教育を考える 2019.8.19

「10歳の壁」は飛躍のチャンス。「壁」を飛び越えるための言葉かけ

編集部
「10歳の壁」は飛躍のチャンス。「壁」を飛び越えるための言葉かけ

小学4年生前後の子どもたちが直面しがちな「10歳の壁」。教育界ではよく知られた言葉なので、聞いたことのある方も多いのではないでしょうか。

劣等感が生じ、自己肯定感が低下する……といったマイナスのイメージの強い「10歳の壁」ですが、保護者がきちんとサポートしてあげれば、「飛躍のチャンス」になり得るものでもあります。今回は、「10歳の壁」にぶつかった子どもたちのための「挑戦する心を育む言葉かけ」をご紹介しましょう。

「10歳の壁」とは

「10歳の壁」は、「小4の壁」「9歳の壁」とも呼ばれています。9〜10歳頃の子どもが勉強面や心理面で壁にぶつかる現象を指した用語です。

文部科学省は、小学校高学年の発達段階の特徴について、以下のように説明しています。

9歳以降の小学校高学年の時期には、幼児期を離れ、物事をある程度対象化して認識することができるようになる。対象との間に距離をおいた分析ができるようになり、知的な活動においてもより分化した追求が可能となる。自分のことも客観的にとらえられるようになるが、一方、発達の個人差も顕著になる(いわゆる「9歳の壁」 ) 。身体も大きく成長し、自己肯定感を持ちはじめる時期であるが、反面、発達の個人差も大きく見られることから、自己に対する肯定的な意識を持てず、劣等感を持ちやすくなる時期でもある。

(引用元:文部科学省|3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題)※太字による強調は編集部が施した

引用の通り、9〜10歳頃の子どもたちは、大きな成長を遂げると同時に、自分の能力を客観的にとらえられるようになり、個人差も目立つようになっていきます。そのため、「お友だちは○○が上手にできるけど、自分はできない」などと自分と他者を比較してしまい、劣等感を抱きやすくなるのです。

また、学習においてつまずきやすいのもこの時期。たとえば、低学年の頃は「りんごが4個あります。2個食べたら残りはいくつでしょう」といった具体的に状況をイメージできるような問題が中心です。しかし、小4頃からは、「がい数」「角度」といった、実体験に重ねづらく、イメージするのが難しい問題が増えていきます。

子育て・教育の専門家の鈴木邦明氏によると、このように、学習内容が大きくレベルアップし、勉強面でつまづく経験が増えることも「10歳の壁」の要因のひとつなのだそう。

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「10歳の壁」は、悪いものではない

一見厄介な存在に思える「10歳の壁」ですが、大きな成長の証であり、飛躍のチャンスでもあります。

『子どもの「10歳の壁」とは何か? 乗りこえるための発達心理学』の著者である、法政大学教授 渡辺弥生氏は、「自分はなんでもできる」という根拠のない万能感を抱いたままでは、社会にスムーズに適応できないと述べています。自分とお友だちを比較できるようになるからこそ、広い視野で物事をとらえたり、「もっと頑張ろう」と高みを目指したりできると言えるでしょう。

また、同氏は、「10歳の壁」について内面が深化する時期とも述べています。たとえば、悲しい事故のニュースを目にして、会ったこともない人の心情に思いを馳せることができるようになったり、自分の内面を客観視して「僕はこういうところが良くないからなおそう」とコントロールできるようになるのがこの時期です。

10歳の壁は一概に悪いものとは言えません。親は、子どもの成長をしっかりと見守り、過度に自己肯定感が損なわれないよう、導いてあげることが大切ですね。

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「10歳の壁」に負けずにチャレンジするための言葉かけ

では、具体的にどのような言葉をかけてあげれば、「10歳の壁」に負けることなく飛躍できるでしょうか。子どもの自己肯定感を高め、やる気を引き出す言葉をご紹介します。

×NG「何があったの? じゃあこうするべきだよ」
○OK「疲れちゃったね。ゆっくり休もうね」
お子さんが劣等感や自己否定感で悲しい思いをしているときに、「○○をするべき」と理詰めで教えても、より追い詰めてしまうことになりかねません。大人の目線で解決策を教えたくなる気持ちも分かりますが、気持ちに寄り添った言葉をかけ、お子さんを安心させてあげることが大切です。

×NG「お姉ちゃんはいつも満点だったよ」
○OK「前より10点も上がったね!」
子どもをほかの兄弟やお友だちと比較するのは、子どもの自尊心を傷つけ、自己肯定感を下げることにつながります。家庭教育の専門家である田宮由美氏によると、このような場合には「前より上手になったね」と、過去の自分と比べることが大切だそう。

×NG「だからダメだって言ったのに!」
○OK「お母さんも小さいとき同じ失敗をしちゃったんだ」
東京都市大学人間科学部教授の井戸ゆかり氏によると、「失敗してもいい」(=たとえ何かあっても、お父さんとお母さんのところに行けば大丈夫)という安心感が子どもの挑戦心を高めるのだそう。子どもが失敗してしまったときには、自分の失敗談も話してあげることで、「失敗してもいいんだ」と失敗を恐れずにチャレンジする力が育っていきます。

×NG「あなたが悪いよ。○○ちゃんに謝っておいで」
○OK「お母さんだったらこうするかもしれないな」
お友だちと揉め事があったとき、大人の目線で「あなたが悪いから謝ったほうがいい」と一方的に言うのは子どものためになりません。「こういうときには、謝ったり、話し合ったりすると仲直りできるかもしれないよ」「お母さんだったらこうするかもしれないな」と自分で考えさせる教え方をしましょう。渡辺弥生教授いわく、いじめなどの深刻な場合を除いて、自分で解決する経験をさせ、子どもの伸び代が増えるよう手助けするのが大切だそう。

×NG「100点なんてすごい!」
○OK「よく頑張ったね!」
子どもがテストでいい点をとったときには、「○点なんてすごい!」と言ってしまいがちですが、このように結果だけを褒めるのはNGです。カウンセラーの福田由紀子氏によると、結果ばかりを褒められた子どもは「100点以外意味がない」と感じ、自分を否定するようになってしまうのだとか。結果ではなく、そこに至るまでの頑張りを褒めることで、努力が報われなかったときにも折れない子どもに育つのだそう。

***
「10歳の壁」は、決して悪いものではありません。親御さんが温かくサポートしてあげれば、成長のチャンスにもなり得るものです。「10歳の壁」を自己肯定感を下げる厄介な壁ととらえず、お子さんが大きく跳躍するための踏み台のようにとらえてみてはいかがでしょう。

(参考)
文部科学省|3.子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題
All About|「10歳の壁」子供がぶつかる勉強の見えない壁への対策3つ
ベネッセ教育情報サイト|「10歳の壁」この時期の子どもの内面に起こる変化や成長とは?【中編】
ベネッセ 教育情報サイト|「10歳の壁」子どもを飛躍させるための保護者のサポートとは【後編】
All About|子供の自己肯定感を低くする親のNG言動5つと高める方法
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