教育を考える 2020.1.20

性格統計学の提唱者が語る。「親子は考え方も似る? それはただの思い込みです」

性格統計学の提唱者が語る。「親子は考え方も似る? それはただの思い込みです」

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「物心ついた子どもとのコミュニケーションを取るのが難しい……」と悩んでいる親はかなりの数で存在するはずです。「そういう人はかなり多い」と語るのは、人間関係研究家の稲場真由美さん。稲場さんは、16年間、延べ12万人の統計データをもとに「性格統計学」という独自の理論を構築しました。それによると、人間は4つのタイプにわけることができ、それぞれのタイプによって行動や発想のパターンが異なるため、たとえ親子であってもコミュニケーション・ギャップが生まれるのだそう。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/石塚雅人(インタビューカットのみ)

16年間、延べ12万人の統計データから生まれた「性格統計学」

顔や体形が遺伝するように、性格も遺伝するものだと多くの人が思っていることでしょう。でも、じつはそうではありません。人間には生まれ持った性格のタイプがあるのです。それなのに、多くの親は「自分がうれしいと感じることだから、子どももうれしいと感じるはず」「自分が得意なことだから、子どもも得意なはず」というふうに思い、自分の考えを押しつけてしまいがちです。そうして、意思疎通ができずに親子関係がうまくいかなくなるということが起こるのです。

自分の子どもであっても、「もしかしたら、わたしとはタイプがちがうかも」と考えることがなによりも大切です。「自分がうれしいと感じることだから、子どももうれしいと感じるはず」といった思い込みをまずは払拭して、フラットな気持ちで子どもと接するだけでも、親子関係はずいぶんよくなるはずです。

ですが、こういうわたし自身、かつてはまさに「自分がうれしいと感じることだから、相手もうれしいと感じるはず」と思い込んでいる人間でした。でも、家庭でも仕事関係でも、人間関係がどうもうまくいかないということが多かったのです。そのとき、ある一定の人とのあいだでそういう問題が起きることが多いと気づいたのです。もしかしたら、人間にはいくつかのタイプがあり、それぞれにコミュニケーションや行動に癖があるのではないか――そう考えたことがわたしの「人間関係研究家」としてのスタートでした。

そして、16年間で延べ12万人の統計データを蓄積して構築したのが、わたしが提唱する「性格統計学」です。

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子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
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ふたつの軸によってわけられる人間の4タイプ

この性格統計学では、ふたつの軸によって人間を4つのタイプにわけます。ひとつの軸は、「自分軸か、相手軸か」というもの。自分軸というのは、「自分のために頑張ることが行動の原動力になる」タイプであり、相手軸は「相手のために頑張ることによろこびを感じる」タイプです。

もうひとつの軸は、「計画的か、臨機応変か」というもの。計画的というのは、「事前に決めた目標やルールを重視して計画的にものごとを進めたい」タイプです。一方、臨機応変というのは、「その場での直感を重視して行動する」タイプを指します。これらふたつの軸により、人間は以下の4タイプにわけられます。

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  • ロジカル(自分軸かつ計画的)
  • ビジョン(自分軸かつ臨機応変)
  • ピース・プランニング(相手軸かつ計画的)
  • ピース・フレキシブル(相手軸かつ臨機応変)

 
これらのタイプは、次のふたつの質問で判別することができます。

【1】話は、
A もとから順を追って聞きたい
B 結論から聞きたい

【2】急な変更は、
A ストレスになる
B ストレスにならない

【1】B、【2】Aを選んだ人は、ロジカル
【1】B、【2】Bを選んだ人は、ビジョン
【1】A、【2】Aを選んだ人は、ピース・プランニング
【1】A、【2】Bを選んだ人は、ピース・フレキシブル

ロジカルは、自分で納得して自分のペースやタイミングでものごとを進めたいタイプ。そのため、急な予定変更などは大きなストレスになります。ビジョン自分の感性に響いたり可能性を感じたりするものを好みます。また、自分の願望を重視しますから、「やりたい!」と感じるものかどうかで、ものごとに取り組む集中力に大きなちがいが出るという特徴もあります。

「ピース」は、行動パターンが計画的か臨機応変かによってピース・プランニング」「ピース・フレキシブルというふたつのタイプにわかれますが、共通しているのは相手軸だということ。ともに和を大事にし、人間関係が円滑であることを好む共通点があります。また、ものごとをもとのもとから知りたいという傾向があり、「なぜ?」という口癖があることも共通点です。

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まずなによりも親が自分自身を知ることが大切

子どものタイプを知るには、親の立場から、先のふたつの質問のどちらに子どもがあてはまるのかを考えてみてください。ただ、注意してほしいのは、先に挙げた例のように「自分がうれしいと感じることだから、子どももうれしいと感じるはず」といった思い込みがあっては、子どものタイプを正確に知るのは難しいということ。それこそ、フラットな視線で子どもを見て、「どっちかな?」と冷静に考えてみましょう

そして、子どもとの関係性を考える前に、まずはみなさんが自分自身のことをよく知ることを心がけてください。人間関係には悩みは尽きないものですが、そもそも他人との関係だけではなく自分との関係も人間関係です。まずなにより自分自身と上手につき合えるようになること。そのうえで、子どもとうまくかかわることができるようになれば、子育てはぐっと楽になるはずです。

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稲場真由美 著/セブン&アイ出版(2019)
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性格統計学による4タイプ診断サイト

■ 人間関係研究家・稲場真由美さん インタビュー一覧
第1回:性格統計学の提唱者が語る。「親子は考え方も似る? それはただの思い込みです」
第2回:子どもが言う「なんとなく……」に、親が「どうして?」と聞いてはいけないわけ。
第3回:子どものタイプ別・自己肯定感が本当に伸びる褒め言葉。「すごいね」だけじゃ響かない!?
第4回:「いくら言っても分かってくれない」のは、叱り方がその子に合っていないから。

【プロフィール】
稲場真由美(いなば・まゆみ)
1965年生まれ、富山県出身。一般社団法人日本ライフコミュニケーション協会代表理事。株式会社ジェイ・バン代表取締役。自身が人間関係の悩みに直面したことから、新しいコミュニケーションメソッドを探求し、16年間、延べ12万人の統計データをもとに「性格統計学」を考案・開発する。以来、このメソッドを「ひとりでも多くの人に伝え、すべての人を笑顔にしたい」との思いから、セミナーや講演、カウンセリングを通じて普及活動を行う。2018年には「性格統計学」にもとづくマルチデバイス型ウェブアプリ『伝え方ラボ』を開発し、ビジネスモデル特許の取得に成功(特許6132378号)。現在は、企業や自治体、学校をはじめ、法人・個人を問わず『伝え方ラボ』を活用した研修やコンサルティングを幅広く行い、多くの人のコミュニケーションスキル向上に貢献する活動を続けている。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。