かけっこ 2026.9.25

かけっこは年少・年長・小1・小3で練習が違う。年齢別「1日5分メニュー」8つ

かけっこは年少・年長・小1・小3で練習が違う。年齢別「1日5分メニュー」8つ

「運動会まであと1か月」「腕を振れって言っても振れない」「何を練習させればいいか分からない」。9月に入ると、公園でわが子の走りを見ながら、そんな言葉が口をついて出ることはありませんか。

幼稚園〜小学校低学年のかけっこは、親の言葉かけだけでも速くなる、と体育指導の専門家は話します。この記事では、専門家が挙げるコツをもとに1日5分でできるメニューをまとめ、取り組みやすい順に年齢の目安をつけて並べました。

幼稚園〜低学年は、いろいろな動きを短い時間で

スポーツの世界には「ゴールデンエイジ」という言葉があります。新しい動きを何度か見ただけで身につけやすい時期のことです。その手前で体の使い方の土台をつくる時期を「プレ・ゴールデンエイジ」と呼びます。

年齢の区切りは専門家によって1〜2歳の幅があり、順天堂大学スポーツ健康科学部で学部長を務めた吉村雅文氏は、プレ・ゴールデンエイジを5〜9歳頃、ゴールデンエイジを9〜12歳頃としています。

(参考: こどもまなびラボ|子どもの運動能力が上がる! ゴールデンエイジとプレゴールデンエイジの過ごし方)

年長から小学校低学年はちょうどプレ・ゴールデンエイジにあたり、年少はその少し手前、年中はその入口です。リーフラス株式会社経営企画部の市川雄大氏は、運動能力を高めるうえでは、「基礎づくり」にあたるプレ・ゴールデンエイジが、ゴールデンエイジよりも重要だと話しています。

(参考: こどもまなびラボ|子どもの運動能力が飛躍的に伸びる! ゴールデンエイジよりも重要な「プレ・ゴールデンエイジ」の過ごし方)

プレ・ゴールデンエイジは、神経回路の発達が著しい時期とされています。東京学芸大学の髙橋宏文教授は、脳と体、あるいは体の部位どうしをつなぐ神経回路がよく連係しているほど電気信号は速く正しく伝わり、体を思い通りに動かせるようになると説明しています。*1

文部科学省の「幼児期運動指針」でも、幼児期は神経機能の発達が著しく、タイミングよく動いたり力の加減をコントロールしたりする能力が大きく伸びる時期だとしています。*2

プレ・ゴールデンエイジには、走る・跳ぶ・投げるなど、いろいろな動きを経験させることが大切だとされています。そこで、このあとのメニューには、歩く・跳ぶ・まねるといった走る以外の動きも入れました。

かけっこの練習については、運動が苦手な子どもが主役の運動教室『スポーツひろば』代表の西薗一也先生が、幼稚園〜小学校低学年なら親の言葉かけだけでも速くなると話しています。コツは、子どもに分かりやすい言葉を使うこと。「頑張って速く走ろうね!」のような抽象的な言葉では、どう頑張れば速く走れるのか、子どもには分からないそうです。

(参考: こどもまなびラボ|体育指導の専門家が教える! かけっこがすぐに速くなる3つのコツと “魔法の言葉かけ”)

練習時間を短めにすることも、西薗先生の助言です。長い時間練習させると、子どもの集中力や体力が落ちて、一番大切な「全力で走る」ができなくなるからです。この記事の「1日5分」は、この助言に合わせて区切った時間です。

西薗先生は、「まずはこの3つに気をつけるだけでかけっこが速くなる」という言葉かけも挙げています。「スタートからゴールまで、ずっと前を見ていよう!」「ゴールの3メートル先まで走ろうね!」「100%の力で走ろうね!」の3つで、どれも年齢を問わず使えます。

かけっこは、短く、全力で、たくさんほめる。どの年齢でも、これが前提です。

ほめるときは、その子自身ではなく、やったことをほめるのがおすすめです。4歳の子どもを対象にした米国の実験では、「絵が上手な子だね」とほめられた子どもに比べて、「上手に描けたね」とほめられた子どもは、失敗したあとも自分を低く評価しにくく、あきらめずに取り組む傾向が見られました。(米スタンフォード大学、キャロル・S・ドゥエック教授ら)*3

両手に旗を持って子どもが走る様子

年齢の目安で選ぶ「1日5分メニュー」

ここからのメニューは、専門家やこどもまなびラボの過去記事で紹介されている練習をもとに、編集部が取り組みやすい順に並べ、年齢の目安をつけたものです。ひとつのメニューが5分で、その年齢のふたつを日替わりでやります。年齢が上の子が、下の年齢のメニューをやってもかまいません。上の年齢のメニューに進むのは、下のメニューが「楽しくできる」ようになってからにしましょう。

年齢 この5分のねらい 1日5分メニュー
年少
(3〜4歳)
前を見て全力で走る/まっすぐな姿勢で歩く ①特急電車ダッシュ
②壁ぴったり立ち→レール歩き
年長
(5〜6歳)
動きにパッと合わせる/つま先で弾む足 ③「私は鏡」まねっこ
④つま先ジャンプ
小1
(6〜7歳)
腕振り/スタートの3歩 ⑤太鼓たたき腕振り
⑥目をつぶってスタート5メートル
小2
(7〜8歳)
もも上げ/最後まで駆け抜ける走り ⑦もも上げケンケン
⑧「ゴールの3メートル先」駆け抜け

①【年少】特急電車ダッシュ:前を見て、5メートルを全力で走る

5メートルほど先の木や、地面に置いた目印をゴールに決め、「ヨウイ、ドン」で全力で走ります。ゴールでは止まらずに走り抜け、歩いて戻る。休みながら5分間くり返します。

電車が好きな子なら、特急電車にたとえてスピードをイメージさせるのもおすすめです。

声かけ例:「あの木の向こうまで、特急電車で走り抜けよう!」「ヨウイ、のときからずっと前を見ていようね」

②【年少】壁ぴったり立ち→レール歩き:まっすぐな姿勢を体で覚える

壁に頭・お尻・かかとをぴったりつけて立ちます。これが「まっすぐな姿勢」です。スマホで撮って見せると、本人にも分かりやすくなります。そのまま壁から離れ、目の前に足幅の2本のレールがあるとイメージして、レールの上に左右の足を交互に乗せるように歩きます。往復しながら5分。目線を下げないのがポイントです。

「歩く」は「走る」の基本となる動作です。頭からつま先まで1本の芯が通ったような姿勢で歩けるようになると、走るときのフォームにもつながります。

声かけ例:「体に1本、串が通っているよ〜」「目は遠くのすべり台を見よう」

③【年長】「私は鏡」まねっこ:大人と同じ動きをパッとまねる

向かい合って立ち、親が大きく動きます。両手を上げる、しゃがむ、片足で立つ。子どもは鏡になったつもりで、同じ動きをすぐにまねします。親が動いてからワンテンポ遅れてまねるのではなく、動いた瞬間にパッと合わせるのがポイントです。20〜30秒続けたらひと休みして、別の動きへ。これで5分です。

東京学芸大学の髙橋宏文教授の著書で、合図にすばやく正確に対応する力を高める運動として紹介されている遊びです。

声かけ例:「お母さんと同じ動き、できるかな?」「いまのは速かった! 鏡そっくり」

④【年長】つま先ジャンプ:かかとをつけずに、その場で弾む

まっすぐな姿勢のまま、その場で真上に軽く跳びます。前かがみにならないように注意し、着地はつま先から。かかとはできるだけ床につけません。10回跳んだらひと休み、をくり返して5分。慣れたら縄跳びの後ろ跳びでもかまいません。

かかとが地面についている時間が長いとドスンドスンとした走り方になって動きが遅くなるとして、「タッタッタ!」と軽やかに走るイメージです。

声かけ例:「かかとは床につけないで、ぽんぽん跳ぼう」「タッタッタ、の音で走れたらかっこいいね」

⑤【小1】太鼓たたき腕振り:肘の後ろの太鼓を、ドンドン叩く

肘を「小さく前へならえ」の角度に曲げ、力を抜きます。肘の後ろに太鼓があるつもりで、肘で太鼓を叩くように腕を後ろへ引く。前は小さく、後ろは大きく。その場で30秒振ったら5メートル走って、腕振りを走りに乗せます。これを5分。

腕を前に振り上げるときは小さく、後ろに引くときは大きくして、肘の後ろで太鼓を叩くようなイメージで振るのがおすすめです。腕の振りが速いと、足も速く動くそうです。

声かけ例:「肘の後ろの太鼓を、ドンドン叩こう」「昨日より腕が後ろまでいってるね!」

⑥【小1】目をつぶってスタート5メートル:1歩目の足を決めて、音で飛び出す

「ヨウイ!」と言ったときに自然に引いた足が、その子の1歩目の足です。決まったら、スタートの姿勢をつくって目を閉じます。親の「ドン!」で目を開け、5メートルだけ全力で走る。戻ってまた「ヨウイ」。5分で10本ほどになります。

スタートから3歩が非常に重要なので、練習ではスタートから5メートルだけをたくさん走るのがおすすめです。

声かけ例:「ヨウイ、で目をつぶって。ドン、で開けて飛び出そう」「いまの3歩、速かった!」

⑦【小2】もも上げケンケン:股関節から、高くより速く

背筋を伸ばし、膝と足首の力を抜いて、片方のももを股関節から地面と水平になるまで引き上げます。そのまま片足で3回ケンケン。足を替えて同じく3回。感覚がつかめたら、その場で左右交互に素早くもも上げ。30秒やって休む、をくり返して5分です。

ももは高く上げればいいわけではありません。前へ進む力を出すために、股関節からグイっと動かすように上げます。高く上げることより、素早く上げることに注意しましょう。

(参考: こどもまなびラボ|100m元日本代表が教える! 今よりもっとかけっこが速くなる「走り方のコツ」)

声かけ例:「高くより、速く」「お父さんと同じテンポでいける?」

⑧【小2】「ゴールの3メートル先」駆け抜け:いまの走りは、何%だった?

20〜30メートルのコースをつくり、ゴールの3メートル先に目印を置きます。そこまで全力で1本。走り終えたら「いまの走りは何%の力だった?」と聞きます。「70%くらい」と答えたら、「じゃあ次は100%でいってみよう」。休みながら3〜4本で5分です。

ゴール地点を目指して走ると、ゴール直前でスピードが落ちます。「何%?」と聞いて100%を目指させると、ほとんどの子が1回目より速く走れる、と西薗先生は言います。

声かけ例:「ゴールの3メートル先まで走ろうね」「いまの、何%だった? じゃあ次は100%」

運動場の様子。カーブのラインに複数の旗がささっている。

***
どの年齢にも共通するのは、できなかったことを責めないこと。西薗先生は、「なんで前を向けないの!」と言われたら子どもは悲しくなってしまう、と話します。少しでもできたことを見つけてほめれば、やる気は続きます。先生が教室の子どもたちにいつも伝えている言葉があります。「一番かっこ悪いのは、ビリになることじゃなくて、全力で走らないことだよ」。

今日の5分は、その年齢のメニューからひとつ選ぶだけでかまいません。終わったら、「さっきより〇〇できたね」を、ひとつだけ言ってあげてください。

よくある質問(FAQ)

Q. 年中(4〜5歳)の子は、年少と年長のどちらのメニューをやればいいですか?
A.
年少のメニュー(特急電車ダッシュ、壁ぴったり立ち→レール歩き)から始めてください。ふたつとも楽しくできるようになったら、年長の「私は鏡」まねっこを足します。表の年齢は、取り組みやすい順に編集部が並べた目安なので、学年より「楽しくできているか」で進めてください。

Q. 1日5分で本当に足りますか?
A.
5分は、「練習時間は短めに」という西薗先生の助言に合わせて、この記事で区切った時間です。長く練習すると集中力や体力が落ちて、肝心の「全力で走る」ができなくなってしまいます。

Q. 小2ですが、姿勢や腕振りがまだできていません。下の年齢のメニューに戻っても大丈夫ですか?
A.
大丈夫です。表の年齢は目安なので、年齢が上の子が下の年齢のメニューをやってもかまいません。姿勢なら②壁ぴったり立ち→レール歩き、腕振りなら⑤太鼓たたき腕振りから始めて、楽しくできるようになったら、もも上げと駆け抜けに進みましょう。

Q. 運動会まで1週間しかありません。何をすればいいですか?
A.
西薗先生が「まずはこの3つに気をつけるだけでかけっこが速くなる」と挙げている言葉かけに絞ってください。ずっと前を見る、ゴールの3メートル先まで走る、100%の力で走る、の3つで、どの年齢でも今日から使えます。練習でできたことは、毎回ひとつほめてあげてください。

(参考)
*1 髙橋宏文 (2018)|子どもの身体能力が育つ魔法のレッスン帖. メディアパル.
*2 文部科学省 (2012)|幼児期運動指針.
*3 Cimpian, A., Arce, H.-M. C., Markman, E. M., & Dweck, C. S. (2007)|Subtle linguistic cues affect children’s motivation. Psychological Science, 18(4), 314-316.