境で育った子どももいます。しかし、多くの子どもたちの親御さんからお話を伺うと、そういった環境がなくても、日常生活の中で自然と英語に触れる機会があった子どもは、小学校の英語授業でも積極的に英語を話す姿が見られました。

そこで今回は、そうした家庭での工夫や、担任や英語専科教師の経験から見えてきた、入学前も入学後もできる英語学習の効果的なサポート方法を、保護者の不安にお答えする形でお伝えしていきたいと思います。

小学校英語の概要

2020年度に小学校英語が本格的に導入されました。3・4年生では「外国語活動」として週に1回程度(年間約35時間)、5・6年生では「外国語科」という正式な教科として週に2回程度(年間約70時間)、必修科目として行なわれています。また英語に力を入れている自治体の中には、1年生から英語の授業を始める学校も増えています。一般的には、3・4年生では友だちと英語で話すことを楽しみながら、「聞く」「話す」などのコミュニケーションの土台を作り、5・6年生では、これに「書き」や「読み」の学習も加わります。

小学校英語教育で特に重視しているのは、「コミュニケーションをとろうとする積極的な態度」、「異なる文化への興味・関心」、そして「間違いを恐れずチャレンジする姿勢」です。英語の授業では、デジタル教材などを使いながら、英語の歌やゲーム、またはお友だちとの会話を通じて、楽しみながらコミュニケーションの基礎を身につけていけるよう工夫されています。初めての子どもでも無理なく取り組めるように工夫されているので、大きく心配する必要はありません

ただ、この新しい教育制度のもとで「入学前から何か準備をしておいた方がよいのか」「家庭では何をしてあげられるのかな」と悩まれる親も多いと思います。そこで、家庭でできる効果的な英語学習のサポート方法についてご紹介していきたいと思います。

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【入学前〜低学年】家庭でできる!効果的な英語学習サポート方法

「英語を始めるタイミングは?」

小さな子どもをもつ保護者からもよく寄せられるお悩みです。結論からお伝えすると、小学校の英語の授業に備えるためのドリルや英語教室といった準備は必要ありません。まずは、身の回りの英語を一緒に見つける、そんな小さな発見から始めてみましょう。

私たちの日常生活には、たくさんの英語が隠れています。スーパーマーケットでの買い物中に「ここに英語が書いてあるね」「何て書いてあるのかな?」と子どもと一緒に英語を探してみたり、洋服やお菓子のパッケージの英語を読んでみたり。また、家の中にさりげなくアルファベットポスターを貼っておくのも効果的です。このような何気ない会話や英語との出会いが、子どもの英語への興味を掻き立てます。

「英会話はどうやって始めるの?」

「Good morning」や「Thank you」から始めてみましょう。親が何気なく使っているうちに、子どももまねして英語を話してみたくなるタイミングがきっと来るはずです。特別な時間をつくる必要はなく、普段の生活の中でふとした瞬間に英語を使ってみる。それだけで、子どもたちの英語への興味は少しずつ育っていきます。

「どんな教材を使えばいいの?」

前述したように、小学校の英語の授業に向けた特別な教材は必要ありません。しかし、子どもと英語を楽しむなかで、英語の歌や絵本を取り入れていくことをおすすめします。歌は体を動かしながら楽しく英語の耳を育て、また絵本は繰り返しの表現で英語に親しむことができます。

「おすすめの歌は?」

英語の歌は、子どもが自然に英語を楽しめる素晴らしい教材です。英語のリズムを体で感じることができるため、英語を聞く耳も自然と育っていきます。

たとえば、“Head, Shoulders, Knees and Toes” は、体の部位を指さしながら歌う簡単な歌で、動作と言葉が結びついているため、単語も自然と覚えられます。”If You’re Happy and You Know It” も、手拍子や足踏みをしながら楽しく歌えます。朝の支度をしながら英語の歌を流したり、お風呂で手遊びをしたり、そんな日常のちょっとした時間を使って気軽に始められます。親が英語で上手に歌えなくても心配いりません。歌を聴きながら一緒に体を動かすだけでもOKです。YouTubeにも子ども向けの英語の歌がたくさんあります。

「どんな絵本がおすすめ?」

簡単なフレーズが繰り返し出てくる絵本が子どもたちは大好きです。おすすめは『Brown Bear, Brown Bear, What Do You See?』。色とりどりの動物が、覚えやすいリズムで次々と登場します。『No, David!』も特に低学年に大人気の絵本です。いたずら好きな男の子がお母さんに「No!」と繰り返し怒られるストーリーですが、簡単なフレーズなので、子どもたちはすぐにまねして読みたがっていました。英語に自信がない方は、音声付きの絵本も増えていますのでぜひ活用してください。

このように、入学前は「楽しく学ぶ」ことがポイントです。特別な時間をつくる必要はなく、日常生活の中で少しずつ英語に親しんでいくことが、小学校での学びへ準備となっていきます。

英語の絵本の画像

【中学年〜高学年】家庭での英語学習サポートは?

「英語が苦手、小学校で習う内容を子どもに教えられるか心配……」

教科書に載っている英語を見て「この発音、合ってるかな?」と迷う場面が出てくるかもしれません。でも、心配いりません。ほとんどの教科書にはQRコードが付いているので、正しい発音や表現をいつでも確認できます。むしろ「こんなふうに言うんだね」と、子どもと一緒に学んでいく姿勢が、学習意欲を高めることにつながります。

「宿題は見てあげられるかな」

宿題のサポートも、難しく考える必要はありません。学校からの宿題は、授業で習った表現を使う簡単なものが中心です。子どもに「今日は何を習ったの?」と聞いてみることから始めましょう。時には子どもが先生役になって教えてくれることもあるかもしれません。それだけでも立派な復習になります。

実際「お父さんに『What color do you like?』と聞いたら『Green』と教えてくれたよ」と嬉しそうに報告してくれた子もいました。おうちでも実践的に英語を使うことは、必ずその子の力になります。

「中学校の英語についていけるかな…」

この不安は、多くの保護者が感じているものです。しかし、前述したように小学校英語は中学校への橋渡しとなる土台作りを目的としています。「聞く」「話す」力を育てることで、中学校での「読む」「書く」学習にスムーズに移行できるよう設計されているのです。

また、学校では友だちと英語を使ってコミュニケーションをとる活動を重視しており、この経験が、中学校での学習への自信につながります。以前は中学校の先生から「中学生になると英語を話すことを急に恥ずかしがる子がいる」という声をよく聞きましたが、最近は「小学校でのコミュニケーション重視の授業のおかげで、中学校でも英語を楽しく使っています」という嬉しい報告が届いています。

「英語塾や習い事は必要?」

必ずしも必要ではありません。学校での英語学習で基礎は身につきます。ただし、学校の授業では習う英語も限定的なため、より実践的な英語力を目指したい場合は、英語教材オンライン英会話英語イベントへの参加など、学校外でネイティブスピーカーと交流する機会をつくるのもよい方法です。

実際、日常生活の中で英語に触れている子どもたちは、英語を臆せず話し、ALTの先生との会話も積極的に楽しむ姿が見られます。

大切なのは、子どもの興味と家庭の状況に合わせて、無理なく続けられる方法を選ぶことです。そして、一緒に楽しむ気持ちで、小さな進歩を温かく見守っていくことで、子どもの英語学習への意欲を育んでいくのです。

多国籍の子どもが集まっている画像

子どもの成長を支えるために大切なこと

英語学習の初期段階では、完璧な発音や文法の正確さよりも、コミュニケーションを図ろうとする意欲や態度を育てることが重要です。子どもが英語で挨拶ができるようになった、簡単な質問に答えられるようになったなど、小さな進歩を見逃さず、たくさんほめて自信につなげていきましょう。日々の些細な変化に目を向け、子どもの努力を認めることで、学習意欲は大きく高まっていきます。

「うまく言えなくても大丈夫」「まずは言ってみよう」という気持ちを大切にすることで、子どもは徐々に英語に対する自信をつけていきます。

子どもがオンライン学習をしている画像

こんなことには気をつけて!やりがちなNG行動

1. 結果を急ぎすぎない

小学校英語の一番の目的は、英語でコミュニケーションを取ることの楽しさを知ること。無理な学習や詰め込みは、かえって英語嫌いの原因になってしまいます。子どもの興味や関心に合わせて、自然に英語に触れる機会をつくることを心がけましょう。

2. 発音にこだわりすぎない

「発音が違う」と細かく指摘されると、子どもは間違いを恐れて、英語を話すことに消極的になってしまいます。小学生の時期は、完璧な発音を求めるのではなく、「伝えようとする気持ち」を大切にしましょう。

3. 中学校の内容を先取りしすぎない

小学校では、音声を中心とした活動を通じて英語に親しむことが大切です。中学校で学ぶ文法を早めに教え込もうとすると、かえって混乱を招き、学習意欲を低下させる可能性があります。

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私は10年以上の教育現場で、子どもたちが新しい言葉や文化と出会い、目を輝かせながら成長していく姿を見てきました。大切なのは、完璧を目指すことではなく、子どもと一緒に楽しみながら、少しずつ英語の世界を広げていくこと。そして、その小さな一歩一歩を、温かく見守っていくことなのです。

そして、その学びを支える家庭でのサポートは、特別なことは必要ありません。ここでご紹介したような小さな取り組みの中から、子どもと一緒に楽しみながらできることを少しずつ取り入れてみてくださいね。

(参考)
(*1)文部科学省|小学校学習指導要領外国語活動・外国語編
(*2)ベネッセ教育情報サイト |
保護者ができる家庭での英語学習サポート

【ライタープロフィール】
未来先生(みらい・せんせい)
教育学科で学び、小学校免許や中学校英語免許を取得。小学校にて担任や英語専科教員として約10年間勤務、子どもたちの学びを支えてきました。現在は、2人の男の子の育児に奮闘しながら、これまでの知識と経験を生かして、子どもの成長と学びに役立つ情報をお届けしています。