教育を考える 2019.8.31

アドラー心理学の「家族価値」とは? 「学歴第一」という親の価値観を子どもは無視できない

[PR] 編集部
アドラー心理学の「家族価値」とは? 「学歴第一」という親の価値観を子どもは無視できない

わが子と一緒にいると、「やっぱり親である自分と価値観が似ているな」と感じる瞬間はありませんか? 物の見方、感じ方、考え方など、子どもと自分に通じる部分を感じ取ると、どこか嬉しく、誇らしいような気持ちになる人も多いはず。

しかし一方で、無意識のうちに親の価値観をそのまま子どもに押し付けてしまう危険性も知られています。親と子どもは別の人格であり、違う価値観を持っていて当たり前なのに、自分とわが子を同一視してしまうのです。

今回は、価値観の押し付けによって子どもに何が起こるのか、詳しく解説していきます。

子どもの価値観を決める親の価値観

まだ自己が確立されていない小さい子どもでも、それぞれに個性があり、意見をぶつけ合って喧嘩をしたり、同調して共感し合ったりする様子を目にします。ふとその子の親を見ると、子どもの価値観形成に大きな影響を与えていることが見て取れるのではないでしょうか。

アドラー心理学で知られる精神科医アルフレッド・アドラー氏によると、両親が持っている価値観を『家族価値』と呼ぶそう。家族価値とは、家族の理想であり目標です。たとえば「学歴が第一」「将来成功することが大事」「男は男らしく、女は女らしく」など、夫婦間でよく話題にのぼるようなことを指します。

子どもは、この『家族価値』を無視することができません。面と向かって言い聞かせなくても、家族の会話の中で感じ取り、無意識のうちにその価値観に影響を受けてしまうのです。

そして多くの場合、子どもは全面服従して家族価値をそのまま自分の価値として取り込みます。もしくは、その逆に全面反抗するケースも多いそう。まじめで厳しい親に反発して非行に走ったり、落ちこぼれたりするのは、その典型であると言えるでしょう。

「~~しなさい」にご注意を2

親の価値観を押し付けると子どもはどうなる?

筑波大学附属小学校副校長の田中博史先生は、自分の価値観を子どもに押し付ける親は、「どんなに小さくても、子どもはすでに『自分で考える生き物』だと認識できていない」傾向があるといいます。

特に母親は、「自分から産まれた子なのだから」という理由から、自分と子どもを一心同体のように感じてしまいがち。しかし、親と子は別人格であり、子どもは子どもなりに少しずつ自己を形成していくのです。

また、教育評論家の石田勝紀氏は、「子どもにこうなってもらいたい」と強く願う親が、その価値観や思考の枠からはみ出た子どもに対して “強制的に戻させようとする” ことに苦言を呈しています。

広い意味での社会道徳や倫理観というものは確かにありますが、それが親の水準になると狭い意味での社会道徳、倫理観となり、極めて柔軟性の欠ける親主導型の「親の価値観押し付けモデル」となることが少なくありません。親と子では得意とする部分も異なり、才能も異なり、価値観も異なるのです。

(引用元:東洋経済オンライン|子どもを追いつめる、親たちの「願望と正論」「押し付け」を変えるための「6つの提案」

それなのに、何をするにも「こうしたほうがいいんじゃない?」「お母さん(お父さん)の言う通りにしたら失敗しないから」と、親の思い通りに誘導したり、決断の機会を奪ったりする生活を送っていると、どのような人間になってしまうのでしょうか。

石田氏は、ほかの人に決めてもらうほうが楽な時間をたくさん過ごしていた子どもは、自分で決めないですぐにほかの誰かを頼るようになる、といいます。親はよかれと思ってあれこれと手出し口出しをしても、それは結果的に子どもの判断力や決断力を奪い、大人になってからも誰かに頼って生きていくようになってしまうのです。

また、価値観を子どもに押し付けてしまう背景には、現代の余裕のない子育て環境も影響していると言われています。子育てに関する著書を多数執筆、カウンセラーとしても活躍中の高橋愛子先生は、「核家族化が進んだ現代は、親にゆとりがなく『子どもをきちんとしつけなくては』とプレッシャーを感じる人も多い」と述べています。

お子さんが引きこもりやニートになってしまったご家庭では、子供の気持ちに耳を傾けず、「親の言うことは正しいのだから、その通りにしていればいいんだ」と命令しているケースがほとんどです。自分の気持ちを理解されずに生きてきた子供は鬱積した寂しさや悲しさを処理しきれなくなり、社会や家族ともコミュニケーションを断つのです。

(引用元:プレジデントムック(2017),『プレジデントFamily 小学生からの知育大百科 2018完全保存版』, プレジデント社.)

このように、親の価値観を押し付けることは、成長後の人間関係にも大きな影響を及ぼすということを忘れないようにしてください。

「~~しなさい」にご注意を3

親と子は違う人間だと認識する

親と子の価値観の違いは理解できたものの、やっぱりどこか受け入れがたいと感じる親御さんも多いのではないでしょうか。前出の石田氏によると、その場合「親が考える『こうあるべき』や『ルール』をすべて撤廃し、子どもの良い点は何か、子どもが大切にしている価値観は何か、にフォーカスすることが唯一の方法」だそうです。

“親目線” ではなく、“子ども目線” でわが子をよく観察して、何をしているときにもっとも「ワクワク感」や「充実感」に満ちた顔をしているか、それを見つけてみましょう。そして、そこを入り口としてアプローチすることが秘訣です。

また、子どもに話しかけるとき、「〜〜しなさい」といった指示・命令用語を頻繁に使っていませんか? こういった言葉は、子どもの「できていない部分」に意識が向いてしまうがゆえに口を突いてしまうものです。その結果、子どものネガティブな部分にばかり目がいくようになり、結局は悪循環を引き起こしてしまいます。

不完全である子どもの足りない部分にばかり注目することは、ありのままのわが子を受け入れていないことと同じです。そもそも、親である自分自身も完璧とは言いがたいのではないでしょうか? 親も子も、どちらも良い部分と未熟な部分を持ち合わせているという前提に立ってみると、子どもが別の人格を持ったひとりの人間であることに納得できるはずです。

「~~しなさい」にご注意を4

子どもの価値観形成を手助けするのはOK

子どもの価値観を理解するためには、親から子どもに歩み寄り、いつもの言葉がけに少し変化を加えるといいでしょう。

NPO法人 親子コミュニケーションラボ代表理事の天野ひかりさんは、「母親として、この子を “しつけなければ” というプレッシャーや脅迫観念から、時として直接的で短絡的な言葉を使ってしまう。子どもをきちんと育てたい、能力を伸ばしてあげたいという目標設定は正しいのに、言葉がけという手段を誤っているパターンが多いといいます。それは子どもの自己肯定感を低下させることにもつながります。

たとえば、お子さんがマンガばかり読んでいることを心配して、「マンガなんかよりも歴史の本を読みなさい!」と命令していませんか? これはNGです。天野さんはこの声かけに対して、「子どもに本を読む楽しさ、本で知識を得られることの喜びを知ってほしいはずなのに、子どもの読書欲を邪魔している」と指摘します。

ここで大事なのは、本来の目的』を明確にすることです。その本いいね。おもしろそうなどと、子どもの読書欲を削がない言葉をかけてあげましょう。そのうえで、どうしても子どもに読んでほしい本があるなら、自分が読むこと!と天野さんは提案しています。親が興味を持って読んでいるものは子どもの心を惹きつけるので、まずは親がお手本を見せてあげるといいでしょう。

親が「子どものために」といくら環境づくりに励んでも、子どもにとっては「何でも勝手に決められてしまう」としか映りません。前出の筑波大学附属小学校の田中先生は、「難しい本に焦って出会わせなくても、考える子に育つ環境づくりはもっと身近なところにある」といいます。

まずは、日々のお手伝いやお出かけの準備といった小さなことなどから、子どもたちに「選ばせて」「決めさせる」ように心がけましょう。たとえばお出かけのとき、子どもの靴まですべてそろえていませんか?

たまにはいじわるして、とってもいい天気なのに長靴を置いてみたりする。我が子がどのように動くか少し離れて観察してみると面白い。もしも、何も疑わず長靴をはいて天気のいい日にでかけていったとしたら、少し我が子への接し方を見つめ直した方がいいかもしれない。

(引用元:現代ビジネス|わが子の「考える力」を奪う親たち、その意外過ぎる共通点

反対に、長靴を見た子どもが「どうして長靴なの?」と言ったり、外を見て「雨は降っていないよ」と言ったりするようなら、自分の頭で物事を考えているということ。このように、日常の中の小さな出来事をきっかけにして、「自分で考える力」を身につけることは可能です。その延長として、親の意見や価値観をそのまま鵜呑みにしない強い心が養われていくでしょう。

「~~しなさい」にご注意を5

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子どもが「親の言うことは絶対!」と信じ込むのはよくありません。自信を奪い、自立への妨げになってしまいます。わが子を心配するあまり、すぐに正解を出してしまったり、自分の思い通りになるように誘導したりすると、いずれ子ども自身が「選べない」「決められない」人間になってしまうかも。ここは一歩引いて、お子さんを信じて見守ってあげませんか?

(参考)
ダイヤモンド・オンライン|子どもの価値観を決めるのは「○○価値」である
現代ビジネス|わが子の「考える力」を奪う親たち、その意外過ぎる共通点
東洋経済オンライン|子どもを追いつめる、親たちの「願望と正論」「押し付け」を変えるための「6つの提案」
プレジデントムック(2017),『プレジデントFamily 小学生からの知育大百科 2018完全保存版』, プレジデント社.
LEE,2017年12月号,pp.202-205.