教育を考える 2019.4.16

「昼寝のせいで夜なかなか寝ない」問題の解消法。朝のグズグズ防止にも効果大!

「昼寝のせいで夜なかなか寝ない」問題の解消法。朝のグズグズ防止にも効果大!

睡眠不足により脳・体・心にさまざまな影響があることが分かっています。子どもには充分な睡眠を取らせたいと思ってはいても、普段の生活ではなかなか理想どおりにいかないこともありますよね。今回は、睡眠に関するいろいろな質問に、明治薬科大学リベラルアーツ准教授駒田陽子先生が回答してくださいました。

構成・編集/木原昌子(ハイキックス) 取材・文/田中祥子 写真/児玉大輔(インタビューカットのみ)

昼寝の習慣は年齢に合わせて変えることが大切

疑問1:おねしょや寝言の睡眠障害が心配です。

幼年期や小学校低学年の子どもの場合、何より大切なのは生活習慣を整えてあげることです。まだ体も心も育っていく過程なので、おねしょや寝言などの睡眠障害と呼ばれるものの多くは、あまり心配しなくても良いのではないでしょうか。子どもが寝言を多く言ったり、おねしょをしたり、夢遊病で夜中歩き回ったりするのは、まだ脳がしっかりと成熟していないから。子どもには結構起こりうることです。まずは規則正しく十分な睡眠時間を確保することを心がけましょう。

そのうえで昼間の行動を観察して、夜間に睡眠が取れているのに落ち着きがなかったり、何か問題だと思われることがあったりする場合は、睡眠の質が良くないかもしれません。例えば、寝ている間に呼吸が止まっていたり、足がムズムズしたり、足がピクンピクンと動いたりなどする場合、それが原因で睡眠が阻害されているという場合もあります。そういった場合には、睡眠のクリニックに相談してみることをおすすめします。

疑問2:保育園で昼寝をすると夜寝るのが遅くなってしまいます。

昼寝をする子どもの割合を調べると、2歳くらいまではほぼ100%が昼寝をしていますが、3歳になるとだいたい半数ぐらい、4歳では7割ぐらいのお子さんが昼寝をしなくなり、5歳になると9割ぐらい昼寝をしなくなります。そういった自然な成長の過程があるのですが、現在の日本の保育園では年齢に関係なく一律で昼寝を行い、年長(5~6歳)の年明け2月くらいから、小学校生活に慣れるために昼寝をやめるという方針をとっているところが多いようです。

しかし、4歳の子が2~3歳と同じように昼寝を長く取ってしまうと、夜寝るのが遅くなる傾向が強くなります。そこから、夜更かしが始まり、朝が起きづらくなり、保育園に行きたくないという子どもが出てくることも。保育園期間にみられた「登園しぶり」や「朝の機嫌の悪さ」は、保育園を卒園した後の小学校3・4年生になるまで続いてしまうことが江戸川大学の福田一彦先生の研究で明らかになっています。本来であれば発達に合わせて昼寝を変えていくのが理想的なのです。

すでに一部の保育園では、昼寝をしなくなった子どもたちは別の部屋で本を読むなどの取り組みをしているようです。保育園・幼稚園では人手不足も深刻で、年齢に合わせた昼寝時間の調整が難しいのが現実ではありますが、今後、年齢に合わせた昼寝の習慣が多くの保育園・幼稚園で広まっていくことが望まれます。私自身もこの取り組みを広げていきたいと考えています。

疑問3:カフェインを摂ると寝られなくなるといいます。子どもへの影響も大きいのでしょうか。

カフェインには目を覚ます作用があるのはよく知られていますね。成分が体内に残る時間は4~6時間と言われていますが、個人差があり、子どもやお年寄りはより長く体内に残ります。体内に6時間残ると考えると、就寝が夜9時の場合、昼間3時以降に飲んだカフェインも寝付きに影響する可能性があることになりますね。

コーヒーはお子さんには飲ませないよう気をつけているご家庭が多いでしょう。加えて緑茶や紅茶は、茶葉から淹れるものだけでなく、ペットボトルの製品にもカフェインが含まれています。さらに、炭酸飲料やエナジードリンクにもカフェインが。子どもの睡眠を考えると、夕方以降はカフェインが含まれていない麦茶などを飲ませてあげるのが良いでしょう。

夜の時間帯の青白い光は体内時計を狂わせる

疑問4:夜にスマートフォンを見たりゲームをしたりすると、寝つきに影響するのでしょうか?

日が沈んであたりが暗くなると、脳の中では眠りを促すための「メラトニン」というホルモンが分泌されます。朝、明るくなるとメラトニンの分泌は止まり、睡眠の状態から目覚め、体が活動的な状態へ変化するのです。

このメラトニンは、明るい照明の下では分泌が抑えられてしまう性質があります。また、体内時計に作用する光の波長として一番影響度合いが強いのは、人間の目に見える光のうち短波長の青白い光(ブルーライト)であることがわかっています。スマートフォンやゲーム、パソコンなどから出るブルーライトを寝る前に見てしまうと、メラトニンの分泌を妨げ、体内時計を狂わせることにつながり、寝つきに影響が出てしまうのです。

蛍光灯や白色のLEDも同様に影響があります。子どもの目の水晶体は大人より澄んでいるため透過性が高く、大人より光の影響を強く受けてしまうもの。夜遅くまで塾の蛍光灯の下で勉強していると、子どもの体内時計は夜型化しがちです。日没後はできるだけオレンジ色がかった白熱灯色の照明の部屋で過ごし、寝る前のスマートフォンやゲームも避けるようにしましょう。

疑問5:普段は何時ごろに起してあげるのが最適ですか?

誰もが寝起きはぼーっとしますね。この眠気を引きずっている状態を「睡眠慣性」といいます。この状態は個人差がありますが、だいたい起床から1~2時間ほどです。その時間帯に朝ごはんを食べて、体と頭をウォーミングアップする時間にしましょう。学校の授業が8~9時頃に始まるとしたら、6~7時ぐらいに起きるような習慣をつけていくと良いのではないでしょうか。

ただ、早く起きることを気にして睡眠時間が短くなるより、睡眠時間の確保を優先してください。7時半に起きて学校に間に合うのであれば、それまでの時間は「睡眠」にあてて、充分に寝ることの方が大切です。

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睡眠不足が借金のように積み重なり病気のリスクを高め、日々の生活の質を下げることが「睡眠負債」と呼ばれ、メディアでも取り上げられるようになりました。子どもだけでなく、親も、自分の問題としてしっかりと考えていかなければいけないでしょう。次回は駒田先生に、どうしたら質の良い睡眠時間を確保することができるのか、早寝のコツなどをお話しいただきます。

■ 明治薬科大学准教授・駒田陽子先生 インタビュー一覧
第1回:“世界一寝不足”な日本の子ども。「11時間37分」が示す、眠りにまつわる切実な問題
第2回:寝るのが遅いと自己肯定感が下がる。デメリットだらけの「子どもの睡眠不足」
第3回:「昼寝のせいで夜なかなか寝ない」問題の解消法。朝のグズグズ防止にも効果大!
第4回:「起きる時間」を意識させるだけ! 子どもの早起きを楽にするちょっとしたコツ

【プロフィール】
駒田陽子(こまだ・ようこ)
明治薬科大学 リベラルアーツ准教授。早稲田大学にて博士号(人間科学)取得。日本学術振興会特別研究員、国立精神・神経医療研究センター特別研究員、東京医科大学睡眠学講座准教授を経て現職。日本睡眠学会、日本時間生物学会の評議員を務める。睡眠が心身の健康に及ぼす影響の研究に従事。