インタビュー/教育を考える 2025.4.23

過熱する「中学受験」、塾代+受験費用で300万円! 人気FPが教える【計画的な貯め方】

過熱する「中学受験」、塾代+受験費用で300万円! 人気FPが教える【計画的な貯め方】

「中学受験」を目指す家庭にとって、そこにかかってくる「費用」は大きな関心事であり悩み事にもなり得るものです。もちろん、必要な金額を知らなければ、計画的に準備することもできません。そこでアドバイスをお願いしたのは、ファイナンシャルプランナーとして各メディアでも活躍する飯村久美さん。中学受験に必要となるリアルな金額を教えてもらうなかで、「中学受験ばかりにフォーカスして考えるのは危険な行為」と指摘します。

構成/岩川悟 取材・文/清家茂樹 写真/塚原孝顕(インタビューカットのみ)

学習塾に3年間通うだけで220万円以上が必要

近年、とくに都市部を中心に過熱しているのが「中学受験」です。中学受験というと一般的には私立中学進学を目指すわけですが、公立に進む場合と比べるとかなりの費用がかかり、家計を圧迫します。

中学受験を目指す場合、ほぼ100%に近い子どもが学習塾に通うことになります。そこで、まずはその金額をざっと把握しましょう。小学4年生から塾に通いはじめるケースで考えてみます。4年生はだいたい月に3万円くらいなので、そこに教材費などを加えると、年間で40万円くらいでしょう。

5年生になると、月に5万円くらいかかってきます。翌年に受験を控えているので夏期講習や冬期講習も受けることが一般的ですので、それらの金額が合わせて20万円程度。すると、年間で80万円くらいになります。

6年生は、月に約6万円です。夏期講習と冬期講習に加えて受験直前の「正月特訓」にも参加すると、それらの金額が計35万円。トータルで約107万円になります。つまり、学習塾の費用だけで、3年間の合計金額は220万円以上になる計算です。

塾に通わせるとなると、必要なお金はそれだけに限りません。電車やバスで通わせるなら交通費がかかりますし、車で送迎するならガソリン代が必要ですよね。ちょっとした軽食代だって必要でしょう。

飯村久美先生

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受験料だけで12万5000円、入学金は60万!?

そして、受験そのものにもお金がかかります。公立の中高一貫校であれば受験料は2000円程度で済みますが、私立の場合なら1件あたり2万〜2万5000円といったところでしょう。居住地から離れた場所にある学校を目指すなら、受験のたびに宿泊費や交通費もかかることを頭に入れておかねばなりません。

ほかにも、いわゆる滑り止めで合格した学校には、入学金を納めます。その金額は、施設整備費なども含めて30万円といったところでしょうか。

中学受験では、平均してひとりあたり5〜6校を受験する傾向があるといわれています。受験料が2万5000円で5校を受けたとすると、受験料だけで12万5000円。滑り止めの学校と入学する学校にそれぞれ30万円の入学金を納めたら60万円もかかります。トータルで72万5000円、家庭によっては宿泊費や交通費もかかるというのが実情なのです。

先にお伝えした学習塾にかかる220万円に加えると、なんと約300万円を準備しておく必要が出てきます。さらには、入学したら入学したで、その後も公立校と比べて高額の学費がかかります。

授業中に手を挙げる高校生たち

大きなお金が必要になるのは高校卒業後のタイミング

では、これらのお金をいかに準備していけばいいのでしょうか? このことについては、残念ながら「こうしたらいい」という誰しもにあてはまる方法は存在しません。それぞれの家庭で家計状況も異なりますし、子どもの数、貯蓄をはじめる時期なども異なるからです。

そもそもの話になりますが、中学受験にだけフォーカスしてお金を貯めようと考えることそのものに問題があるとわたしは考えます。子どもが中学受験をするのであれば、ここまでにお伝えしたくらいのお金がかかるのは事実ですが、子どもの教育はそこで終わりません。その先にだって、高校受験、大学受験と出費のタイミングが待っています。

とくに、子どもの教育費として本当に大きなお金が必要になるのは、高校卒業後のタイミングです。国公立大学に進学してくれれば4年間の学費は250万円ほどですが、それでも大きな金額ですし、しかも国公立大学に合格するにはそれなりの高い学力が求められます。

そのため、子どもが私立大学に進学するケースも考えておくべきでしょう。文系なら4年間で約450万円、理系なら約600万円というのが一般的な学費の目安です。進学先が遠方でひとり暮らしをさせるなら、さらにお金はかかってきます。そのように、子どもの希望や進学先などによって必要なお金には大きなちがいが出てくるため、「こうしておけばいい」という万人に向く貯蓄法はないのです。

唯一、万人におすすめできるのが、「児童手当」には手をつけず、しっかり貯めておくという方法です。2024年10月から、児童手当が大きく拡充されました。現行の制度で子どもが高校を卒業するまでの18年間にわたってそれらをきちんと貯めておくと、利息を考えなくとも234万円になります。これは決して小さな金額ではありませんよね。

また、児童手当に加えて、1カ月に1万円でもいいので蓄えることを考えてみましょう。1カ月に1万円だとすれば、18年間で216万円になります。児童手当の234万円と合わせると、まさに私立文系の大学の学費である450万円になる計算です。

そのような準備をしてもまだそれなりに余裕があり、さらに子ども自身が希望しているのであれば、中学や高校の受験で私立校を目指すといいと思います。よくある落とし穴が、目の前の中学受験にばかり目を向けてお金をかけたがために、大学進学時に子どもの希望を叶えることができないというパターンです。教育熱心になるあまり短視眼的になることなく、長期的な目線で教育費を捉えていきましょう。

飯村久美先生

年収300万円でもラクラク越えられる 貯蓄1000万円の壁
飯村久美 著/KADOKAWA(2021)
飯村久美先生表紙

■ ファイナンシャルプランナー・飯村久美さん インタビュー一覧
第1回:【2025年版】15年間の教育費、いくらかかる? 公立・私立で3倍差! 物価高騰時代の「賢い考え方」
第2回:過熱する「中学受験」、塾代+受験費用で300万円! 人気FPが教える【計画的な貯め方】
第3回:教育費&老後資金を正しく貯める|賢い親はやっている、新NISA時代の資産形成術

【プロフィール】
飯村久美(いいむら・くみ)
金融機関在職中にファイナンシャルプランナー(FP)の資格を取得。退職後、自らの経験から、お金の正しい知識を身につけることが「生活を守る手段」であり、「やりたいこと」や「夢」につながると痛感。その経験を伝え、その人の夢が叶うマネープランをサポートすることを目的として、2006年にFP事務所を開業。テレビやラジオ出演、セミナー講師など幅広く活躍中。監修書に『一生お金に困らない! 貯め方・増やし方』(ナツメ社)、著書に『お金の先生! できるだけ簡単にお金が増える方法を教えてください。』(アスコム)、『ズボラでもお金がみるみる貯まる37の方法』(ゴマブックス)、『シングル女子の今日からはじめる貯蓄術』(成美堂出版)などがある。

【ライタープロフィール】
清家茂樹(せいけ・しげき)
1975年生まれ、愛媛県出身。出版社勤務を経て2012年に独立し、編集プロダクション・株式会社ESSを設立。ジャンルを問わずさまざまな雑誌・書籍の編集に携わる。