幼稚園や学校の送り迎え。他のお母さん、お父さんは少し離れたところから見守っているのに、自分はつい子どもの近くまでついて行ってしまう。
「○○ちゃんはもうひとりで遊んでいるのに、うちはまだ……」とふとよぎる瞬間。「私って、ちょっと子離れできてないのかも?」もしそんな違和感を感じたことがあるなら、その気づきは、子育ての大切なサインかもしれません。
目次
もしかしたら、まだ “親の子離れ” がきていないのかも
「うちの子、ちょっと甘えん坊で……」と感じるとき、私たちはつい子どもの性格や発達に原因を探してしまいます。
でもじつは、その違和感は子どものほうではなく、親自身の関わり方を映し出していることが少なくありません。
子どもが親離れする力を発揮するためには、親のほうが先に少し手を引く必要があります。子どもの世界には親が手を出せる余白がたくさんあって、その余白に親がつい入り込んでしまうと、子どもは自分でやってみる経験を積みにくくなってしまうのです。
「他の親はもう手を放しているのに、私はまだ……」という違和感は、責められるべきものではありません。むしろ、それは「そろそろ親のほうが一歩引いてみる時期かも」という、ちいさなお知らせのようなものなのです。

わが子から目が離せないのは、愛情の自然なはたらき
そもそも、わが子から目が離せないという気持ちを、責める必要はありません。子どもをいつくしみ、守ろうとする感情は、親としてとても自然な愛情だからです。
つまずいたら助けてあげたい、寒そうなら上着を着せてあげたい、困っていそうなら声をかけてあげたい。手を伸ばしたくなる気持ちは、わが子を大切に思う心が動いている証拠です。
「子離れできない」というと、まるで親としての至らなさのように聞こえてしまいますが、ほんとうの意味はその反対です。愛情がたっぷりあるからこそ、手を離せないだけなのです。
気づいたあなたは、子どもと丁寧に向き合ってきた人。その土台があるからこそ、次のステージに進めるのです。
それでも、親の子離れが遅れると、子どもが自分で育つ場面が減ってしまう
一方で、研究の世界では、親が手を出しすぎることが子どもの育ちに与える影響が、少しずつ明らかになってきています。
▼ 研究のポイント
過保護で先回りしがちな親の関わりは「ヘリコプターペアレンティング」と呼ばれ、子どもの自律性や心の健やかさを弱めることが報告されています。(米国メアリー・ワシントン大学、ホリー・シフリン教授ら)*1
親が困難を先回りで取り除いてしまうと、子どもは「自分で考えて、自分で乗り越える」という経験を積む機会を失ってしまうのです。
▼ 研究のポイント
子どもの心の育ちをうまく支える親の関わりは、子どもにあれこれ指示を出すこととはまったく別のものだと指摘されています。(ベルギー ゲント大学、バルト・スネンス教授ら)*2
親が手を引いて、子どもが自分の意志で動ける余白を残すこと。それが、子どもの心が育つ機会なのだそうです。
つまり、親の子離れは、子どもを冷たく突き放すことではなくて、子どもが自分で育つ場面を増やしてあげること。ちょっと不安かもしれませんが、その不安の向こうに、子どもの育ちがあるのです。

親の子離れは、子どもを突き放すことじゃない。親の関わり方が変わっていくこと
ここで、もうひとつ大切なことをお伝えしたいと思います。
「親の子離れ」というと、どこか寂しい、子どもとの距離が遠くなってしまう、というイメージがあるかもしれません。でも、じつはそうではありません。
親の子離れは、子どもとの関係が薄くなることでも、子どもを冷たく突き放すことでもありません。それは、親自身の関わり方が、「子どものために動く時期」から「子どもを信じて待つ時期」へと、少しずつ変わっていくことなのです。
▼ 研究のポイント
小学生の子どもを対象にした研究では、親が子どもの自律性を支える関わり方をしていると、子どもの自己調整の力や学校での適応が高まることが報告されています。(米国クラーク大学、ウェンディ・グロルニック教授ら)*3
つまり、親が一歩引いて、子どもが自分で考える余白をつくることは、わが子の “自分でやっていく力” を育てる関わりそのもの。子離れは、突き放すことではなく、子どもの育ちに寄り添う親の関わり方が、次のかたちに進むことだといえます。
「この子はどうなるんだろう」と心配になる気持ちは、よくわかります。でも、子どもには、あなたが思っているよりずっと、自分でやってみる力があります。
「信じて待つ」って、口で言うほど簡単じゃないですよね。すぐにできなくて大丈夫です。「待ってみようかな」と思う気持ちが芽生えた、そのこと自体が、もう前に進みはじめている証拠。なぜなら、親が信じて待つ姿勢も、子どもにとっての応援だからです。
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今日からできる、ちいさな子離れの練習
最後に、明日から取り入れられるちいさなひとことをご紹介します。
それは「自分でやってみる?」というひとことです。
たくさんの場面で実践する必要はありません。まずは「朝の支度」など、いつも先回りしてしまう場面をひとつだけ選んでみてください。明日の朝、その場面でいったん3秒だけ呼吸をして、「自分でやってみる?」と声をかけてみる。うまくいかなくても大丈夫です。子どもがつまずいて、もどかしくなる時間こそが、子どもが育つ時間。親はそばで見守るだけでいいのです。
それから、どうしてもかまってしまう瞬間があっても、それも自然なこと。ぐっと寄り添う時間と、そっと手を引く時間。そのバランスのなかで、子育ては進んでいくものです。まずは明日、ひとつの場面で、ひとことだけ。それだけで、親も子も、少しずつ次のステージへ進んでいけます。
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子どもが自分でできたことを書きとめてみるのもおすすめです。ある日、ふと子どもがびっくりするほど育っていることに気がつくと思います。
FAQ(よくある質問)
Q. 子どもが「ママやって!」と甘えてきたら、応えないほうがいいのでしょうか?
A. 応えないほうがいい、という話ではありません。甘えと、先回りはちがいます。子どものほうから「やって」と求めてきたときには、応えてあげて大丈夫。気をつけたいのは、子どもが求めていないのに親が先に手を出してしまうことです。
Q. 「子離れできない」と感じる自分に罪悪感があります。
A. 罪悪感を持つ必要はありません。気づいたこと自体が、大事な一歩です。「気づき」と「変化」は別のステップなので、まずは気づいたじぶんを認めてあげてください。
Q. 上の子と下の子で、子離れのタイミングがちがう気がします。
A. 子どもひとりひとりで、育つペースは違って当然です。年齢や順番ではなく、その子その子の成長に合わせて手を引いていけばよいので、焦らなくて大丈夫です。
(参考)
*1 Schiffrin, H. H., Liss, M., Miles-McLean, H., Geary, K. A., Erchull, M. J., & Tashner, T. (2014)|Helping or Hovering? The Effects of Helicopter Parenting on College Students’ Well-Being. Journal of Child and Family Studies, 23(3), 548-557.
*2 Soenens, B., Vansteenkiste, M., Lens, W., Luyckx, K., Goossens, L., Beyers, W., & Ryan, R. M. (2007)|Conceptualizing Parental Autonomy Support: Adolescent Perceptions of Promotion of Independence Versus Promotion of Volitional Functioning. Developmental Psychology, 43(3), 633-646.
*3 Grolnick, W. S., & Ryan, R. M. (1989)|Parent Styles Associated with Children’s Self-Regulation and Competence in School. Journal of Educational Psychology, 81(2), 143-154.









