教育を考える 2024.11.8

あの子はなぜクラスで愛される? 専門家が教える、親の “ある習慣”

編集部
あの子はなぜクラスで愛される? 専門家が教える、親の “ある習慣”

子どもの笑顔を思い浮かべながら「充実した毎日を過ごしてほしいな」と願う気持ち。理想は、人間関係の悩みを極力抱えることなく、周りのお友だちから好かれる人間になってほしい――

親ならば誰もが願うことでしょう。わが子が友だちに囲まれて楽しそうに過ごす姿を想像しただけで、心が温かくなるはずです。また、親御さん自身も、友人が多いことで人生がより豊かになったと感じているかもしれません。

今回は、そんな親御さんの気持ちに寄り添いながら、お子さんが自然と周りから好かれる存在になるように、私たちができることを一緒に見つけていきたいと思います。決して焦る必要はありません。ゆっくりと、でも確かな歩みを進めていきましょう。

「なぜか人に好かれる子」の特徴

「クラスの人気者」と聞いて、どのようなタイプの子をイメージしますか? みんなをまとめてくれるリーダータイプやスポーツ万能タイプ、いつもみんなを笑わせてくれるお調子者タイプなどに代表される、いわゆる “目立つタイプ” を思い起こす人が多いのではないでしょうか。

実際に、学研教育総合研究所の「小学生の日常生活・学習に関する調査(2021年)」によると、小学生が考える「人気者の条件」第1位は、低学年から高学年まで一貫して「面白いこと」、次いで「運動神経が良いこと」という結果が出ています。*1

ですが、目立つ活躍や個性がなくても、なぜかクラスの大半の子どもたちから好かれている子もいます。そういった子は、誰に対しても態度を変えることなく、友人同士のトラブルが極端に少ないという特徴がありますが、その根底にはどのような性質が備わっているのでしょうか。専門家の意見をもとに、具体的に見ていきましょう。

特徴1:素直である

獨協医科大学名誉教授などを務め、のべ4,000人もの学生たちを指導してきた永井伸一氏は、著書『「なぜか好かれる人」に育つお母さんの習慣』(青春出版社)で、クラスで誰からも好かれる子の特徴をいくつか提示しています。

そのなかでも、「優しい」「一緒にいて楽しい」「前向き」など人に好かれる特徴の根底にある「素直さ」に注目すると、なぜ人に好かれるのかが見えてきます。「物事をあるがままに素直に受け入れ、人のアドバイスを聞き入れられる耳を持つ子どもは、人に好かれる力につながる性質を獲得していける素地がある」とのことからも、素直さゆえに優れた対応力を発揮できる柔軟性こそが、人に好かれるために必要な要素であると言えるでしょう。*2

特徴2:思いやりがある

「クラス中から好かれている子の多くは、いつも相手の気持ちを考えて話したり行動したりしている」と断言するのは、教育評論家の親野智可等氏です。ただし、そういった子はいつも大勢の友だちに囲まれているとは限りません。むしろ、一見地味で目立たないタイプのようにも見えるでしょう。

このタイプは周りをよく見ているからこそ、クラスメイトが何かを失くしたら一緒に探してあげるなど、困っている子にさっと手を差し述べることができます。そうした言動の積み重ねによって、その子の存在はクラス全体によい影響を与えるのだそう。「このような子はめったにいないと思われがちだが、必ずクラスに数人はいる」と親野氏が指摘していることからも、家庭での接し方次第で、思いやりのある子どもに育てることは可能です。*3

特徴3:一人ぼっちを恐れない

また親野氏は、「思いやりをもって相手に接すると同時に、ときには友だちから離れて『一人でいる力』を身につけるのも大事」と述べています。一人ぼっちになると不安になる子や、誰でもいいから友だちと一緒にいたいという欲求が強い子は、自分の意思よりも集団行動を優先するようになります。すると、意に反して集団的ないじめに加担することにもなりかねません。

一人でいる力のある子は、人をいじめるようなグループから離れても不安を感じることはありません。一人でいても不安を感じず、自分らしくいるには、「熱中できるなにか」が必要です。周りの雰囲気に流されずに、夢中になれることをマイペースで楽しめる子は、クラスメイトからも一目置かれる存在になるでしょう。*3

人気者の親の特徴02

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親は子どもにとって一番身近なお手本!

ほとんどの親御さんは、わが子がクラスの人気者になってほしいと願いながらも、「うちの子はいい子なんだけど、そういうタイプじゃないのよね……」と思い込みがちです。もちろん、もともとの気質や、本人が人気者になることを望んでいるかにもよりますが、人に好かれる人間を目指すことは今後の人生において大きなプラスになるはず。それならば、いまからできることを始めましょう。

ビジネス心理学の専門家である内藤誼人氏は、「親がどんな育て方をするかによって、子どもが学校で人気者になれるのか、なれないのかが決まってしまう」と指摘します。なぜなら、子どもはほかの人とどのように付き合えばよいのかを、親との付き合いによって学ぶから。子どもにとって、一番身近で最も長い時間接する親は、重要な「見本」なのだと言います。*4

みなさんも、「いつの間にか自分の口癖が子どもに移ってる!」という経験があるのではないでしょうか。よくも悪くも、子どもは親の姿を見て影響を受けているものです。よい手本となるように、親としての振る舞いを見直してみましょう。

次項では「人に好かれる子」の親の特徴について解説していきます。親としてどんなことを意識して習慣化しているのか、また心がけるべき言動など、すぐにでも取り入れられることをまとめているので、ぜひ参考にしてくださいね。

人気者の親の特徴03

「なぜか人に好かれる子」の親が習慣化していること

「人に好かれる子の親」になるには、どのようなことを意識すればよいのでしょうか。

■親自身が「素直でいること」を忘れない

素直であることが人に好かれる子の必須条件であるなら、「親自身が素直でいることを意識し、自分の言動によって素直な性質を伝えていくことが大事」と前出の永井氏は述べています。どんなに子どもに素直さを求めても、親自身がストレートに感情を表現しなければ、子どもは「それが正しいんだ」と認識してしまうでしょう。

たとえば、親と子の軽い口約束であっても、もし忘れてしまったら素直に謝ることが大事です。また、普段は恥ずかしくて口にできない子どもへの愛情を素直に伝えるなど、どんなに照れくさくてもできる範囲で素直な親の姿を見せるように心がけましょう。*2

■ポジティブな言葉がけを意識する

親の子どもへの接し方が子どもの友だち関係にダイレクトに影響するのは、先述の通りです。

たとえば、こんな場面はありませんか? 朝の準備で焦っているとき、つい子どもを急かして『早くしなさい!』と声を荒げてしまう。すると数日後、お友達が準備に手間取っているときに、同じように声を荒げる我が子の姿を目にして……。子どもは親の姿を映す鏡のようなもの。その子は親が自分にするのと同じようなやり方でクラスメイトと接するようになるため、キツイ言葉づかいで相手を責めてしまう危険性も。

逆に、「親が子どもに対して絶えず笑顔を見せ、楽しいことを口にし、子どもが嬉しくなるような言葉がけをしていれば、学校でも他の子に同じことをしてあげるようになる」(内藤氏)ため、その結果、クラスでの人気も高くなるというわけです。優しくポジティブな言葉がけを意識すれば、子どもは自然と他人への正しい接し方を学んでくれるでしょう。*4

■積極的にあいさつをする

昨今では地域のつながりも減少傾向にあるため、自分から積極的にあいさつする機会も減りつつあります。しかし、あいさつは自分のことを印象付けて好感度をアップするのに役立つので、子どもの前でもしっかりとあいさつすることが大事です。子どもは親をよく観察しています。どんな場面であいさつするかなど親を手本にしながら覚えていくため、よいお手本になるように心がけましょう。

なぜあいさつが重要かというと、マーケティング用語として有名な「ザイオンス(ザイアンス)効果」、いわゆる「単純接触効果」が期待できるから。つまり、「同じ人やモノにくりかえし接触すると、好感度や印象がアップする」法則に則っているため、何度も自分からあいさつすることに意味があるのです。*5

■子どもが仲間はずれになることを過度に怖れない

先述した通り「一人でいる力」がある子は、自分らしさが確立しているため周りからの人気を得やすい傾向があります。しかし、精神科医の和田秀樹氏によると、昨今の親は「子どもが仲間はずれにされることに対して過剰反応しがち」なのだそう。親の仲間はずれへの恐怖は必ず子どもに伝染するため、「仲間はずれにされたくらい問題ない」と腹をくくる覚悟が必要です。*6

また親野氏も同様に、「『友だちと遊ぶだけではなく、自分ひとりで楽しむ時間も大切だよ』と語りかけ、その子が好きなことや熱中できることに取り組めるような環境を作ってあげてほしい」と述べています。何よりもまず、子ども自身の個性を認め、ほめてあげましょう。それが自信につながり、一人でいられる強さと、友だちに好かれる要素を育む素地となるはずです。*3

みんなに好かれる子どもに育つ
親が習慣にすべきこと

✓ 素直な感情表現

✓ ポジティブな言葉がけ

✓ 積極的な挨拶

✓ 個性の尊重

✓ 自立心の育成

✓ 思いやりの心をもつ

1日の生活シーン別 実践ポイント

 

◆朝の時間

  • 「おはよう」の挨拶は、目を見て笑顔で。子どもの表情を見てから「よく眠れた?」と一言添えてみましょう。
  • 準備に手間取っているときも「あと何分でここまでやろうね」など、具体的な目標を示して励まします。
  • 「早くしなさい」ではなく「靴下が履けたね!」など、できていることに注目して声をかけましょう。

◆学校から帰宅後

  • まずは「お帰り」を笑顔で。「今日はどんなことがあった?」とゆっくり話を聞く時間を作りましょう。
  • 友だちの話が出たときは「〇〇くんと遊べて楽しかったんだね」など、関係性に着目した言葉をかけます。
  • 宿題や片付けの前に、軽い間食とおしゃべりの時間を確保。心が落ち着いてから次の行動に移れるようにしましょう。

◆夜の時間

  • お風呂では、その日にあった友だちとの出来事を聞いてみましょう。リラックスした場所だと本音も出やすいものです。
  • 就寝前の10分は、スキンシップをとりながら「明日は〇〇だね」と楽しみな予定を話すなど、ポジティブな会話を。
  • 「おやすみ」の挨拶とともに「今日も〇〇できたね!」など、その日の頑張りを具体的に認めます。

 
このように場面を区切って考えると、限られた時間のなかでも実践できるポイントが見えてきます。すべてを一度に始める必要はありません。まずは、あなたの生活リズムで「これなら続けられそう」と感じる場面から、少しずつ始めてみましょう。

***
最近では「人気者」といっても型通りのタイプではなく、それぞれの個性を認められた多様なタイプが増えてきています。お子さんの個性や好きなことを認め、活かしたうえで、周りから好かれる子になるために、親として精一杯のことをしてあげたいですね。

文/野口燈

(参考)
(*1)参考:学研教育総合研究所 小学生白書Web版|「小学生の日常生活・学習に関する調査」
(*2)参考・カギカッコ内引用元:ダ・ヴィンチWeb|「なぜか人に好かれる子」に備わっている“7つの気質”とは
(*3)参考・カギカッコ内引用元:親力講座|子どもの友達力は親子関係から~その1~
(*4)参考・カギカッコ内引用元:ダイヤモンド・オンライン|「クラスの人気者」の親がやっている習慣とは?【最新研究を心理学者が解説】
(*5)参考:AERA dot.|「みんなに好かれる子」の親がしている1つの習慣
(*6)参考・カギカッコ内引用元:THE GOLD ONLINE|発覚!子どもの「仲間はずれ」…悩める親がとるべき対応とは