インタビュー/教育を考える 2025.4.21

【2025年版】15年間の教育費、いくらかかる? 公立・私立で3倍差! 物価高騰時代の「賢い考え方」

【2025年版】15年間の教育費、いくらかかる? 公立・私立で3倍差! 物価高騰時代の「賢い考え方」

インフレで価格高騰が続くなか、家計の厳しさを実感する人も多いと思います。もちろん、「教育費」だって例外ではありません。しかし、わが子が希望する進路を不安なく歩んでいくには、教育費をきちんと用意しておく必要があります。「教育費はすごく高いもの」という漠然としたイメージがあっても、そもそも教育費はいくらなのかを知っているでしょうか? ファイナンシャルプランナーの飯村久美さんは、「まずはその金額を知ること。そして、子どもの希望や家庭の経済事情を踏まえ、ケース・バイ・ケースで考える必要がある」と言います。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/塚原孝顕(インタビューカットのみ)

物価高騰に伴って教育費も上がっている

「教育費」はかつて、「聖域」と呼ばれていました。子どもにきちんと教育を受けさせるために、家計のなかでも「ここだけは削れない」「死守しなければならない」というものが、教育費だったのです。

しかし、教育費をめぐる状況は、以前と比べて厳しくなっています。その要因は、言うまでもなく昨今の物価高です。人件費や水道光熱費などが上がることに比例し、学習塾や習い事の費用も上昇傾向にあるのです。子どもを車で送迎するなら、ガソリン代だって無視できませんよね。もっとミクロ視点でいくと、食費も上がっているのですから塾に通う子どもにもたせる間食代すら高くなっているはずです。そう考えると、聖域と呼ばれた教育費についても、削れるところは削ることが求められるようになってきています。

その一方、みなさんにとって嬉しい情報もあります。2024年10月より、「児童手当」が大きく拡充されたのです。これまで中学卒業まで支給されていた児童手当は、子どもが高校を卒業する18歳まで支給されるようになりましたし、所得制限も撤廃されました。第3子以降の子どもに至っては、1か月あたりの支給額がこれまでよりはるかに大きい3万円になったことも大きな変化だと思います。

児童手当リスト※画像は編集部で作成

ほかにも、東京都を例に挙げれば、子どもが私立中学に進学した場合にも助成金を受け取れるようにもなりましたし、条件を満たせば都立大学の授業料が無償化されるなど、各自治体が少子化対策としてさまざまなサポートを用意するようになっています。

そういった意味では、教育費をめぐる状況が厳しくなってきているのは事実ではあるものの、悲観的になり過ぎる必要もないというのが実情だと考えます。

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すべて公立か、すべて私立かで必要な金額は大きく異なる

とはいえ、楽観的過ぎるのもよくありません。子どもひとりあたりの教育費がどれくらいになるのかという現実を把握したうえで、きちんとお金を用意する必要があるでしょう。

具体的な金額は、子どもの進学先により大きく異なります。公立に進めば安く済みますが、私立に進学すれば高くなるのはいうまでもありませんよね。目安となるのが、以下の金額です。これは、文科省が公表した「令和5年度子供の学習費調査」の結果です。

教育資金リスト※画像は編集部で作成

これは、学校教育費の他、学校給食費、塾や習い事などの費用である学校外活動費を合わせた「学習費総額」の1年間の平均額を示したものです。公立か私立かで大きな開きがあることは一目瞭然でしょう。また、令和3年度に行なわれた前回調査と比べると、ごく一部を除いて高くなっていることも明白です。

幼稚園3歳から高校3年までの15年間のトータルで見ると、すべて公立なら約596万円、すべて私立なら約1976万円です。すでにおわかりかと思いますが、教育費については「これだけ貯めておけばいい」といった数字を一概にいうことはできないというわけです。子どもの希望や家庭の経済事情などを踏まえ、みなさんそれぞれがケース・バイ・ケースで考える必要があるのです。

ブタの貯金箱

高校卒業後にこそ、大きな出費が待っている

そして、高校卒業後にも大きな出費が待ち受けています。むしろ、そのタイミングこそ、大きなお金が必要だといえるでしょう。子どもが国公立大学に進んでくれれば4年間の学費は250万円ほどで済みますが、国公立大学の場合は求められる学力のレベルが高まります。

よって、必然的に私立大学に進学するケースを考慮する必要が出てきます。あくまで目安になりますが、文系なら4年間で450万円、理系なら600万円程度はかかると思ってください。同じ理系でも、医科歯科系や航空系の学部の場合なら学費はさらに跳ね上がります。

加えて、子どもが大学や専門学校に実家から通うのか、ひとり暮らしをするのかによってもかかる金額は明らかに変わってきます。ですから、あらゆるパターンを想定し、必要金額のシミュレーションをしておくと安心です。

日本学生支援機構のホームページに、「進学資金シミュレーター」というものが公開されています。それを利用することで、「実家から通う」「実家を離れ、アパート等を借りて通う」の2パターンで、それぞれの食費や住居・光熱費、修学費といった月額支出の平均額が示され、それらをどのように捻出するのかというプランを立てることができます。

いずれにせよ、子どもが高校卒業後も進学するのであれば、大学や専門学校を卒業するまでを見越して必要額を準備していく必要があるわけです。いうまでもなく、それは家庭それぞれであり、シミュレーションすべきパターンは複数あることを意味します。

ただ、ここでお伝えしたいことがあります。わたしのところに相談に訪れる多くのみなさんが、「教育費がかかって大変……」と頭を悩ませますが、それは単純に、親であるあなたが「教育費をかけている」ということに過ぎないともいえます。お金をかけようと思えばいくらでもかけられるのが教育費ですが、本当にその教育を子どもが望んでいるのか、必要な教育なのかといったことを前提に、「我が家の教育方針をどうしていくか」といった総合的なことも、あらためて考えてみるといいでしょう。

飯村久美先生

年収300万円でもラクラク越えられる 貯蓄1000万円の壁
飯村久美 著/KADOKAWA(2021)
飯村久美先生表紙

■ ファイナンシャルプランナー・飯村久美さん インタビュー一覧
第1回:【2025年版】15年間の教育費、いくらかかる? 公立・私立で3倍差! 物価高騰時代の「賢い考え方」
第2回:過熱する「中学受験」、塾代+受験費用で300万円! 人気FPが教える【計画的な貯め方】
第3回:教育費&老後資金を正しく貯める|賢い親はやっている、新NISA時代の資産形成術

【プロフィール】
飯村久美(いいむら・くみ)
金融機関在職中にファイナンシャルプランナー(FP)の資格を取得。退職後、自らの経験から、お金の正しい知識を身につけることが「生活を守る手段」であり、「やりたいこと」や「夢」につながると痛感。その経験を伝え、その人の夢が叶うマネープランをサポートすることを目的として、2006年にFP事務所を開業。テレビやラジオ出演、セミナー講師など幅広く活躍中。監修書に『一生お金に困らない! 貯め方・増やし方』(ナツメ社)、著書に『お金の先生! できるだけ簡単にお金が増える方法を教えてください。』(アスコム)、『ズボラでもお金がみるみる貯まる37の方法』(ゴマブックス)、『シングル女子の今日からはじめる貯蓄術』(成美堂出版)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。