「うるさいな!って言われた」
「4歳なのにもう反抗期?」
「小1で急に口答えするようになった」
思春期はまだ先のはずなのに、わが子の態度が急にとげとげしくなる。「これって反抗期? うちの子だけ?」と戸惑う親御さんは多いはずです。
反抗期といえば「イヤイヤ期」と「思春期」の2回、と聞いてきた方が多いでしょう。じつは、その2回のあいだにも子どもは反抗の波を見せます。4歳の壁、小学校に上がってからの中間反抗期、10歳の壁。こどもまなびラボで取り上げてきた時期を並べると、反抗は2歳・4歳・小学校低学年・10歳・思春期の5回来ます。
2歳の「イヤ!」と10歳の「うるさい!」を同じ対応で乗り切ろうとすると、どちらもこじれます。時期ごとに分かれていた話を、起きること・NG対応・OK対応の年齢別一覧にまとめました。
目次
反抗期が5回来るのは、自立が段階を踏んで進むからです
「反抗期に親が対応を誤ると、子どもがうまく自立できず、あとあと大きな問題に発展することもある」と話すのは、元東京成徳大学教授で学校心理士スーパーバイザーの田村節子氏です。田村氏は反抗期を、「蚕でいえば、いままで幼虫だったのが自分のまわりに“まゆ”をつくっているような状態」だと説明します。
まゆという壁で親と距離をとり、自分で決める機会を増やして自分をつくる。つくり終えたら殻を破って出てくる。まゆをつくっている最中の姿が、外からは反抗に見えます。
自立は一度では済みません。心理学者エリク・H・エリクソンは人の発達を8つの段階に分け、子ども時代だけでも「自律性対恥・疑惑」(1歳半〜3歳)、「自主性対罪悪感」(3〜5歳)、「勤勉性対劣等感」(5〜12歳)、「アイデンティティ対アイデンティティの混乱」(12〜18歳)と課題が入れ替わると考えました。年齢ごとに違う課題を通りながら自立が進む。反抗が段階ごとに顔を変えて何度も来るのは、そのためです。(参考: こどもまなびラボ|エリクソンの「発達段階」を知ろう)

5つの反抗期を1枚の表にすると、対応は年齢で変わります

時期ごとに「反抗」の中身は違います
2歳前後:「イヤ!」は自分を認めてほしいサインです
1歳半から3歳ごろの第一次反抗期、いわゆるイヤイヤ期です。精神科医でスクールカウンセラーの明橋大二氏は、この時期のイヤイヤには「自己評価」や「自己肯定感」を養う役割があると述べています。1〜2歳の「イヤ」は「自分もひとりの人間なんだ」という主張。2〜3歳になると自立心が高まり、「親にとって、とても手がかかる状態」になります。ここで親の都合で叱ったり止めたりしていると、自発性そのものが失われてしまいます。
いつもの席でないと泣く、置き場所が変わると大泣きする行動は、モンテッソーリ教育でいう「秩序の敏感期」。背景にあるのは「秩序を守りたい」という意識です。(参考: こどもまなびラボ|“自己チューな子”にさせないモンテッソーリ教育のヒント)
手がかかるあまり「もう勝手にしなさい」と突き放す、「いやしい子ね」と人格を否定する。教育コンサルタントの上野緑子氏は、こうした言葉が子どもの心に深い傷を負わせると警告しています。「ひとりで歯磨きする」と言い張る子には「よし、じゃあ頑張ってみよう」と見守る。席や靴の置き場所は「いつもと同じ」を保ち、変えるときは理由を説明しましょう。
4歳前後:「4歳の壁」は、かしこくなったから起きる葛藤です
3歳を過ぎて落ち着いたころに現れるのが「4歳の壁」です。オランダ心理学会(NIP)認定心理士でポジティブ育児研究所代表の佐藤めぐみ氏によると、4歳を過ぎると大脳の発達が進み、認知能力が大きく伸びて複雑な思考ができるようになります。その急な変化に子ども自身が戸惑い、気持ちのコントロールがうまくできなくなる。それが「壁」の正体です。
京都華頂大学教授で『かかわりあって育つ子どもたち』の著者・西川由紀子氏は、4歳ごろに「痛かったけど、わざとじゃないからたたき返さない」という「〜ダケレドモ〜スル」の自制心が生まれる一方、このかしこさは「自分の不十分さに気づくかしこさ」でもあると述べています。*1
先が見えるようになったぶん、急に物怖じし、「やりたくない」と言う。4歳の反抗は、わがままが強くなったのではなく、見通す力が育った結果の葛藤です。
見通す力が育っているからこそ、「〜しなかったら、〜になっちゃうよ!」という言葉はよく効いて、よく傷つけます。その場の行動は止められても、望ましい行動を教える力がありません。同じ見通す力を「全部食べて“ごちそうさま”をしたら、○○で遊べるね」と先のお楽しみに向けてあげる。手が出てしまったときは、どうしてそうなったのかを一緒に考えましょう。(参考: こどもまなびラボ|うちの子、反抗期なの!? 成長や発達が関係する「4歳の壁」の対処法)
小学校低学年:入学後の「口答え」は中間反抗期です
小学校に上がったあたりから目立つ口答えや無視、親の手助けを嫌がる態度は「中間反抗期」と呼ばれます。親に依存した状態から抜け出し、友だちの影響を受けて成長していく時期です。
白梅学園大学教授で子ども教育のプロフェッショナル養成に携わる増田修治先生は、この時期のイライラの一番の原因を「自分の思いをうまく言葉に整理できない」ことだと指摘します。モヤモヤを言葉にする力が追いつかず、そのストレスが口答えになるのです。
親は「ダメ!」で押さえるか、面倒だからと言いなりになるかに寄りがちですが、どちらも子どもの言葉を育てません。かわりに聞き手に徹する。「どうしたの?」「お友だちとなにかあったの?」と誘い、口答えには「そう思うのね。わかったよ」と受け止めてから「○○だから、お母さんはやめたほうがいいと思うよ」と理由を述べて諭す。人を傷つける言葉が出たら「そういう言い方をされると、すごく悲しくなるよ」と伝えましょう。(参考: こどもまなびラボ|子どもの反抗的な態度にイライラしてる!? 【“中間反抗期” の時期・特徴・対処法】)
10歳前後:「10歳の壁」で、子どもは自分と他人を比べはじめます
小学3、4年生ごろ、勉強が難しくなるのと同時に内面も大きく変わります。文部科学省はこの時期の子どもを、自己肯定感を持ちはじめる一方で「自己に対する肯定的な意識を持てず、劣等感を持ちやすくなる時期でもある」と説明しています。*2
他人の目から見た自分がわかるようになり、比べて落ち込む。医学博士で学校心理士スーパーバイザーの芳川玲子氏によれば、この時期の子どもは「生理的な発達にともなう変調、対人関係の難しさ、自我の形成にともなうしんどさ」を同時に抱えています。小学校中学年から「前思春期」は始まっているのです。
「早く宿題をやりなさい」と行動のたびに口をはさむ親は、この時期いちばん多いかもしれません。教員出身の教育評論家、親野智可等氏は、待てない親が否定的に叱り続けることで子どもの自己肯定感をボロボロにしてしまうと述べています。「頭がいいね」と能力をほめるより、がんばった行動をほめる。あとは信じて見守りましょう。法政大学文学部心理学科教授の渡辺弥生氏の言葉を借りれば、「10歳の壁」ではなく「10歳の飛躍」です。(参考: こどもまなびラボ|親が知っておくべき「10歳の壁」と自己肯定感の関係)
思春期:「うざい!」は脳が引き起こしている感情です
小学校高学年から中学生にかけての第二反抗期、いわゆる思春期です。脳科学者の中野信子氏は、著書のなかで「親がうざい!」の仕組みを解説しています。*3 脳は神経細胞のネットワークをつくる一方、いらない部分を刈り込むことでも成長します。親から「こうしなさい」と行動を修正されることは、この刈り込みにあたります。
ところが小言を言われた側は、せっかく成長したネットワークを親に勝手に刈り込まれると感じる。それが「うざい!」の中身です。中野氏が指摘するように、「うざい」は「脳が引き起こしている感情のひとつ」であって、親の育て方への評価ではありません。
心配なときにだけ「ちゃんとやってるの?」と声をかけると、子どもにはまゆの糸を外から切りに来る手に見えます。前出の田村氏によれば、強引に対応すると子どもはますます親を拒絶します。干渉はしないで、関心は向ける。前出の渡辺氏は「関心を向けてくる相手を追っ払ってひとりになることと、関心がまったく向けられず、ほったらかしにされてひとりでいることは全然違う」と述べています。楽しそうにしているときにこそ、「そのまんが、面白そうだね」と声をかけましょう。(参考: こどもまなびラボ|思春期と反抗期の違いとは? 「口が悪くなる男の子」「不機嫌になる女の子」の対処法)

5回の反抗期に、親がやることの軸は変わりません
表のNG対応には共通点があります。感情的に叱る、罰で動かす、突き放す、干渉しすぎる。どれも「親の思いどおりに戻す」対応です。OK対応はどの年齢でも、「子どもの側に理由がある」と認めたうえで線を引く対応です。親の仕事は反抗をなくすことではなく、その段階の反抗を受け止め、線を引き、次の段階に渡すこと。反抗期が来たら「順調に育っている」と受け取ってかまいません。
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表で、いま何回目の波が来ているのかを確かめて、その行のOK対応をひとつ試してみてください。ひとことで足りることが沢山あることを実感すると思います。
よくある質問(FAQ)
Q. 反抗期が5回全部はっきり来る子と、ほとんど目立たない子がいるのはなぜですか?
A. 壁の高さは人それぞれです。ポジティブ育児研究所代表の佐藤めぐみ氏は、「4歳になればきっと楽になるだろう」という印象があると、ちょっとしたことでも親が“壁”と感じてしまうパターンがあると述べています。逆に、激しく反抗しなくても、「自分で!」と言い張る、口答えが増える、話さなくなるといった小さな変化があれば、その時期の課題を通っている最中です。目立たないから育っていない、ということはありません。
Q. 小学校低学年の中間反抗期と10歳の壁は、時期が重なりませんか?
A. 重なります。中間反抗期は小学校低学年から中学年まで幅があり、10歳の壁と地続きです。年齢で切るより、いま出ているサインで表を引いてください。口答えや「親の手助けを嫌がる」が中心なら中間反抗期の対応(聞き手に徹する)、「どうせ」「○○ちゃんはできるのに」と自分と他人を比べて落ち込むなら10歳の壁の対応(見守って、がんばった行動をほめる)が合います。
Q. 反抗期の子どもは叱ってはいけないのですか?
A. 叱らないのではなく、感情と罰で動かさない、ということです。何がいけないのかを子ども自身に考えさせ、どうしたらよいかを伝える。「ここまで」と決めたラインを超えたら、「自分でできることは自分でしようね」とはっきり伝える。人を傷つける言葉が出たら「そういう言い方をされると、すごく悲しくなるよ」と教える。理由を添えて線を引く叱り方は、どの時期にも必要です。
Q. 思春期の子に何を話しかけても「別に」しか返ってきません。放っておくべきですか? A. 干渉はしないで、関心は向けてください。心配なときだけ「大丈夫なの?」と聞くのではなく、楽しそうにしているときに「そのまんが、面白そうだね」とひとこと添えるだけでかまいません。教育評論家の石田勝紀氏は、親の言うことと逆をしたがる「あまのじゃく」を逆手にとって、あえて「勉強なんかしないで遊びに行こう」と誘ってみる方法も紹介しています。返事がなくても、関心が届いていること自体が、子どもを支えています。
*1: 西川由紀子(2013),『かかわりあって育つ子どもたち 2歳から5歳の発達と保育』, かもがわ出版.
*2: 文部科学省|3. 子どもの発達段階ごとの特徴と重視すべき課題
*3: 中野信子(2021),『中野信子のこども脳科学 「イヤな気持ち」をエネルギーに変える!』, フレーベル館.









