「絵本を読んであげたいけれど、家にある本ばかりだと子どもが飽きてしまう」「図書館に連れて行ってあげたいけれど、騒いでしまったらどうしよう」。そんなふうに思っている親御さんは、きっと多いのではないでしょうか。
じつは、いま全国には「子どものために設計された図書館」が、たくさん生まれています。靴を脱いでごろんと寝転がれるスペース、子どもの目線に合わせた低い書架、毎日のおはなし会、芝生でかけまわれる広場……。「静かにしようね」と何度も声をかけなくても、子どもが自然と本に夢中になっていく、そんな魔法のような空間がそこにはあります。
今回は、そんな「親子で過ごすのが楽しい!」と評判の図書館を5つ、ご紹介します。週末のおでかけ先や、旅行のついでに立ち寄る場所として、ぜひ参考にしてみてください。

目次
子どもが夢中になる!親子で訪れたい図書館5選
ここからは、子ども連れで気兼ねなく楽しめる、全国の素敵な図書館をご紹介していきます。まずは、5館の特徴をひと目で見比べられるように、表にまとめてみましたので参考にしてみてください。
| 図書館名 | 所在地 | こんなご家族におすすめ |
|---|---|---|
| 国際子ども図書館 | 東京都台東区 | 世界の絵本や歴史ある建築も楽しみたい |
| 東京子ども図書館 | 東京都中野区 | 物語や語りの伝統にじっくり触れたい |
| 柏市立図書館こども図書館 | 千葉県柏市 | 赤ちゃん連れでのんびり絵本にふれたい |
| 箕面市立中央図書館 | 大阪府箕面市 | 紙芝居の世界にも親しみたい |
| 武雄市こども図書館 | 佐賀県武雄市 | 本も外あそびもまとめて楽しみたい |
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1. 国際子ども図書館(東京都台東区)
上野公園の一角にある、日本でただひとつの「国立の児童書専門図書館」です。明治時代に建てられた帝国図書館を再生したレンガ棟と、安藤忠雄氏が設計に関わったアーチ棟。まるでヨーロッパの宮殿のような佇まいに、子どもも大人も思わず見上げてしまうはず。*1
見どころは1階の「子どものへや」「世界を知るへや」「おはなしのへや」。重厚なつくりの落ち着いた空間で、子どもが自由に絵本を手にとれます。授乳室や調乳給湯器、子ども用便座も整っているので、赤ちゃん連れでも安心。しかも入館は無料・予約も不要なんです。
「絵本好きな子に、世界の本を見せてあげたい」「歴史ある建物の雰囲気も味わわせたい」というご家族には、とっておきの場所です。
2. 東京子ども図書館(東京都中野区)
児童文学者の石井桃子さん、松岡享子さんらが、家庭文庫を母体として1974年に設立した私立の図書館。中野区江原町の住宅街にあり、規模は小さいけれど、児童文学の世界では「聖地」とも呼ばれている特別な場所です。*2
開館は火・水・金13:00 〜 17:00、土10:30 〜 17:00。「おはなしのじかん」やわらべうたの会も開かれています。1973年から刊行されている『おはなしのろうそく』シリーズは、累計188万部を超えるロングセラー。荻窪にある分館「かつら文庫」では、石井桃子さんが実際に使っていた書斎も見学できますよ。
「物語の力をじっくり味わわせてあげたい」「読み聞かせや語りの伝統に触れさせたい」というご家庭には、ぜひ一度訪れてほしい場所です。
3. 柏市立図書館こども図書館(千葉県柏市)
千葉県内ではじめて、単独の館として誕生したこども専門の公立図書館です。靴を脱いで利用する図書館ですが、寒い時期には床暖房が入るので、ハイハイ期の赤ちゃん連れでも安心して過ごせます。*3
乳幼児とその保護者のための図書館なので、絵本だけでなく育児書もたっぷり。入口のすぐそばには授乳・おむつ替えスペースもあるんです。おはなし会は毎日開催されています。
「赤ちゃんを連れて、のんびり絵本にふれたい」「子育ての悩みも、本でちょっと整理したい」というママ・パパに、本当におすすめです。
4. 箕面市立中央図書館(大阪府箕面市)
1988年に開館し、2015年にリニューアルされた箕面市立図書館の中央館。児童書のなかには、絶版になってしまった児童書や、街頭紙芝居・手づくり紙芝居の貴重なコレクションも含まれており、ほかの図書館ではなかなか出会えない作品にふれられるのが魅力です。*4
各エリアには、お弁当を持ち込んで食べられる「くつろぎスペース」や屋外テラスがあって、家族でのんびり過ごせるのもうれしいところ。市内各館では毎日のようにおはなし会が開かれていて、季節にあわせた絵本の展示も楽しめます。
「紙芝居の世界に親しませたい」「ゆっくり1日かけて、本に向き合いたい」というご家族にぴったりです。
5. 武雄市こども図書館(佐賀県武雄市)
2017年に開館した、佐賀県武雄市の人気スポット。「遊びから学びへ」をコンセプトに、絵本やCD・DVDを揃えています。*5
いちばんの魅力は、子ども目線の楽しい仕掛けがいっぱいなこと。階段にゆったり腰をかけられる「えほんの山」、天井が低くてこどもサイズの「ひみつのへや」、絵本作家tupera tuperaが原画を手がけた大楠の壁画など、書架も子どもが手に取りやすい高さに設計されています。芝生広場では走りまわって遊べますし、九州パンケーキカフェも併設。年中無休で朝9時から夜21時まで開いているのも、家族連れにはうれしいでしょう。
「本も外あそびも、まとめて楽しみたい!」というご家族にぴったりです。
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「親子で図書館に行く」ことが、こんなに大切なわけ
ところで、なぜ親子で図書館に行くことが、子どもの育ちにとって大切なのでしょうか。じつは、たくさんの研究がその意味を教えてくれています。
オーストラリア・グリフィス大学の研究者Hood氏らが、3年間かけて143人の子どもを追跡した研究では、就学前の家庭での読み聞かせや、保護者と一緒に図書館に行く習慣などを含む「家庭の読書環境」が、子どものその後の語彙力や読解力を予測する大きな要因になることが報告されています。*6 家庭の本棚と図書館の本棚は、子どもの「読む力」を育てる、いわば両輪のような存在なのです。
さらに、米国シンシナティ小児病院の心理学者Hutton氏らの研究では、3 〜 5歳の子どもの脳をfMRIで観察したところ、ふだんからよく読み聞かせをしてもらっている子ほど、物語を聞いているときに言語処理や心的イメージにかかわる脳の部分が活発に働くことがわかりました。*7 読み聞かせの時間は、子どもの脳を文字どおり育ててくれているんですね。
そして、英国レディング大学の臨床研究社Dowdall氏らが19件のランダム化比較試験をまとめた2020年のメタ分析では、親子で対話しながら絵本を読む実践が、子どもの表出語彙と受容語彙の発達に、はっきりとした効果をもたらすことが確かめられています。*8
つまり、親子で本に親しむ時間そのものが、ことばの土台を育てているということ。図書館は、その大切な時間を「特別なおでかけ」に変えてくれる場所というわけです。
子どもが本を好きになる第一歩は、「本のある場所って、なんだか楽しい!」という気持ちから始まります。今回ご紹介した5つの図書館は、どれも子どもが主役になれるように考えぬかれた、楽しい場所ばかり。
***
お住まいの近くの図書館はもちろん、旅行先や帰省先で立ち寄る選択肢としても、頭の片隅に置いておいてくださいね。親子で過ごす図書館の時間は、子どもの未来へのいちばんの贈りものになるはずです。
よくある質問(FAQ)
Q. まだ静かにできない子どもを連れて行っても大丈夫ですか?
A. 今回ご紹介した5館は、どこも子ども連れを前提とした設計や運営になっているので、安心して訪れていただけます。武雄市こども図書館や柏市立図書館こども図書館のように、声を出してもよい空間や、靴を脱いでくつろげるスペースを備えた館も多く、赤ちゃん連れでも気軽に利用できます。心配な場合は、事前に各館のホームページで設備や利用ルールを確認しておくと安心です。
Q. 何歳から「図書館デビュー」できますか?
A. とくに年齢制限はないので、月齢の低い赤ちゃんから利用できますよ。最初は5〜10分の短時間からで大丈夫。「本のある場所って楽しいな」と感じてもらえる体験を、少しずつ積み重ねていきましょう。
Q. 遠方の図書館にわざわざ行く価値はありますか?
A. もちろん日々通うのは近所の図書館で十分ですが、特別な場所を訪れた体験は、子どもの記憶に深く刻まれるものです。「本のある場所って、こんなに楽しいんだ!」という強い印象は、その先の読書習慣を後押ししてくれる力になります。旅行や帰省の機会に、ぜひ立ち寄ってみてください。
*2 公益財団法人 東京子ども図書館|東京子ども図書館
*3 柏市立図書館|こども図書館
*4 箕面市|中央図書館
*5 武雄市図書館|こども図書館
*6 Journal of Educational Psychology|Preschool home literacy practices and children’s literacy development: A longitudinal analysis(Hood, Conlon, & Andrews, 2008)
*7 Pediatrics|Home Reading Environment and Brain Activation in Preschool Children Listening to Stories(Hutton et al., 2015)
*8 Child Development|Shared Picture Book Reading Interventions for Child Language Development: A Systematic Review and Meta-Analysis(Dowdall et al., 2020)









