教育を考える 2020.1.8

何枚着せる? 冬の洋服選びの注意点。親が神経質になるのはNGです

宍戸 洲美
何枚着せる? 冬の洋服選びの注意点。親が神経質になるのはNGです

東京の1月の平均最低気温は1~2℃です。しかし、小学生の登校風景を見ていると、オーバーコートを着て手袋をはめ、寒さ対策をしっかりしている子どもがいる一方で、半ズボンで元気に登校している子どももちらほら混じっています。

半そでの子どもに「寒くないの?」と声をかけてみましたが「寒くない!」という返事が返ってきました。この違いは何でしょうか。今月号ではそんなこともみなさんと一緒に考えていきたいと思います。

子どもの体がおかしくなってきている

人間は恒温動物です。恒温動物は、外気温が変化しても自分の体温を一定に保つ機能をもっています。しかし現代は、暑くなったらクーラー、寒くなったらすぐに暖房、と快適な環境が保障されるようになったため、体温調節機能が低下し、最近では寒さにも暑さにも弱い子どもが増えているといいます。

一般的に、北国で育った人は寒さに強く、南国で育った人は暑さに強い傾向があると言われています。これには科学的な根拠があるのです。生後3ヶ月までに「寒い」という体験をさせると、寒い時に体温を上げる機能が発達します。逆に、3歳ぐらいまでにたくさん汗をかくような体験をさせると「能動汗腺」の数が増えるので、汗をたくさんかいて体温を下げる機能が発達し、暑さに強い体になるというわけです。

故正木健雄先生(日本体育大学名誉教授)は、1990年代ごろから、子どもたちの低体温が増えてきていることを懸念されていました。自律神経の働きも含めて、子どもの体がおかしくなってきているというのです。今は、暑さにも寒さにも弱い子どもが増えているように思います。冬に「半そでで大丈夫」という子どもは、体の中で熱をつくる働きが強いのです。このように、「子どもは風の子」の生活を取り戻したいですね。

冬の洋服選びの注意点2

子どもの知的好奇心を育てる3つのポイント
PR

寒くても外遊びが重要な理由

年齢が小さければ小さいほど、体と心の働きは強くつながっています。ですから、体を動かすことによって心も動きます。家にこもっていると、単に運動量が減ってしまうということだけでなく、意欲や集中力なども低下してしまうのです。

かつて保健室登校をしていたお子さんの話をしましょう。そのお子さんは、場面緘黙(かんもく)と言われるほど学校では言葉を発することがありませんでした。ある日、保健室で一緒に紙ひこうきを作って、外に連れていき、ひこうき飛ばしの競争をしました。飛ばした紙ひこうきを何度も拾いに行き、たっぷり汗をかくほど体を動かしたところ、そのお子さんは「先生、僕の勝ち!」と言葉を発したのです。

意欲的な子どもは外でよく遊びます。そのお子さんは、外で体をたくさん動かして遊ぶことにより、次第に言葉を発することも増えて新しいことをやってみたいと言うようになりました。さらに、お母さんからは「食欲も増して夜も寝つきがよくなった」と報告がありました。

冬の洋服選びの注意点3

冬の外遊び・冬の洋服選びで気をつけること

寒い季節、外遊びをする際にはいくつかの注意点があります。体が十分に温まっていないとけがをすることが多い傾向はありますが、ちょっとしたすり傷は子どもの勲章なので、あまり神経質にならないようにしましょう。

ただ、服装には気をつけたいですね。今流行の長すぎるスカートやズボン、フードや飾りが多い上着などは、引っかかってしまうとけがのもとになります。できるだけ体にぴったりした動きやすい服装を心がけましょう。遊び場所や遊びの種類によっては、滑り止めがついた手袋や帽子などはけがを防いでくれるのに役立ちます。

子どもの洋服はシンプルなものがおすすめです。着脱しやすく重ね着しやすい洋服を選ぶといいでしょう。最近は大人でも下着(シャツ)をつけない人が増えてきており、子どもたちにも影響しているようです。下着は体温調節に有効で、汗や汚れも吸い取ってくれますから、普段から下着を着る習慣をつけるといいですね。

最近では、昔に比べて自分で衣服の調節ができない子どもが増えています。その結果、風邪をひくこともあるかもしれませんが、風邪の予防としては、むしろ外から帰ったときのうがいや手洗いが大切。よほど長時間薄着のままでいなければ、風邪をひく心配はありません。大切なのは、自分で「寒さ」を意識できるようになることです。ですから「寒くない?」などと声をかけてあげるといいと思います。

学校の教室は暖房も効きますし、大勢の子どもたちが集まっていると意外に暖かいものです。なかには登校してもコートを着たまま座っている子どもがいますが、そのような場合は先生が室内では脱ぐように指導します。たくさん着ていると、暑いだけでなく体を動かしにくくなりますので、できれば室内では下着とセーターかトレーナーくらいで大丈夫。下着と綿シャツだけで充分というお子さんも多いです。子どもの洋服は綿やウール素材を中心に、シンプルで着脱しやすいものを選びましょう。

冬の洋服選びの注意点4

自分で洋服を調節できる力をつけよう

ここからは、冬の洋服選びについて親御さんから寄せられたお悩みについて、お答えしていきたいと思います。

【親御さんからの質問1】

子どもに「暑いんだけど……」と言われながらも、肌着+保温や発熱機能に優れた下着+長袖シャツ+トレーナーを着せていました。しかし、「体育の着替えのとき、ほかの子はこんなに着てなかった!」と子どもに言われ、着せすぎていたのかな? と心配になりました。でもやっぱり外に出ると寒いと感じますし、風邪をひくのではないかと不安になってつい何枚も重ね着をさせてしまいます。

子どもは大人と比べて、たしかに体温調節能力は低いかもしれませんが、まずは暑かったら自分で脱げる力をつけたいものです。子どもの体に触ってみると意外に温かいので、よほど寒い地域でなければ保温や発熱機能に優れた下着は必要ありません。それよりも、木綿の下着にセーターなどの重ね着をするほうがいいでしょう。大切なのは、子ども自身が「暑かったら脱ぐ」「寒くなったら着る」という力をつけるように働きかけてあげることです。

冬の洋服選びの注意点5

少しくらい寒くても大丈夫。神経質にならないで

【親御さんからの質問2】

夜寝るときの室温やパジャマについて相談します。暖房をつけながら寝るときに適した温度はどれくらいがベストですか? 乾燥すると風邪をひきやすいと聞きますが、加湿器は必要でしょうか? また寝間着について、フリース素材のパジャマを着せて、その上に毛布のベストを着せていますが、夜中に部屋をのぞくと大汗をかいていることも……。やはり着せすぎでしょうか? 朝はとても冷えるので、たくさん着せておいたほうが安心です。

寝るときの室温を20℃前後くらいで保っていれば、パジャマの上に何かを着せる必要はありません。湿度を保ちたいときは、濡れたタオルなどをかけておくだけでもいいでしょう。逆に、着せすぎで汗をかいて冷えることで、かえって風邪をひくということも。長袖、長ズボンのパジャマ1枚で十分です。

寒さに弱いお子さんなら、パジャマの下に下着を着せるほうがいいでしょう。寝る前に湯たんぽなどでお布団の中を暖かくしておくと、気持ちよく眠りにつくことができます。また、寝る前に少しぬるめのお湯にゆっくり入ると体が温まったまま眠れます。

ただし、大切なのはあまり神経質にならないこと。子どもは少しぐらい寒くても暑くても大丈夫です。そのためには、冒頭にお話ししたように、寒さや暑さの体験をたっぷりさせて、外の気温の変化に強い体をつくることを心がけて。夜更かしや睡眠不足、朝ご飯抜きなどは自律神経の働きや免疫力を低下させ、体温調節機能が低くなるため、生活習慣を正すことを重視しましょう。

冬の洋服選びの注意点6

自分で調節できるようになるまで長い目で見守って

【親御さんからの質問3】

外を走り回って真っ赤な顔をしているのに上着を脱がなかったり、逆に鳥肌が立っているのに上着を着なかったりと、「それくらい自分で判断しなさい」と言っても指摘されるまでそのままにしているときがあります。言われなくても自分で判断できるようになってほしいのですが、親が気にしすぎているだけなのでしょうか?

衣服の調節もしつけの一環ですが、あまり心配しなくても次第に自分でできるようになります。遊びに夢中になっているときは、神経がそちらに向かっていますので、脳が暑さや寒さを意識している暇がないのでしょう。親御さんが気がついたら声をかけるくらいで十分です。子ども自身が自分でできるように見守りましょう。中学生ぐらいになるとほとんどの子どもが自分で調節していますので、あまり神経質になることはありませんよ。

冬の洋服選びの注意点7

暑さ、寒さに強い体は○○でつくられる

今月は「寒さ対策」に焦点を当ててお話ししてきましたが、7月号でもお伝えしたように、じつは今、子どもたちの体温調節能力が下がっていることが問題になっています。とくにそれは暑い時期に「熱中症」という形での事故が増えていることからも明らかです。地球の温暖化という問題もありますが、子どもたちの自律神経の働きとも関連して、暑くなったら汗をかいて体温を下げる、寒くなったら毛穴をしっかり閉じて熱を逃がさない、筋肉を収縮させて熱をつくり出す、こうした働きが弱くなっているのです。恒温動物としての危機です。

寒さ、暑さ対策の基本はシンプルです。早寝早起きを中心とした正しい生活リズムをつくること、三食しっかり食事をとること、そして思いっきり体を動かして外で遊ぶことこれらが最良の対策だといえるでしょう。